「3%の科学」vs「97%の宗教」

16.1 「97%」の不都合な真実

これまでの解説でIPCCのデタラメさが余す所無く示されたと思うが、IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者に唯一人の日本人として名を連ねている江守正多はこのように喚き立てている。


科学者の合意も想像してみてほしい
ところで、この記事に何度も出てきた Nature Climate Change という雑誌は、Nature の系列紙である。厳密にいえば学術誌ではなく科学雑誌であるが、そこらの学術誌よりもよほど厳しい論文審査がある。
科学にまったく興味が無い方でも、Nature という雑誌は聞いたことがあるだろう。小保方さんのSTAP論文が掲載され、後に取り下げられることになった権威ある雑誌が、その Nature だからだ。Nature に載った論文に不正が一つでもあればどんな大騒ぎになるかは、みなさんご覧になってよくご存じのとおりだ。
その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる。
もちろん、世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう。
審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある。残りの3%のうちのある割合は、既に述べた組織的な懐疑論・否定論活動に影響されているはずだ。
テレビの討論番組や公開討論会で、「温暖化論者」と「懐疑論者」を同数呼んで議論させるものがあるが(筆者も何度か経験した)、これだと「懐疑論者」側の声が実態よりもずっと大きく聞こえることになる。「温暖化論者」と「懐疑論者」を97対3の割合で呼んで議論したらどういう光景になるかは、こちらをご覧頂きたい。
もちろん、科学は多数決ではない。しかし、97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい。


(「【COP21閉幕】温暖化への対処をみんなで議論する時代へ 異論を唱えるにも「懐疑論」は不要」より)

ここで「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある」というのは、これを指しているのだろう。


We analyze the evolution of the scientific consensus on anthropogenic global warming (AGW) in the peer-reviewed scientific literature, examining 11944 climate abstracts from 1991-2011 matching the topics ‘global climate change’ or ‘global warming’. We find that 66.4% of abstracts expressed no position on AGW, 32.6% endorsed AGW, 0.7% rejected AGW and 0.3% were uncertain about the cause of global warming. Among abstracts expressing a position on AGW, 97.1% endorsed the consensus position that humans are causing global warming. In a second phase of this study, we invited authors to rate their own papers. Compared to abstract ratings, a smaller percentage of self-rated papers expressed no position on AGW (35.5%). Among self-rated papers expressing a position on AGW, 97.2% endorsed the consensus. For both abstract ratings and authors’ self-ratings, the percentage of endorsements among papers expressing a position on AGW marginally increased over time. Our analysis indicates that the number of papers rejecting the consensus on AGW is a vanishingly small proportion of the published research.


(「Environ.Res.Lett.,8(2013)024024」の要約)

しかし、33%の97%だから、実際には、1/3にすぎない。
我国の研究者を調べた結果も同じである。


「暑い理由」CO2派は7割
「地球温暖化」気象学者の本音
編集部 小田光康 ライター 奥山暁子
日本の気象学者は、地球温暖化の主な原因をどう見ているのだろうか。アエラでは、日本気象学会に所属する研究者らを中心に、アンケートをした。
「最近の地球表面の気温上昇を指す『地球温暖化』の主な原因が、二酸化炭素などの温室効果ガスにある」との学説に対して、強く賛成する「1」から、強く反対する「5」までの5段階評価をしてもらった。約100人の専門家に送り、半数近い46人から回答が寄せられた。
結果は、賛成にあたる「1」と「2」を合わせると33人で、約7割が温室効果ガス主因説を支持。反対にあたる「4」「5」は4人で1割弱だった。中間の「3」に「その他」を合計すると9人で、約2割だ。
この結果からも、日本の気象学者はおおむね、地球温暖化の温室効果ガス主因説を支持していると考えられる。
だが、いみじくもIPCCの第4次報告書が地球温暖化と温室効果ガスの因果関係を「very likely」(可能性がかなり高い)と表現したように、コンセンサスは決定論的に位置づけられず、議論の余地があることは確かだ。
にもかかわらず、肝心のその議論が盛り上がっているようには見えない。これは記者を含めた多くの素人にとって、不思議なことではないか--

2012091901


(AERA 2012年9月24日号)

記事は「7割」と言い立てているけれど、100人中33人、つまり、1/3である。
殆どの気候学者の本音は以下のとおり。


前章で地球温暖化問題の概要を述べたが、こういった状況に対し、気候や気象を専門としている科学者・研究者はどのような見解を持っているのだろうか。国立研究機関所属のAとB(共にプロジェクト研究員であり、気候学と気象学を専門としている)は以下のように答えている。

A:「本当に地球は温暖化するのか?」と聞かれて、我々としては「さあ…」とか「実際なってみなけりゃ分からない」というのが正直なところだ。
B: しかしそれでは困る、暖かくなってもらわないと困るという人がたくさんいると思う。

・・・中略・・・

それほど地球温暖化に関する科学的な見解は曖昧であるにもかかわらず、「温暖化するのは確実」という風潮になっているのは何故でしょう。

A: そう言ったほうがおもしろいからだと思う。情報を利用する側の問題。
A:日本ではよく使われる、世界中の温度が将来どうなるかを示す真っ赤になるシミュレーションの結果があるが、あれはIPCCのモデルの中で一番上のものを使用している。少なくとも、全部のモデルを平均したらあのような結果にはならない。ああいう演出にすると、世間がそちらの方向を向きやすい。

・・・中略・・・

科学と社会が繋がり科学が少し変質したというのはつまり、科学データが社会的に利用されることになり、事実だけを淡々と求めるはずの科学や科学者の姿勢が揺らいでいるということであろうか。その疑問に答えるのが、AとBの次の発言である。

A:IPCCはもともと政治的な意味合いの強い存在だったので、「あまり自分たちとは関係ないな」と思っていた。

・・・中略・・・

(クライメートゲート)事件が日本であまり報道されなかったことについては。

A: 言っても分からないからだろう。アメリカなど懐疑論派ががんばっている国だと、議員が言って話が大きくなったりしたが、日本の国会議員には温暖化懐疑派がいない。それが大きな原因では。
B: あまり興味がないのか、詳しいところが分からないからか。世の中の関心度がよそとは違ったのが大きいのでは。

・・・中略・・・

では、同じような構造で温暖化も色んな異常現象の原因にされている?

A: そういう面もあると思う。たとえば雨の降り方で言うと、長いスパンで見ると実は正常な範囲内に収まるし、100年間の記録を見てみるとそれぐらい降ったこともある。また今年の9月、統計を取り始めて以来もっとも暑かったのは事実だが、その原因がどこにあるかというのは議論の余地がある。温暖化か、海の影響か、色々絡み合った末の自然現象か…。
B:長いスパンで考えると、自然変動の幅が地球温暖化による変動、いわゆるトレンドよりもはるかに大きいので、断定できない。今年の夏も、暑かったのは間違いないが、もともと気温はそういう動きをしているものである。
A:「温暖化の影響ですかねえ?」とぼかして言っても、温暖化という言葉を出すだけで皆は関係あるのかなと思ってしまう。

・・・中略・・・

本来科学は真理を探究するものだと思いますが、そのように政治や産業界に影響されるのが現状ということでしょうか。

A: 出資してくれる人の都合もあるし、その人たちの都合の良い方向に研究を進めていかなければならない。
A: 自然現象としておもしろいから研究したいけど、少し余分に色を付けて、「こういうふうにすると環境問題的な視点から社会に貢献できる」というような書き方をすることは皆やっている。
B: そうしないと、国民の税金から支払ってもらっている以上研究費が出ない。


(「同志社社会学研究 No.15、2011、57」より)

また、「97%」という数字が初めて表れたのは、上記の論文ではなく、こちらである。


An invitation to participate in the survey was sent to 10,257 Earth scientists.
・・・中略・・・
1. When compared with pre-1800s levels, do you think that mean global temperatures have generally risen, fallen, or remained relatively constant?
2. Do you think human activity is a significant contributing factor in changing mean global temperatures?
・・・中略・・・
Of these specialists, 96.2% (76 of 79) answered “risen” to question 1 and 97.4% (75 of 77) answered yes to question 2.


