「温暖化で沈む国」の全く不都合な真実

11.1 ツバルの不都合な真実

前章で解説したとおり、IPCC学派は「化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素(CO2)による温暖化効果を誇張している」。
もちろん、IPCC学派は頑として認めない。
「二酸化炭素(CO2)による温暖化効果」で海面が上昇し、ツバルが沈みつつある、ツバルの人々が気の毒だ、ツバルの人々を救わねばならない、と騒ぎ立てている。


水没危機ツバル、希望の星砂 陸作る「有孔虫」増殖実験
2010年9月6日3時1分
地球温暖化による海面上昇で将来、水没の恐れがある島を、小さな「星砂」で救う試みを、東京大の茅根創教授や国立環境研究所などが南太平洋のツバルで始めた。コンクリートの防潮堤をつくるのではなく、生物が陸地をつくる力を生かして水没を防ごうという計画だ。
サンゴ礁の島は、サンゴのかけらや貝殻などが積み重なって陸地ができ、維持されている。石灰質の殻をつくる有孔虫の一種で、星のような形のホシズナ(星砂)も、大量に打ち上げられて砂浜になり、陸地づくりに大きな役割を果たしている。
有孔虫はアメーバに近い原生動物の一種。ホシズナは直径1~2ミリで、沖縄でもよくみられる。
環境省が東京大に委託して行った調査によると、ツバルでは島を構成する堆積(たいせき)物に占める有孔虫の割合が多く、全体の5~7割だった。ところが、近年は人口が増え、市街地に近い海では水質悪化が原因とみられる有孔虫の減少が目立つようになった。このまま減り続ければ、陸地を作る能力が衰え、水没の危機がさらに高まる恐れがある。
計画では、水槽で有孔虫を効果的に増やして海に戻す。研究チームは昨秋、日本の陸上水槽で有孔虫を飼育する予備実験を開始。今年4月に、ツバルに有孔虫の増殖を行う実験施設をつくった。
ツバルでは現在、長さ5メートルの水槽四つで、現地で生息するホシズナなど3種の有孔虫(直径1~5ミリ程度)を、計約10万匹飼育している。ホシズナの場合、1匹から数百匹に増える能力があるといい、水流など大量増殖に向けて最適な飼育条件を調べる。
茅根教授は「ツバルでの試みが成功すれば、モルディブなど、水没の危機にあるほかの島国でも役立てたい」と話している。(山本智之)


(朝日新聞デジタル)

実際、環境省が公開しているパンフレットには、茅根創の撮った写真が掲載されている。

2014082602図11-1 「STOP THE 温暖化 2012」より

その後のパンフレットでも、CO2の排出に因る海面上昇でツバルが沈みつつある、と騒ぎ立てている。

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図11-2 「STOP THE 温暖化 2015」より

第5章の冒頭で引用した朝日新聞社説は「ツバルのような国の生き残りはこの会議の決定にかかっている」、「国土の水没を恐れるツバルなど小さな島国の懸命な訴えを、大国も軽んじられなかったのだ」と喚き立てていたけれど、2016年のリオデジャネイロ五輪の際には、こんな記事も書いていた。


五輪ツバル代表、たった1人 ボルト追いかけ短距離出場
佐々木学
2016年8月13日15時47分
リオデジャネイロ五輪に、たった1人の代表選手を派遣している国がある。南太平洋のツバル。地球温暖化による海面上昇で水没が危惧されている小さな島国だ。代表のエティモニ・ティムアニ(24)は13日、約9900人の島民の期待を背負い、陸上男子100メートル予選に出場する。
「国の代表としてリオに来ることができ、とてもハッピーだ」。今回の五輪で唯一、選手は一人きりで、5日の開会式では当然、旗手も務めた。南国らしい花飾りのついた冠と、伝統衣装の腰巻きをつけ、誇らしげに国旗を揺らし、歩いた。


(朝日新聞デジタル)

環境省と結託して「朝日地球環境フォーラム」を開催した際にも、ツバルを盾に(CO2の排出に因る)海面上昇を騒ぎ立てていた。


美しい星つながる未来 朝日地球環境フォーラム2013、9月30日・10月1日東京
2013年8月20日
今年で6回目となる「朝日地球環境フォーラム2013」は9月30日(月)と10月1日(火)の両日、東京都千代田区の帝国ホテルで開催される。今年のテーマは「美しい星 つながる未来」。この地球を見つめ直し、そのすばらしさをこれからの世代につなぐ手立てを模索する。1日目の全体会議では温暖化対策の国際的連…

2015010401海面上昇の危機にさらされる南太平洋のツバル。子どもたちは海に飛び込んで遊んでいた。


(朝日新聞デジタル)

無邪気に遊ぶ子どもの写真を見せつけて、子どもへの同情心を誘い、(CO2の排出に因る)温暖化でツバルが沈みつつある、と思い込ませようと図ったのだが、下図に見えるとおり、ツバルで有意な潮位上昇は認められない。

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図11-3 ツバル・フナフチの潮位の推移(「Permanent Serive for Mean Sea Level」より)

第5章図5-5の黄色の線に見えるとおり、(全球平均)気温は1980年以降に急上昇したから、そして、IPCCに依れば、それはCO2の排出が原因だから、CO2の排出で海面が上昇しているのなら、1980年以降に潮位が上昇し続けているはずだが、有意な潮位上昇は認められない。
ならば、図11-1や図11-2は何か?
上図を見れば分かるとおり、数年毎に潮位が乱高下している。
元々、潮位が高い時は海水に浸るのだ。
図11-1や図11-2は環境省のパンフレットで、製作したのは環境省管轄下の環境研究所であろうが、人為的(排出CO2)温暖化を解説(と言うよりも吹聴)しているサイトでは、その事実を認めている。


フナフチで測定される平均潮位は季節により上下し、高い時と低い時で20~30㎝程度の差があります。また、潮汐による干満の差が大きい時には2mを超します。よって、潮位が高くなる春先の満潮時には、標高が低い地域では海水面より低くなってしまうところも出てきます。サンゴ礁の上に砂が堆積してできた島ですので、満潮時に海水面以下になる地域では、地盤(サンゴ礁)の穴を通じて水が滲み出してきます。島のあちこちで海水が地面から湧き出す現象は以前からも観測されてきたもので、温暖化により初めて生じるようになったわけではありません。


(「海面上昇で消える島国」より)

環境省は、潮位が高い時を利用して、(CO2の排出に因る)温暖化でツバルが沈んでいるかのごとくに見せかけようと図ったのである。
(「STOP THE 温暖化 2012」と「STOP THE 温暖化 2015」ではツバルを利用して温暖化を煽っていたけれど、最新の「STOP THE 温暖化 2017」ではツバルを利用しなくなった。デタラメを暴かれてしまったので、利用できなくなったのだ。)

しかし、朝日新聞は尚も、CO2の排出で海面が上昇し、ツバルが沈みつつある、ツバルの人々が気の毒だ、ツバルの人々を救わねばならない、と喚き立てている。


2017年11月28日の朝日新聞夕刊紙面より

「私の国を救えれば、世界が救える」と泣き喚いているけれど、実のところ、ツバルの島々の面積は増えていた。


「沈みゆく島国」ツバル、実は国土が拡大していた 研究
2018年2月10日 10:06 発信地:ウエリントン/ニュージーランド
気候変動に伴う海面上昇によって消滅すると考えられてきた太平洋の島しょ国ツバルは、実は国土面積が拡大していたとする研究論文が9日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。
ニュージーランドのオークランド大学の研究チームは航空写真や衛星写真を使用し、ツバルの9つの環礁と101の岩礁について1971年から2014年までの地形の変化を分析した。
その結果、ツバルでは世界平均の2倍のペースで海面上昇が進んでいるにもかかわらず8つの環礁と、約4分の3の岩礁で面積が広くなっており、同国の総面積は2.9%拡大していたことが判明した。
論文の共著者の一人ポール・ケンチ(Paul Kench)氏によると、この研究は低海抜の島しょ国が海面上昇によって水没するという仮説に一石を投じるものだという。
波のパターンや嵐で打ち上げられた堆積物などの要因によって、海面上昇による浸食が相殺された可能性があるという。
オークランド大学の研究チームは、気候変動が依然として低海抜の島国にとって大きな脅威であることに変わりはないと指摘する一方、こうした問題への対処の仕方については再考すべきだと論じている。
同チームは、島しょ国は自国の地形の変化を考慮に入れたクリエーティブな解決策を模索して気候変動に適応していかなければならないと指摘し、海面が上昇しても安定していることが分かっており、これからも面積が増えていくとみられる比較的大きな島や環礁への移住などを提唱している。


(AFP)

「ツバルでは世界平均の2倍のペースで海面上昇が進んでいる」と書いているではないか、と思うだろうが、「にもかかわらず8つの環礁と、約4分の3の岩礁で面積が広くなっており、同国の総面積は2.9%拡大していたことが判明した」がこの論文の主旨だから、「2倍のペースで海面上昇が進んでいる」ことを示すグラフが本文中で示されていなければならないのに、見当たらない。
Supplementary Information」に掲載されていた。


図11-4 「Supplementary Information」の図3

しかし、図11-3は2002年までなのに、上図は2015年まで。
なぜか?
実は、PSMSLには、図11-3の「FUNAFUTI」以外に、もう一つ、「FUNAFUTI B」がある。


図11-5 「FUNAFUTI B」の潮位の推移(「Permanent Serive for Mean Sea Level」より)

同じ場所の同じ潮位計のデータなら2つのグラフに分ける必要はない。
図11-3の「FUNAFUTI」が潮位の観測に適さなくなった(もしくは、「国土面積が拡大」した結果、観測できなくなった)から、2002年で観測を止め(止めざるを得なくなり)、代わりに「FUNAFUTI B」で観測を始めたのだ。
図11-4は 図11-3と図11-5をつぎはぎした結果にすぎない。
異なる潮位計のデータをつぎはぎしたから、「ツバルでは世界平均の2倍のペースで海面上昇が進んでいる」に見えるだけ。
実際、図11-3だけを見れば、そして、図11-5だけを見れば、潮位は上がっていない。

朝日新聞が「温暖化の脅威はそこまで迫っている」と煽り立てていることが象徴しているとおり、「実は国土が拡大していた」ことを学会の学術誌に発表しても、先進国の主要メディアは採り上げない。
実際、「ニュージーランドのオークランド大学の研究チーム」は、この論文以前にも、「気候変動に伴う海面上昇によって消滅すると考えられてきた太平洋の島しょ国ツバルは、実は国土面積が拡大していたとする研究論文(『Geology,43(2015)515』)」を発表していたけれど、メディアは採り上げなかった。
自分の研究をメディアに報じてもらい、「低海抜の島しょ国が海面上昇によって水没するという仮説」の非科学性を市民に知ってもらうには、温暖化を煽り立ててきた「ネイチャー」系列の雑誌か「サイエンス」に投稿するしかないけれど、そのためには、「ツバルでは世界平均の2倍のペースで海面上昇が進んでいる」と認めたふりをする必要があった。
しかし、異なる潮位計のデータをつぎはぎするのは研究者として恥ずかしい(小保方晴子と五十歩百歩)から、本文中には載せず、「Supplementary Information」に回した。
「気候変動が依然として低海抜の島国にとって大きな脅威であることに変わりはない」は「低海抜の島しょ国が海面上昇によって水没するという仮説に一石を投じる」ための苦肉の策に他ならない。

前章の第7節で解説したとおり、実は、1993年から温暖化は進んでいない。
その事実は図11-5にも表れている。
気温上昇が17年間停滞しない限りIPCCの人為的(排出CO2)温暖化説は間違っていない、と言い張っていたけれど、17年を通り越して四半世紀近く温暖化は進んでいない。
「温暖化の驚異はそこまで迫っている」。

11.2 ソロモンの不都合な真実

ツバルの不都合な真実が露呈してしまったので、今度はこんなことを言い出した。


南太平洋の島 水没懸念で全住民移住へ
2014年8月24日 4時6分
地球温暖化に伴う海面上昇によって、島の水没が懸念されている南太平洋の島国のうち、ソロモン諸島のタロ島は800人の住民全員が移住する計画を進めることを決め、海面上昇への対策に悩むほかの国々から関心が集まっています。
ソロモン諸島の首都ホニアラ
から北西に400キロほど離れたタロ島は、海抜が2メートルに満たない地点がほとんどで、地球温暖化による海面上昇がこのまま進めば津波などによって島が水没してしまうのではないかという懸念が強まっています。
島の自治体では去年から今年にかけて島にいるおよそ800人の住民と議論を重ねた結果、安全を確保するためには住民全員が移住するしかないと判断し、このほど、隣のチョイスル島に移る計画が承認されました。
計画では、今後5年以内に移住先の島に、学校や病院を建設するほか、津波への対策なども立てることにしており、移住が完了するには10年以上かかるとみられています。
計画を支援しているオーストラリアの企業によりますと、太平洋の島の中ですべての住民が移住するという計画は異例だということで、海面上昇への対策に悩むほかの国々から関心が集まっています。

2014082601


(記事はNHK。図は朝日新聞デジタル)

しかし、下図に見えるとおり、やはり、潮位の上昇は認められない。

2015010403図11-6 ソロモン諸島・ホニアラの潮位変化(「Clim.Dyn.,41(2013)381」より)

このグラフでは20世紀第3四半期に潮位が上昇していたように見えるけれど、別の論文のグラフを見ると、

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図11-7 ソロモン諸島・ホニアラの潮位変化(「Global and Planetary Change,53(2006)155」より)

グラフの右端と左端の値はほとんど同じ。
潮位の上昇は認められない。
だから、全島民移転の理由を津波に変えてしまった。


(世界発2016)津波に備え全島移転へ ソロモン諸島・タロ島
2016年5月5日05時00分
南太平洋の地震多発国・ソロモン諸島=キーワード=で、州都がある島の全住民と州都としての機能を、まるごと別の島に移す計画が進んでいる。「津波や海面上昇の危険性が高すぎる」と海外専門家の調査チームが判断し、水没を恐れる住民らも受け入れた。前代未聞の全島移転には、数十年かかるとみられている。
・・・中略・・・
この小さな島が急に世界的な注目を集めたのは、2年前。州政府が「地球温暖化による水没を避けるため、島ごと対岸のチョイスル島に移す」と発表。タロ島の約12倍の広さとなる532ヘクタールをチョイスル島に確保すると決めた。ツバルやキリバスなど海面上昇で水没する恐れがある島国が多い南太平洋地域でも、島の住民や町がすべて移転するのは例がない。
大胆な決定の発端は、オーストラリア政府の支援で派遣された専門家チームの被害予測調査だった。タロ島の地形や海岸浸食の状況を調べたほか、住民の聞き取り調査などをし、2014年に発表した報告書で「今後も島に住み続けるのは危険すぎる」と提言。調査を率いた豪州の環境コンサルタント、フィリップ・ヘインズ博士は「調査前は海面上昇が念頭にあったが、最も危険性が高いのは、実は津波だとわかった」と話す。
標高3メートルもない同島は、地震の頻発地域にある。07年に起きたマグニチュード(M)8.1のソロモン諸島沖地震では、隣州のギゾ島などで多くの村が津波にのまれ、50人以上が死亡。13年には東部でM8の地震と津波があり、約10人が犠牲になった。
国連機関などが作成した「リスク管理の指標2016」で、ソロモン諸島は191カ国中24番目にリスクが高いとされた(日本は149番目)。約50ある指標のうち地震や津波などによる自然災害分野が特に高かった。同博士は「直近の危険は津波。温暖化は、そのリスクに拍車をかける将来的な要因だ」とみる。
移転の決断は、島民にも全面的に支持されている。ジャクソン・キロー州首相は「津波の恐怖が勝り、移転に反対する者はいない。温暖化で水没するのは10~20年後かもしれないが、津波が来たら島は即終わりだから」という。
・・・中略・・・
ソレブドゥさんは「最も心配なのは資金だ。初期段階のゾーン開発だけで何億ソロモンドル(1ソロモンドル=約13.7円)もかかるが、国にも州にもそんな予算はない。何十年かかるか、見当もつかない」と打ち明けた。
キロー州首相が期待しているのは、途上国の温暖化対策を支援する国連機関「緑の気候基金」の支援だ。「支援を受けられるように国際社会へ訴えていきたい」と意気込む。調査チームのヘインズ博士も「大地震はいつ起きても不思議ではなく、早急に進める必要がある」と話している。(タロ島=郷富佐子)
◆キーワード
<ソロモン諸島> 主要6島と千近い島・環礁が東西約1400キロに延び、日本と同じ環太平洋火山帯に位置する。人口約61万5千人(13年家計収支調査)。豪州プレートと太平洋プレートの境界が近く、海溝型の大地震が発生しやすい。1931、39、88、2007、13年にM8前後の地震が起き、死者が出ている。1978年に英国から独立したが英連邦諸国の一つで、元首は英女王。

