アル・ゴアの全く不都合な真実

2013090501

7.1 CO2が氷河期を終わらせた?

南極の氷床で採取された氷から過去40万年間の気温と大気中CO2濃度を再現したのが下図である。

南極ボストーク基地付近のアイスコアから得られたCO2濃度と気温
図7-1 南極ボストーク基地の氷床コアから導き出された過去40万年間の気温と大気中CO2濃度
(「国連環境計画ウェブページ」より)

約10万年周期で氷期・間氷期が繰り返し起こったこと、そして、CO2濃度と気温が連動しているのが分かる。
周知のとおり、アル・ゴアが、この図を盾にして、CO2が増えたから気温が上がった(氷期が終わった)、だから、産業革命以降は化石燃料を燃やしてCO2を排出したから気温が上がったのだ、と煽り立てた。
しかし、上図はCO2濃度と気温の相関関係を示しているだけであり、CO2が増えたから気温が上がった、とは言い切れない。
逆に、気温が上がったからCO2が増えたのかもしれない。
実際、「Quaternary Science Reviews,20(2001)583」、及び、「Science,299(2003)1728」に依れば、気温上昇がCO2の増加に先行していた。[注1]
そこで現れたのがこの論文である。


CO2急増が氷河期終わらせる
2012年4月5日 02時00分
約1万年前に地球規模の温暖化で氷河期が終わった最大の要因は、大気中の二酸化炭素(CO2)の急激な増加だったとする研究結果を、米ハーバード大などのチームが5日付の英科学誌ネイチャー[Nature,484(2012)49]に発表した。
チームの研究者は「現在は氷河期の終わりより早いペースでCO2濃度が上昇しており、大きな影響が出る可能性がある」としている。
チームは約2万2千年前に太陽を回る地球の軌道の変化で北半球の陸の氷が局地的に解け、海流変化が起きて約1万9千年前に深海から大量のCO2が大気中に放出されたとみられるのを突き止めた。


(共同)

論文のタイトルは「Global warming preceded by increasing carbon dioxide concentrations during the last deglaciation」で、それを示しているのが下図である。

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図7-2 最終氷期からの全球平均気温推移(青線):「Nature,484(2012)49」より

青線が全球平均気温で黄色の丸印はCO2濃度。
明らかに青線は黄色の丸印よりも右にずれている。
それはCO2の増加が全球平均気温上昇に先行していた証拠、と言うのである。
CO2が増加したから気温が上がり、氷河期が終わった、と言うのである。

IPCCの気候モデルでは、式(2-3)で計算したとおり、産業革命時(間氷期)における赤外吸収・射出の平均回数nは40で、CO2の温室効果は6℃。
一方、氷期のCO2濃度は180ppmだから、赤外吸収・射出の平均回数nは(180÷280)×40=26。
再び式(2-1)より、この時のCO2の温室効果は

(7-1)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,26 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 26}} -255 = 4.89

間氷期との差は1.1℃。
これがフィードバックで3倍に増幅されるから、氷期と間氷期の気温差に占めるCO2の寄与は3.3℃。
上図で氷期と間氷期の気温差は4℃。
これなら、確かに「CO2急増が氷河期終わらせる」と言える。

下図に見えるとおり、現在は過去40万年間で類を見ないほど急激にCO2が増加している。[注2]
「CO2急増が氷河期終わらせる」なら、当然、気温は大きく上がるはずである。

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図7-3 40万年前から現在までの大気中CO2濃度の変化
(「Climate change: How do we know?」より)

上図から、氷期のCO2濃度は180ppmで、間氷期のCO2濃度は280ppm。
一方、図7-2から氷期と間氷期の(全球平均)気温差は4℃。
100ppmで4℃上がったことになるから、単純に比例すると、CO2濃度が280ppmから今現在の400ppmに上がれば、気温は1.2×4=4.8℃上がることになる。
「CO2急増が氷河期終わらせる」なら、CO2濃度が現在のままでも、(全球平均)気温は5℃上がるのだ。


地球の高温化は不可避、過去200万年の温度推移明らかに 研究
2016年9月27日 15:02 発信地:パリ/フランス
大気中の温室効果ガスのレベルが現在のまま保たれた場合でも、地球の気温は今後、耐え難いほど高温になる恐れがあるとする研究論文が26日、発表された。研究では過去200万年の地球の表面温度が初めて明らかにされている。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究論文Nature,538(2016)226によると、「温室効果ガスが今日のレベルで安定するということは、今後数千年の間に地球全体の平均気温が5度上昇する恐れがあることを示している」という。
英オックスフォードで先週行われた会議では、地球の平均気温は産業革命前と比べて1度上昇しており、今後10年以内に1.5度の上昇となる可能性もあることが専門家から報告されている。
米スタンフォード大学の古気候学者キャロリン・スナイダー(Carolyn Snyder)氏が行った今回の研究では、過去200万年にわたる地球の平均表面温度の推移が初めて明らかになった。
研究でスナイダー氏は、59の海洋堆積物コアから2万ビットのデータを抽出し、1000年間隔の気温年表を作成した。この同氏が採用の手法について、ある気象専門家は「独自のアプローチ」と述べている。
そして、この手法で導き出された結果は、地球の平均気温と大気圏の温室効果ガス濃度との間の確立された関連性に合致していた。新たなデータからは、大気圏の二酸化炭素濃度が2倍になると、地球の平均気温が9度上昇する可能性も示された。こうした気温上昇の下では、氷床が融解し、海水面が数十メートル上昇する恐れもあるという。
ただスナイダー氏の研究に参加していない別の専門家らは、同氏の論文は真偽が定かでない仮説を多数論拠としているとして注意を促している。