(「EOS 90(2009)22」より)

10257人の「Earth scientists」のうち、回答したのは80人にも満たず、そのうちの97%が「合意」した、ということにすぎない。
実は、1%の合意も無いのだ。

16.2 「97%」は談合に合意

たとえ「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した」を真に受けても、それらは気候モデルを用いた論文である。
世界中の大学・研究所がそれぞれに気候モデルを開発しているけれど、それらの基本部分は同一であり、プログラミングコードまで同一だから、気候モデルを用いた論文が同じ結論(CO2を排出したから気温が上がった)になるのは当たり前である。
基本的に同じことをしているだけの、同じ結論になることが始めから分かりきっている論文は、何本あろうとも、まとめて「1つ」として数えるべきものである。
1000の論文のうち、970が気候モデルを使っていても、それらの論文の一つ一つは「1」ではなく「970分の1」にすぎないのだ。
従って、「97%」ではなく、全く逆に、「審査を経て出版された学術論文の1/31=1-0.97=3%が温暖化の科学に合意した」だけである。

「97%は温暖化の科学に合意した」論文には、気候モデルを用いた論文以外に、気候モデルの結果に依存した論文もある。
例えば、第10章で採り上げた「南極海に吹く風、過去1000年で最も強く 豪研究」という記事に見える論文である。
「我々の観測結果と気候モデルとを照らし合わせると、温室効果ガスの上昇との関連性があることは明白だ」と言い張っていた。
しかし、その論文で得られた知見、すなわち、図10-1からは、そのような結論は導けない。
気候モデルに迎合しているだけである。
「もちろん、科学は多数決ではない」と抗弁しているが、「多数」に迎合しているだけである。
そのような論文を盾にして、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容である」と言い立てようとも、科学的に意味は無い。
同じ結論になることが始めから分かりきっている論文、それに迎合する論文が97%を占めているとしても、それは「談合」であり「合意」ではない。

第11章で紹介したとおり、NOAAの報告書「State of the Climate in 2008」は、気温上昇が15年間停滞していれば気候モデルは95%破綻している、と認めていたが、ドイツの Hans von Storch に依れば、95%ではなく98%である。


At my institute, we analyzed how often such a 15-year stagnation in global warming occurred in the simulations. The answer was: in under 2 percent of all the times we ran the simulation. In other words, over 98 percent of forecasts show CO2 emissions as high as we have had in recent years leading to more of a temperature increase.


(「Why Is Global Warming Stagnating?」より)

「温暖化の科学=気候モデル」は98%の確率で破綻しているけれど、「97%は温暖化の科学に合意」と言い張るのだから嗤ってしまうが、「談合」だと理解すれば納得できるだろう。

16.3 ホッケー・スティック

第13章図13-6に見えるとおり、IPCCは未だにホッケー・スティックを握り締めて放さない。
ホッケー・スティック曲線は「温暖化の科学」の絶対原理なのだ。
「97%は温暖化の科学に合意」ということは「97%はホッケー・スティックに合意」ということである。
実際、江守正多もこのように言い張っている。


木の年輪等を用いた北半球の過去の気温変動の復元研究(それはいわゆる「ホッケースティック」だから信じないという方は、こちらを)によれば、マウンダー極小期前後の「小氷期」の気温低下は1℃未満である。テムズ川の周辺では自然変動等の別の要因も重なってもっと寒かったかもしれないが、北半球平均ではこの程度ということだ。しかも、このすべてが太陽活動の効果でなく、火山噴火も寒冷化要因として効いていたと考えられる。
マウンダー極小期の寒冷化効果は0.1~0.3℃という研究もあるが、仮に最大限大きく見積もって、小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせいだったとしても、温室効果ガスの増加により今世紀中に予想される世界平均気温上昇(2℃~4℃程度)より小さい。つまり、太陽活動の弱まりが温暖化を一部打ち消すことはあっても、すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらすとは考えにくい。


(「それでも寒冷化が正しいと思っている方へ 世界でも撤退が目立つ温暖化科学への懐疑論」より)

わざわざ「それはいわゆる『ホッケースティック』だから信じないという方は、こちらを」と言い立てていることからも明らかだが、「火山噴火も寒冷化要因として効いていたと考えられる」は第6章図6-5と全く同じであり、ホッケー・スティックを正当化しているのだ。
しかし、そのデタラメは説明したとおりだから、「97%は温暖化の科学に合意」の科学的無意味さは明らかである。
実際、科学においては、往々にして、たった一つの観測データ(または実験データ)が決定的に重要な意味を持つ。
「北半球の過去の気温変動」においては第6章図6-4が正にそれである。
「97%は温暖化の科学に合意=97%はホッケー・スティックに合意」と喚き立てようとも、寒暖計の記録である図6-4の信頼性と「木の年輪等を用いた復元研究」の信頼性は次元が異なるほどに違う。
図6-4は太陽活動が気候に大きく影響することを、であるから、ホッケー・スティックのデタラメをハッキリと示している。

先に見たとおり、「小保方さんのSTAP論文が掲載され、後に取り下げられることになった権威ある雑誌が、その Nature だからだ。Nature に載った論文に不正が一つでもあればどんな大騒ぎになるかは、みなさんご覧になってよくご存じのとおりだ」と言い立てていたけれど、第6章の[注4]で紹介したとおり、Nature に載ったマイケル・マンのホッケー・スティック論文「Nature,392(1998)779」が不正論文であることは、もはや、完全に分かっていることである。(日本語の詳しい解説では「現代化学,466(2010)58」を参照。)
STAP論文では、我国においてES細胞研究の第1人者と目されていた研究者が自殺に追い込まれた。
科学において、論文の不正とはそれほどに重大な問題なのだ。
自然科学の他の分野なら、マイケル・マンのような輩はとっくに研究者生命を失っている。
ところが、どうか。
「温暖化の科学」では、マイケル・マンが今なおデカイ面をして居座っている。

2016082001
図16-1 マイケル・マン(「Scientific American,292(2005)34」より)

マイケル・マンが自ら身を引かないのなら、学界が彼を追放すべきである。
ところが、どうか。
米国の「温暖化」学界はマイケル・マンを庇っている。
マンの論文自体は不正だが、ホッケー・スティック曲線の正しさはその後の論文で確認されている、と抗弁するかもしれないが、不正な論文と同じ結論になること自体がおかしい。
STAP細胞を発見した、と言っているようなものではないか。
しかも、ホッケー・スティック曲線が正しいと言うのなら、なおさら、マイケル・マンを学界から追放すべきであろう。
マイケル・マンを追放し、不正は絶対に許さないという姿勢を示してこそ、ホッケー・スティック曲線の正当性を主張できるはずである。
ところが、米国の「温暖化」学界は、と言うよりも、世界の「温暖化」学界はマイケル・マンを庇っている。
(後で紹介するけれど、江守正多が「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」と言い張っているのが、その証である。)
「温暖化の科学」が自然科学の他の分野とは全く異質な世界であることは明らかであろう。
「97%は温暖化の科学に合意」とは「97%は不正に合意」に他ならない。
「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と言い立てていたけれど、マイケル・マンを庇い立てするような連中が論文を書き、マイケル・マンを庇い立てするような連中が審査をしているのだから、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意」しようとも、それは全くの「茶番」にすぎない。

「小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせいだったとしても」と抗弁しているけれど、気候モデルでは太陽活動は気候に殆ど影響しないのだから、「小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせい」なら、気候モデルは人為的排出CO2の影響を著しく過大評価している。
従って、「温室効果ガスの増加により今世紀中に予想される世界平均気温上昇(2℃~4℃程度)」も著しい過大評価である。
実際、第5章で解説したとおり、「小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせい」なら、人為的排出CO2に因る気温上昇は最大限に見積もっても0.4℃であり、従って、第13章の第8節で解説したとおり、気候感度は0.75℃に止まる。
にもかかわらず、「太陽活動の弱まりが温暖化を一部打ち消すことはあっても、すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらすとは考えにくい」と言い張っている。
デタラメを科学に見せかけるための「97%は温暖化の科学に合意」に他ならないことを露呈したと言えよう。

16.4 ハイエイタス

先に紹介したとおり、江守正多は「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚き立てていたけれど、第11章第13章第14章、そして、前章で解説したとおり、1998年以降の気温上昇停滞(ハイエイタス)で気候モデルの非科学性が明らかになったのだから、気候モデルを用いた論文と気候モデルに依存した論文を盾にして、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容である」と言い張るのは、そして、それに依拠するCOP21は「茶番」以外の何物でもない。
その証拠に、ハイエイタスに関して、江守正多はこのように説明している。


世界平均気温の上昇が著しい
1980年代、90年代に顕著だった世界平均気温の上昇が、今世紀に入って停滞していた(このことをもって、地球温暖化は止まったとか、これを予測できなかった気候の科学は疑わしいと評する人たちもいた)。
これが昨年2014年に再び観測史上最高の記録を更新したことは以前にお伝えしたとおりだ。
月単位で見ると、世界平均気温の最高記録(同月の過去の記録に対して)は、2014年4月、5月、6月、8月、9月、10月、12月に更新された。

では、今年に入ってからはどうだろうか。
2015年も1月、3月、5月、6月、7月、8月と、ほぼ毎月という勢いで最高記録更新が続いていることがわかる。
特に今年5月に入ってからは、平年値(1981~2010年の平均)からの偏差が5月:+0.38℃、6月:+0.41℃、7月:+0.38℃、8月:+0.46℃と大きく、それまでの記録がせいぜい+0.3℃強であったことと比べると、ぶっちぎりの記録更新が続いているのである。(いずれもデータは気象庁に基づく)
ちなみに、この間に日本の平均気温が最高記録を更新したのは2015年5月の1回のみである。日本で体感できる気温のみで考えていたのでは、地球全体の傾向を見誤ることがおわかり頂けるだろう。
・・・中略・・・
PDOの反転で再び顕著な気温上昇期に突入か
気候の自然変動パターンはエルニーニョ・ラニーニャのほかにもいろいろある。特に、近年の気温上昇の鈍化との関係で気候科学者が注目しているのは、太平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation: PDO)とよばれる現象だ。
PDOは北太平洋域に変動の中心を持つが、それに伴う熱帯太平洋の変動パターンは、エルニーニョ・ラニーニャによく似ている。そして、PDOの周期は10年~数十年である。すると、熱帯太平洋では「エルニーニョっぽい」状態と「ラニーニャっぽい」状態が10年~数十年で入れ替わる現象が起きていることになる。
世界平均気温が顕著に上昇していた1980~90年代は、このPDOの符号が正で、熱帯太平洋がエルニーニョっぽくなっていた時期と一致する。そして、今世紀に入ってからの気温上昇鈍化期は、PDOの符号が負で、ラニーニャっぽい状態が続いていた。
これについて、英国気象局は、PDOの符号が現在再び反転して正になってきている可能性を示唆する研究報告を先月発表した。これは、世界平均気温が再び顕著な上昇期に入り始めた可能性があることを意味している。大西洋の変動など不確実な要因もある、と英国気象局は慎重な姿勢を崩さないが、少なくとも来年までは記録的な世界平均気温が続くだろうとしている。
今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている。つまり、温室効果ガスの増加によって赤外線が地球から宇宙に逃げにくくなり、地球がシステム全体として持つエネルギーは増え続けているわけだが、その増加分が海洋深層に運ばれることによって、地表付近の気温上昇として現れてきていなかったというわけである。
ということは、このパターンが逆転すると、海洋深層に貯め込まれていた熱が逆に地表付近に運び出され、急激な気温上昇が生じる可能性があるということだ。