2016061902
高地がなく平べったいタロ島は、津波に弱いと判断された


(朝日新聞デジタル)

11.3 キリバスの不都合な真実

ソロモンの不都合な真実も露呈してしまったので、上の記事にも見えるとおり、今度はキリバス。


温暖化で沈む国」のいま 水没にらみ全島移住も
2015年5月17日03時08分
海岸の防護壁は崩れ落ち、無人の村の家々の中には貝殻が散乱している。ヤシの木は倒れている。
南太平洋の島国キリバス。アバヤン島沿岸のテブンギナコ村は200人以上が内陸部へ引っ越した。10年ほど前、大潮の際に海水が胸の高さに来るようになり、今では頭より高くなる。元村人のアアタ・マロイエタさん(68)が住む海から100メートルほど内陸の村でも最近、道が海水につかった。「でも逃げ場がない。島は真っ平らだから」
■主食を失う可能性も
キリバスの首都タラワ。沿岸部のビゲニコーラ集落に大量の海水が押し寄せたのは、3月のことだった。
「強風が吹き、夜中に床上まで海水が入ってきた。朝に水が引くまで皆で神に祈った。6歳の孫娘が『沈むのはいや。逃げる船をつくって』と頼むんだ。ここを離れる日が近づいていると実感した」。集落長のエリア・マエレレさん(65)は暗い表情で振り返った。
バヌアツなどを襲った大型サイクロン「パム」が、強い熱帯低気圧が来ない赤道地帯とされてきたキリバスもかすめたのだ。
集落では、10年ほど前から大潮のときに海水が入り始め、今ではひざ下まで浸水するようになっていた。「パムで海水が胸の高さに達したのは最終宣告なのか。気候変動はここでは現実だ。先進国は実態を知り、支援してほしい」。マエレレさんは訴えた。
33の環礁からなるキリバスはサンゴが堆積(たいせき)してできており、平均標高はわずか2メートルほど。気候変動による海面上昇の影響を受けやすく、「温暖化で最初に沈む国」の一つとされる。

政府は昨年、フィジーに約20平方キロの土地を買った。アノテ・トン大統領は「海面上昇や塩害で耕作地がなくなった場合の食料確保のためだが、最悪の場合は移住の場にと考えたこともある」と明かす。
・・・中略・・・
■「生きるか死ぬかの問題」
小さな島国は温暖化の影響を特に受けやすく、「気候変動の最前線にいる」(国連の潘基文(パンギムン)事務総長)と言われる。世界的な対策をめぐる国際交渉でも、ほかの多くの途上国と一線を画して、より厳しい対策を求め続けている。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、特に影響するのは海面水位の上昇だ。いまのまま温室効果ガスの排出増が続くシナリオでは、今世紀末に世界平均で最大1メートル弱の上昇が予測されている。
今世紀内を考えても、小さい国土で海岸の浸食が進むと、飲用にする地下水に塩分が混ざる。海水温が上昇すると、サンゴ礁の生態系が破壊され、これに頼っている観光や漁業は大きな打撃を受ける。
今年2月にスイスで開かれた会合では、小さな島国などでつくるグループ代表が「海面上昇は信じられていたよりも加速している。私たちにとって生きるか死ぬかの問題だ」と訴えた。
実際、フィジーでは住民が沿岸に住めなくなり高台移転した地域がある。人口約千人のソロモン諸島のタロ島は、水没をにらみ、将来の全島移住を決めた。
これまでの交渉で、19世紀後半の工業化以前と比べた気温上昇を「2度未満」に抑えることを大目標として合意しているが、小さな島国は、それでも不十分だとして「1.5度未満」を目標にするべきだと主張している。
国際社会は今年末に開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、京都議定書に代わるすべての国が参加する新しい国際枠組みの合意を目指している。島国の「悲鳴」は、世界に対し、直ちに行動に移るよう迫る役割を果たしている。(須藤大輔)

2015051701


(朝日新聞デジタル)


(@タラワ〈キリバス首都〉)地球温暖化におびえる南の小国
2015年5月30日
■特派員リポート 郷富佐子(シドニー支局長)
キリバスという国の話をしたい。南太平洋の島嶼(とうしょ)国家の一つで、1979年に英国から独立した。住民のほとんどがミクロネシア系で、人口10万の小さな国だ。
ツバルなどと並んで「地球温暖化の影響を最も強く受けている国のひとつ」と言われている。シドニー支局の管轄なのだが、これまで一度も訪れたことがなかった。日本で5月22、23両日に開かれた「第7回太平洋・島サミット」の前に、良い機会だと思って足を延ばしてみた。
・・・中略・・・
キリバスで強く感じたのは、「こんなに素朴な国がなぜ、気候変動の被害をもろに受けないといけないのだろう」という疑問だ。一週間足らずの短い滞在だったが、会った人々はみんな、とても親切だった。ちょっと恥ずかしがり屋で、話しかけると大きな声で笑う。子供たちは人なつこくてかわいい。
この平和な南の国が、沈みつつあるという。取材中にあちこちで聞いたのは、海面が上昇して「もうすぐ水没するのは間違いない」という悲鳴のような住民の声だった。海水がどんどん、内陸部まで入り込んでいる。サンゴ礁の上に座るようにできている真っ平らな島々なので、逃げられる高い場所がないのだ。
タラワからスピードボートで1時間半ほどのアバヤン島には、家々が冠水して無人になった村があった。ボートの上から見た島は、本当に真っ平らだった。島で会った漁師のカウアバガ・メーリタさん(33)は、日本の熱海へ3年間、出稼ぎへ行っていたという。流暢(りゅうちょう)な日本語で「この国が水没したら、本当は日本へ移住したい。日本政府が受け入れてくれないだろうから、無理だとは思いますが」と笑った。
温室効果ガスと地球温暖化の関係を疑う人もいる。海水温の上昇は自然の変動の範囲内だと主張する科学者がいるのも知っている。でも、キリバスで見た光景は強烈だった。先進国が排出するガスのために南太平洋の島の人々が苦しんでいるのなら、理不尽だとしか言いようがない。
自給自足の生活だったこの国にも貨幣経済が入り込み、人々は輸入品を現金で求めるようになった。タラワの海岸にはペットボトルやポリ袋などの家庭ごみが山積みになっているし、生活排水で海の汚染も進んでいる。海が汚れてサンゴや小さな貝が減り、砂浜がやせるような「地元要因」も、確かに気候変動の影響を加速させているだろう。
それでも、毎朝8時に電気が止まり、電気がつく夜になっても当然のようにランプを手に歩いている人々を見ると、「なぜ、この国が」と思わずにはいられなかった。蛇口をひねっても湯が出ることはなく、日々の食べ物は自宅裏で育てるイモや野菜でまかなっている社会。雨が降れば、子供たちが素っ裸になって泥遊びをする国が、なぜ100年後には水没しなければいけないのか。
今いる場所の「便利さ」が、他の場所に住む人々に犠牲を強いているかもしれないのだ。頭ではわかっていたつもりだが、これまで真剣に考えたことはなかった。キリバスで感じた「不便さ」はそのまま、南の島国から突きつけられた問いかけだと思う。

郷富佐子(ごう・ふさこ) シドニー支局長。仙台、横浜、東京社会部などでの勤務を経て、マニラ、ローマ、ジャカルタの各海外支局で勤務。2013年9月から現職。48歳。ブログ「南十字星の下で(http://www.asahi.com/special/sydneyblog/)」、つぶやき(@Asahisydney55)も。


(朝日新聞デジタル)

第1節で紹介したとおり、リオデジャネイロ五輪を利用して「南太平洋のツバル。地球温暖化による海面上昇で水没が危惧されている小さな島国だ」と煽り立てていたけれど、キリバスでも利用していた。


2017年4月2日の朝日新聞朝刊紙面より

「ドラえもん」まで使って、何も分からない子どもに「(キリバスは)水没の危機にある」と吹聴しているけれど、タラワの潮位変化は下図のとおり。

2016061903
図11-8 キリバス・タラワの潮位変化(「Global and Planetary Change,80-81(2012)85」より)

1980年以前は潮位が上昇し続けていたけれど、第5章図5-5に見えるとおり、その間に気温は低下していたのであり、前章の第4節で解説したとおり、IPCC学派自身が、(大気汚染で放出された)エアロゾルが原因で気温上昇が停滞した、と言い張っていたのだから、その間の潮位上昇はCO2の排出が原因ではない。
CO2の排出とキリバスの潮位変化に明瞭な因果関係は認められない。

第1節で見たとおり、ツバルの「総面積は2.9%拡大していたことが判明した」けれど、「Global and Planetary Change,72(2010)234」に依れば、ツバルだけでなく、太平洋の環礁は総じて面積が一定、もしくは、増加している。
Geophys.Res.Lett.,41(2014)820」に依れば、海面の上昇に伴ってサンゴが堆積し、太平洋の環礁が形成された。
海面が上がっても南太平洋の島国は沈まない。
サイエンス誌「Science,345(2014)496」ですら「Warming may not swamp islands」と認めている。

前節で見たとおり、朝日新聞は「人口約千人のソロモン諸島のタロ島は、水没をにらみ、将来の全島移住を決めた」と騒ぎ立てていたけれど、キリバスに関してもこのような社説を書いていた。


沈む島の訴え―手をさしのべるために
我々は自分の国に住み続けるのが難しそうだから、日本で受け入れてくれないか。例えば、日本で人手が足りない看護・介護分野ではどうか――。
外国の首脳からこう言われたら、どう答えるだろうか。
仮定の話ではない。南太平洋の島国、キリバスの大統領が本紙インタビューで訴えた。
地球温暖化に伴う海水面の上昇や異常気象で国土が水没しかねない国は、平均標高が2~3メートルというキリバスだけではない。日本政府は5月、そうした国々を福島県いわき市に招いて「太平洋・島サミット」を開き、防災や気候変動対策、環境保全などで550億円以上の援助を約束した。
温室効果ガスを多く出してきた先進国の一つとして対策に力を入れていくべきだが、事態は深刻だ。「国が沈むのは時間の問題」と話すキリバス大統領が口にした次のひと言が、そう痛感させる。
「尊厳ある移住」である。
災害から逃げるように他国へ移るのではなくて、威厳を持って移住を選びたい。だから、職業訓練を受けて技術や技能を身につけるよう、国民に呼びかけているそうだ。

受け入れ先候補として、例えば豪州とは既に話し合いをしているという。「日本に看護師や介護士として移住する」という提案も、日本の少子高齢化を踏まえたうえで「両国にとって利益がある戦略だ」と強調する。
実際、日本はインドネシアなど3カ国と結ぶ経済連携協定の枠内で看護師や介護福祉士向けの人材を受け入れている。しかし、大統領は、単にキリバスをその対象に加えるよう求めたのではあるまい。そもそも、労働力という次元だけで考えるべきではないだろう。
海外への技術移転を名目に始めた「技能実習制度」も、労働環境の劣悪さが問題になっている。苦境にある人々に連帯するための仕組みにはなりえない。
キリバスに限らず、世界には様々な困難に直面する人たちがいる。そうした人たちに日本が手をさしのべるなら、議論を封じ込めている定住希望の外国人、いわゆる移民の受け入れという課題に向かわざるを得ないのではないか。 大統領が言う「尊厳」を保つための思考が日本でも必要なはずだ。
「移民は是か非か」という抽象的な議論にとどまらず、いま世界で起きている問題を見すえ、一つひとつ具体的に考えていく。そうした姿勢が大切だ。
キリバス大統領の発言を、そんな問題提起と受け止めたい。


(2015年6月8日の朝日新聞社説)

しかし、ニュージーランドに「尊厳ある移住」を求めたキリバス人は追い返された。


初の「気候変動難民」認めず=キリバス人敗訴-NZ最高裁
2015/7/21-15:53
【シドニー時事】ニュージーランド最高裁判所は21日、世界初となる「気候変動難民」認定を求めていたキリバス人男性の訴えを退け、難民に該当しないとの判決を下した。男性は、太平洋の島国キリバスでは、気候変動に伴う海面上昇で生命の危機にさらされるとして、居住地のニュージーランドで難民認定を申請していた。
最高裁は判決理由で「男性は帰国しても深刻な危機に直面しない」と説明した。男性の滞在ビザは失効しており、妻と3人の子供と共にキリバスへ送還される。
ただ最高裁は、気候変動難民を将来認める「可能性は否定しない」と述べ、今後の認定に含みを残した。


(時事ドットコム)

CO2の排出と潮位上昇に明瞭な因果関係は認められないのだから、当然である。

11.4 トンガとマーシャル諸島とフィジーの不都合な真実

キリバスの不都合な真実も露呈してしまったので、今度は、トンガが沈む、マーシャル諸島が沈む、フィジーが沈む、と騒ぎ出した。


(世界発2015)トンガ、未来の危機映す島 地震で地盤沈下23センチ=海面上昇の40年分超
2015年9月10日05時00分
南太平洋に浮かぶ王国・トンガ。地震や火山爆発、サイクロンと様々な自然災害に襲われてきたが、近年は気候変動という新たな脅威にさらされている。人々の危険が増すなかで、過去の天災から将来の被害を予測する試みも始まった。
「地震で大地が沈み、地球温暖化で海面が上がった。最近では干潮時も、昔の満潮と同じくらいまで海水が入って来てしまう
トンガの首都ヌクアロファから北に約160キロ。リフカ島南部パンガイ地区の海岸で、ミリアム・トゥイバイ・カイハウさん(60)とセルさん(63)夫妻が表情を曇らせた。島では伝統的に、干潮時は女性が木のカヌーに乗ってタコ漁をし、潮が高いときは男性が沖へ出て魚を捕って生計を立ててきた。最近は「どちらの漁もやりにくくなった」と嘆いた。
・・・中略・・・
■浸水におびえる国民、護岸壁の設置援助を アキリシ・ポヒバ首相
昨年末、貴族議員などではない「庶民」の立場から初めて選出されたアキリシ・ポヒバ首相(74)に聞いた。
――気候変動の影響は。
「これまでの経験から言っても最悪の状態だと思う。特に深刻なのは海面上昇と海岸浸食で、海岸沿いからヤシやマングローブの木が消えている。海岸沿いに住む国民は高潮や洪水による浸水におびえており、サイクロンが来ればあっという間に家屋が倒壊する」
――5月に福島県いわき市で開かれた太平洋・島サミットに参加しましたね。
「有意義な会合だった。日本はトンガにとって最も古く親しい友人の一人で、自然災害が多い共通点もある。我が国は多額の負債を抱えており、国家再建を急がなければいけない現状だ。日本政府には改めて、災害危機対策を含めた援助をお願いしたい。特に、陸地へ入る海水を防ぐための護岸壁設置などは急務だ」
■災害リスク「世界2位」
トンガ気象庁などの報告によると、1993年から海面上昇が深刻化。上昇規模の年平均が世界では2.8~3.6ミリなのに、トンガでは6ミリ。周辺の海水温上昇などが原因とみられる。
国連大学が発表した14年版の「世界リスク報告」で、トンガは「災害リスク」で171カ国中、バヌアツに次いで2位だった。
地震、台風やサイクロン、洪水、干ばつ、海面上昇などの要因から、国別で順位をつけたものだ。
すぐ東に深さ1万メートルのトンガ海溝が南北に延びる。地震の多発地域で、09年にもM7.6の地震が起きた。火山の噴火も多い。昨年末から今年初めにかけても爆発が起き、数千メートルも噴き上げられた火山灰などの影響で国際便が相次いで欠航した。昨年1月にはサイクロンで3500人以上が家屋を失い、農作物にも大きな被害が出た。復旧費用は30億円以上と推計されている。
◆キーワード
<トンガ> 太平洋のポリネシアに属し、約170の島からなる王国。1900年から70年間、英国の保護領だったが、植民地になったことはない。人口は約10万6千で、ほとんどがキリスト教徒。近年は民主化運動が盛り上がり、2006年に首都ヌクアロファで起きた暴動では死者も出た。12年3月に国王のツポウ5世が死去し、弟のラバカ皇太子が即位。今年7月、ツポウ6世としての戴冠(たいかん)式が行われた。