(AFP/Marlowe HOOD)

しかし、記事にも見えるとおり、この論文にはIPCC学派からさえも批判が上がった。


Probably not
The good news is that’s probably not right.
We talked to Gavin Schmidt, head of NASA’s Goddard Institute for Space Studies, and Penn State’s Richard Alley. Both agreed that the reconstruction itself was significant. Schmidt said it probably deserved to be in a high-profile publication, and Alley said it “may prove to be of wide value.” Still, both of them pointed out issues with the sensitivity analysis.
The problem is that glacial cycles are triggered by changes in sunlight caused by orbital forcings. This triggers changes in the amount of carbon dioxide in the atmosphere, but it also triggers changes in everything from ocean levels and atmospheric dust to the amount of sunlight that hits highly reflective ice when it reaches the Earth. All of this affects the global temperature significantly. But, for the purposes of this analysis, Snyder only compared the temperature and CO2, ensuring that all these other impacts were ascribed to that gas.
“This assumes that all of the temperature change over the ice-age cycles arose from the greenhouse-gas change,” Alley told Ars. “But, we have high confidence that the ice ages were driven by features of Earth’s orbit and that the temperature would have changed (just not as much) if the greenhouse-gas forcing had not changed.” Alley went on to say that “the ‘sensitivity’ calculated in the new paper is an upper limit, because we know that some of the temperature change was not caused by greenhouse gases.”
Schmidt, for his part, focused on the consequences of what would happen if this sensitivity were right. “If I move the CO2 levels today to glacial levels – 180 [parts-per-million] – would I get an ice sheet the size of what we had at the height of the last glacial maximum?” he asked. “And the answer has to be no. The forcing is too small in the places where the ice would grow for that to happen.”
So, most of the paper is solid, telling us new things about the recent history of our planet. But there appears to be some significant issues with one aspect of the analysis: the part that attempts to calculate how sensitive our climate is to rising greenhouse gasses. Unfortunately, that’s the aspect that’s most relevant to non-scientists, and it’s the detail likely to attract the most attention.


(「New data set shows global temperatures over the last two million years」より)


‘A very confused message’
Professor Jeffrey Severinghaus, from the Scripps Institution of Oceanography at the University of San Diego, also found a problem with the study.
“She made a very, very basic logical error,” he said.
“Climate sensitivity is essentially the change in temperature divided by the change in CO2.
“The important part about that is that if you want to infer that from an actual situation in the Earth, you know, what the Earth did in the past, you have to make sure that temperature change is only due to an increase in CO2, whereas the ice ages, we know very well the temperature change was due to a combination of increasing CO2 and changes in the Earth’s orbit around the sun.
“In fact, it’s probably something like two-thirds of the temperature change is due to the orbit and only one-third to the CO2.
“So that’s probably why she got a factor of three larger.”
The study’s author Carolyn Snyder was not available for an interview.


(「Climate change study accused of erring on rising temperature predictions」より)

ということは、「CO2急増が氷河期終わらせる」はデタラメ、ということである。

第5章で解説したとおり、水蒸気を考慮すれば、産業革命時における15μm帯域の温室効果は7.5℃で、赤外吸収・射出の平均回数nは175。
氷期のCO2濃度は180ppmだから、赤外吸収・射出の平均回数nは(180÷280)×175=112。
再び式(2-1)より、この時、15μm帯域の温室効果は

(7-2)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,112 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 112}} -255 = 7.26

(5-1)式との差をとれば、CO2の寄与は0.26℃にすぎない。
「CO2急増が氷河期終わらせる」はずがない。
「今後数千年の間に地球全体の平均気温が5度上昇する恐れ」はホラー映画にすぎない。

氷河期はその名のとおりカナダ、そして、スカンナビア半島とその周囲は氷床で覆われていたし、スイスも氷河で埋め尽くされていた。
海氷は間氷期より低緯度にまで広がっていた。
雪氷面積だけを考えるなら、氷期のアルベドは間氷期よりもずっと高い。[注3]
アルベドが数%上がる(下がる)だけで、気温はぐんと下がる(上がる)。
しかし、アルベドは雪氷面積だけで決まらない。
陸上の雪氷面積(及び、体積)が増える分、海面が下がり、陸地が増えるから、逆にアルベドは下がる。
気温が大きく低下すれば、照葉樹林の分布が狭まるから、逆にアルベドは下がる。
さらに、雲も日光を反射するから、気温が大きく低下すると、水蒸気が減って、雲も減り、逆にアルベドは下がる。
雪氷面積の増加はこれらの効果で相殺される。
但し、氷雪の反射率は海面や雲よりも高いから、やはり、氷期のアルベドは間氷期よりも高い。

氷河期の雲の効果は知る術が無いから、正しい値を知る由も無いが、間氷期のアルベドは氷期よりも1%低いと仮定しよう。
アルベドが下がったということは、地表面(海面)に降り注ぐ日射量が増したということである。
従って、(6-1)式を用いれば、