(「地球温暖化リターンズ 世界平均気温が再び顕著な上昇傾向に突入か」より)

第11章の第2節でも解説したとおり、「今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている」のなら、つまり、PDOの負位相がハイエイタスの原因なら、逆に「1980年代、90年代に顕著だった世界平均気温の上昇」には「このPDOの符号が正で、熱帯太平洋がエルニーニョっぽくなっていた」ことが寄与していたはず。
「世界平均気温が顕著に上昇していた1980~90年代」は「海洋深層に貯め込まれていた熱が逆に地表付近に運び出され、急激な気温上昇が生じた可能性があるということだ」。
にもかかわらず、前章図15-17の赤線で示したとおり、気候モデルでは「1980年代、90年代に顕著だった世界平均気温の上昇」は専ら人為的排出CO2が原因。
「今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている」ということは、「気候モデルは間違っていたことがわかってきている」ということだ。

ところが、江守正多はこのように言い張っている。


過去の自然の気候変動を無視している
温暖化の研究は過去(たとえば数100年~数10万年)に起こった自然の気候変動を無視していると思われていることがあるが、それも誤解である。過去の気候変動に関する知見は、将来の温暖化を考える上で明らかに重要と認識されており、さかんに研究されている。例えば、気候モデルを用いて過去1000年の気候変動を再現する研究が世界中で行われている。過去の気候についてのデータには不確実性が大きいが、数100年スケールの変動は太陽活動の変動と火山噴火で概ね説明できる一方で、20世紀の温暖化は人間活動の影響を入れないと説明できない。したがって、現在の温暖化が過去の自然変動の延長ではないか、という素朴な問に対しては、根拠を持って否ということができる。

間違っている可能性は無いのか
これらの誤解について読者に正しく認識してもらった上で、現時点の温暖化の科学が間違っている可能性について考えてみたい。先ほど述べたように、現時点で知られている気候変化の外部要因に関する知見と、気候モデル(これは気候システムに関する知見の結晶と見ることもできる)に基づけば、20世紀の世界平均気温上昇は人間活動による温室効果ガスの増加により説明でき、かつそれを抜きにしては説明できない。それにもかかわらず温暖化の科学が間違っているとしたら、どんな可能性が考えられるだろうか。
例えば、実は「未知のプロセス」があって、このまま温室効果ガスが増えても、気温を抑制するフィードバックが働き、気温はほとんど上がらないかもしれない。その場合、「未知のプロセス」抜きの気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現されてしまうのはなぜか。それはたまたまかもしれない。20世紀も温室効果ガスの増加によって気温が上昇したのではなく、「未知の外部要因」のせいで上昇したのかもしれない。
このような批判的な考察は、科学を進める上で時として非常に有用であろう。未知の要素を2つ以上導入すれば、温暖化の科学が間違っている可能性を考えることができることはわかった。では、果たしてそんなことはありえるだろうか。筆者なりに答えるならば、その可能性がゼロであるとは原理的にいえない。しかし、現時点で、その可能性を真剣に考えなければならない証拠を温暖化の科学は突きつけられていない。


(「いまさら温暖化論争? 温暖化はウソだと思っている方へ」より)

気候シミュレーションでは「1980年代、90年代に顕著だった世界平均気温の上昇」は専らCO2の排出が原因だから、「『未知のプロセス』抜きの気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現されてしまう・・・現時点で、その可能性を真剣に考えなければならない証拠を温暖化の科学は突きつけられていない」と言い張るのは、「世界平均気温が顕著に上昇していた1980~90年代は、このPDOの符号が正」は全く寄与していない、と言い張る以外の何物でもない。
露骨なまでに「過去の自然の気候変動を無視している」。
しかも、CO2の排出は20世紀後半に激増したにもかかわらず、第13章図13-3に見えるとおり、20世紀前半の気温上昇は20世紀後半と同じほど速かったから、第8章図8-1に見えるとおり、気候シミュレーションは20世紀前半の気温上昇を再現できない。
つまり、「気候シミュレーションで20世紀の気温上昇は再現されない」。
第13章図13-8で解説したとおり、気候モデルは「太陽活動の変動」を無視しているから、「気候モデルを用いて過去1000年の気候変動を再現する」とホッケー・スティック曲線になる。第6章の第3節で解説したとおり、マウンダー極小期は太陽活動の低下が原因であるにもかかわらず、「火山噴火」を持ち出すのは、「太陽活動の変動」を無視しているからである。「これらの誤解について読者に正しく認識してもらった上で」と嘯いて、実は、読者に誤解を植えつけようとしている。「これらの誤解を読者に正しいと認識してもらった上で」、「気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現されてしまう」と言い張っているのだ。)
前章図15-2に見えるとおり、「20世紀の世界平均気温上昇は自然の気候変動を考慮すれば説明でき、かつ、それを抜きにしては説明できない」。
「気候シミュレーションで20世紀第4四半期の気温上昇が再現されてしまうのは」、人為的排出CO2の影響を過大評価した結果が「過去の自然の気候変動」を考慮したの結果と同じになっただけである。
しかも、第8章の第1節で解説したとおり、エアロゾルで辻褄を合わせているだけである。
江守正多は「現在の温暖化停滞が過去の自然変動の延長ではないか、という素朴な問に対しては、根拠を持たずに否ということができる」のだ。

もちろん、江守正多だけではない。
江守正多の論説を執拗に採り上げるのは、もちろん、それが日本語で書かれているからであり、また、温暖化対策に直接影響を及ぼす政策策定者向け要約の日本人唯一の執筆者だからでもあるが、江守正多の主張がIPCC学派を象徴しているからである。
実際、江守正多と共に政策策定者向け要約の執筆者に名を連ねる Jochem Marotzke も「過去の自然の気候変動を無視している」。
(江守正多は「英国気象局は、PDOの符号が現在再び反転して正になってきている可能性を示唆する研究報告を先月発表した」と言い立てていたけれど、ここで「could you not therefore explain the accelerated warming of the 80s and 90s as being driven by the other phase of natural variability?」と問い質しているのは英国気象庁の主任科学者、ジュリア・スリンゴである。)


At a Royal Society meeting in 2013, Julia Slingo of the Met office played devil’s advocate and posed the following question to Prof Jochem Marotzke of the German Max Planck Institute of Meteorology, see the 42:46 mark royalsociety.org/marotzke.mp3:

“…it’s a great presentation about 15 years being irrelevant, but I think, some of us might say if you look at the Pacific Decadal Oscillation and it’s timescale that it appears to work, it could be 30 years, and therefore I think, you know, we are still not out of the woods yet on this one. … If you do think it’s internal variability, and you say we do think the Pacific Decadal Oscillation is a key component of this, and it’s now in it’s particular phase, but was previously in the opposite phase, could you not therefore explain the accelerated warming of the 80s and 90s as being driven by the other phase of natural variability?”

Simplifying Slingo’s incoherence: “If the current cooling is due to the negative PDO phase, then wouldn’t the warming of the 80s and 90s be a result of the positive PDO phase back then?”
Marotzke answers after much incoherence of his own:

“Um…I guess I’m not sure.”

These people make no sense at all. They are sure it’s the oceans’cold phase gobbling up heat when temperatures fail to rise. But when temperatures increase, they just can’t be sure that the oceans are involved at all, and insist they would not bet much money on it. Of course it just can’t work only one way. Marotzke is delivering only what would call unadulterated absurd science


(「Oops…Trenberth Concedes Natural Ocean Cycles Contributed To 1976-1998 Warming … CO2 Diminishes As A Factor」より)

第11章の第4節で引用した「温暖化の熱の一部は海中に潜んでいる?」と題する記事中の論文も、「下降したものはいずれ上昇する」のなら「上昇したものはいずれ下降する」はずだから、ハイエイタス以前の気温は「自然な周期的気候変動」で上昇していたはずなのに、それには一言も無し。

先に紹介したとおり、江守正多は「その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と喚き立てていたけれど、「系列紙の Nature Climate Change」に掲載された解説は次のように指摘している。


Interestingly, no one really talks about the other side of this situation: global warming acceleration. The mid-1970s through to the mid-1990s was a period of positive PDO and saw an acceleration in warming. If you consider the arguments about the effect of the negative phase on warming, then a positive PDO should result in the opposite.