2015091101


(朝日新聞デジタル)


海水面が上昇し、島がどんどん変わっていきます マーシャル諸島から来た少女が演説
マーシャル諸島の外相(手前右から2人目)らとともに全体会合が開かれる会場に入るセリナさん(同3人目)=パリ郊外で12日、ロイター
「島がどんどん変わっていきます」。国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択され、その後の各国の意見表明に海面上昇が進む南太平洋の島国マーシャル諸島から来た少女が立った。少女がヤシの葉の髪飾りを見せながら「子供や孫の世代にもヤシを残せるようにしたい」と訴えると、ケリー米国務長官ら各国の代表は、立ち上がって拍手を送った。
演説したのは昨年から奨学金でドイツの高校に通うセリナ・リームさん(18)。マーシャル諸島の平均海抜は2メートルで、温暖化による海面上昇の影響で、海岸の浸食が進んでいる。
セリナさんは「マーシャル諸島という小さな島から来た大きな夢を持っている少女です」と自己紹介。以前、祖父に「サンタクロースが住む北極や南極の氷が解け、海水面が上昇して島が洪水になる」という話を聞き「海が怖くなった」との思い出を語った。
そのときは「祖父が私をしかるために話したと思ったが、実際にどんどん海水面が上昇している」と訴えた。
最後に髪飾りを示しながら「皆さんに、この飾りを(自分の)子供や孫に見せてほしいのです。そして、あなたたちが小さな島と世界を今日、どのようにして救ったのか、語り継いでほしいのです」と訴えた。
演説後、取材に応じたセリナさんは「島が地球温暖化の影響を受けている現状を訴えたいと思い、ここに来た」と説明。ドイツ留学前の2014年3月、高潮で自宅が水没する被害にあったという。留学後は島に戻り「島のために役に立つ職業に就きたい」と話した。【パリ矢野純一】


(毎日新聞2015年12月14日 東京夕刊)


「真剣に挑戦、行動を」 議長国フィジー訴え
【ボン五十嵐和大】「世界は異常気象のストレスにさらされている。我々は真剣に挑戦し、行動しなければならない」。ドイツ・ボンで6日開幕した国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)。議長国を務める南太平洋の島しょ国、フィジーのバイニマラマ首相は同日始まった全体会議の冒頭でこう訴えた。同国は、地球温暖化に伴う海面上昇や気象災害のリスクにさらされており、2015年採択のパリ協定には世界で初めて署名。気候変動に対する強い危機感がうかがえる。
330ほどの島々で構成されるフィジー付近の海面水位は1993年以降、毎年平均約6ミリずつ上昇してきたとされる。国土の高低差が少ないフィジーでは影響は大きく、農地が海水に浸る塩害が深刻化。村ごと移住する事例も相次いでいる。昨年2月には巨大サイクロンに襲われ、44人が死亡し、被害総額は国内総生産(GDP)の3分の1に当たる約14億ドル(約1600億円)に達した。
海面の上昇に敏感な同国。二酸化炭素(CO2)排出量は日本の1000分の1以下に過ぎないが、30年までに電力需要のすべてを再生可能エネルギーに転換することを目指している。今年夏、フィジーに滞在した環境NGO「気候ネットワーク」の伊与田昌慶研究員は「フィジーの住民から『日本の環境対策は進んでいるのか』と聞かれた。しかし、日本は今もCO2を大量に排出する石炭火力発電所の建設を進め、米国は国際世論を無視してパリ協定からの離脱を宣言した。フィジーの地道な温暖化対策が吹き飛んでしまうようでやりきれない」と話す。


(毎日新聞2017年11月7日 東京朝刊)

ならば、「トンガの首都ヌクアロファ」の潮位はどのように変化しているか?

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図11-9 トンガ・ヌクアロファの潮位変化(「Global and Planetary Change,80-81(2012)85」より)

初めの記事にも見えるとおり、1993年頃から潮位が上昇し始めた。
マーシャル諸島のマジュロでも同じ。

2016061905図11-10 マーシャル諸島・マジュロの潮位変化(「Global and Planetary Change,80-81(2012)85」より)

3つ目の記事に見えるとおり、フィジーのスバでも同じ。

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図11-11 フィジー・スバの潮位変化(「Global and Planetary Change,80-81(2012)85」より)

実のところ、これは風が原因である。

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図11-12 赤道付近太平洋西部の風の強さと海面上昇の推移(「J.Clim.,24(2011)4126」より)

CO2の排出に因る温暖化が海面上昇の原因なら、1990年以前から海面が上昇していたはずだが、観測されていない。
1993年以降に風が強まるに伴って、海面が上がった。
では、なぜ風が強まったのか?

前章の第4節で引用した「温暖化の熱の一部は海中に潜んでいる?」という見出しの記事に見えるとおり、「赤道付近を吹く貿易風は、過去20年間にわたって太平洋上で激しさを増して」いる。
「貿易風が激化した原因のひとつは、『太平洋数十年規模振動(IPO)』という、エルニーニョ現象に似た自然な周期的気候変動である」。
IPO(または、PDO)はハイエイタスの原因ではないけれど、1993年以降の海面上昇の原因である。
トンガやマーシャル諸島やフィジーの海面上昇は自然変動が主因。

因みに、トンガでは「1993年から海面上昇が深刻化」に対し、「国連大学が発表した14年版の『世界リスク報告』」で栄えある1位を獲得したバヌアツでは1993年以降にも潮位の上昇は認められない。

2015091103図11-13 バヌアツの潮位変化(「Vanuatu sea levels: how much did they contribute to cyclone damage?」より)

11.5 パラオとモルディブの不都合な真実

トンガとマーシャル諸島とフィジーの不都合な真実も露呈してしまったので、今度は、モルディブが沈む、パラオが沈む、と騒ぎ出した。


温暖化で危機の島、指導者の奮闘描く 映画「南の島の大統領」
2014年12月17日16時30分
海面が1メートル上がると国の大半が水没すると言われるインド洋の島国モルディブ。映画「南の島の大統領―沈みゆくモルディブ」は、2008年に民主化後初の大統領選で当選し12年に与野党間対立で辞任したモハメド・ナシード氏の、就任1年目を描いたドキュメンタリーだ。13年に日本で公開、DVDが販売されている…


(朝日新聞デジタル)


トランプ次期大統領で温暖化対策資金削減か 不安広がる
2016年11月13日 19時08分
北アフリカのモロッコで開かれている地球温暖化対策を話し合う国連の会議COP22の会場では、アメリカの次期大統領に選ばれたトランプ氏が、温暖化対策に欠かせない発展途上国への資金支援を削減するのではないかと不安や懸念が広がっています。
COP22の会場では、アメリカの次期大統領に、温暖化はでっち上げだとして、パリ協定からの脱退も示唆しているトランプ氏が選ばれたことに、発展途上国などから懸念が広がっています。
特に懸念されているのが、アメリカが拠出している途上国の温暖化対策のための資金支援が削減されることです。このうち「緑の気候基金」と呼ばれる基金では、およそ100億ドルのうち、最も多い30億ドルを拠出することになっていました。しかし、トランプ氏は、国際的な温暖化対策への拠出金を減らすとしていて、実際に削減されれば、途上国の対策が大幅に遅れるおそれがあります。
エチオピア政府交渉団の男性は、「温暖化対策に取り組むためには、資金や技術面での支援が必要不可欠で、それが無ければわれわれは削減目標を達成できない。トランプ氏が考え方を改めてくれることを願っている」と述べ、先進国からの支援の重要性を訴えていました。
また、南太平洋の島国、パラオ政府交渉団の代表は、「海抜が低い島国の未来は、アメリカのような温室効果ガスの大排出国にかかっている」と述べ、温暖化対策において、アメリカが果たす役割は大きく、島しょ国の命運をも握っていると指摘しました。
一方、日本の首席交渉官を務める外務省の牛尾滋参事官も、「アメリカの負担額は大きいので、もし資金支援をやめれば、穴埋めをどの国がするのかという議論になると思う。途上国としてみれば約束が違うということになり、今後の交渉の雲行きが怪しくなっているのは事実だ」と述べ、世界の温暖化対策に欠かせないアメリカの資金支援が、今後どうなるのか各国の不安が広がっています。
途上国「資金や技術の支援ないと目標達成できず」
特に懸念されているのは、アメリカが拠出している途上国の温暖化対策のための資金支援が削減されることです。
このうち「緑の気候基金」と呼ばれる途上国の温暖化対策を支援するための基金、およそ100億ドルのうち最も多い30億ドルを拠出することになっているなど、資金面で温暖化対策をけん引してきました。しかしトランプ氏は、国際的な温暖化対策への拠出金を減らすとしていて、実際に資金援助が削減されれば、途上国の対策が大幅に遅れるおそれがあります。エチオピア政府交渉団の男性は、「温暖化対策に取り組むためには、資金や技術面での支援が必要不可欠で、それが無ければ、われわれは削減目標を達成できない。トランプ氏が考え方を改めてくれることを願っている」と話していました。
また、トンガの副首相は、「まさに、温暖化対策の事業のために緑の気候基金に申請をしているところだ。私たちには、基金が欠かせない」と述べ、先進国からの支援の重要性を訴えていました。
島しょ国 米国のリーダーシップ求める
海面の上昇により、国土が浸水してしまうおそれに直面している島しょ国からは、引き続きアメリカが温暖化対策でリーダーシップを発揮してほしいという声が相次いでいます。
このうち、南太平洋の島国、パラオ政府交渉団の代表は、「海抜が低い島国の未来は、アメリカのような温室効果ガスの大排出国にかかっている」と述べ、温暖化対策においてアメリカが果たす役割は大きく、島しょ国の命運をも握っていると指摘しました。そのうえで、「アメリカは、日本などとともにパラオの対策を支援する最大のパートナーのひとつだ。内政を重視したいのはわかるが、引き続きパリ協定に基づいて支援に取り組んでくれると信じたい」と述べ、トランプ次期大統領に、オバマ政権の方針を引き継いでほしいと訴えました。
また、インド洋の島国、モルディブ政府交渉団の男性は、「アメリカを含む地球上のすべての国が、異常気象の脅威にさらされていることを認識し、それぞれの役割を果たさなければならない。アメリカが引き続きこれまでのリーダーシップを発揮してくれることを願っている」と話していました。


(NHK)

しかし、パラオとモルディブの潮位変化は下図のとおり。

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図11-14 パラオ・Malakalの潮位変化(「Global and Planetary Change,53(2006)155」より)


図11-15 モルディブの首都マレの潮位変化(「Global and Planetary Change,53(2006)155」より)

いずれのグラフでも有意な潮位の変化は認められない。
但し、上のグラフは2000年代の初頭までであり、その後の潮位変化を見ると、2000年代後半から潮位が上がっている。

2016111503
図11-16 パラオ・Malakalの潮位変化(「Permanent Service for Mean Sea Level」より

2016111504図11-17 モルディブの首都マレの潮位変化(「Permanent Service for Mean Sea Level」より

しかし、次節で採り上げるユネスコの報告書にも見えるとおり、それは過度な観光化が原因である。


観光客激増のパラオ、環境配慮の誓約書に署名義務付け 入国時に
2017年12月8日 22:14 発信地:コロール/パラオ
西太平洋の島国パラオ政府は、国外からの訪問者らに対して、環境への配慮を約束する文書への署名を義務付けた。当局はこの革新的な措置が、観光客の急増に伴う環境へのダメージの抑制につながればと期待している。
世界初とされるこの「パラオ誓約」はパスポートにスタンプされ、観光客は入国時に署名を求められる。
誓約書は、「客人として、皆さんの美しい島を保護し保全することを誓います」「足運びには慎重さを、行動には思いやりを、探索には配慮を忘れないと約束します」といった文面になっている。
日本とオーストラリアの中間付近に位置するパラオは、澄み切った海、手つかずのサンゴ礁、豊かな海洋生物を誇る世界有数のダイビングスポットとみなされ、かつては知る人ぞ知る観光地だった。
しかし近年、観光客が爆発的に増加。主に中国からの訪問者が多く、インフラと環境の両方に負荷がかかってきた。
自分撮り(セルフィー)のためにカメを捕まえる、もろいサンゴの上を歩く、浜辺にごみを放置するといった行為も見られ、地元住民らの間で怒りが広がっていた。


(AFP PHOTO / SEBASTIEN BLANC)

モルディブの首都マレはここまで観光地化している。

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図11-18 モルディブの首都マレ

図11-17が2012年で終わっているのは、観光開発で観測に適さなくなった(または、出来なくなった)ということに他ならず、2000年代半ばからの潮位上昇が乱開発の結果であることを意味している。

11.6 ベニスの証人

パラオとモルディブの不都合な真実も露呈してしまったので、今度は、ベニスが沈む、モアイが沈む、と騒ぎ出した。


「知床やベネチア、温暖化で危機」ユネスコが報告書
香取啓介
2016年5月26日23時09分
ユネスコ(国連教育科学文化機関)などは26日、地球温暖化で知床(北海道)やベネチア(イタリア)などの世界遺産が危機にさらされているとする報告書を発表した。各国政府や観光産業などに、温室効果ガスの排出削減や被害の軽減策に取り組むよう促している。
報告書は、温暖化の影響が確認されている29カ国31カ所の自然遺産と文化遺産の状況をまとめた。流氷が育む生態系が評価されている知床では流氷が減っている。モアイで有名なイースター島(チリ)は海岸浸食で石像の近くまで波に洗われている。南太平洋のニューカレドニアのサンゴ礁では大規模なサンゴの白化がみつかっている。
氷河が後退しているエベレスト一帯のサガルマータ国立公園(ネパール)などは観光収入への依存度が高く、地元経済への影響も大きい。ガラパゴス諸島(エクアドル)などは温暖化の影響に加えて、過度な観光化も危機に拍車をかけているという。


(朝日新聞デジタル)

しかし、イースター島の潮位は上昇していない。


図11-19 イースター島の潮位の推移「Permanent Serive for Mean Sea Level」より

ニューカレドニアも然り。

2016052704図11-20 ニューカレドニア・ヌメアの潮位の推移「Permanent Serive for Mean Sea Level」より

一方、ヴェネチアの潮位は1970年頃までは上昇し続けていたが、その後に目だった上昇は認められない。

2016052901図11-21 ベネチアの潮位の推移「Permanent Serive for Mean Sea Level」より

しかも、1970年までの上昇は人為的な要因の地盤沈下が原因である。

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図11-22 「Giornale di Geologia Applicata,1(2005)5」より