(7-3)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1366}{4\,\sigma }} - \sqrt[4]{\frac{\,0.69 \times 1366}{4\,\sigma }} = 0.915

もちろん、気温が0.9℃上がったからアルベドが1%下がったのではない。
先の記事にも見えるとおり、「太陽を回る地球の軌道の変化で北半球の陸の氷が局地的に解け」、アルベドが少し下がり、その結果、気温が少し上がり、水蒸気が少し増え、その結果、気温が少し上がり、その結果、さらに氷が解けて・・・という繰り返しの結果、最終的に気温が4℃上がり、アルベドが1%下がったのである。
純粋に日射量の増加だけに因る0.9℃の気温上昇がフィードバックで増幅された、と見ることができよう。
従って、第2章で解説した「water vapour is a strong and fast feedback that amplifies any initial forcing by a typical factor of three」を考慮し、それにCO2の温室効果を加えると、3×0.915+0.26=3℃。
これでは4℃に満たないが、怪しむに足りない。
第5章で採り上げた2015年7月19日の朝日新聞に見えるとおり、「温暖化による極地の気温上昇は、世界平均の2倍の速さで進むとされる」が、それと同じメカニズムが氷期から間氷期への移行過程にも働いたと考えられるからである。


北極の異常な高気温、気候変動の「悪循環」が拍車
2016年11月25日 17:05 発信地:パリ/フランス
大量の熱を蓄えた海水と北向きの風が、北極域での異常な高気温を引き起こしており、気候変動の「悪循環」がそれに拍車を加えているとの研究報告が24日、発表された。
北極の天候の変化を1時間ごとに追跡記録しているデンマーク気象研究所(DMI)が発表した観測データによると、極氷冠上空の大気の温度が、平均を9~12度上回る状態がこの4週間続いているという。
DMIの気候研究者のマルティン・シュテンデル(Martin Stendel)氏によると、北極点上空の温度は先週、数日間にわたって0度を記録し、11月中旬の例年の水準を約20度上回ったという。
シュテンデル氏はAFPの取材に、人工衛星による観測データ収集が開始された1979年以降の記録としては、先週の気温はずば抜けて高いと述べ、「現在観測されている状況は、極めて異常だ」と付け加えた。
北極の海は夏季の海氷融解で露出するが、例年のこの時期には、その表面に毎日数千平方キロの氷が張り、再び凍結する。だが今年は、それがまだ起きていない。少なくとも例年と同様のペースでは起きていないと、シュテンデル氏は指摘する。
また、電話での取材に同氏は、「氷が通常通りに成長していないだけでなく、暖気の流入によってさらなる融解が起きていた」と説明した。
米国立雪氷データセンター(NSIDC)の報告によると、10月の海氷面積は約640万平方キロで、観測史上最小だったという。北極圏でも、2016年9月16日に約414平方キロと史上最小を記録した。
科学者らによると、いくつかの要因が、10月下旬以降の北極の異常な高温を引き起こしているのだという。
最も直接的な要因は、欧州西部とアフリカ西海岸沖から吹き上がってくる暖風だ。
仏気候環境科学研究所(LCSE)の科学者、バレリー・マソン・デルモッテ(Valerie Masson-Delmotte)氏は「この熱を運んでくる暖風は、一時的なものだが、ほぼ前例のない気象現象だ」と説明した。暖風は、24日以降になってようやく和らいできたという。
■ミラー効果
また、その他の要因として、記録的な強さとなった太平洋のエルニーニョ現象が挙げられる。
だが、いくら強力であっても、断続的なこれらの要因に拍車をかけているのは、中でも最大の要因である地球温暖化だと専門家らは口を揃える。
英気象庁(Met Office)極地気候部の主席研究員、エド・ブロックリー(Ed Blockley)氏は「北極の海氷の長期的な減少は、気候変動に原因があると考えられる」と話した。
温室効果ガスが熱を吸収することで発生する人為的な気候変動により、地球の平均表面温度は、産業革命前との比較ですでに1.0度上昇している。
ところが北極圏では、温暖化が2倍のペースで進行している。この原因の一端は、科学者らが「正のフィードバック」と呼ぶ悪循環にある。
太陽の熱放射は、白い雪や氷の上に降り注ぐと、その約80%が宇宙空間に反射される。デルモッテ氏はこの現象を「ミラー効果」と呼ぶ。だが、露出部分がはるかに拡大している深い青色の海に太陽光線が当たると、その熱の80%が反射されずに海水に吸収され、そのまま蓄積される。

シュテンデル氏は「海氷面積を調べれば、この悪循環がすぐに確認できる。そこには明らかな減少傾向が存在するからだ」と話す。
そして短期的には、この露出した海水が、氷の再形成のペースを減速させている。0度を下回る程度の海水温は、「そこにあるはずの氷と比較すれば」はるかに高温だと、シュテンデル氏は言う。
現在は無氷海面となっているが、その領域に氷の厚い層があれば、上空の気温は「通常、マイナス30度から40度になる」という。そのため、氷量の減少は、広範囲にわたる影響を及ぼす恐れがある。
デルモッテ氏は、AFPの取材に「それにより、温暖化が全般的に増幅され、特に近隣の大陸での温暖化が深刻化する」と指摘した。

北極海に隣接する大陸の一つであるデンマーク領グリーンランドには、融解が急速に進んでいる巨大な氷床が存在する。この氷床には、地球の海水面を数メートル上昇させるほどの大量の水が含まれている。