(「Nature Climate Change,4(2014)158」より)

江守正多は「97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい」と喚いていたけれど、余程の阿呆でも無い限り、「相互検証を繰り返し」たら「the other side」に気づくはず。
ところが、「97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返して」も「no one really talks about the other side of this situation」。
そんな愚か者たちが「合意」する「温暖化の科学」を「信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。

16.5 「97%の愚か者」は素人の言いなり

「no one really talks about the other side of this situation」だけれど、「other side」は相対的な概念である。
2000年以降の「PDOの符号が負で、ラニーニャっぽい状態が続いていた」時期から見れば、「PDOの符号が正で、熱帯太平洋がエルニーニョっぽくなっていた時期」は「the other side」だが、逆に、「PDOの符号が正で、熱帯太平洋がエルニーニョっぽくなっていた時期」から見れば、「PDOの符号が負で、ラニーニャっぽい状態が続いていた」時期が「the other side」。
従って、「no one really talks about the other side of this situation」なら、「PDOの符号が負で、ラニーニャっぽい状態が続いていた」にも「no one really talks about」のはずだが、「今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている」と言い立てるのは何故か?

江守正多が「これが昨年2014年に再び観測史上最高の記録を更新したことは以前にお伝えしたとおりだ」と書いていたのは、こちらである。


今世紀に入ってからの気温上昇停滞期には、熱帯東太平洋の海面水温が相対的に低いラニーニャに近い状態が続いていた。これが今年はエルニーニョ「気味」になってきたと思ったら、強いエルニーニョの発生を伴わずとも世界平均気温は大きく上がってしまった。今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていたという印象を受ける。
今後の顕著な気温上昇の兆しか
もし、今年を境にエルニーニョ気味の状態が長期的に維持されるならば、世界平均気温は80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向に再び戻るだろう。
・・・中略・・・
地球全体が持つエネルギーが年々増加しているにもかかわらず、今世紀に入って世界平均気温の上昇が停滞していたのは、増加分のエネルギーが海洋深層に運び込まれ、地表面付近に配分されていなかったせいであることが、徐々にわかってきている。詳細なメカニズムの解明にはまだ研究が必要だが、ラニーニャ気味の期間にはそのようなことが起こるようだ。逆にエルニーニョ気味の期間が始まれば、増加分のエネルギーは地表面付近の顕著な温度上昇となって現れるだろう。


(「今年の世界平均気温が観測史上最高となる見通し」より)

「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」というのはこれである。

2014032502
図16-2 「Environ.Res.Lett.,6(2011)044022」より

観測されている気温(但し、GISS、NCEI、HadCRUだけではなく人工衛星のデータも含めた平均値)から火山活動の影響とENSOの影響を取り除いたら、つまり、人為的要因だけなら「気温変動のベースが上がってきていた」と言うのである。
しかし、「今年を境にエルニーニョ気味の状態が長期的に維持されるならば、世界平均気温は80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向に再び戻るだろう」ということは、「逆にエルニーニョ気味の期間が始まれば、増加分のエネルギーは地表面付近の顕著な温度上昇となって現れるだろう」ということは、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」は「エルニーニョ気味の状態が現れた形で、気温変動のベースが上がってきていたという印象を受けた」にすぎず、ENSOを取り除けば、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」ではなくなるから、上図のようになるはずがない。

これ自体は先に解説したことと基本的に同じだが、ここで注目すべきは論文の著者である。
筆頭著者の「Grant Foster」は気候(または気象)学者ではない。
「よほど強い動機と思い込み」があるのか、はたまた、何らかの背後関係があるのか、定かではないけれど、「Open Mind」なるブログ上で温暖化を煽り立てている人物であり、上図はそのブログの記事を論文に仕立て上げたものである。

さらに、第11章で紹介したけれど、「エルニーニョ気味の状態が現れた形で、気温変動のベースが上がってきていたという印象を受けた」にすぎないことは「J.Geophys.Res.,114(2009)D14104」が指摘していたのだが、それに難癖をつけた論文「J.Geophys.Res.,115(2010)D09110」の筆頭著者も「Grant Foster」である。
その共著者はフィル・ジョーンズ、マイケル・マン、ギャビン・シュミット、ケヴィン・トレンバース。
(我国の海洋研究開発機構に所属している J.D.Annan の名も見える。)
既に、お馴染みの面々。
つまり、IPCC学派を代表する面々である。
上図の論文の共著者 Stefan Rahmstorf もマイケル・マンと共に「RealClimate」を立ち上げたグループの一人。
江守正多らIPCCの面々は、「Grant Foster」の指導の下で、片や「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」と言い張り、片や「『未知のプロセス』抜きの気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現されてしまう」と言い張っていたのだ。
第11章の第2節で紹介したとおり、その後、ケヴィン・トレンバースだけは「It was a time when natural variability and global warming were going in the same direction, so it was much easier to find global warming」と認めてしまったけれど。)
江守正多らIPCCの面々が「no one really talks about the other side of this situation」なのは、「Grant Foster」の入れ知恵である。
「Grant Foster」に指導されるような愚か者たちが「温暖化の科学に合意」していても全く取るに足らない。

上図は5つのデータの平均値だが、個々のデータを示したのが下図である。

20161602
図16-3 「Environ.Res.Lett.,6(2011)044022」より

このグラフでは、人工衛星のデータ(RSSとUAH)でも「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」けれど、実際には、図11-14に見えるとおり、人工衛星のデータから火山活動の影響とENSOの影響を取り除けば、1993年以降に気温は殆ど上昇していない。
図16-2と図16-3は全くのイカサマである。
図11-14は Nature Geoscience。
「その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と喚き立てていたにもかかわらず、図11-14には目もくれず、「Grant Foster」の言うがままに、「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」と「信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。

16.6 世界を騙し続ける97%の科学者たち

「97%」の愚かさが露呈してしまったので、逆上して、こんなことを言い出した。


「クライメートゲート事件」の背後にあるもの
さて、ではそんなに自信があるなら、なぜ研究者たちはデータの改ざんや公開拒否などを行ったのだろうか、と思うかもしれない。いわゆる「クライメートゲート事件」(イーストアングリア大学メール流出事件)の件である。実は、筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない。この事件の後、英国政府および大学の委託による3つの独立調査委員会が調査を行ったが、どの委員会の報告書も、科学的な不正は無かったと結論している(クライメートゲート事件を「データねつ造」として紹介する論者が、この重要な事実にほとんど触れない傾向があるのは興味深い)。
温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化懐疑論・否定論活動の存在である(たとえば、『世界を騙しつづける科学者たち』(楽工社)を参照)。
身も蓋もなくいえば、気候変動政策を妨害するために、その基礎となる科学に対する不信感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている言論活動があるということだ。たとえば、映画『不都合な真実』でも紹介された「クーニー事件」では、石油業界のロビイスト出身者がブッシュ政権に雇われて温暖化の科学に関する政府の文書を書き換えていたとされる。「クライメートゲート事件」をスキャンダルとして騒ぐのであれば、「クーニー事件」についてももっと騒がないのはおかしい(しかも「クライメートゲート事件」の方は実際には不正は無かったのだから)。「クライメートゲート事件」で流出したメールの中で、気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるように見えるのも、もとはといえば彼らが常日頃からこのような妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある。日本国内ではこのような組織的な活動の存在を筆者は知らないが、影響は国内にも大きく波及している。ネット等で出回る欧米発の温暖化懐疑論の多くはこのような組織的な活動に由来する可能性が高いが、これらをせっせと「勉強」して国内に紹介してくださる「解説者」が少なくないからだ。
本当は、このことを指摘するのはあまり気が進まなかった。傍から見れば「お前はインチキだ。」「いや、そっちこそインチキだ。」という泥仕合になってしまうからである。そして、この状況こそが、組織的な懐疑論・否定論活動の思うつぼなのである。彼らは科学的な議論に勝つ必要は無く、この問題が論争状態にあると人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ。これが、最初の方で述べた、筆者が「常識者」対「反常識者」の論争の構図を好まない理由である。温暖化の科学の真偽をめぐって科学的な議論を深掘りすることはもちろん重要だが、それが結果的に一部の政治勢力の片棒を担いでしまう可能性については、十分に自覚的でありたい。


(「いまさら温暖化論争? 温暖化はウソだと思っている方へ」より)

さらに逆上して、こんなことまで言っている。


温暖化の科学への懐疑を主張される方々の多くにとって、科学への懐疑は言いたいことの本質なのだろうか。ディベートのためのレトリックや理論武装ではないのか。周囲で撤退が始まり、梯子を外され、肝心の武装も穴だらけであることに薄々気づきながら、最後まで立てこもって守り続けるほどの価値のある主張なのだろうか。
そのような方々が本当に言いたいことは、温暖化対策の進め方への違和感などではないのだろうか。もしそうなのであれば、それをご自身の価値観とともにストレートに主張された方が、ご自身にとっても社会にとっても有益な議論になるのではないか。