11.7 日本の不都合な真実

第5章の冒頭で採り上げた朝日新聞社説は「国土の水没を恐れるツバルなど小さな島国の懸命な訴えを、大国も軽んじられなかったのだ」だの、「アフリカ諸国や小さな島国も批准を急いだ背景には、干ばつや海面上昇、熱波など温暖化との関連が疑われる異常気象への強い危機感がある。日本は、そうした国々から『我々の困難に冷たい国』と見られかねない」だのと喚き立てていたけれど、我国在住のツバル人がこのようなことを言い立てている。


未来へのバトン:COP21 あすパリで開幕 途上国、対策に126兆円 温室ガス削減、先進国支援額と溝
パリで30日から始まる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を前に途上国が国連に提出した温暖化対策の計画で、対策実施に必要とする資金は少なくとも1兆360億ドル(約126兆円)に達することが、国連環境計画(UNEP)のまとめで分かった。途上国への資金支援は、最大の焦点。2020年までに年1000億ドル(約12兆2000億円)を支援するとしながら実際にはできていない先進国側の姿勢とは大きな隔たりがあり、激しい攻防が展開されそうだ。【渡辺諒】
・・・中略・・・
一方、先進国から途上国への資金支援を巡っては、20年までに官民合わせて年1000億ドルに引き上げることが09年のCOP15で決まったが、経済協力開発機構(OECD)の試算では14年時点で620億ドルにとどまる。新枠組みが始まる20年以降は、途上国が追加的な支援を求めているのに対し、先進国は「金額を確約できない」との姿勢だ。
途上国の環境対策に詳しい明日香寿川(あすかじゅせん)・東北大教授(環境政策学)は「途上国の支援要求は、温暖化の被害が顕在化していることへの危機感の表れだ。先進国がどこまで応じられるかが、新枠組みの合意の鍵となる」と話す。COP21の会期は12月11日まで。
・・・中略・・・
◇新たな合意求め世界でパレード

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新しい温暖化対策の合意を呼び掛けたチラシを掲げるパレード参加者=東京都千代田区で28日

COP21での新しい地球温暖化対策の合意を求めるパレードが28日、日本を含む世界各地で行われた。
各地の市民団体などが28、29両日に150カ国2300カ所以上で企画。東京のパレードには約1000人が参加し、温暖化問題の象徴とされるホッキョクグマの着ぐるみを先頭に銀座周辺などを歩いた。
出発前の集会では、温暖化に伴う海面上昇で水没が懸念される南太平洋の島国ツバル出身のシンキャン・タレシさん(31)=高知県在住=が「最初の被害者は私の母国かもしれないが、次はあなた方だ。美しい地球を共に守ろう」と呼び掛けた。
【大場あい】


(毎日新聞 2015年11月29日 東京朝刊、写真はAFP)

このようになる、と言う。


産業革命前と比べ気温4度上昇 → 日本は3400万人影響
パリ=香取啓介
2015年11月10日08時27分
温暖化が進んで産業革命前と比べ気温が4度上がった場合、海面が8.9メートル上昇し、世界で6億2700万人の住む地域が海に沈むとの予測を、米研究団体が9日(日本時間)に発表した。日本は人口の4分の1にあたる3400万人の住む地域が影響を受けるという。
非営利の研究団体「クライメート・セントラル」が、気温上昇による海水の膨張、氷河の融解、グリーンランドと南極の氷の減少を想定し、海面上昇を試算。海に沈む地域に住む2010年時点の人口を調べた。
気温が4度上昇すると、影響を受ける人口が多いのは中国で1億4500万人に上る。マーシャル諸島は人口の93%、オランダは67%が影響を受けるという。都市別では、上海や天津(中国)、ダッカ(バングラデシュ)、コルカタ(インド)などで1千万人以上に影響が出る。東京でも750万人、大阪では620万人、名古屋340万人、福岡97万人の住む地域が海面より下になるという。
気温上昇が2度に抑えられた場合は、海面上昇は4.7メートルで、影響を受ける人口も世界で2億8千万人、日本では1800万人(東京420万人、大阪420万人、名古屋210万人、福岡51万人など)に抑えられるという。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、何も対策をしなかった場合、今世紀末には気温が最大で4.8度上昇するとしている。世界の平均気温は19世紀末からすでに0.85度上がっている。国際社会は気温上昇を2度未満に抑える目標を持っている。研究団体は「海面上昇は目に見える脅威だ。(今月末の)国連気候変動会議(COP21)の結果は、我々の将来を左右する」としている。
国連気候変動会議(COP21)を前に8日、パリで閣僚級の非公式準備会合が始まった。(パリ=香取啓介)

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海面上昇の予想図(東京周辺)

2015111104
海面上昇の予想図(名古屋周辺)

2015111105
海面上昇の予想図(大阪周辺)


(朝日新聞デジタル)

ならば、我国の潮位はどうなっているか?


図11-23 「日本沿岸の海面水位の長期変化傾向」より

「最初の被害者は私の母国かもしれないが、次はあなた方だ」との言い草とは裏腹に、ツバルでは潮位の上昇が認められず、逆に、我国では1980年以降に潮位が上昇していた。
これはCO2の排出が原因だろうか?
CO2の排出は20世紀後半に激増したのだから、CO2の排出が原因なら、1950年以降の潮位は上がり続けていたはず。
ところが、1950年以降に下がった。
だから、1950年までの潮位上昇は自然要因。
CO2の排出が原因なら、2010年の潮位は1950年よりもずっと高いはず。
ところが、1950年以降の60年間で見れば、潮位は上昇していない。
気象庁も「日本沿岸の海面水位は、1980年代以降、上昇傾向が見られます。1906~2017年の期間では明瞭な上昇傾向は見られません」と認めている。
1950年以降に潮位が下がった後、再び上昇に転じたので、1980年以降だけを見れば、潮位が上昇したように見えるが、我国の潮位変化は自然変動の範囲内に収まっている。[注1]

「温暖化が進んで産業革命前と比べ気温が4度上がった場合」は気候モデルに基づいているけれど、気候モデルは図11-23を再現できるのか?
過去のデータを再現できなければ、モデルの予測に科学的意味は無い。
ところが、クライメート・セントラルの報告にそのような図は見当たらないし、IPCCの報告書にも見当たらない。
気象庁の「異常気象レポート2014」の84ページには図11-23と同じグラフが掲載され、「ここ100年の日本沿岸の海面水位には、世界平均の海面水位にみられるような明瞭な上昇傾向はみられない。1906~2013年の期間で日本沿岸の海面水位の変化を求めると、20世紀を通した期間では有意な上昇を示さなかった」と記しているけれど、気候モデルの結果を示していない。
「東京でも750万人、大阪では620万人、名古屋340万人、福岡97万人の住む地域が海面より下になる」だの、「関東地方では、埼玉県春日部市や千葉県成田市付近まで海水につかり、大阪や愛知付近も内陸部まで浸水した」だのに科学的根拠は全く無い。

窮したIPCC学派は、今さらと言うべきか、その後、こんな論文を出してきた。


日本沿岸水位の上昇、人為起源だけでなく自然変動も重要 北海道大学
2017年5月30日
北海道大学大学院理学研究院の佐々木克徳講師らは、海洋モデルによるシミュレーションで20世紀全体の日本沿岸水位を再現し、1950年頃の水位が高い原因を解明した。
地球温暖化の影響により、1993年以降の観測では、全地球での平均海面水位とともに、日本沿岸水位も上昇している。一方、1950年頃にも現在と同程度に日本沿岸水位が高い時期が存在したが、その原因は未解明だった。
そこで研究グループは、20世紀の日本沿岸水位変動の原因を明らかにするため、海洋モデルROMSを用いて太平洋の海面水位変動のシミュレーションを実施。対象期間は1871年から2010年で、140年間にわたる長期間のシミュレーション研究は世界的にも珍しいという。
ROMSによるシミュレーションと、気象庁による観測結果を比較したところ、シミュレーションは1950年頃の日本沿岸水位の高さを再現。さらに、変動の原因を探るため、風により海面を引きずる力である「風応力」と海面からの熱と淡水の供給である「熱塩フラックス」の寄与を調べた。
その結果、近年の水位上昇は熱塩フラックスの変動により生じているのに対し、1950年頃の高水位は風応力の変動により生じていたことが明らかになった。この風応力の変動原因は、北太平洋上に冬季に存在する「アリューシャン低気圧」の勢力の弱化。これに伴う風の変化が海洋循環を変え、日本の沿岸水位を上昇させていたのだ。
また、別の気候モデル研究との比較から、アリューシャン低気圧の弱化は、地球温暖化に代表される人為起源による変動ではなく、気候に内在する自然変動であることも示された。このことから、日本沿岸水位の将来予測のためには、人為起源の変動だけではなく、自然変動の理解が重要だとしている。
論文情報:Journal of Climate,30(2017)5585


(大学ジャーナル ONLINE)

この論文の抄訳には「high sea level around 1950 was induced by the wind stress curl changes over the North Pacific, characterized by a weakening of the Aleutian low. In contrast, the recent sea level rise is primarily caused by heat and freshwater」とある。
20世紀前半の潮位上昇は自然要因だけれど、1980年代からの潮位上昇はCO2の排出が原因、と言い張るのだが、20世紀前半に潮位が上がり、60年代から70年代に下がったのが「気候に内在する自然変動」なら、1980年以降の潮位の上昇も20世紀前半と同様の「気候に内在する自然変動」ではないのか?
20世紀前半だけ「気候に内在する自然変動」が起こったのだろうか?
20世紀前半は特殊だった、と言うのだろうか?
「気候に内在する自然変動」とは、一体、何か?
そこで、本文(5592ページの右段)を見ると、「Thus, high sea level along the Japanese coast is related to a negative phase of the PDO, consistent with the weakening of the Aleutian low」とある。
「気候に内在する自然変動」とはPDOなのだ。
それならば、下図に見えるとおり、PDOは1980年代から再び低下し始めたから、1980年代からの潮位上昇にはPDOが寄与しているはず。


図11-24 「Journal of Climate,30(2017)5585」の図7.(a)

「地球温暖化の影響により、1993年以降の観測では、全地球での平均海面水位とともに、日本沿岸水位も上昇している」と言い立てているけれど、そして、下図に見えるとおり、1993年以降に海面水位上昇が加速しているけれど、前章の第6節で解説したとおり、ENSO(と火山噴火に因る気温低下)を除けば、1993年から温暖化は進んでいないのだから、1993年以降に海面水位上昇が加速したのなら、それはPDOが原因である。

2015010101図11-25 IPCC第4次報告書政策策定者向け要約より

第4節で解説したとおり、トンガ・マーシャル諸島・フィジーの潮位上昇はPDO(またはIPO)が原因だった。
「PDOの影響により、1993年以降の観測では、トンガとマーシャル諸島とフィジーでの平均海面水位とともに、日本沿岸水位も上昇している」と考えられるのだ。
さらに、ツバルとソロモン諸島の潮位変化を見直すと、1990年代の初頭に潮位が大きく下がっていたことに気づく。
だから、1992年を起点にすれば潮位が著しく上がったように見えるだけである。

1980年代以降の潮位上昇は偏にPDOが原因、とは言わないまでも、PDOが寄与していることは明らかである。
ならば、それ以外はCO2の排出が原因か?
上図の「1961~2003」を見ると、「海面水位上昇に寄与する個別要因の合計」と「観測された海面水位上昇」の「差異」は大きい。
これは地下水の汲み上げが原因である。[注2]


くみ上げられた地下水が海面上昇の一因に、東大研究チーム
2012年5月21日 14:43 発信地:パリ/フランス
ここ数十年の海面上昇は、地下水が大量にくみ上げられたことが一因になっているという論文が、東京大学の研究チームにより29日の英科学誌ネイチャージオサイエンス「Nature Geoscience,5(2012)389」に発表された。
地球の海水面は1961年から2003年にかけて、年間1.8ミリメートルのペースで上昇したが、そのどこまでが温暖化に起因するのかは大きな疑問となっていた。
ノーベル賞を受賞した国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年に発表した報告書では、海水面上昇のうち年間1.1ミリ分は海水が温められて起こる熱膨張とグリーンランドや南極などの氷床や氷河の融解によるものとしていた。
残りの0.7ミリについては多くの科学者にとって謎とされ、データが間違っているか、まだ知られていない原因がある可能性が考えられていた。
コンピュータモデルを用いて研究した東大のYadu Pokhrel氏らは論文の中で、その答えは、人類が開発のために地下帯水層や川、湖から水を補充することなくくみ上げていることにあると述べた。論文によると、くみ上げられた水は土壌からの蒸発や川を通じて最終的に海にたどり着く。
研究チームは論文の中で、「非持続的な地下水利用、人工貯水池への貯水、気候の変動に伴う陸域貯水量の変化や閉鎖水域からの水の消失など合わせて1961年から2003年の間に平均0.77mm/年、観測された海水面上昇の42%に寄与していることがわかった」と結論付けている。この中で非持続的な地下水利用が最も大きな要因だったという。
温暖化が海洋にもたらす影響についてはまだ解明されていないことが多く、海面上昇もその1つだ。海面上昇は沿岸部に住む数億人にとって重要な問題であり、わずかな上昇でも毎年続けば、高潮や、帯水層や沿岸の土地への塩水の流入などの被害を受けやすい地域にいずれ劇的な影響を及ぼす恐れがある。


(AFP)

図11-25を見れば、全球平均海面水位の上昇は1961年から2003年までで、1.8×43=77㎜。
一方、図11-23より、1年ずらして1962年から2004年までで80㎜。
ほとんど一致している。
地下水の汲み上げが我国の潮位上昇にも寄与しているのだ。
(図11-25では、「1993~2003」の「差異」は「1961~2003」の半分以下だが、つまり、地下水の汲み上げに因る海水位上昇が大きく減っているけれど、次章の第6節で解説するとおり、地下水の汲み上げはむしろ増えている。)
PDO、地下水の汲み上げ、そして、第7章で解説したとおり、北極圏の雪氷がススと微生物で解けていることも考慮すれば、我国の潮位上昇へのCO2排出の影響が弱いことは明らか。
「東京でも750万人、大阪では620万人、名古屋340万人、福岡97万人の住む地域が海面より下になる」は全く非科学的で全くナンセンスである。

しかし、朝日新聞は尚も、グリーンランドが解けて関東平野・濃尾平野・大阪平野が海の底になる、と騒ぎ立てている。


2017年5月7日の朝日新聞朝刊紙面より

第5章の冒頭で引用した朝日新聞社説は「それでも、平均気温の上昇を2度未満に抑えるというこれまでの目標だけでなく、『1.5度未満に抑えるよう努める』と明記した意義は大きい・・・国土の水没を恐れるツバルなど小さな島国の懸命な訴えを、大国も軽んじられなかったのだ」と喚き立てていたけれど、「1.5℃未満」はこれに基づいている。


グリーンランドの氷床、危機的な状況に接近-造氷追い付かず
2012年3月12日
グリーンランドの氷床の地球温暖化に対する抵抗力がこれまで考えられていたより弱く、既に危機的な状況に近づいている可能性があるとの論文をスペインとドイツの研究者がまとめた。
科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に11日掲載された論文Nature Climate Change,2(2012)429によると、氷床は産業革命期以降で温暖化がセ氏1.6度に達すると、造氷力を失う可能性がある。これまでは3.1度とみられていた。スペインのコンプルテンセ大学とドイツのポツダム気候影響調査研究所がまとめた。
論文の主要な執筆者で両機関に関連があるアレクサンダー・ロビンソン氏は電子メールで、「危機的な分岐点に既に近づいている可能性がある。分岐点を越えれば越えるほど、解氷は進む」と述べた。
国連の推計によると、グリーンランドの氷床は世界の海面を約7メートル押し上げる水を含んでいる。海に面しているニューヨーク、ロンドン、バンコクといった都市が脅かされる。氷床全体が解けるには数千年かかる見通し。
18世紀に産業革命が始まって以降、気温は0.8度上昇した。論文によると、解氷の分岐点は0.8-3.2度上昇とされており、このレンジの下限に達している可能性がある。
気温が2度上がると、5万年で氷床が解氷し、4度だと8000年、8度だと2000年というふうに期間が短縮する。