(AFP/Marlowe HOOD)

第5章第6章で解説したとおり、少なくとも20世紀前半までの気温上昇は太陽活動が原因だから、「温室効果ガスが熱を吸収することで発生する人為的な気候変動により、地球の平均表面温度は、産業革命前との比較ですでに1.0度上昇していない」。
(しかも、第13章で解説するけれど、2013年のIPCC第5次報告書では「地球の平均表面温度は、産業革命前との比較ですでに0.8度上昇している」と書いていたのだから、「温室効果ガスが熱を吸収することで発生する人為的な気候変動により」、たったの3年間で「0.2度上昇している」はずがない。第15章で解説するけれど、データを改竄して21世紀の気温を吊り上げ、「1.0度上昇している」ことにしてしまったのだ。)
さらに、次章で解説するけれど、北極圏の気温上昇の主因は自然変動と大気汚染であり、「温室効果ガスが熱を吸収することで発生する人為的な気候変動」ではない。
しかし、原因が何であるかに関わり無く、つまり、純粋に自然要因であろうとも、「露出部分がはるかに拡大している深い青色の海に太陽光線が当たると、その熱の80%が反射されずに海水に吸収され、そのまま蓄積され」、「それにより、温暖化が全般的に増幅され、特に近隣の大陸での温暖化が深刻化する」。
氷期から間氷期への移行過程が正にそれである。
つまり、「amplifies any initial forcing by a typical factor of three」以上に増幅されたと考えられるのだ。
もちろん、氷河期と言っても、地球全体が北極圏のようになっていたわけではないから、「温暖化による極地の気温上昇は、世界平均の2倍の速さで進む」、つまり、「amplifies any initial forcing by a typical factor of six」にはならない。
「a typical factor of four」と見なすならば、氷期と間氷期の気温差は、(7-3)式を4倍した値にCO2の温室効果を足して、4×0.915+0.26=3.9℃。
図7-2の値をほぼ再現できる。
もちろん、4×0.915=3.7℃にはCO2の温室効果からのフィードバックも含まれているだろう。
先の記事に見えるとおり、先ず氷が解けて海が暖まり、CO2が海から大気中に放出されたのだから、従って、CO2に因る0.26℃自体がフィードバックだから、単純に4倍はできないけれど、4℃のうちの1℃がCO2の効果だとしても、「CO2急増が氷河期終わらせ」はしない。

いま、グラフ上に二つの曲線AとBがあり、同じy(縦軸の値)を与えるx(横軸の値、すなわち、時間)が常にx(A)<x(B) ならば、AはBに先行していると言える。
しかし、図7-2でy軸の任意の位置を選んでも、片やCO2濃度、片や気温であり、それは決して「同じ値」ではないから、どちらが先行しているとは言えない。
氷期の気温が低い状態においては、気温が少し上がり、その結果、CO2が急増するなら、気温とCO2濃度を同じグラフ上に書き込むと、CO2の上昇が気温上昇に先行しているように見えるだけであり、図7-2を盾にして、「CO2急増が氷河期終わらせる」と言い立てるのは全くナンセンスである。

7.2 CO2が氷河期到来を阻んだ?

図7-1の下側のパネルを見ると、過去3回の間氷期の気温は鋭いピークを成している。
温暖な間氷期は極めて短く、過去40万年間のほとんどの期間、地球は凍えていた。
過去を見る限り、現在は既に氷期に入っていても不思議ではないにもかかわらず、幸いにも、現在の間氷期は1万年以上も続いている。
そこで、上述の論文の著者達が、さらに、最終氷期が終わってから現在までの気候を調べた結果、このようなことが分かったという。