(「それでも寒冷化が正しいと思っている方へ 世界でも撤退が目立つ温暖化科学への懐疑論」より)

しかし、「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化懐疑論・否定論活動の存在である(たとえば、『世界を騙しつづける科学者たち』(楽工社)を参照)」の一言が、97%の卑劣さを曝け出してしまった。
「世界を騙しつづける科学者たち」の著者はナオミ・オレスケス。
前章第1節の図15-1、そして、第3節で採り上げた「研究報告:『温暖化は停滞』に反論」と題する記事に見えるとおり、「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と言い放った。
江守正多は「今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている」だの、「今世紀に入って世界平均気温の上昇が停滞していたのは、増加分のエネルギーが海洋深層に運び込まれ、地表面付近に配分されていなかったせいであることが、徐々にわかってきている」だのと言い立てていたのだから、ナオミ・オレスケスに反論しなければならない。
ところが、反論しない。
それは何故か?
「江守正多らは科学的な議論に勝つ見込みは無く、この問題が論争状態にないと人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」。
ということは、「肝心の武装も穴だらけ」だったということである。
だから、結局は、こんなことを言い出した。


とうとう見るときがきちゃったのか
逸脱を始めた海氷面積を示すグラフ
江守正多
2017年2月2日
米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した。最高記録の更新は、2014年から3年連続となる。
記録更新が連続した背景には、エルニーニョ現象などの自然変動も関係しているが、このデータは世界的な温暖化傾向を強く印象付ける。産業化以前を基準とした世界平均気温の上昇は、現時点で1.0度を超えていると考えられる。
昨年の気候に関しては、もう一つ、非常に気になるデータがある。このグラフをご覧いただきたい。地球全体の海氷面積(つまり北極海と南極の周りの海氷の面積を合計したもの)の一年間の変化を、年ごとの線で表したグラフである。
9月以降、赤い太線で描かれた今年(2016年)の値が、例年の季節変化の年による変動の範囲を明らかに逸脱して下回っているのがわかる。
昨年11月、米国カリフォルニア大学バークリー校のZack Labeという博士課程の学生が、Twitterでこのグラフを紹介したところ、大議論が巻き起こった。
データの間違いなのか
グラフは、Arctic sea ice forumのメンバーが作ったものだそうで、サイトから最新版がダウンロードできる。元データは米国雪氷データセンター(National Snow & Ice Data Center; NSIDC)が公開しているものだ。
同様のグラフは、日本の水循環変動観測衛星「しずく」による観測データに基づいて、JAXAのウェブサイトでも発表されている。
Twitterの議論の初期には、測器の故障によるエラーである可能性が指摘されたようだが、すぐに否定された。現時点でわかっている限り、このグラフはデータの間違いでもグラフの描き方の間違いでもなく、現実を表しているものらしい。


(WEBRONZAより)

「航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した。最高記録の更新は、2014年から3年連続となる」は前章図15-17
「周囲で撤退が始まり、梯子を外され」、ナオミ・オレスケスの尻馬に乗るのを「とうとう見るときがきちゃったのか」。
「今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている」だの、「今世紀に入って世界平均気温の上昇が停滞していたのは、増加分のエネルギーが海洋深層に運び込まれ、地表面付近に配分されていなかったせいであることが、徐々にわかってきている」だのが「ディベートのためのレトリック」にすぎなかったという事実を「とうとう見るときがきちゃったのか」。

図16-2の論文の著者、Stefan Rahmstorf も「航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した。最高記録の更新は、2014年から3年連続となる」に小躍りしている。

「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」が「ディベートのためのレトリック」にすぎなかったという事実を「とうとう見るときがきちゃったのか」。
「肝心の武装も穴だらけ」だったという事実を「とうとう見るときがきちゃったのか」。
ということは、IPCCの人為的温暖化説(=気候モデル)は「肝心の武装も穴だらけ」ということだから、IPCCの予測どおりに、つまり、前章図15-17の赤線どおりに気温が上がり続けているはずがない。
「米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した。最高記録の更新は、2014年から3年連続となる」はデータ捏造に他ならないという事実を「とうとう見るときがきちゃったのか」。

もちろん、科学は試行錯誤しながら発展するけれど、「今世紀に入って気温上昇が鈍化していた期間は、負のPDOパターンに伴って、海洋の深層に熱が貯め込まれていたことがわかってきている」だの、「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」だのと言い張りながら、一転して「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と言い出したのは、科学的な試行錯誤の結果ではない。
江守正多らの「97%」は人工衛星のデータ、前章図15-18に知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいるからである。
それは「no one really talks about the other side of this situation」と全く同じ構図。
「no one really talks about」を押し通すのは科学的な試行錯誤と相容れない。
第11章の第7節で引用した「火山噴火、人為的温暖化の『減速』に一部貢献か」と題する記事に見えるとおり、「これらのモデルが、化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素(CO2)による温暖化効果を誇張していると、懐疑論者らは強く主張している」けれど、科学的な試行錯誤の結果、ハイエイタスは存在しなかったことが分かったのなら、(ハイエイタスが存在していたのなら)懐疑論者の方が正しかった、と認めねばならない。
懐疑論者との論争は我々の誤りを正すきっかけとなった、懐疑論者との論争は科学的に有益だった、と感謝しなければならない。
懐疑論者との論争は科学者と社会との交流のお手本である、と褒め称えねばならない。
ところが、「温暖化の科学への懐疑を主張される方々の多くにとって、科学への懐疑は言いたいことの本質なのだろうか・・・そのような方々が本当に言いたいことは、温暖化対策の進め方への違和感などではないのだろうか。もしそうなのであれば、それをご自身の価値観とともにストレートに主張された方が、ご自身にとっても社会にとっても有益な議論になるのではないか」と喚き散らす有様。
「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」が科学的な試行錯誤の結果ではないことを露呈している。
「これらのモデルが、化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素(CO2)による温暖化効果を誇張している」ことが露呈したので、データを捏造してハイエイタスを消したのだ。

「温暖化の科学に合意」の言い出しっぺは、誰あろう、ナオミ・オレスケス(「Science,306(2004)1686」)。
そのナオミ・オレスケスが「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と喚き立てて、今度はデータ捏造を先導した。
「温暖化の科学に合意」とは「データ捏造に合意」に他ならない。
IPCCの人為的温暖化説は「最後(データを捏造して)まで立てこもって守り続けるほどの価値のある主張なのだろうか」?

20161518図16-4 世界を騙しつづける科学者、ナオミ・オレスケス

にもかかわらず、尚も喚き続けている。

ここで、「トランプ政権に科学の尊重を求める集会」というのはこれである。


科学者が抗議集会 “トランプ大統領は科学重視を”
2017年2月20日 7時15分
「地球温暖化はでっちあげだ」などと主張するトランプ大統領に対し、科学者たちが抗議する集会がアメリカ東部、ボストンで開かれ、トランプ大統領に対して科学を重視するよう訴えました。
この集会は19日、世界最大の学術団体、AAAS=アメリカ科学振興協会の年次総会にあわせてボストンで開かれました。20日で就任1か月となるトランプ大統領は、地球温暖化対策に強く反対してきた人物をエネルギー省や環境保護局の長官に指名したり、政府機関のウェブサイトから温暖化についての記述を削除したりするなどしており、温暖化対策の後退が懸念されています。
会場には白衣姿の科学者や科学を専攻する学生などおよそ2000人が集まり、「いまこそ、科学のために立ち上がろう」などと声をあげトランプ政権に対する危機感を次々に表明しました。
このうち、ハーバード大学のナオミ・オレスケス教授は、「科学的事実を述べることは本来、政治とは関係ないはずだ。いま温暖化などを研究している科学者は正しいことをしているのに攻撃されている。民主主義に欠かせない科学を守るために立ち上がらないといけない」と訴えていました。
主催者の1人は「これほど多くの人が集会に参加したのは危機感の表れだと思う。科学者は真実を求めて研究している人たちで公共の利益のために働いている。科学が社会で果たす役割について広く伝えいかないといけない」と話していました。
2017022301


(NHK)

前章の第3節で引用した「研究報告:『温暖化は停滞』に反論」と題する記事の論文も、そして、「地球温暖化の『休止』はなかった、米英大チームが確認」と題する記事に見える論文も、「AAAS=アメリカ科学振興協会」が発行するサイエンス誌だが、そのAAASの会長もこんなことを言い立てている。

2016112104
2016年11月19日の朝鮮日刊新聞朝刊紙面より

己らこそが人工衛星のデータという「科学的事実を隠蔽」し、データを捏造し、ハイエイタスに「科学者は黙っていろ」と喚き、「事実をしめ出す傾向に拍車がかかった」にもかかわらず、「温暖化などを研究している科学者は正しいことをしている」と言い放ったのは、「97%」が「世界を騙し続ける科学者たち」であることをハッキリと示している。