(ブルームバーグ)

東京大学の阿部彩子は「②解けやすくなり、沿岸部から徐々に氷の厚みが薄くなるなど、氷の消失が進む③内陸部の標高も下がってきて、気温の影響を受けやすくなって、さらに消失する」と言い立てているが、第5章図5-3図5-15、そして、第7章図7-4に見えるとおり、グリーンランドでは、沿岸部でも内陸部でも、1940年前後の気温は2000年頃と同じほど高かった。
20世紀前半の気温上昇は自然要因だから、CO2を排出し続けても気温上昇は「1.5℃未満」に収まる。
たとえ「造氷力を失う可能性がある」としても、「産業革命期以降で温暖化がセ氏1.6度に達する」可能性自体がないのだから、「気温上昇続けば『臨界点』超え」はあり得ない。
「関東地方では、埼玉県春日部市や千葉県成田市付近まで海水につかり、大阪や愛知付近も内陸部まで浸水」は起こり得ない。
グリーンランドの気候自体がその事実を示しているのだ。

「IPCCの報告書では、1800年代後半の工業化前に比べて1~4度ほど高くなると、現実化する可能性を挙げている。現在、すでに約1度上昇している」と、つまり、既に「臨界点」を超えているかもしれない、と喚いているけれど、それもグリーンランドの気候自体が否定している。
第5章の第1節で解説したとおり、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説に依れば、北半球高緯度は世界平均の2倍のペースで気温が上がるから、「温暖化が進んで産業革命前と比べ気温が4度上がった場合」、グリーンランドの気温は8℃上がる。
ところが、現在の間氷期よりも一つ前の間氷期に、グリーンランドの気温は現在よりも8℃高かったけれど、氷床の大部分は解けなかった。[注3]


温暖な間氷期、氷床あまりとけず グリーンランドで調査
2013年2月6日23時25分
【波多野陽】13万年前のグリーンランドは、平均気温が現在より最高で8度も高かったのに、氷床の体積は現在の9割とあまりとけていなかったことが、掘り出した氷の分析でわかった。デンマークや日本など14カ国の研究者グループが英科学誌ネイチャー「Nature,493(2013)489」に発表した。
近年はわずかな温度上昇でも氷床の大きな融解が起き、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、グリーンランドの気温が現在より3~6度高い状態が数千年続くと、氷床はほぼ完全にとけてなくなると予測している。今回の調査結果は、氷床がとけるのは気温上昇だけでなく、ほかの要因もからむ複雑なメカニズムによることを示している。


(朝日新聞デジタル)

因みに、この論文の著者の一人は、「IPCC(第5次)報告書」の第1作業部会の共同議長、且つ、政策策定者向け要約の筆頭編集者&執筆者のトーマス・ストッカーである。
グリーンランドの氷床が安定していたことは、その後の論文でも確認されている。


グリーンランド氷床下に氷河期前の地形を発見、米研究
2014年4月21日 09:34 発信地:ワシントンD.C./米国
グリーンランドの氷床のはるか下に、270万年もの間保存されていた氷河期以前のツンドラ地形を発見したとの研究論文が、17日の米科学誌サイエンスScience,344(2014)402に掲載された。
氷河は、植物や土、さらには岩盤の上層部に至るまで、流域の陸地にあるものすべてを根こそぎ削り取ってしまうことが知られている。そのため、研究チームはこのツンドラ地形が厚さ3キロの氷の下に元の状態のまま存在されているのを発見して非常に驚いたという。
研究を率いた米バーモント大学の地質学者、ポール・ビアマン(Paul Bierman)氏によると、今回の発見は、グリーンランドの氷床がこれまで知られていたよりもはるかに長い間存在し、過去に数多く発生した地球温暖化の期間を切り抜けてきたという有力な証拠をもたらすものだという。
氷床についてビアマン氏は、地形を削って形を変えるのではなく、地面に凍り付いて「古代の地形を保存する冷蔵庫」として効果的に作用してきたと説明する。
氷床の歴史の中で最も気温が高かった時期でも、グリーンランド中部は安定して氷が完全に融解しなかったために、数百万年に及ぶ温度の変化を経てもツンドラ地形が元の状態のまま密閉保存されたことを、今回の発見は示唆している。
■グリーンランドは本当にグリーン(緑)だった
以前、米ローレンス・リバモア国立研究所に所属していた科学者のディラン・ルード(Dylan Rood)氏は「グリーンランドは本当にグリーン(緑)だった。もっともそれは何百万年も前のことだが」と話す。
「グリーンランドは、地球上で2番目に巨大な氷の塊に覆われる以前は、米アラスカ州に見られるような緑のツンドラ地帯だった」
研究チームは今回の研究で、1993年にグリーンランドのサミットで氷床から抽出されたサンプル17個を分析し、宇宙線によって形成される元素ベリリウムの希少な同位体「ベリリウム10」のサンプルを抽出した。
全米科学財団(National Science Foundation、NSF)から支援を受けた今回の研究では、グリーンランドの土壌が、氷に覆われる前の20万年~100万年間は安定した状態で地表に露出していたことを明らかにした。
また研究チームは、植物由来の物質によって土壌コアサンプル中に残された可能性のある窒素と炭素を測定して、氷河期以前の地形が部分的に森林ツンドラだったかもしれないことを示唆する有機物質を発見した。


(AFP)

北海道大の青木茂は「南極の氷床流出は海水温度の上昇が影響する。暖かい海水が氷床からせり出した氷を底面から解かし、氷が地盤に接する点をどんどん後退させている。西南極では後戻りできない臨界点を超えた」と喚き立てているけれど、第9章の第1節と第3節で解説したとおり、それは全く愚かな妄想にすぎない。
しかも、図9-5(の上のパネル)を見れば分かるとおり、現在よりも気温が上がれば、南極の積雪量は増す。
Climate Dynamics,47(2016)1367」に依れば、気温が1℃上がれば、積雪の増加で南極の氷は毎年70Gt増加する。
CO2を排出し続けても「極地の氷 消えるとき」は来ない。
もちろん、南極の積雪が増加する分だけ海面は下がる。
これと同じ現象がずっと続くと考えればよい。


世界の海面を低下させた「オーストラリアの豪雨」
2013.8.27 13:10
2010年と2011年にオーストラリアで洪水を発生させた豪雨が原因で、世界の海面が7mm低下したという研究結果が発表された。
不思議なことに海面は2010年に7mm低下し、その後1年半にわたって予想を下回る水準だった。この水がどこへ行ったのかについて研究してきた海洋学者たちは、その行方がオーストラリアだったと結論した。
地球上のほとんどの場所では、山間部で雨が降り、雨水は川に流れ込んで海に運ばれる。だが、オーストラリアでは傾向が異なる。アウトバック(内陸部に広がる、砂漠を中心とする広大な人口希薄地帯)に降る雨は海に流れ込まず、浅い内海に集まって蒸発することが多い。
その結果、ラニーニャ現象とほかのいくつかの大気変動が重なって、2010年12月にオーストラリア全土が豪雨に見舞われたときに、オーストラリア大陸の「広大な無河流域と内陸湖」が雨水をすべて吸収し、世界全体の海面低下を招いた。ほかの大陸であれば海に流れ込んだはずの雨が塩湖に飲み込まれて、時間をかけて蒸発したのだ。
今回の研究を『Geophysical Research Letters』誌に発表した、米大気研究センター(NCAR)のジョン・ファスーロは、自身の研究結果について、「気候系の複雑さを如実に示している」と述べた。バックグラウンドとして存在する海面上昇の傾向を一時的に打ち消すほど大きな影響があったと同氏は指摘する。
「大気条件と地形がこんな風に組み合わさっている大陸はほかにはない。これほど激しい熱帯降雨が、これほど広い範囲にもたらされ、その雨水が海に流れ込まないのは、オーストラリアだけだ」


(MSN産経ニュース)

「昨春、米国の研究者が英科学誌ネイチャーで発表した論文(Nature,531(2016)591)では、温室効果ガスの排出が変わらず続けば2500年までに15㍍以上の海面上昇が起きる可能性を指摘した」は笑い種でしかない。
「関東地方では、埼玉県春日部市や千葉県成田市付近まで海水につかり、大阪や愛知付近も内陸部まで浸水」は起こり得ない。

とは言うものの、懸念が全く無いわけではない。
北海道大学の杉山慎は「臨界点を超えていないとき──真っ白い雪が太陽光のほとんどを反射し、氷が解けにくい」と、そして、東京大学の阿部彩子も「①真っ白い雪と氷があると太陽光を反射して解けにくいが、気温が上がると標高が低く比較的暖かい沿岸部で氷が汚れ反射しにくくなる」と言い張っているけれど、第7章で解説したとおり、グリーンランドの雪氷はススと微生物で黒ずみ、それが原因で解けている。
大気汚染を放置すれば、「極地の氷 消えるとき」が来ないとも限らない。
IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者である江守正多は「二酸化炭素(CO2)を出さずにエネルギーを使うことが新たな常識となるような文明の転換が必要」と喚き立てているけれど、それは大気汚染で極地が解けている事実から目を逸らす以外の何物でもなく、犯罪的と言えよう。

11.8 サンフランシスコの不都合な真実

太平洋の向こう側のサンフランシスコも調べてみよう。

2014022005
図11-26 サンフランシスコの潮位変動(「EOS,93(2012)249」より)

黒線を見ると、1930年と1980年に不連続な潮位上昇が起こった。
後者は1982年の急激な上昇の結果だが、それはエルニーニョが原因である。
つまり、1980年の不連続なジャンプは自然要因。
その後に有意な上昇は認められない。
太平洋西部の我国と東部の米国西海岸ではPDOの影響が逆になる。
PDOが低下し始めると、我国の潮位は上がるが、サンフランシスコの潮位は下がる。
1980年から潮位が上がっていないのはPDOが原因。
人為的要因の潮位上昇がPDOで打ち消されたわけである。
しかし、人為的要因はCO2の排出だけではない。
前節で述べたとおり、地下水の汲み上げが4割を占めている。
米国の帯水層も枯渇しつつある。


北米最大の地下帯水層が枯渇
2016年7月29日(金)17時3分
乾燥した米国中部で近代的な生活が送れるのは、膨大な量の地下水を含んだ地層「オガララ帯水層」があるおかげだ。そのオガララの水を調査するため、私たちはここカンザス州へやって来た。井戸に下ろした巻き尺の先端は、深さ60メートルでようやく水面に達した。1年前に測ったときより30センチも低い。このペースで水が減れば、井戸が枯れるのも時間の問題だ。「この状態で灌漑に使えば、ひと夏もちません」。米カンザス地質調査所で水資源データの管理責任者を務めるブライアン・ウィルソンは言った。
農業地帯を支える水
オガララ帯水層をめぐるウィルソンの調査に同行し、8000キロを旅した。私たちが車で走ったのは、サウスダコタ州からテキサス州にかけて広がる、米国有数の高い生産性を誇る農業地帯の一角だ。一帯の年間生産額は少なくとも200億ドル(約2兆円)に達し、米国内の小麦、トウモロコシ、肉牛の5分の1近くがここで育てられている。
そうした農家は今、難しい選択を迫られている。水を節約して地下水の枯渇を遅らせるか、目前に迫った終焉に向かってこのまま突っ走るのか。なかには現実を直視したがらない農家もある。今の調子で水をくみ続け、帯水層が干上がってしまったら、世界の食料市場は大打撃を受けるだろう。国連の試算によれば、21世紀半ばまでに世界の人口は90億人を超えるため、あと数十年で食料生産を6割増やす必要があるという。そんな世界情勢を尻目に、水はゆっくりと枯れつつある。
世界各地で枯れる地下水
オガララ帯水層は北米最大の地下水資源だが、同様の問題は世界中で起きている。アジア、アフリカ、中東の大規模な帯水層は、どこも急速に水量が減少しているのだ。オガララの南部を含め、そうした帯水層は地下水の回復スピードが極めて遅く、一度水を使い果たしたら、元に戻るまで何千年もかかる。
どの大陸にも必ず帯水層があり、オガララより広大なものも存在する。21世紀初めの時点で、世界人口の3分の1が、飲み水や農業用水として地下水を利用している。干ばつに悩まされる中国では、華北平原の帯水層が、北京とその周辺に住む1億1700万人を支えている。インドは2022年に中国を抜いて人口世界一になると予測されているが、急激な人口増加を支えているのが、ガンジス・ブラマプトラ川流域やインダス川流域の帯水層だ。
抱えている問題はどこも同じだ。人口が集中し、工業生産がさかんな地域にある帯水層からは、すさまじい勢いで水がくみ上げられている。NASAは、人工衛星で観測した地球の重力の変化から地下水の変化を推定しているが、世界に37カ所ある大規模帯水層のうち、21カ所は持続可能な限界点をすでに超えているという。なかでも多くの地下水を消費している国はインドだ。
地下水資源の過剰利用が最も顕著なのはサウジアラビアだろう。地下600メートルまで掘削し、巨大なアラビア帯水層を探し当てた。砂漠は緑の穀物畑になり、1980年代から90年代にかけて、サウジアラビアは穀物の一大輸出国にまでなった。しかし、今ではこの帯水層はすっかり枯渇している。

「影響は甚大です」と警鐘を鳴らすのは、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の水文学者ジェイ・ファミグリエッティだ。彼の研究チームは、人工衛星による観測データを使って世界37カ所の巨大帯水層の変化を記録している。「食料生産を維持するには、まず地下水の維持が必要なのに、それができていません。オガララの水を使い切ることが、米国、ひいては世界の食料生産にとって賢い選択なのか、真剣に考えなくてはなりません」


(ナショナル ジオグラフィック2016年8月号特集「地下水が枯れる日」より)

しかも、サンフランシスコでは地盤沈下が酷い。


米シリコンバレー周辺で急速な地盤沈下、洪水リスク倍増も
2018年3月8日 16:30 発信地:マイアミ/米国
IT企業の一大拠点となっている米カリフォルニア州シリコンバレー周辺で地盤沈下が進んでおり、今後、これまでよりはるかに深刻な洪水に見舞われる恐れがあるとの論文が7日、米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に発表された。海面上昇と相まって、洪水リスクは2100年までに倍増するとしている。
米当局の洪水予測やハザードマップは今のところ海面上昇のみを想定して作成されている。
「地盤が沈下し、海面が上昇すれば、そのどちらかが単独で影響する場合よりもずっと内陸まで洪水は到達する」と、論文の主執筆者であるアリゾナ州立大学地球・宇宙探査大学院のマヌチェフル・シルザエイ(Manoochehr Shirzaei)准教授は指摘する。
論文によると、シリコンバレーのあるサンフランシスコ・ベイエリアでは、大部分で年2ミリ程度の地盤沈下が起きているが「一部地域では沈下の速度が年10ミリか、それ以上だと判明した」という。
特にリスクが高いのは埋め立て地で、たとえば年間20万便超が到着し5600万人以上が利用するサンフランシスコ国際空港は「2100年までに滑走路と誘導路の半分近くが水没するだろう」と論文は述べている。


(AFP PHOTO / Josh Edelson)