地球の気温、過去1万1000年の大半より高い
2013年3月08日 13:35 JST
By GAUTAM NAIK
2000年から09年の10年間の地球の平均気温は、過去1万1300年の大半の期間よりも高かった。科学誌サイエンスが7日公表した新たな研究Science,339(2013)1198で明らかになった。この発見は現代の気候変動を評価する際の長期的な背景状況を提供するものだ。
今回の研究の目的は、過去1万1300年間の地球の気温の全体的な概況を提供することにあった。
この期間は「完新世」と呼ばれる比較的温和な時期で、最終氷河期の終了後に始まり、現代を含む人類の文明期全てが含まれている。
研究論文によると、地球は気温が1度変動するのに、最終氷河期が終わってから約1万1000年かかった。しかし、同じく1度変動するのに、産業革命の初期から現在までの150年間で再現されていることが判明したという。
この150年間の枠組みの中では、2000‐09年の10年間が近代的な形で記録を取り始めてから最も温暖だった時期の1つだが、世界の気温の中央値は、 完新世の初期の水準ほど高くなかった。しかし、研究論文によると、世界の気温の中央値は今後、その水準に達する公算が大きいという。科学者らの予想が正しければ、2100年の地球の気温は過去1万1300年よりも高くなるとみられる。
研究はオレゴン州立大学とハーバード大学が共同で実施し、全米科学財団(NSF)から資金援助を受けた。この研究は、ある重要な疑問に焦点を当てることも目的としている。それは、過去150年に記録された地球の気温上昇が異例なものなのか、つまり、人的活動から生じる温室効果ガスの排出によるのか、それとも長期的な気温の自然変動なのかという疑問だ。
研究論文は、この原因が人的活動にあると指摘した。理由は、気温の急激な変化が長期的なトレンドと一致していないように見えるからだ。
論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士は「違うのは変化の速さだ」と指摘し、「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」と述べた。
古気候学として知られる古代の地球の気候を推測する学問は、難しい作業だ。それはプロキシ(代用的)尺度に依存しているためだ。つまり、過去の温度の物理的な記録を提供する海の化石や氷床コアから採取した代用的な指標だ。例えば、科学者らはこのプロセスの一環として、さまざまな温度条件で海洋生物を育て、 異なる水温と、海洋生物の殻の化学的な特徴の変化とを関連づける。こうして得られたデータは海の化石の研究に使うことができる。発見した結果を裏付けるため、研究者は通常、ある1つの情報源(例えば海の化石)から得られた温度の記録が、これと関連のない別の情報源(例えば氷床コア)から得られた温度記録と合致するかをチェックする。
今回出された新しいデータは、地球の気温上昇の理由をめぐる議論を再燃させる可能性がある。多くの科学者は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出増が原因だとしているが、雲の量が増えるといった自然的な要因が原因だと反論する向きもある。
完新世の気温をめぐる従来の再現作業は、地域に限定されがちだった。これに対し、マーコット博士のチームは73カ所からデータを収集し、1万1300年前以降のもっと地球規模の姿を構築した。データは海洋化石のほか、グリーンランドの氷床や湖からの花粉の記録から得た。
温度の再構築作業の結果、最近の温暖化傾向は過去2000年間という脈略でみると型破りだったことが既に示されてきた。新研究は、これは1万1300年間のスパンで見ても同様に異例だと結論した。
世界の平均気温は完新世の間、セ氏1度の範囲内で変動した。それは主として地球の軌道が徐々にシフトしたことによるものだった。軌道のシフトで、地球の異なる部分に降り注ぐ太陽光の量が変化した。
完新世の前半期は温暖だった。その後、冷却トレンドになり、5000年程度続いた。200年ほど前、温度は着実に上昇し始めた。
予測では、地球の大気の温度は2100年までにセ氏2-5度上昇する可能性があるという。
米海洋大気局(NOAA)で古気候学プログラムを指揮しているデービッド・アンダーソン氏は「この論文は、地球が温暖化途上にあることを示すことによって、 (温暖化否定論者に)挑戦状を突き付けている」と述べ、「2100年までには、地球は1万1000年前よりもはるかに温暖になっているだろう」と語った。同氏は今回の研究に関与していない。


(ウォールストリートジャーナル)

「新研究は、これは1万1300年間のスパンで見ても同様に異例だと結論した」は下図である。

fig aa-01
図7-4 「ウォールストリートジャーナル」より

これを見ると、気温は5000年前から下がり続け、1000年前から急激に下がり始めたが、150年前から「過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激」に上がり始めた。
「論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」はこのように述べている。


Wobbly planet
The gradual changes through the Holocene were driven by changes in Earth’s rotation, says Marcott. The planet is tilted about 23° relative to the plane of its orbit, and this tilt increased early in the Holocene before decreasing again. “It sort of wobbles,” Marcott says. A greater tilt increases the amount of sunlight at the poles during summer, and this keeps the planet warmer.
If humans had not begun warming the planet by releasing greenhouse gases, Earth would eventually return to an ice age. “If we were following the orbital trend we’d still be cooling,” Marcott says.


(「True face of climate’s hockey stick graph revealed」より)

「人的活動から生じる温室効果ガスの排出による」気温上昇が無ければ、氷河期に突入していた、と言うのである。
しかし、この論文の1年前には、このような論文が発表されていた。