因みに、江守正多は海氷の減少を持ち出しているけれど、下図に見えるとおり、北極と南極の海氷(面積)を観測していた人工衛星は2016年の3月に壊れてしまったのだ。

2016092008
図16-5 北半球海氷の変動


図16-6 南半球海氷の変動

3月から急激に乱高下しているのは、衛星に問題が生じたことを意味する。
Cryosphere Today」のホームページのトップには赤字で「Special Sensor Microwave Imager and Sounder (SSMIS) on the Defense Meteorological Satellite Program (DMSP) F-17 satellite that provides passive microwave brightness temperatures (and derived Arctic and Antarctic sea ice products) has been providing spurious data since beginning of April. Working on resolving problem or replacing this data source」と記している。
「このグラフをご覧いただきたい。地球全体の海氷面積(つまり北極海と南極の周りの海氷の面積を合計したもの)の一年間の変化を、年ごとの線で表したグラフである」と言い張っているのは、「米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した。最高記録の更新は、2014年から3年連続となる」と同じく、コンピュータで計算した値にすぎない。
結局のところ、江守正多の議論は第8章図8-11が拠り所だが、それは第13章図13-1に基づいているのであり、やはり、ハイエイタスを否定しているだけである。
しかも、下図に見えるとおり、「航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した」でも、2016年の南極大陸の気温は平年より低かった。

2017012007
図16-7 2017年の全球気温偏差分布(NASA・GISS)

南極半島の気温は高いけれど、第10章の第1節で解説したとおり、CO2排出との因果関係は認められない。
CO2の排出が原因で南氷洋の海氷が減ったなどと、どうして言えようか?
前章図15-18も海氷面積も人工衛星で観測しているにもかかわらず、前者には知らぬ顔の半兵衛を決め込み、海氷の減少を持ち出して「とうとう見るときがきちゃったのか」と喚き立てること自体が、「世界を騙し続ける科学者たち」であると気づくべきである。

16.7 「97%」は「ああいうのは追い出してやる」に合意

第6章の[注4]で紹介したとおり、「クライメートゲート事件」で流出したメールの中で、フィル・ジョーンズは「MMのその他の論文はまったくクズだ……こういう論文はIPCCの次の報告書ではあるわけない、査読付き論文の定義を変えなければならなくても、ああいうのは追い出してやる」と息巻いていた。

2016050701
図16-8 フィル・ジョーンズ(「Nature,468(2010)362」より)

先に指摘したとおり、本来なら「ああいうの」はマイケル・マンであるべきところを、逆に、マイケル・マンと結託して「ああいうのは追い出してやる」と言い張ったのである。
江守正多は「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容である」と言い立てたが、それならば、「査読付き論文の定義を変えなければならなくても」と言い放ったフィル・ジョーンズを糾弾すべきなのに、「もとはといえば彼らが常日頃からこのような妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある」と言い張るのは、「ああいうのは追い出してやる」を正当化する以外の何物でもない。

ただし、「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」は、直接には、これを指している。
第6章の[注4]で引用したAERAの記事では省略した部分。)


そこで、先述した1通のメールが大問題としてかかわりを持ってくる。そのメールはIPCC第3次報告書(2001年)のまとめを前にした時期のもので、その一部を逐語的に訳すと、こう書いてあったのだ。
■懐疑派は「捏造」と主張
「私(ジョーンズ)は、低下傾向を隠すというキース(CRU副所長)のために、1981年からの過去20年間の系列と1961年からの(系列)に対し、真の気温を勘定に入れるというマイクのネイチャーでのトリックを完了させたところだ」
(原文は「I’ve just completed Mike’s Nature trick of adding in the real temps to each series for the last 20 years (i.e., from 1981 onwards) and from 1961 for Keith’s to hide the decline.」)
地球温暖化に懐疑的な人々や欧米のマスコミは、「トリック」という言葉にかみついた。
欧米マスコミのブログに残されたコメントや懐疑派のサイトなどを見ると、このメールはデータが故意に操作され、温暖化の「傾向」そのものが捏造されたなどという主張が続々登場した。
この大騒動に、当のジョーンズはCRUのホームページ上で、メールは本物だとした上で、「1960年までの(年輪による)データと61年以後の観測によるデータの両方をグラフのカーブは含んでいる。それについての議論だ」と説明。さらに、「トリック」については、「口語で『賢いやり方』という意味で使った。不穏当な何かを示唆しているなんてばかばかしい」と一蹴している。英和辞典にも確かにそういう訳語がある。


(AERA2009年12月14日号より)

マイケル・マンが「トリック」を使ってホッケー・スティック曲線を捏造し、IPCCがそれを「真の気温」と言い立てていることは立証済み。
第6章図6-13に見えるとおり、「真の気温を勘定に入れるというマイクのネイチャーでのトリック」で、マウンダー極小期以前の「低下傾向を隠し」たのだ。
だから、「マイクのネイチャーでのトリックを完了させた」ということは、同じようなイカサマで「低下傾向を隠し」たということに他ならない。
それを裏づけるのがHadCRUT3からHadCRUT4への書き換え。
ただし、前章図15-3は1979年以降だから、問題の部分が見えない。
下図が1850年以降のデータである。


図16-9 HadCRUT3とHadCRU4

見事に「hide the decline」。
実は、「地球温暖化懐疑論批判(の「議論10」)において、江守正多は「1940年代の海上のピークについては、海面水温の観測方法の変化による人為的なものであることが最近指摘されている。したがって、この問題が補正されると、1940年代のピークは今まで考えられていたより小さくなり、気候モデルの結果に近づくことになる」と言い立てていたのだ。
「私(ジョーンズ)は、低下傾向を隠すという江守正多のために、マイクのネイチャーでのトリックを完了させたところだ」から、「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」のだ。

もちろん、HadCRUT4は「IPCC第3次報告書(2001年)のまとめを前にした時期のもの」ではなく、「IPCC第5次報告書(2013年)のまとめを前にした時期のもの」だけれど、クライメートゲート事件の後でさえ「hide the decline」なのだから、推して知るべし、であろう。
言うまでもなく、2000年以降の気温を吊り上げてハイエイタスを隠そうと図ったのは、「hide the decline」の論理に基づいている。
第11章の第6節で引用した「熱帯太平洋『冷や水効果』 海水温低下で0.3度抑制」と題する記事中のグラフに見えるとおり、20世紀第3四半期の気温低下と1998年以降のハイエイタスは同じメカニズムだから、20世紀第3四半期の「低下傾向を隠すという」ことは、ハイエイタスを隠すということである。
江守正多らが人工衛星のデータに頬かむりを決め込み、「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と言い張ったのは、「hide the decline」の証であり、にもかかわらず、「彼らはデータの改ざんなど行っていない」と言い張るのは、「ああいうのは追い出してやる」の証である。
「97%は温暖化の科学に合意」とは、すなわち、「97%は『ああいうのは追い出してやる』に合意」。
「小保方さんのSTAP論文が掲載され、後に取り下げられることになった権威ある雑誌が、その Nature だからだ」と言い立てていたけれど、マイケル・マンのホッケー・スティック論文が取り消されなかったのは、「97%は『ああいうのは追い出してやる』に合意」しているから。
「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚いていたけれど、「『ああいうのは追い出してやる』に合意」している連中が調査しているのだから、「英国政府および大学の委託による3つの独立調査委員会が調査を行ったが、どの委員会の報告書も、科学的な不正は無かったと結論している」のは当然であり、「茶番」も「茶番」、「へそが茶を沸かす」とはそのことである。

その証拠に、最近またしても「ああいうのは追い出してやる」が起こった。
第6章で紹介したとおり「バレンティーナ・ザーコバ教授率いる英ノーサンブリア大学の研究者たちは、数学モデルに基づき、太陽活動が60%低下し、地球の気温が急低下すると予想した」。
「MMのその他の論文」と同じく、それもホッケー・スティック曲線を否定する研究であり、先にも指摘したとおり、ホッケー・スティック曲線は「温暖化の科学」の生命線だから、「温暖化の科学」は冷や水を浴びせられたわけである。
逆上した「97%」はバレンティーナ・ザーコバの研究発表を妨害しようと図ったのだ。


That shock will be felt most especially by the world’s climate alarmist Establishment, whose scientists and learned institutions have staked their reputation on the idea that CO2, not solar activity, is the prime driver of climate and that the planet is on a warming trend not a cooling one.
This explains why when Professor Zharkova first released her findings last year, various climate alarmists went behind her back to the Royal Astronomical Society to try to persuade them to withdraw the press release.

Some of them were welcoming and discussing. But some of them were quite — I would say — pushy. They were trying to actually silence us. Some of them contacted the Royal Astronomical Society, demanding, behind our back, that they withdraw our press release. The Royal Astronomical Society replied to them and CCed to us and said,‘Look, this is the work by the scientists who we support, please discuss this with them.’ We had about 8 or 10 exchanges by email, when I tried to prove my point, and I’m saying, I’m willing to look at what you do, I’m willing to see how our results we produced and what the sun has explained to us. So how this is transformed into climate we do not produce; we can only assume it should be. So we’re happy to work with you, and add to your data our results. So don’t take the sunspots which you get, we can give you our curve. Work with our curve. So they didn’t want to.