PDOが原因で温暖化や地下水の汲み上げや地盤沈下に因る潮位上昇が抑えられているということは、自然要因はCO2の影響よりも大きいということである。

1930年の不連続な上昇の原因は不明だが、CO2の排出は20世紀後半に激増したのだから、それも自然要因。
同様に、1930年から50年までの潮位上昇も自然要因。
第5章図5-5に見えるとおり、50年代から70年代は気温が低下していたのだから、そして、図5-4に見えるとおり、北極圏も気温が低下していたのだから、その間の潮位上昇も自然要因と地下水の汲み上げが原因。
その自然要因は、やはり、PDO。
PDOの位相が負の20世紀第3四半期に、我国の潮位は下がったが、逆にサンフランシスコでは潮位が上がったのだ。
サンフランシスコの潮位を調べても、やはり、CO2の影響は弱い。

11.9 温暖化猿の惑星

我国とサンフランシスコの不都合な真実が露呈してしまったので、IPCC学派は、このままCO2を排出し続けると自由の女神が沈んでしまう、と泣き出した。


温暖化で2000年後に自由の女神も水没か? 研究結果
2014年3月5日 13:34 発信地:パリ/フランス
西暦4014年の観光客らは、英国の「ロンドン塔」や米国の「自由の女神」を仮想世界でしか見ることができないかもしれない──5日に発表された気候変動に関する報告書は、海洋の劇的な「拡大」によって、世界遺産などが水没する可能性を警告している。
現代文明はエジプトのピラミッドやイタリア・ローマの円形競技場、コロッセオ、ギリシャのパルテノン神殿に魅了されてきた。
しかし、ドイツの気候変動ポツダム研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research、PIK)の研究者らが「ジャーナル・エンバイロンメンタル・リサーチ・レターズ(Environ.Res.Lett.,9(2014)034001)」で発表した調査結果によると、こうした世界遺産や各国の文化遺産の多くが、地球温暖化の影響で最高1.8メートルにもなると予想される海面上昇によって失われる可能性がある。
調査結果によると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に現在、世界遺産として登録されている700以上の遺産のうち、140か所が今後2000年の間に水没する恐れがあるという。
また、このほか豪シドニーのオペラハウス、イタリア・ベネチア、日本の原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)、南アフリカのネルソン・マンデラ氏が18年間にわたって投獄されていたロベン島(Robben Island)なども、同様の危険にさらされている。
これらの結果は、世界の平均気温が産業革命の前より摂氏3度高くなった場合の海面の上昇レベルに基づき、割り出されたもの。国連は、摂氏2度までの上昇に抑えることを目標としているが、平均気温は同じ比較で既に、摂氏0.8度高くなっている。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、今後も温室効果ガスの排出量が増加し続ければ、今世紀末までにさらに2.6~4.8度上昇する可能性があるという。
ポツダム研究所の研究者らは今後、気候変動の文化遺産への影響についても調査する計画だ。影響の度合いは、自然界と経済、農業を基準に割り出される。


(AFP)

ナショナルジオグラフィックは表紙にこんな絵を載せている。

fig 08-08

ネイチャーも「NEW YORK VS THE SEA」と騒ぎ立てている。

確かに、ニューヨークの潮位はほぼ一直線に上昇し続けており、その上昇幅は全海洋平均よりもかなり大きい。

2016061906
図11-27 ニューヨークの潮位の推移(「Permanent Serive for Mean Sea Level」より)

しかし、サンフランシスコに関して指摘したとおり、20世紀第3四半期までの潮位上昇はCO2の排出が原因ではない。
一つは、第5章の第2節で解説したとおり、太陽活動の活発化に因る気温上昇、一つは地下水の汲み上げ、そして、もう一つはこれである。

2017022205
図11-28 「Ocean & Coastal Management,124(2016)1」より

氷河期にカナダのほとんどは氷床に覆われ、氷床の重みで地殻が押し下げられていた。
その結果、マントルがその周囲に押し出され、逆に、アメリカ北部では地殻を押し上げた。
氷河期が終わり、氷が解けると、押し下げられていた地殻が少しずつ上がり始め、相対的に、カナダ沿岸の潮位は下がり続けている。
逆に、周辺では、押し出されていたマントルが元に戻り始め、地殻が少しずつ下がり始め、相対的に、アメリカ北部沿岸の潮位は上がり続けているのだ。
もちろん、20世紀第4四半期以降も続いている。
それがニューヨークの著しい潮位上昇の一因である。
さらに、近年はススと微生物に因るグリーンランドの氷河・氷床の融解が大きく寄与しているから、やはり、CO2の影響は強くない。

そもそも、CO2を排出し続けても気温上昇は1.5℃未満だから、「これらの結果は、世界の平均気温が産業革命の前より摂氏3度高くなった場合の海面の上昇レベルに基づき、割り出されたもの」は科学的に全く無意味。
しかも、第7節で解説したとおり、「世界の平均気温が産業革命の前より摂氏4度高くなった場合」でも、グリーンランドの氷床は解けない。
しかも、第6章の第2節で引用した「人類は地球の寒冷化に歯止めをかけているのか」という見出しの記事に見えるとおり、「次の氷河期が『今後約1500年以内に』始まると予想している」から、「温暖化で2000年後に自由の女神も水没」などあり得ない。
「猿の惑星」の見すぎではなかろうか。

11.10 マイアミビーチの不都合な真実

ニューヨークの不都合な真実も露呈してしまったので、今度は、マイアミビーチで溺れ死んじゃう、と泣き出した。

2016102601
2016年10月25日の朝日新聞朝刊紙面より

マイアミビーチの潮位の記録は下図のとおり。

2016102603
図11-29 マイアミビーチの潮位変化(「Tides & Currents」より)

有意な潮位変化は認められない。
但し、1980年で観測が終わっている。
「地球温暖化に伴う海面上昇」の当否は1980年以降の潮位変化を見なければ判断できないから、マイアミビーチの直ぐ南に位置する、下図の緑色の矢印の海岸(Virginia Key)の潮位を調べてみよう。

2016102604

下図は月間最高水位の推移である。


図11-30 「BAMS,97(2016)S25」より

ハリーケーン来襲時を除くと、2005年以降に青線を越える回数が増えている。
しかし、それ以前は月間最高水位に有意な変化は認められなかったのだから、「地球温暖化に伴う海面上昇」ではない。
原因は「2カ月ほど前に引っ越してきたばかりのメアリー・ベス・ワイズ」に表われている。


2005年にハリケーン「ウィルマ」に襲われてから、しばらくの間フロリダ州にハリケーンが近づくことはなかった。その間、莫大な金額が海岸地域の開発につぎこまれ、130万人が移り住んだ。ハリケーンによる高潮の被害についてほとんど何も知らないまま、危険な砂州に住んでいる人も多い。


(「ハリケーンで3mの高潮も、沈みゆく米南東沿岸部 被害は深刻化する一方、フロリダ州は海面上昇対策の不十分さを露呈」より)

「満潮になると海の水面が上昇し、市街地まで海水が押し寄せた」のは、満潮時には海面下になる海岸を埋め立てて街を造ったからであり、「地球温暖化に伴う海面上昇」ではない。
もちろん、海岸の埋め立ては2005年以前から進んでいる。


地球の表面、30年前より陸地が増えた
衛星データで分析、海面上昇が危惧されるなか、意外にも陸地が増えている
2016.9.13
海面上昇や極地の氷の融解が報じられる昨今、私たちは水没する陸地が毎年増えていると思いがちだ。確かに、それが当てはまる地域もある。だが最新の研究で、実際には陸地が30年前よりもわずかに増えていることが分かった。
科学者らは、40年以上にわたって人工衛星ランドサットから送られてきた地球の写真とグーグルアースエンジンを使い、地球のどこが水に覆われ、どこが乾いた陸地になったのかを地図上にまとめた。その結果が冒頭の画像だ。1985年から2015年までの間に、海や湖から陸地になった面積は約17万3000平方キロ。一方、水中に沈んだ陸地の面積は11万5000平方キロだった。差し引きすると、九州と四国を合わせたのとほぼ同じ広さの陸地が新たに出現したことになる。
このような変化は世界中で起きており、自然の変化もあれば人為的な変化もある。干上がり続け、消滅しかけているアラル海など、有名な例も多い。一方で、これまで知られていなかった変化も明らかになった。例えば、北朝鮮と韓国との軍事境界線のすぐ北を流れる臨津江(イムジン川)のダム建設の影響がそうだ。
新しく水に覆われた面積が特に大きかったのはアマゾン盆地とチベット高原で、後者は上の画像で青色(水面)になっているのが確認できる。驚くことに、世界中の沿岸部では合計1万3000平方キロを超す陸地が生まれている。その多くは人工的な陸地で、自然侵食を超えるペースで埋め立てが行われた。
オランダの独立研究機関、デルタレスのゲナディ・ドンチス氏が主導する研究チームは、このデータを「アクア・モニター」というインタラクティブな地図上で公開しており、誰でも拡大して全世界を見ることができる。
このプロジェクトと分析結果は、8月25日付で学術誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載された。(「Nature Climate Change,6(2016)810」)


(ナショナルジオグラフィック)

マイアミビーチでの観測が1980年に終わったのは、その後に開発が進んで、観測に適さなくなったからに他ならない。
朝日新聞は、女性が水浸しになった交差点を恐る恐る渡る写真を掲載して、「海面上昇 マイアミの危機」と煽り立てているけれど、図11-1や図11-2と全く同じ詐術であり、「気候変動でっち上げ」の証である。

11.11 サンゴ礁の不都合な真実

第6節で紹介したとおり、ユネスコが「南太平洋のニューカレドニアのサンゴ礁では大規模なサンゴの白化がみつかっている」と騒ぎ立てていたけれど、世界最大のサンゴ礁であるオーストラリアのグレートバリアリーフもCO2の排出に因る温暖化で白化した、と騒ぎ立てている。


2017年6月7日の朝日新聞朝刊紙面より

この記事に見えるとおり、一般に「白化は、サンゴに共生する『褐虫藻』という生物が、海水温の上昇などによって離れてしまい、サンゴが白色に変わる現象」と考えられているが、実は、違うのだ。


2017年3月30日の朝日新聞朝刊紙面より

褐虫藻がサンゴから離れたのではなく、サンゴが褐虫藻を食べてしまったのである。
しかし、サンゴの栄養源は褐虫藻だけではない。


豊かなサンゴ礁に魚の「尿」が不可欠、漁で打撃も
「種の数」だけでなく「種ごとの量」の重要性も明らかに
2016.8.24
バハマ諸島のニュープロビデンス島沖で、海に浮かぶボートを取り囲むペレスメジロザメ(学名:Carcharhinus perezi)。カリブ海諸国にとって漁業は命綱だ。漁業は重要な食料供給源であり、この産業に従事する人々は14万2000人を超える。
2000年前、ローマ皇帝ウェスパシアヌスは、羊毛の洗浄などに使われた人間の尿に税を課した。息子がこの政策に異議を唱えると、皇帝は金貨を息子の鼻先に掲げて「臭うか?」と尋ねたという。何から得たものであろうと、金は金であるというわけだ。
尿に価値を見出したウェスパシアヌスなら、きっと優秀な海洋生物学者になれたに違いない。サンゴ礁にとって、尿はまさしく宝だ。サンゴ礁の驚くべき生物多様性は、重要な栄養源である「魚の尿」抜きにはありえない。
悩ましいのは、その栄養源を大量に供給し、食物連鎖の頂点に位置する大型の魚が、人間に人気の食材であることだ。先日、学術サイト「Nature Communications」に掲載された論文によると、サンゴ礁で魚が関わる再循環作用の半分近くが、漁業によって失われてしまう可能性があり、大型魚、とりわけ大きな捕食魚の影響を強調している。
「魚の尿を守ろう、などと言うと、奇妙に聞こえるかもしれません」と、論文の著者で米国ワシントン大学博士研究員のジェイク・アルガイヤー氏は言う。「しかしこれが、サンゴ礁について別の視点から考えるきっかけになってくれるのではないでしょうか」
尿はごちそう
アルガイヤー氏は数年前から尿について研究し、カリブ海の魚や無脊椎動物がどのように尿を排泄しているのかをつぶさに観察してきた。尿に着目した彼の調査と、過去30年間に行われた数々の意義ある研究により、サンゴ礁は大量の尿によって保たれているという驚きの発見がもたらされた。
 魚の肛門から排泄されるリンや、エラから排出されるアンモニウム(窒素成分)は、サンゴ礁に適度な栄養素を与える。この再循環はサンゴ礁にとって欠かせない。世界のサンゴ礁の多くは、新たな栄養素を確保する手段をほとんど持たないからだ。リンや窒素などの栄養素は食物の形で食物連鎖の上位へと取り込まれていき、やがて排泄されて下層へと戻ってくる。
「我々には栄養素が過剰にある状態が当たり前すぎて、栄養素を得るのが難しい生態系については忘れがちです」とアルガイヤー氏を指導する米ジョージア大学の生態学者、エイミー・ローズモンド氏は語る。「サンゴ礁のぎりぎりの栄養循環において、生物が利用可能な形の栄養素の大半は魚の排泄物なのです
米マイアミ大学の淡水生態学者、マイケル・バンニ氏は言う。「熱帯雨林と同じ仕組みです。土中の栄養分が少ない割に森が豊かなのは、非常に効率的な再循環が行われているからです」
再循環の追跡調査は、容易な作業ではない。アルガイヤー氏はバハマのアバコ島で、1日のはじめに魚を捕らえ、海水を詰めたビニール袋に入れるという日々を数年間続けた。魚を入れる前と後に、水の化学組成をそれぞれ記録しておけば、魚が水中でどれだけの尿を排泄したかが把握できる。とはいえ、魚の体も栄養分の貯蔵庫として働くことから、尿の調査以外にも、魚を凍結乾燥させ、それを細かく砕いて分析可能な粉にするという作業が必要だった。
「やっかいですし、気分の悪くなる作業です。ベビーパウダーのように細かい魚粉が、眉毛に入り込んできます」とアルガイヤー氏は言う。
アルガイヤー氏が捕獲、調査した最大の個体は、体長1メートル超のグリーンモレイ(学名:Gymnothorax funebris)だ。
一方、論文の共著者であるアベル・バルディビア氏とコートニー・コックス氏は、数年間にわたりフロリダキーズからキューバまで広がるサンゴ礁の写真を収集した。43カ所のサンゴ礁に生息する143種の生物のリストをつくるのは、並大抵の苦労ではない。ふたりは各サンゴ礁で、ときにはバスケットボールコートほどの広さがあるエリア内にいる魚を数え上げて大きさ別に分類し、その作業をひとつのサンゴ礁につき最大10回ほど繰り返した。
持続可能な漁業のためには
こうして得た調査結果を元に、研究チームは、漁が行われたエリアでは、魚による再循環作用の5割近くが失われていることを発見した。漁によってサンゴ礁に生息する種の数がわずかに減ったとしても、種の減少だけでは再循環を大きく阻害する要因にはならない。実のところ最も影響が大きかったのは、食物連鎖の上層にいる大型の魚がいなくなることだった。種の数が保たれても、尿を排泄する魚が減ってしまうのだ。
「ある種が存続したとしても、その量が大幅に失われた場合、その種が持つ生態系における機能は失われます」とバンニ氏は言う。「生物の保護と言うと、人々はつい『種の数』が減らないようにと考えがちですが、事はそう単純ではありません」
論文にはこの問題に対する政策提言は含まれていないが、今回の発見は、捕獲する魚の大きさに規定を設けることが、漁業に利益をもたらす可能性があることを示唆している。大型の魚を保護すれば、その尿も守られることになり、世界中のサンゴ礁において持続可能な栄養循環の維持につながるだろう。
ローズモンド氏は言う。「人間の行為によって負の反応が生じ、生態系の恩恵が失われるという状況は、これまでに何度も見ています。今回明らかになったことを活かせれば、自然が損なわれないように人間が価値をもたらすことができるのです」


(ナショナルジオグラフィック)