【コラム】人類は地球の寒冷化に歯止めをかけているのか
2012年1月16日 18:06
1万年の文明の歴史は、地球の比較的最近の異常なほどに温かい期間に発生している。過去数百万年のうち、現在と同じくらい温暖かもっと温暖だった時期は1割未満に過ぎない。間氷期として知られる11回の期間だ。農業や定住というのは、気候変動が大きく、全般的に乾燥した二酸化炭素不足の氷河期においては不可能というのが1つの理論だ。そうした環境では作物の生育に一段と時間がかかり、より温かい地域でさえ生育状況は予測し難い。
この温暖な気候は既に1万1600年にわたり続いており、自然の成り行きからして終了するのは必然のはずだ。1970年代初期には、約20年ほど若干寒冷な時期が続いたことから、科学者の多くがこうした瞬間が間近に迫っていると確信していた。タイム誌は1974年に、科学者の多くは「自分たちが研究している異常気象は次の氷河期の前触れである可能性があると、懸念を深めていた」ことを伝えた。さらに、ニューズウィーク誌は1975年、気象学者の「ほぼ一致した」見方として、寒冷化トレンドのために「今世紀の残りは農産物が減少し、その結果として発生する大規模な食糧不足は悲劇的な状況につながる可能性がある」と記した。
それ以来、ご存知の通り、おそらく人類の活動による二酸化炭素の排出が少なくとも一因となり、温暖な気候が戻っている。こうした二酸化炭素の排出が氷河期への回帰を防いでいる可能性があると指摘するケンブリッジとロンドン、フロリダの大学からの新たな研究報告Nature Geoscience,5(2012)138が先週、話題を集めた。だが、この報告に関するもう1つの事実はあまり注目されていない。彼らは、今の時代と「酷似した」78万年前の前回の温暖期と同様に、次の氷河期が「今後約1500年以内に」始まると予想しているのだ。ずいぶん先の話である。
ただ、間氷期が突然の温暖化で始まり、急に頂点に達し、その後徐々に寒冷になり、さらにそれが加速して氷結に突入するというのは注目に値する。前回の間氷期――13万5000年~11万5000年前に発生した(この時代の温暖な気候を好む貝殻類の生物の化石が発見された付近に流れるオランダの川にちなんで名づけられたエーミアン間氷期と呼ばれる時期)――は、12万7000年~12万年前に摂氏約2度づつ不規則に気温が下がり、その後冷却化が加速した。
地球の軌道の循環的変化によりおそらく北半球では夏の太陽光が弱まり、緩やかな寒冷化が進んだ。北半球は大半が陸地であるため、太陽光線のこうした変化により表面を覆う雪や氷が徐々に増すことになり、こうした雪や氷により大気中に光が反射された。このため空気が一段と冷え、徐々に海も冷やされたようだ。温度の下がる海水に二酸化炭素の多くが吸収されたため、二酸化炭素の水準は約11万2000年前までそれほど低下しなかった。
現在の間氷期は同様のパターンを示している。グリーンランドの氷床コア(氷床を掘削して得られる氷の柱)などによる推定では、気温は約7000年前にピークを付けたことが示されている。当時の北極海は現在よりも数度温度が温かく、シベリアのはるか北部で木が育ち、サハラ砂漠はカバが住めるほど湿気があった(アフリカ大陸は通常、温暖な時には湿気が増す)。また、南半球からのデータでは、この「完新世の最適条件」の規模は世界的だったことが示されている。
その後、気温が不規則に低下し、ミノアとローマ時代、中世といった温暖期にピーク気温が下がり続け、氷河が世界中に達した1550~1850年代の「小氷河期」と呼ばれる例外的な寒冷期に低温化が最も進んだ。グリーンランドの氷床コアをみると、こうした時期は、現在の間氷期の中では最長かつ最も一貫した寒冷期だったことがうかがえる。
言い換えれば、現在の間氷期は、突然に始まり、急激にピークを付け、徐々に寒冷化した以前の間氷期と同様のパターンをたどっている。問題は、最近の温暖化が氷河期に至る前の一時的なものなのか、もしくは、人類の活動が環境に与える影響で現在、寒冷化トレンドに歯止めがかかっているのか、ということだ。
記者: Matt Ridley


(ウォールストリートジャーナル)

氷河期の開始は「ずいぶん先の話である」。
さらに、このような論文も発表された。


温室効果ガスの排出が次の「氷河期を遅らせた」?
ジョナサン・エイモス BBC科学担当編集委員
2016年1月14日
人類が大気に排出してきた温室効果ガスによって、次の氷河期の開始が5万年以上後ろ倒しになったかもしれない。ドイツの研究チームがこう指摘している。
1万2000年以上に地球を襲った氷河期など、氷河作用のきっかけとなる条件を分析した。
太陽の周りを移動する公転軌道上の今の位置は、氷河作用開始につながり得るが、それには大気中の二酸化炭素の量が多すぎるのだという。
ポツダム気候影響研究所の研究チームは、地球では今後しばらく温暖期が続くという分析を科学誌ネイチャー「Nature,529(2016)200」に発表した。
同研究所のアンドレイ・ガノポルスキ博士はBBCニュースに対して、「理論の上では次の氷河期の開始はずっと後のことなのかもしれないが、それが5万年後なのか10万年後なのか議論しても、実際にはあまり役に立たない」と話した。
「それよりも、我々人間が地球に影響力を持つようになったことを示しているのが大事だ。人間は、何万年にもわたる自然の動きを変えることができる」
地球は地質学上「第4紀」と呼ばれる過去250万年の間に、氷河期と温暖期の周期を繰り返してきた。
この間、地球上で氷床は出現しては消えていった。前回の氷河期のピークには、北米大陸から欧州北部、ロシア、アジアのほとんどが凍りついた。南半球でも、現在のチリとアルゼンチンのかなりの部分が凍結した。
揺れる惑星
地球が氷河期に入るかどうかを決める基本的な要因は、公転軌道の変化だ。
太陽の周りを移動する地球の軌道は真円ではなく、地軸(地球が自転する際の軸)も前後に揺れる。
こうした動きによって、太陽から地上に到達する放射能の量は変化するし、北半球の中緯度帯でそれがしきい値に到達すれば、氷河作用が始まることもある。
ガノポルスキ博士をはじめとする研究チームによる実験モデルはこれを確認すると共に、大気中に大量に存在する温室効果ガスの影響も浮き彫りにしている。
研究ではさらに、おそらく数百年前に実は氷河期が始まるはずだったのが、かろうじて免れたらしいということも分かった。産業革命が本格化する直前のことだ。
「現在の地球は太陽から最も遠い場所で(北半球が)夏を迎える時期にいる」とガノポルスキ博士は説明する。「通常ならば間氷期は終わり、次の氷河期が始まるはずの時期だ。天文学上は、氷河期開始にうってつけの状況にある。(200年前の)大気中の二酸化炭素濃度が240ppm(百万分の一)だったなら氷河期の開始もあり得たが、幸いにしてそれより高い280ppmだった」。
そして更なる工業化によって現在の濃度は400ppmを超えている。
速い新陳代謝
研究チームによると、仮に二酸化炭素の量が18世紀のままだったとしても、間氷期の気候は今後少なくとも2万年は続いただろうし、5万年続いた可能性もあるという。
しかし産業革命以降、大気中に排出された二酸化炭素は500ギガトン近い。そのため、氷河期開始に最適な天文学上の条件が次に揃っても氷河作用は起きないだろうし、今後さらに500ギガトン排出すれば「今後10万年の間に氷河作用が始まる可能性は相当少なくなる」と研究チームは論文で見解を示している。
その上にさらに500ギガトンを追加すれば、10万年たった後にも氷河期はおそらく始まらないだろう。
この研究論文について英ケンブリッジ大学のエリック・ウォルフ教授は、「次の氷河期開始は何万年後のことだと示唆する論文は過去にもあった。氷河期の開始を決めるのは、氷床が形成される緯度が季節ごとの太陽エネルギーをどれだけ受けるかと、二酸化炭素の組み合わせだと、これまでも言われていた。しかしこの論文はそのしきい値がどこにあるのか、数値化に向けてさらに前進している」と説明。「氷河期開始につながる太陽光の照射と二酸化炭素の組み合わせがどのレベルか、比較的簡単に推測する方法があるとあらためて分かった」と評価している。
ユニバーシティー・コレッジ・ロンドンのクリス・ラプリー教授も、「興味深い結果だ。人類の行動が惑星の新陳代謝そのものを左右する、新しい『人新世』の時代に入ったという証拠がこれでさらに得られたことになる」と補足した。