(「‘Winter Is Coming’ Warns The Solar Physicist The Alarmists Tried To Silence」より)

さらに、第10章の第3節で引用した「温暖化による理論が破綻 “南極の氷増加” 科学者も困惑、海面上昇の原因はどこに…」と題する記事が採り上げていた論文に対しても、「ああいうのは追い出してやる」と息巻いていた。


「南極大陸の氷が増えている」は本当か
NASAの最新の研究結果が物議、真相は?
2015.11.06
南極の氷は減っているのか、増えているのか。そして、そのことは世界の海面上昇にとってどんな意味があるのだろうか。
11月30日からパリで始まる国連・気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向けて各国首脳が準備を進める中、この問いは世界の気象学者たちの熱い議論の的だ。そんな折、「南極の氷はむしろ増えている」というNASAの気象学者チームによる研究成果が発表され、物議を醸している。
研究チームは、科学誌「Journal of Glaciology」に掲載された論文「Journal of Glaciology,61(2015)1019」の中で、「西南極の氷河質量の減少分は、降雪の増えた東部内陸で氷河が厚さを増したことで相殺されている」と結論を出している。その結果、南極の氷は毎年およそ1000億トンずつ増えているという。
論文の筆頭著者で、米メリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターの主任雪氷圏学者、ジェイ・ズワリー氏は、「こうした氷の増加は、毎年の海面上昇幅が従来の予想より約0.25ミリ小さくなることを意味します」と話す。
この新しい知見について、押さえておくべき要点は以下のとおりだ。
主要な気象学者はこの論文の結論に賛成しているのか
答えはノー。この研究には声高に異を唱える著名な科学者もおり、南極大陸の氷塊は過去数十年で減少しているという、専門家の間で主流の見解にも逆行している。
「この研究には重大な問題があると思います」と語るのは、米コロラド州にある国立雪氷データセンター(NSIDC)の中心的な科学者テッド・スカンボス氏だ。「これが査読を通ったのは不幸なことです」
過去には他の研究が、衛星データに基づいて雪と氷の重量を測定し、南極全体で1000億トン前後の氷が失われたと示しているが、今回の論文はそれらと矛盾する結果になっている。
NASA論文の限界は
ズワリー氏らのチームは、南極大陸上の氷河の増大を計測するのに衛星を使った。だが米ワシントン大学の氷河学者で、同氏らの研究には関わっていないベン・スミス氏は、その技術は1~2センチの高低差に基づいて雪塊の体積を識別する任務には不十分かもしれないと指摘する。
スカンボス氏もこれに同意し、たった1つの衛星で識別するには、地形が複雑すぎる地域があると付け加えた。
米アラスカ大学の氷河学教授エリン・ペティット氏もこの方法について「非常に難しい測定方法であり、私なら相当疑ってかかります」と手厳しい。
もし、南極大陸の氷床全体が実際に増えているなら、なぜ南極大陸が世界の海面上昇を後押ししているのか
「いい質問です」とスカンボス氏は言う。気象学者たちはこれまで、南極での氷の融解が、過去数十年間でわずかながら海面上昇に寄与してきたと報告している。正確な量は激しい議論が続いているが、そのスケールはおそらく数センチの幅だとされる。
南極の氷床が拡大しているとすれば、世界の海面に対して長期的にどんな影響があるのか
ペティット氏は、「ズワリー氏らの推定は、大枠ではほとんど問題にはならないと考えています。南極大陸に雪が多少増えたところで、近い将来に起こる西南極氷床の完全な崩壊は決して相殺されないからです」とみる。ペティット氏はナショナルジオグラフィック協会が助成するエマージング・エクスプローラーでもあり、南極大陸に関する研究に取り組んでいる。「時間のスケールが全く違う作用なのです」
スカンボス氏によると、仮に西南極の氷が全て解けて海に流れ込めば、数メートルもの海面上昇を招く可能性があるという。「東南極の高地で何が起ころうと、このプロセスはすでに始まっており、今後数世紀で現実のものとなるかもしれません」
「1本の論文で揺さぶりをかける」には、異なる証拠や有効な調査が多すぎるとスカンボス氏は語る。多くの点で重大な氷の融解が南極大陸で起こっており、今後数世紀で海面上昇に寄与する度合いはさらに大きくなるというのが、研究者たちの一致した見解のようだ。
地球温暖化はまだ続いているのか
続いている。今回の論文も、地球が温暖化していないとは全く言っていない。 長期的トレンドについて入手できる最良の科学的知見であるIPCC第5次評価報告書は、依然として温暖化の有力な論拠であり、地球への影響は甚大だと示唆している。一方で、地球温暖化が具体的に世界のどこでどのような変化を起こすかについては、多くが不明のままだ。


(ナショナルジオグラフィック)

しかし、第13章の第6節で引用した「実は加速していた全球的な海水準上昇」という記事に見えるとおり、「そんな折、『南極の氷はむしろ増えている』というNASAの気象学者チームによる研究成果が発表され」る以前に、「長期的トレンドについて入手できる最良の科学的知見であるIPCC第5次評価報告書」は「南極氷床の変化」の分だけ海面上昇を過大評価していたという論文が発表されていた。
その論文には頬かむりを決め込んで、「『1本の論文で揺さぶりをかける』には、異なる証拠や有効な調査が多すぎる」と喚いているのだ。
「東南極の高地で何が起ころうと、このプロセスはすでに始まっており・・・今後数世紀で海面上昇に寄与する度合いはさらに大きくなる」と言い張っているけれど、CO2排出と南極氷床融解の因果関係を説明した論文は第10章の第1節で引用した「南極海に吹く風、過去1000年で最も強く 豪研究」の「1本の論文」だけ。
しかも、その内容を精査したら、実は、因果関係は弱かった。
自分たちは「0本の論文で揺さぶりをかけ」ようとしているのであり、だからこそ、「これが査読を通ったのは不幸なことです」と、つまり、「ああいうのは追い出してやる」と喚いているのだ。

「気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的である」証拠は挙げれば切りがないけれど、もう一つだけ紹介しよう。
先に紹介したとおり、江守正多は「それはいわゆる『ホッケースティック』だから信じないという方は、こちらを」と言い立てていたけれど、その「こちら」とは「Skeptical Science」というサイトである。
「skeptical」だから、懐疑論者のサイトかと思いきや、全く逆に、人為的温暖化を煽り立てているサイトである。
実は、このサイトに関与している連中が「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析」を発表したのだ。
その連中の一人(下の写真の右側の男)も、ハイエイタスに関して、このように言い立てていた。


fig 09-02

The confusion on this subject lies in the fact that only about 2 percent of global warming is used in heating air, whereas about 90 percent of global warming goes into heating the oceans (the rest heats ice and land masses). But humans live at the Earth’s surface, and thus we tend to focus on surface temperatures. Over the past 10-15 years, Earth’s surface temperature has continued to rise, but slowly. At the same time, the warming of the oceans — and the warming of the Earth as a whole — has accelerated.
This was the conclusion of a scientific paper [Phys.Lett.,A376(2012)3466] I co-authored last year, in which our team found more overall global warming (of the oceans, air, land, and ice combined) over the past 15 years than during the prior 15 years. Just recently, another paper published in the journal Geophysical Research Letters [Geophys.Res.Lett.,40(2013)1754] found that the warming of the oceans since the turn of the century has been the most sustained in the past 50 years. They also found that, consistent with my team’s research, about 30% of overall global warming has gone into the deep oceans below 700 meters due to changing wind patterns and ocean currents. This accelerated deep ocean warming is also unprecedented in the past 50 years.
We often hear from the media that the (surface air) warming has slowed or paused over the past 15 years. This isn’t a puzzle; climate scientists are well aware of several contributing factors, as a recent Reuters article — “Climate scientists struggle to explain warming slowdown” — eventually discussed. The accelerated warming of the oceans is likely the main contributor.
During years with La Nina events, more heat is transferred to the oceans, and surface temperatures are relatively cool as a result. The opposite is true during El Nino years. During the 1990s, there were more El Nino than La Nina events, which resulted in more surface air warming. One of the strongest El Nino events of the century happened in 1998, which not coincidentally was 15 years ago.
When people say ‘no warming in 15 years’, they’re cherry picking the timeframe to begin in an abnormally hot year. It’s like arguing that your car must have broken down because it hasn’t moved in the 15 seconds while you’ve been stopped at a red light. The argument selects a short timeframe that’s not representative of the whole.
Since 2000, there has been a preponderance of La Nina events, which has acted to temporarily bury more global warming in the oceans. A new study published in Nature Climate Change [Nature Climate Change,3(2013)649] found that by taking into account the short-term changes caused by factors like El Nino and La Nina cycles, they could accurately forecast the slowed warming at the surface several years in advance. The paper concluded,
“Our results hence point at the key role of the ocean heat uptake in the recent warming slowdown.”