「褐虫藻は高温だとうまく光合成ができず、サンゴは栄養をもらえなくなり飢餓状態に陥る」のではない。
この事実は他の研究からも裏づけられている。


46カ国でサンゴ礁の大調査、意外な傾向が判明
伝統的な漁がサンゴ礁を健全に保っているという新事実
2016.06.20
世界各地でサンゴの白化が深刻化している一方で、予想よりはるかに良い状態のサンゴが残る「ブライトスポット」があることが、最新の研究で明らかになった。理由はシンプル、サンゴ礁で漁が程よく行われているからだ。
研究に参加した環境NGOP、コンサベーション・インターナショナルのジャック・キッティンジャー氏は、サンゴ礁の保護に重大な影響を与える研究結果だと言う。
「これまでサンゴ礁の保護といえば、海洋保護区にある手つかずのサンゴ礁を守ることに重点が置かれてきました。今後は国際的なマーケットとの関係も考慮する必要があるでしょう」
6月15日付の科学誌「ネイチャー」に発表された研究論文「Nature,535(2016)416」は、大学から自然保護団体、ナショナル ジオグラフィック協会が進める「原始の海プロジェクト」など、34機関の科学者39人が執筆者に名を連ねる。今月19~24日に米国ハワイで行われる国際サンゴ礁シンポジウムに先立ち、人々の関心を高めるために発表された。同シンポジウムは4年に1度、世界中の研究者たちを集めて開催されている。
気候変動に伴う温暖化と海面上昇によって、サンゴ礁のダメージが深刻化している。特に今年はエルニーニョ現象が重なり、海水温がさらに上昇している。これに魚の乱獲が加われば、サンゴ礁にとって最後の一撃となりかねない。
しかし、持続的な管理が行われているサンゴ礁は、気候変動の長期的な影響に適応できる可能性が高い、とキッティンジャー氏は考えている。
「ダークスポット」は35カ所
研究チームは気候変動の影響をより細かく理解するため、46カ国のサンゴ礁を6000回以上にわたって調査。漁獲量が最も高い海域では魚などの生物が最も少なく、その結果、サンゴ礁が最も減少していることがわかった。サンゴ礁が荒廃している35カ所の「ダークスポット」は世界中に点在しているが、カリブ海、アフリカ沖、人口の多い都市から近いインド太平洋で多く見られた。
一方、持続的に利用されているサンゴ礁は最も良い状態を保っており、ソロモン諸島、インドネシアの一部、パプアニューギニア、キリバスなどで15の「ブライトスポット」が確認された。
ブライトスポットをさらに調べてみると、明確なパターンがいくつか見つかった。そのなかには、「こんなことが?」と思われる意外なものも含まれていた。まず、昔からの漁業権が守られている海域では、サンゴ礁が最も健全だった。こうした海域では、漁をできるのは地元の漁師だけで、よそ者は締め出される。人々が海の恵みに頼って生活している地域ほど、この傾向は顕著だった。
「これは直感に反する結果でした」とキッティンジャー氏は話す。「サンゴ礁への依存度が高ければ、漁獲量も高く、その場所はダークスポットになると予想していましたが、結果は正反対でした。実際は、サンゴ礁への依存度が高いほど、管理が行き届いている傾向にありました。おそらく、大切な資源を破壊すれば、自分の首を絞めることになるためでしょう」
これに対し、あちこちから漁師がやって来る海域は”共有地の悲劇”に陥っている傾向があった。漁業の管理がずさんな海域も、サンゴ礁のダメージが比較的大きかった。
魚とサンゴは切り離せない関係にあると、キッティンジャー氏は指摘する。魚が藻類を食べ、その繁殖を抑制しているためだ。もし魚が乱獲されれば、藻類が繁茂しすぎて、サンゴは窒息してしまう。
ブライトスポットで見られたもう1つの傾向は、近くに深い海があることだ。深い海があれば、魚は大きく育ち、漁師から逃れる可能性も高くなる。
サンゴ礁を救うには?
論文では、サンゴ礁を守るための対策として、各国政府がマーケットを規制し、海域の管理を促すべきだと提言している。企業や消費者も持続可能な魚介類を求めたり、違法な漁業を拒絶したり、地元の人々の権利を尊重すべきだと訴えたりすることで、役割を果たすことができる。
「サンゴ礁の保護に取り組んでいると、悲しくなることもあります。しかし、素晴らしいことに、希望の種を見つけることができました」とキッティンジャー氏は話す。「今後はこれらの種を増やしていかなければなりません」
ただし、世界中で起きているサンゴ礁の急激な減少を考えると、「もう猶予はあまり残されていません」


(ナショナルジオグラフィック)

第3節で紹介したとおり、「33の環礁からなるキリバスはサンゴが堆積してできており、平均標高はわずか2メートルほど。気候変動による海面上昇の影響を受けやすく、『温暖化で最初に沈む国』の一つとされる」だの、「でも、キリバスで見た光景は強烈だった。先進国が排出するガスのために南太平洋の島の人々が苦しんでいるのなら、理不尽だとしか言いようがない」だの、「事態は深刻だ。『国が沈むのは時間の問題』と話すキリバス大統領が口にした次のひと言が、そう痛感させる」だのと泣き喚いていたけれど、図11-25に見えるとおり、海面上昇の最大の要因は海水温の上昇に因る海水の熱膨張だから、「褐虫藻は高温だとうまく光合成ができず、サンゴは栄養をもらえなくなり飢餓状態に陥る」のなら、キリバスのサンゴ礁は既に死滅しているはずだけれど、全く逆に「ブライトスポット」。
それは、「褐虫藻は高温だとうまく光合成ができず、サンゴは栄養をもらえなくなり飢餓状態に陥る」のではないことを、そして、「サンゴ礁のぎりぎりの栄養循環において、生物が利用可能な形の栄養素の大半は魚の排泄物なのです」を裏づけている。

グレートバリアリーフの白化の原因も「褐虫藻は高温だとうまく光合成ができず、サンゴは栄養をもらえなくなり飢餓状態に陥った」からではなく、「魚の排泄物」が減ったからである。


環境悪化のグレート・バリア・リーフでジュゴン増加
サンゴの白化や死滅が進むなかでの朗報、10%は子ども
2017.6.5
オーストラリアのグレート・バリア・リーフに関して、珍しく届いた朗報だ。環境の悪化が伝えられるなかで、生息数が増加した大型動物がいることがわかった。
2016年11月に行われた空からの調査に基づく最新の報告書によると、このサンゴ礁の南部でジュゴンの数が増えている。ジュゴンはマナティーの親戚の海洋哺乳類で、丸っこい体を持つ。
さらに、ジュゴンはベビーブームを迎えているようだ。グレート・バリア・リーフ海洋公園局の報告によると、5500頭のジュゴンのうち10%が子どもだという。
2011年に行われた前回の調査は、強力なサイクロンが発生してジュゴンの好きな海草が大きな被害に見舞われた後に行われた。そのときの調査では、子どもはまったく見つかっていなかった。
現在、海岸線沿いに広がる海草地帯はよみがえり、同じようにジュゴンの数も回復している。ジュゴンのメスが子どもを産むためには、栄養のある植物をたくさん食べなければならない。
報告書を共同でまとめたのは、オーストラリアのジェームズクック大学で海岸部や河口部の生態系を研究するスーザン・ソブチック氏をはじめとするグループだ。ソブチック氏は、電子メールでの取材に次のように答えている。「ジュゴンは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストのうち危急種(Vulnerable)に指定されています。そんなジュゴンにとって、これはすばらしいニュースです」
サイクロンによる海草の被害
ジュゴンはカイギュウ目に分類される4つの生物の一つで、一生を通じてインド洋や太平洋西部の浅瀬で暮らす。ジュゴンの生息数が最も多いのは、西はシャーク湾から東はモートン湾にかけてのオーストラリア北部の海だ。
かつて、動きの遅いジュゴンは狩猟の格好のターゲットだった。現在では、ジュゴンを脅かす最大の要因は、沿岸地域の開発や海草地帯の減少だ。さらに、漁や海水浴場のサメ避けに使われる網にからまることも少なくない。
ソブチック氏によると、2011年にサイクロン「ヤシ」がオーストラリアを襲ってから9カ月後の時点で、「ジュゴンの生息数は、1986年に調査が始まって以来最低の数」だったという。確認できたジュゴンは600頭に満たなかった。187頭は、陸に打ち上げられて死んだ、または死にかけていた。
海草が被害を受けたのは、「ヤシ」が引き起こした大規模な洪水の影響で土砂が海に流れ込んだことが原因である可能性が高い。
今回の報告書には関わっていないが、ジュゴンに詳しいオーストラリア、クイーンズランド大学のジャネット・ランヨン氏は、「海草は栄養価もカロリーも低いので、体を維持するためにジュゴンはたくさんの海草を食べなければなりません」という。
激しい雨や沿岸部の洪水が頻発すれば、ジュゴンの将来は明るいものではなくなります。気候変動の影響で厳しい天候が続くと、間違いなくジュゴンの数は減るでしょう
近年のグレート・バリア・リーフでは、海水温の急激な上昇によって、サンゴの白化や死滅が進んでいる。ただ、海水温の上昇自体がジュゴンに悪い影響を与えるのかどうかは、まだわかっていない。
手放しには喜べない
ブリスベンに本拠地を置く非営利団体、オーストラリア海洋保護協会で活動するトニ・マト氏は、ジュゴンの子どもの増加を「大いに喜ぶべきこと」だと話す。しかし、手放しには喜べないという。マト氏も今回の研究には関わっていないが、「この地域のジュゴンの数は、まだかつての3%から5%に過ぎません」と指摘する。
ジュゴンは、クイーンズランド州南部の開発によって大きな被害を受けている。たとえば、ビーチのまわりに設置されたサメ避けの網にからまって溺れるジュゴンもいるという。
「ジュゴンは子どもの数が少ないので、回復の速度は遅いのです。南部で数が増えているのは、北から移動してきたジュゴンもいるからでしょう」とマト氏は語る。「報告書の結果が示すのは、南部でジュゴンの数が増加したことではないと思います。災害に見舞われた後の前回調査に比べて増加しているというだけのことです」
報告書の作成に携わった研究者たちも、ジュゴンが豊かな海草を求めて移動するという考えに賛同している。それでも、よみがえりつつある海草とともにジュゴンの数が増えているのは喜ばしいことだ。
文=John Pickrell/訳=鈴木和博


(ナショナルジオグラフィック)

沿岸の海草地帯はジュゴンだけでなく、小魚の格好の棲家。
小魚を求めて中型の魚が、そして、中型の魚を求めて大型の魚が集まるから、「沿岸地域の開発や海草地帯の減少」は魚の減少を招く。
ジュゴンの生息域はサンゴの生息域と重なる。
「西はシャーク湾から東はモートン湾にかけてのオーストラリア北部の海」は当にグレートバリアリーフの白化が起こった海域。
「ジュゴンを脅かす最大の要因は、沿岸地域の開発や海草地帯の減少だ」ということは、「サンゴを脅かす最大の要因は、沿岸地域の開発や海草地帯の減少だ」ということである。

「沿岸地域の開発」はサンゴの栄養源である「魚の排斥物」を減らすだけではない。
他の脅威の原因にもなる。


50センチの巨大巻き貝、グレートバリアリーフを救えるか
2017年9月19日 15:10 発信地:シドニー/オーストラリア
オーストラリア政府は18日、同国にある世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフをヒトデの被害から救うため、ヒトデを食べる巨大な巻き貝を放つ計画を発表した。その一環として、このまれな巻き貝を大量繁殖させる試みが進められている。
サンゴを捕食するオニヒトデはもともとグレートバリアリーフに生息しているが、汚染と農業排水によって急増している。
オニヒトデの影響は深刻だ。2012年に実施された全長2300キロメートルのサンゴ礁の健康に関する大規模調査で、過去27年間にサンゴに覆われた部分は半減し、その損害の42%がオニヒトデによるものだったことが明らかにされた。

一方、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)の研究によると、オニヒトデはホラガイが生息する地域を避けることが分かっている。
約50センチメートルにも成長するこの巨大な巻き貝は発達した嗅覚を持っているため、においだけで餌を捕獲することができる。研究によると、ホラガイはオニヒトデが大好物だが、食べるのは1週間にほんの数個。また貝がら目当ての乱獲によって絶滅の危機に直面しており、残されている数は多くはない。
これを受けてオーストラリア政府は18日、ホラガイの繁殖に関する研究への資金提供を発表。ウォーレン・エンツッチ(Warren Entsch)下院議員は「もし成功すれば、科学者がオニヒトデの習性に対するホラガイの影響を詳細に観察でき、サンゴ礁が根こそぎ失われるのを食い止める管理ツールとしての潜在的能力を試すことが可能になる」 と述べた。
AIMSが保有するホラガイは、無数の涙形の卵嚢(らんのう)を産み付け、先月には10万を超える遊泳性幼虫がかえった。だがホラガイは非常に希少なため、そのライフサイクルについてはほとんど知られていない。AIMSが保有する八つのホラガイの収集には、2年がかかった。


(AFP/Martin PARRY)


豪グレートバリアリーフに「回復力に富む」サンゴ礁、約100か所発見 研究
2017年11月29日 13:34 発信地:マイアミ/米国
気候変動と白化の拡大で危機的状況にあるオーストラリアのグレートバリアリーフは、全体のごく一部のサンゴ礁がそれ以外の大半の生存を維持するのに十分な回復力を持っている可能性があるとの研究論文が28日、発表された。
米オンライン科学誌プロス・バイオロジー(PLOS Biology)に掲載された論文によると、世界最大規模の約3800のサンゴ礁が集まるグレートバリアリーフの約3%はこれまで、海水の温度上昇や汚染から白化現象や病気に至るまでの多数の脅威から比較的痛手を受けずに切り抜けてきたという。
低温海域にあるこれらのサンゴ礁は、適切に保護すれば、1年間で生態系全体のほぼ半分(45%)に幼生を供給できると、論文は指摘する。
論文の主執筆者で、豪クイーンズランド大学のピーター・マンビー(Peter Mumby)教授は「これら100か所のサンゴ礁の存在を明らかにすることは、グレートバリアリーフの循環器系を解明することに少し似ている」と話す。
グレートバリアリーフのその他の部分とは異なり、これら100か所はサンゴを捕食するオニヒトデの食害を受けていない。また、サンゴの幼生を海流に乗せて送り出すことが可能な海域に位置しているため、多数のサンゴ礁に幼生を届けることができる。
論文の筆頭執筆者で、クイーンズランド大のカルロ・ホック(Karlo Hock)氏は「グレートバリアリーフ上にこのようなサンゴ礁の優れたネットワークが存在することは、サンゴ礁系全体がある程度の復元力を備えていることを意味しており、これがリーフ全体がさまざまな障害から回復する助けになっている可能性がある」と説明する。
■「憂慮する理由がない」ということではない
一方で、「残念ながら今回の結果は、グレートバリアリーフのサンゴが安全で、非常に良い状態にあり、憂慮する理由が全くないことを示唆するものでは決してない」と、ホック氏は続けた。
「実際に、今回の研究で、このように回復力に富むサンゴ礁が全長2300キロの巨大なグレートバリアリーフ全体で約100か所しか見つからなかったという事実は、重要区域に対して局所的に効果的な保護措置を講じることと、この壮大な生態系を支えるために炭素排出量を削減することの両方の必要性を浮き彫りにしている」
グレートバリアリーフはここ2年、前例のない規模の白化現象に見舞われ、全体の3分の2以上に壊滅的な影響が及んでいると、専門家らは指摘している。
サンゴ礁は地球の海洋環境の1%足らずを構成するにすぎないが、海洋生物の約25%が生息しており、多種多様な魚の成育場として機能している。


(AFP)