(BBC)

「大気中の二酸化炭素濃度が240ppm(百万分の一)だったなら氷河期の開始もあり得たが、幸いにしてそれより高い280ppmだった」と言うが、図7-3に見えるとおり、以前の間氷期のCO2濃度も280ppmだから、「それより高い280ppmだった」のは「人的活動から生じる温室効果ガスの排出による」ものではない。
「二酸化炭素の排出が氷河期への回帰を防いでいる」だの、「寒冷化トレンドに歯止めがかかっている」だのということはあり得ない。

この一事だけを以ってしても、「オレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」らのお粗末さは窺い知れようが、論文を詳しく検討してみよう。
「最近の温暖化傾向は過去2000年間という脈略でみると型破りだった」は下図である。

2013030901
図7-5 「A new, longer, hockey stick」より

このグラフの横軸は図7-1の横軸と同じで、目盛0は1950年に相当する。
従って、紫色の線の右端は1940年である。
「2000年から09年の10年間の地球の平均気温は、過去1万1300年の大半の期間よりも高かった」と騒ぎ立てているけれど、この論文の「温度の再構築作業」は20世紀前半までである。
「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」は20世紀前半の気温上昇である。
しかし、第5章第6章で解説したとおり、20世紀前半までの気温上昇は太陽活動の活発化が原因。
「Mann et al.」と記されているのは「Proc.Nati.Acad.Sci.,105(2008)13252」のことだが、マイケル・マン自身が、20世紀前半の気温上昇は自然変動、と認めてしまったのだ。
「この研究は、ある重要な疑問に焦点を当てることも目的としている。それは、過去150年に記録された地球の気温上昇が異例なものなのか、つまり、人的活動から生じる温室効果ガスの排出によるのか、それとも長期的な気温の自然変動なのかという疑問だ。研究論文は、この原因が人的活動にあると指摘した」には科学的論拠が全く無く、「理由は、気温の急激な変化が長期的なトレンドと一致していないように見えるからだ」は幼稚極まりない。

しかも、上図の紫色の線では1940年の気温偏差が0.6℃。
図5-5を見ると、2000年の気温偏差は0.4℃だから、1940年の気温は現在よりも高かった、という結果になっている。
第5章で指摘したとおり、北半球高緯度では1940年前後の気温が2000年以降の気温と同じほど高かったけれど、この論文は「1940年前後の10年間の地球の平均気温は、2000年から09年の大半の期間よりも高かった」と言うのである。
CO2の排出は20世紀後半に激増したから、「人的活動から生じる温室効果ガスの排出による」なら、つまり、IPCCの人為的温暖化説が正しいのなら、そんなはずがない。
「この論文は、地球が温暖化途上にあることを示すことによって、(温暖化否定論者に)挑戦状を突き付けている」どころか、全く逆に「(温暖化脅威論者に)挑戦状を突き付けている」のだ。

前章の[注4]で紹介したとおり、マイケル・マンのイカサマを暴いたのはマッキンタイアだが、彼が「論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」にこの問題を問い質したところ、次のように弁明している。


McIntyre emailed Marcott to ask how he got the conclusions in the Science article from the data in his dissertation. Marcott replied that his reconstruction of 20th-century temperatures was probably “not robust.” In other words, probably not accurate.
When that revelation became public, Marcott promised to clear up things in an online post. But when it finally appeared Sunday, Marcott admitted, “[The] 20th-century portion of our paleotemperature stack is not statistically robust, cannot be considered representative of global temperature changes, and therefore is not the basis of any of our conclusions.”
In other words, the 20th century portion of their findings is useless.
The authors now say there is a warming spike if a 20th-century thermometer record is grafted onto their chart.