(「Why is Reuters puzzled by global warming’s acceleration?」より)

自慢げに「This was the conclusion of a scientific paper I co-authored last year」と言い立てているのは「Phys.Lett.,A376(2012)1226」へのコメント。
(コメントへの回答は「Phys.Lett.,A376(2012)3673」。因みに、江守正多は、第13章の[注7]で採り上げた論説において、その「Phys.Lett.,A376(2012)1226」を盾にして「海洋の熱吸収量の変化を見ると、実際に1998年も停滞することなく一定の割合で上昇中である。すなわち、地球全体で見れば温暖化は途切れなく続いている」と言い張っていた。)
その論文は、「This accelerated deep ocean warming is also unprecedented in the past 50 years」、「Since 2000, there has been a preponderance of La Nina events, which has acted to temporarily bury more global warming in the oceans」は起こっていないと指摘したのだが、そして、第13章図13-10図13-11に見えるとおり、その後の研究で裏づけられたのだが、それを見たケヴィン・トレンバースは「まったくクズだ」と喚いたのである。
(因みに、その後、上の写真の左側の禿げた男は、NOAAがハイエイタスを消去した論文を見て、「With hope, this will end the discussion of the so-called “pause” or “hiatus”, which never existed in the first place」と小躍りしていた(コチラを参照)けれど、「Since 2000, there has been a preponderance of La Nina events, which has acted to temporarily bury more global warming in the oceans」が「ディベートのためのレトリック」にすぎなかったことを露呈しただけであり、そんな輩が「With hope, this will end the discussion」と言い立てるのは「ああいうの(=ハイエイタスという科学的事実)は追い出してやる」に他ならない。)
それを見た Rojer Pielke(コチラを参照)は、トレンバースはクライメートゲートから何も学んでいない、と批判したけれど、それが「97%」の体質なのだ。

その「クライメートゲート事件」で発覚したのがトレンバースのこのメール。


The fact is that we can’t account for the lack of warming at the moment and it is a travesty that we can’t. The CERES data published in the August BAMS 09 supplement on 2008 shows there should be even more warming: but the data are surely wrong. Our observing system is inadequate.


(ケヴィン・トレンバースからマイケル・マンへのメール)

実にこれこそが、「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と見せかけるために、NASAやNOAAや英国気象庁がデータを改竄した原点だったのだ。

20161605図16-10 「世界を騙しつづける科学者たち」の揃い踏み(「Some first impressions from #AGU14」より)

フィル・ジョーンズやマイケル・マンや江守正多らの「97%」は「世界を騙し続ける科学者たち」であり、だからこそ、「常日頃からこのような科学的批判を受けて辟易し、腹に据えかねるほど科学に憤っていた」のである。
江守正多が、己こそ「ディベートのためのレトリック」を用いながら、己こそ「肝心の武装も穴だらけであることに薄々気づきながら」、あべこべに「温暖化の科学への懐疑を主張される方々の多くにとって、科学への懐疑は言いたいことの本質なのだろうか」と喚き散らしたのは、その事実をハッキリと物語っている。

16.8 「97%」は科学を拒絶

先に指摘したとおり、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある」は「Environ.Res.Lett.,8(2013)024024」であろうが、それは「PNAS,107(2010)12107」を下敷きにしている。
その「abstract」には「温暖化の科学に合意」の正体がハッキリと表れていた。


Here, we use an extensive dataset of 1,372 climate researchers and their publication and citation data to show that (i) 97-98% of the climate researchers most actively publishing in the field surveyed here support the tenets of anthropogenic climate change outlined by the Intergovernmental Panel on Climate Change


(「PNAS,107(2010)12107」の要約より)

自然科学の他の分野で「tenet」という言葉にお目にかかることはまずないだろう。
JST科学技術用語日英対訳辞書に依れば、「tenet」とは「教条」、即ち、「教会が公認した教義」。
IPCCの人為的温暖化説の本質を見事に表現しているではないか。
(最も一般的であろうと思われる「研究社の新英和中辞典」でも「(個人または集団が信奉する)主義、教義」だから、本質的に同じである。科学において「仮説」は存在しても「主義」は存在しない。科学者は「仮説」を「信奉」などしない。)
先に見たとおり、「anthropogenic climate change」を喚き立てる「97%」は「no one really talks about the other side of this situation」。
それは「科学」とは到底相容れないけれど、「anthropogenic climate change」が「教会が公認した教義」であれば合点がいく。
先に見たとおり、「anthropogenic climate change」を喚き立てる「97%」は、人工衛星のデータに頬かむりを決め込んで、「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」だの、「過去数十年間で、気温上昇の傾向が弱まったとか止まったとか、または小休止していると示す証拠はない」だのと言い立てている。
それは「科学」とは到底相容れないけれど、「anthropogenic climate change」が「教会が公認した教義」であれば合点がいく。
「気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるように見えるのも、もとはといえば彼らが常日頃からこのような妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある」と喚き立てていたけれど、実のところ、「もとはといえば、『教会が公認した教義』が背景にある」。
「江守正多らは常日頃からこのような布教妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど科学的反論に憤っていた」のである。
その証拠に、江守正多はこのように言い立てていた。


また、米国の温暖化懐疑論勢力の一部はキリスト教原理主義の宗教保守により支えられてきたと考えられるが、今年6月にローマ法王が地球温暖化の重大性を大々的に認め、温暖化を止めるための文化的革命まで世界人類によびかけてしまったものだから、宗教保守勢力の懐疑論離脱も進むことが想像される(ちなみに、イスラム、仏教、ヒンズーといった他の様々な世界宗教からも、宗教指導者による気候宣言が出されている)。


(「それでも寒冷化が正しいと思っている方へ 世界でも撤退が目立つ温暖化科学への懐疑論」より)


そこに登場するのが、敬虔なキリスト教徒であると同時に気候科学者であるテキサス工科大学のキャサリン・ヘイホー准教授である。しかも、彼女の夫は牧師だ。夫はこう語る。「私は敬虔なキリスト教徒だし、共和党員だし、あらゆる意見は保守的だ。同時に、気候変動の科学を信じている。気温計は共和党員でも民主党員でもないのだからね。」
保守的なキリスト教徒たちに向けた、キャサリン・ヘイホーの気候変動の講演が、科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていくのかは、ぜひ本編をご覧頂きたい。


(「米ドキュメンタリー番組『危険な時代に生きる』が描く気候変動と社会」より)

「人工衛星は共和党員でも民主党員でもないのだから」、殊更に「米国の温暖化懐疑論勢力の一部はキリスト教原理主義の宗教保守により支えられてきた」と喚き立てるのは、前章の第4節で紹介したとおり、キャサリン・ヘイホーは「温暖化が止まったという見方は科学者の間では完全に否定されている」と言い放ったのだから、「保守的なキリスト教徒たちに向けた、キャサリン・ヘイホーの気候変動の講演が、科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていくのかは、ぜひ本編をご覧頂きたい」と囃し立てるのは、「江守正多らが常日頃からこのような布教妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど科学的反論に憤っていたことが背景にある」。
だから、最後はローマ法王に泣きついたのだ。
その証拠に、ローマ法王が「よびかけてしまった」のではなく、実のところ、江守正多らのIPCC学派がローマ法王に「よびかけてしまった」のである。


モロッコのマラケッシュで行われていた国連気候変動枠組条約の第22回締約国会議(COP22)が11月19日に閉幕した。昨年のCOP21で合意されて今年の11月4日に異例のスピード発効をした「パリ協定」について、COP22ではそのルール作りが進められた。米国のトランプ政権のインパクトについて悲観論、楽観論が飛び交う中ではあるが、各国はパリ協定の目標である「世界平均気温の上昇を産業革命前から2℃より十分低く抑え、1.5℃未満を目指して努力する」こと、そのために「今世紀後半に世界の温室効果ガス排出量を正味ゼロにする」ことを力強く確認し合い、その実現に向けて歩を進めている。
そのパリ協定で掲げられた目標の議論に大きな影響力を及ぼし続けてきた科学者がいる。ドイツ ポツダム気候影響研究所の所長、シェルンフーバー(Hans Joachim Schellnhuber)博士である。シェルンフーバーさんは、ドイツのアンゲラ・メルケル現首相が環境大臣であった20年前から、気候問題について彼女の科学アドバイザーを務めてきた。また、昨年6月にローマ法王が発表した気候変動問題についての「回勅」の作成においても中心的な役割を果たした。
シェルンフーバーさんが11月2日の環境省の審議会出席のために来日された際にインタビューの機会を頂き、筆者がかねてから興味があったいくつかの点について、詳しく伺った。
「2℃目標」の生みの親
江守:このたびはインタビューの機会を頂きありがとうございます。
あなたが「2℃目標」の生みの親であるとどこかで読んだのですが、正しいですか?
シェルンフーバー:温暖化を2℃で抑えるのが合理的だと言った人は他にもいたが、私の知る限り、それを政治プロセスに持ち込んだのは私が関わったものが初めてだ。1994年にドイツの「地球変動に関する諮問委員会」の中で私が言い出して議論し、1995年にベルリンで行われたCOP1に向けてドイツ政府に提案した。COP1を取り仕切っていたのは現在ドイツ首相であるアンゲラ・メルケルだ。
江守:当時は環境大臣でしたね。
シェルンフーバー:そのとおり。私が彼女に「2℃」を提案したんだ。その後、この提案はドイツ政府を通じて欧州理事会で議論され、1996年に欧州理事会の正式な決議になった。


(「温暖化「2℃目標」の生みの親 シェルンフーバー博士に聞く ― 脱炭素化に向けたわれわれの役割は何か?」より)

第5章の第1節で解説したとおり、CO2の温室効果は飽和に近いから、CO2を排出し続けても、気温上昇は1.5℃未満に収まるにもかかわらず、「2℃目標」をでっち上げた当人が「ローマ法王が発表した気候変動問題についての『回勅』の作成においても中心的な役割を果たした」のは、IPCCの人為的温暖化説が、科学ではなく、「教会が公認した教義」にすぎないことを露呈してしまったと言えよう。
「97%」は科学を拒絶しているのだ。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。