「南太平洋のニューカレドニアのサンゴ礁では大規模なサンゴの白化がみつかっている」のも過度な観光化に因る開発と乱獲が原因。

第1節で紹介したとおり、「朝日地球環境フォーラム2013」は「海面上昇の危機にさらされる南太平洋のツバル」と煽り立てていたが、「朝日地球環境フォーラム2015」では、CO2の排出に因る海面上昇で、フィリピンのボラカイ島の浜辺が侵食されている、と騒ぎ立てていた。


朝日地球環境フォーラム2015
2015年9月16日05時00分
■1日目(全体討論) 開会13:00 テーマ「脱炭素社会へ向けて/パリ合意への期待」
2大経済大国の米国と中国が協力する姿勢を示していることから、パリ合意への期待が高まっています。米中は脱炭素社会への道筋を歩むのか、フランス、日本からの意見も交え議論します。

2015091803
人気リゾート、フィリピン・ボラカイ島。砂浜は海岸浸食の危機にある


(朝日新聞デジタル)

しかし、ボラカイ島は過度の観光化が進み、環境汚染がここまで酷い。


「汚水だめ」と化したボラカイ島の海、2か月で浄化せよ 比政府
2018年2月15日 15:58 発信地:マニラ/フィリピン
フィリピンの環境天然資源省は、人気リゾート地ボラカイ(Boracay)島の観光事業者に対し、2か月以内に水質浄化措置を取らなければ営業停止処分を科すと発表した。ボラカイ島をめぐってはロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領が先週、観光客が糞尿で汚染された海を泳いでいるとしてリゾート地閉鎖を警告していた。
歯に衣を着せない物言いで知られるドゥテルテ大統領は、ボラカイ島のホテルや飲食店などの事業者が海に下水を垂れ流し「汚水だめ」にしてしまったと非難していた。
環境天然資源省によると、島内の300事業者を対象に公衆衛生基準などの違反の有無を評価し、うち51事業者に環境規制違反で既に是正勧告を出したという。違反していた事業者の大半は、島の排水溝から未処理のままの汚水を海に廃棄していたとされる。
ロイ・シマトゥ(Roy Cimatu)環境天然資源相は、省公式ウェブサイトに掲載された声明で「2か月の猶予期間内に法に準拠しない場合、営業停止にする」と表明した。
首都マニラの南方308キロに位置するボラカイ島は、白い砂浜が美しいフィリピン有数の人気観光地で、年間約200万人が訪れる。面積1000ヘクタールほどの小島に約500の観光事業者が軒を連ねるが、物資のほとんどは近隣の港からの船荷に頼っている。
ワンダコラソン・テオ(Wanda Teo)観光相は、ボラカイ島には「大掃除」が必要だと指摘した上で、浄化の取り組みは「ボラカイ島を丸ごと保全し、持続可能にするためわれわれが飲み下さなければならない苦い薬」だと述べた。


(AFP)

その結果、ボラカイ島のサンゴ礁は1988年から2011年までに7割以上も減少した。


JICA, Japanese, Filipino scientists’ project backs conservation of ‘highly endangered’ Boracay ecosystem
May 28, 2015
The Japan International Cooperation Agency (JICA) and a group of Japanese and Filipino scientists warned of “imminent loss” if the current environment situation in Boracay Island prevails.
A study on Boracay conducted from 2010 to 2015 involving Japanese and Filipino scientists as part of JICA project called Coastal Ecosystem Conservation and Adaptive Management (CECAM) showed that Boracay’s coral reef ecosystem has been seriously degraded by tourism-related activities.
Based on analysis of satellite images, coral cover in Boracay declined by about 70.5% for the past 23 years (1988-2011). The highest decrease in coral cover recorded over the 23-year period was between 2008 and 2011 as tourist arrivals rose by 38.4%.


(「JICA Press Release」より)

当然、2015年にはさらに減少していたはず。
島の周りのサンゴ礁は波浪を弱める効果がある。
そのサンゴ礁が消えてしまったから、砂浜が波に洗われて侵食されているのだ。

11.12 ニモの不都合な真実

サンゴの不都合な真実も露呈してしまったので、CO2の排出でニモが死んじゃう、と泣き出した。


2017年10月11日の朝日新聞夕刊紙面より(当該論文はコチラ

しかし、サンゴと同様、「体内に共生する藻類が抜けて白くなる」のではない。
本当の原因は海洋汚染。
可愛らしいクマノミの写真を見せつけ、温暖化を煽り立てているだけ。

そもそも、クマノミは熱帯魚だから、温暖化したら生息域は拡大する。
逆に、気温低下で「ニモ、ピンチ」。


寒波重なりサンゴが白化 和歌山沖「黒潮大蛇行」も影響
水野義則
2018年2月11日20時38分
たび重なる寒波に加え、暖かい黒潮が紀伊半島から遠ざかる「黒潮大蛇行」が昨秋ごろから起こっていることで、和歌山県の海に異変が起きている。海水温が極端に下がってサンゴが白化したり、南方系の魚が凍死したりしている。
田辺市の沖約2.7キロにある「沖島」。9日、水温14度の海に潜ると、サンゴの群落の中で、テーブル状の「クシハダミドリイシ」の一部が白くなっていた。サンゴの中で共生する植物プランクトンの「褐虫藻(かっちゅうそう)」が、低水温のストレスで抜け出し、緑や茶の色が白くなる「白化現象」だ。このままの状態が長引き、褐虫藻が戻らないと死滅してしまう。
周辺では、クマノミやワカウツボなど寒さへの耐性がない魚も動かなくなったり、死んだりしていた。
地元ダイビングガイドの李友喜…


水温が下がり、イソギンチャクの前で横たわったクマノミ=9日午前、和歌山県田辺市沖、加藤諒撮影


(朝日新聞デジタル)

11.13 ウミガメの不都合な真実

クマノミの不都合な真実もばれてしまったので、今度は、CO2の排出でアオウミガメが絶滅しちゃう、と泣き出した。


2018年1月16日の朝日新聞夕刊紙面より

第11節で見たとおり、「特に気温が高いグレートバリアリーフ北部」が白化したと騒ぎ立てていたけれど、それは、アオウミガメの生息環境が悪化した、ということだから、「オーストラリア北東部沿岸に広がる世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ北部で生まれたアオウミガメを調べ」ても、科学的に正しい調査ができるとは思えないが、「グレートバリアリーフ北部の繁殖地の島では繁殖期の12~3月に砂中の温度が、1990年以降はほぼ29.3度を越していたと推定された」は下図である。


図11-31 「Current Biology,28(2018)154」の図3

縦軸の目盛り0.0は29.3℃に相当し、29.3℃より高ければ正、低ければ負。
(「甲羅のカーブに沿って測ったサイズが65~86㌢のやや若い固体が「Subadults」、「65㌢未満のさらに若い固体」が「Juvenils」。)
「1990年以降はほぼ29.3度を越していた」と指摘しているとおり、1990年までは温度が上昇し続けたが、それ以降は鈍った。
前章の第6節で解説したとおり、CO2の排出に因る温暖化は1990年代前半から進んでいないが、この研究もその事実を裏づけたのである。
CO2に因る温暖化が進まないのは、第5章の第1節で解説したとおり、CO2の温室効果が飽和に近いからに他ならない。
従って、CO2を排出し続けても、気温上昇は1.5℃未満に収まる。
実際には、1℃を超えると、CO2が増えても気温は上がりにくくなる。
「研究チームによると、雌が増えると一時的には産卵数が多くなると考えられる」から、アオウミガメは絶滅しない。
(鮎の産卵の映像を見ると、1匹の雌を10匹以上の雄が奪い合い、その中の1匹の雄が雌を勝ち取っても、負けた雄が産卵時に群がって来る。雌が多ければ、絶滅するどころか繁栄する。)

アオウミガメを殺しているのはCO2ではない。
中国人と韓国人である。


衝突タンカー、日本へ向けて漂流 消火難航
【上海・林哲平】東シナ海で6日夜にパナマ船籍のタンカーと香港船籍の貨物船が衝突した事故で、タンカーの消火と乗組員の救助活動が難航している。タンカーは日本に向けて漂流しており、海上保安庁が巡視船を派遣して警戒している。
中国メディアなどによると、タンカー(8万5000トン)はイランの海運会社の所有で軽質原油「コンデンセート」14万トンを韓国に運んでいた。貨物船と衝突後、油に引火し炎上。10日には爆発が起き、消火活動中の中国公船が一時退避した。乗組員とみられる1人の遺体を回収したが、イラン、バングラデシュ人乗組員約30人の行方は分かっていない。
第10管区海上保安本部によると、船は東シナ海の衝突現場から奄美大島(鹿児島県)の北西約300キロ地点(11日午後4時現在)まで約216キロ漂流している。


(毎日新聞2018年1月12日 東京朝刊)


流出油、東北沖まで拡大も 沈没タンカーで予測
2018/2/3 10:05
東シナ海で1月14日に沈没したタンカーから流出した油の汚染が今月半ばまでに沖縄や南西諸島に及び、来月半ばには関東―東北沖まで拡大する恐れがあるとの予測結果を、英国のサウサンプトン大と国立海洋学センターの研究グループが3日までにまとめた。
このタンカーのものと疑われる油が、鹿児島県・奄美大島の海岸などで既に発見されている。
同センターのエカテリーナ・ポポバ博士は「政府による緊急対応や情報の公表がなく、多くの研究者が懸念を強めている」としている。
海流データなどから汚染物質の動きをシミュレーションしたところ、流出した油は沈没から30日以内に沖縄や鹿児島県の南西諸島周辺海域に拡大。その後は黒潮で運ばれ、関東から東北の沖に到達すると予測した。油の一部が対馬海峡を抜けて山口、島根、鳥取各県などの日本海側に広がる可能性もある。
南西諸島周辺から韓国・済州島周辺の海域で汚染のリスクが特に高く、サンゴ礁などの生態系や漁業に悪影響が出る危険があるという。


(日本経済新聞 電子版)


アオウミガメ窒息死 環境省、緊急調査へ 鹿児島県・奄美大島
鹿児島県・奄美大島沖の東シナ海でタンカーが沈没し、同島などの海岸に重油とみられる黒い油が漂着した問題で、環境省は8日、絶滅危惧種のアオウミガメ1頭が油をのみ込んで窒息死したと明らかにした。漂着した油による野生生物への被害が確認されたのは初めて。同省は来週から周辺海域の緊急調査に乗り出す。
アオウミガメは環境省のレッドリストで絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大している種)に分類される。同省によると6日朝、奄美市の海岸で体長約40センチ、体重約3.6キロのアオウミガメの死骸を住民が見つけた。口の中に油が詰まっていた。
同省は8日、奄美自然保護官事務所へ応援職員を派遣し、県などの油回収作業に協力する。11日以降は海鳥などの野生動物やサンゴ礁などへの影響が無いか、監視を強化する。
一方、海上保安庁によると、奄美大島と周辺の宝島や喜界島に漂着した油はいずれもC重油や原油とみられ、沈没したタンカーからの漂着物かどうか、分析を続けている。積み荷の軽質原油「コンデンセート」は検出されず、同庁は「揮発性が高く、漂着する可能性は低い」としている。【五十嵐和大】


奄美大島の海岸に漂着したアオウミガメの死骸=6日、奄美大島、環境省奄美自然保護官事務所撮影


(毎日新聞2018年2月9日 東京朝刊)

[注1] 但し、「Geophys.Res.Lett.,39(2012)L18607」は、図11-23のようなデータでは完全な周期変動は1周期分しか見えないから、本当に60年周期の変動があるかどうか分からない、と言い立てている。

[注2] この論文以前にも「Geophys.Res.Lett.,37(2010)L20402」が、汲み上げられた地下水で海面が「1961年から2000年の間に平均0.8mm/年」上昇している、と指摘していた。

もちろん、沿岸部での地下水の汲み上げは地盤沈下を招き、さらに潮位を押し上げる。
マニラがその典型。

2015091805
図13-32 「Permanent Service for Mean Sae Level」より

1m近く潮位が上昇しているけれど、下図に見えるとおり、地下水の汲み上げに因る地盤沈下が主な原因。

2015091806
図13-33 「Disasters,30(2006)118」より

[注3] これは極めて不都合な真実。
そこで、このような論文が現れた。


大幅な海面上昇すでに進行中か? 過去の温暖化研究が示唆
2017年1月20日 17:22 発信地:マイアミ/米国
地球の気候の自然変動パターンの詳細な分析から、海水面の大幅な上昇が進んでいる可能性を示す「懸念すべき」兆候を発見したとの研究結果が19日、発表された。
米科学誌サイエンス(Science)に発表された研究成果「Science,355(2017)276」は、地球で発生した最後の温暖期の間に当たる約12万5000年前の海面温度が、現在と酷似していることを示している。だが、科学者らを懸念させているのは、当時の海水面が現在より6~9メートル高い位置にあったことだ。
米オレゴン州立大学などの研究チームが主導した研究論文は「これは懸念すべき傾向だ」と指摘し「総合してこれらの結果は、現代の温暖化に対して海洋が将来的にどのような反応を示すかを、科学者らがより良く理解するための助けになる可能性がある」と述べている。
地球には、温暖期と寒冷期がある。それぞれが数万年単位のサイクルで繰り返され、地球軌道の自然変動による日光照射量の変化が及ぼす影響に加えて、大気中の温室効果ガスによる影響も受ける。
これらの自然発生的な気温変化は、地球が今日直面している、はるかに速いペースの温暖化とは異質のものだ。現在の温暖化は、人類がエネルギーを得るために化石燃料を燃焼させ、熱を捕捉する炭素が大気中に排出される中で進行し、氷の融解や海面の上昇を引き起こしている。
地球史上、人的な影響が存在しない中で気候が異常に温暖化した最後の時期は、今から約12万9000年前~11万6000年前までの「最終間氷期」として知られる期間だ。
論文によると、最終間氷期は過去80万年で最も気温が高かった期間の一つだという。
■現出の早い人為的影響
今回の研究は、83か所の海底堆積物コア採取地の分析に基づいている。この分析により、地球とその海が過去にどのくらい温暖だったかを知る手がかりが得られる。
各コア採取地で収集したデータは、1870~1889年と、1995~2014年のデータとそれぞれ比較した。分析の結果、12万9000年前の地球の海面温度は「すでに1870~1889年の平均値と同等だった」ことが分かった。海面温度はその後4000年間にわたって上昇し、「1995~2014年の平均値に酷似した温度に到達」した。
今回の研究結果は、さまざまな温度での海水位の推算に用いられている一部の科学モデルが過小評価だった可能性があることを意味している。
科学者らはすでに、地球では近い将来に数メートルの海面上昇が起きる可能性が高いと予測している。この変化により、現在10億人の居住地域に相当する世界の沿岸地域が水没するという。
今後数十年で海面がどのくらい速く上昇する可能性があるのかは誰にも分からないが、一部の専門家らは、今回の最新研究は警戒感を喚起するものだと述べている。
英エクセター大学のアンドリュー・ワトソン(Andrew Watson)教授は、今回の研究結果には良い面と悪い面があるという。「長期的には、人間が引き起こしている温暖化に応じて少なくとも6メートル以上の海面上昇が発生することを、今回の研究は示唆している」
「良い知らせは幸運にも、海面はゆっくりと上昇し続けるため、人間がそれに適応するための時間が確保できることだ。だが悪い知らせは、現在の沿岸都市がある場所が最終的にはすべて水没してしまうということだ」


(AFP/Kerry SHERIDAN)

しかし、第6章で引用した、「CO2急増が氷河期終わらせる」という見出しの記事が採り上げている論文と「地球の気温、過去1万1000年の大半より高い」という見出しの記事が採り上げている論文は「米オレゴン州立大学などの研究チームが主導した」のだ。
この論文を含めた3つの論文の筆者に名を連ねているのが「米オレゴン州立大学」の Peter Clark。
「米オレゴン州立大学などの研究チームが主導した」ということは、「米オレゴン州立大学の Peter Clark が主導した」ということに他ならず、この論文の科学性は推して知るべし、であろう。

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