(「Scientists on climate change: Er, never mind!」より)

上図の紫色の線が右端で急上昇していることを盾にして、「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」だの、「これは1万1300年間のスパンで見ても同様に異例だ」だのと騒ぎ立てていたのだが、「his reconstruction of 20th-century temperatures was probably “not robust.” In other words, probably not accurate」なら、そんなことが言えるはずはない。[注4]
全く呆れた連中だが、図7-5の20世紀(前半)を図5-4に置き換えると、1940年前後の気温偏差は0℃。
一方、1000年前の気温偏差も0℃。
その間の気温低下が事実でも、「最近の温暖化傾向は過去2000年間という脈略でみると型破りだったことが既に示されて」いないのだから、そして、間氷期は終わっていないのだから、太陽活動の低下、もしくは、気候の内的変動以外の原因は考えられず、やはり、20世紀前半までの気温上昇は自然変動である。
従って、第5章で解説したとおり、CO2を排出し続けても気温上昇は1.5℃未満に止まる。

先に述べたとおり、地球の過去40万年間はほとんど凍えていた。
「農業や定住というのは、気候変動が大きく、全般的に乾燥した二酸化炭素不足の氷河期においては不可能」。
もし、本当に1000年前に氷河期へ突入していたら・・・
想像するだにゾッとするではないか。
前節で解説したとおり、CO2濃度が産業革命時の値のままでも、氷河期に入れば(全球平均)気温は3℃下がる。
CO2を排出し続けても気温上昇は1.5℃未満に止まるから、それでも1.5℃は下がるけれど、4℃の低下に比べれば遥かにましであり、CO2濃度の高さが「農産物が減少し、その結果として発生する大規模な食糧不足は悲劇的な状況につながる」ことを少しは緩和してくれるだろうから、人為的なCO2排出は好ましいことなのである。

[注1] 一方、「CO2急増が氷河期終わらせる」という論文と同時期の「Clim.Past,8(2012)1213」と「Science,339(2013)1060」は、南極の気温上昇はCO2濃度上昇とほぼ同時に起こった、と言い立てている。
それなら、そして、CO2濃度上昇が全球平均気温上昇に先んじていたのなら、先ず南極が温暖化し、それから、他の地域の気温が上がったということになるが、「太陽を回る地球の軌道の変化で北半球の陸の氷が局地的に解け」と矛盾する。

[注2] 最新の研究に依れば、現在は過去6600万年で類を見ないほど急激にCO2が増加している。


CO2排出、過去6600万年で最速ペース
2016年3月22日 13:48 発信地:パリ/フランス
人類は地球上で過去6600万年の間に起きた自然な温暖化のどれよりも10倍速いペースで、大気中に温室効果ガスを排出しているとする研究が21日、発表された。
研究者らによるとこの排出ペースは、5580万年前の気候大変動さえも上回り、人類を未知の危険な領域に追い立てているという。
5580万年前の「暁新世(ぎょうしんせい)始新世(ししんせい)境界温暖化極大期(Paleocene-Eocene Thermal Maximum、PETM)」と呼ばれる期間には、2000~3000年の間に地表の温度が5度以上上昇した。
一方、2世紀前から現在の気候変動は、特に過去50年が顕著だが、気温上昇はこれまでわずか1度にとどまっている。しかし、すでに超巨大ハリケーンや海面上昇による高潮、壊滅的な干ばつなどが発生しており、このままの道をたどれば、温室効果ガスによって地球の気温は2100年までに3~4度上昇するだろう。
二酸化炭素(CO2)汚染によって起こり得る同様の影響を予測するために、PETMについては詳しい研究が行われてきたが、大量のCO2排出とそれに続く急速な気球温暖化、生物種の大規模な消滅と、状況は現在と相似している。一方、約5600万年前に種の絶滅が起きたのは主に海だったが、現在のいわゆる「6度目の大量絶滅期」では、海と陸の両方で種が絶滅の危機にひんしている。
論文の主筆者リチャード・ジーベ(Richard Zeebe)氏は「生態系への影響は、気温変化の幅よりも速度で現れる傾向がある」と述べる。地球上で現在起きている変化は、その速さの面でPETMのような時期よりも、彗星の激突によって恐竜が絶滅した白亜紀(Cretaceous)末期に近いと同氏はいう。
米カリフォルニア大学サンタクルーズ校、ハワイ大学の科学者らによるこの研究は、英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ「Nature Geoscience,9(2016)325」に掲載された。


(AFP/Marlowe HOOD)

先に「気温が上がったからCO2が増えたのかもしれない」と言ったけれど、もちろん、それは氷河期から間氷期への移行過程での話。
20世紀における大気中CO2濃度の増加は「気温が上がったからCO2が増えた」のではなく、人間が石炭や石油を消費した結果である。
「人類は地球上で過去6600万年の間に起きた自然な温暖化のどれよりも10倍速いペースで、大気中に温室効果ガスを排出している」ことは、それを裏づけている。
しかし、第5章第6章で解説したとおり、「このままの道をたどれば、温室効果ガスによって地球の気温は2100年までに3~4度上昇する」ことはない。

[注3] 小氷河期の到来が叫ばれていた1970年代の論文「Science,191(1976)1138」を見ると、氷期と間氷期のアルベドの差は8%もある。

[注4] 本当に「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」と言えるのか、と問い詰められた著者の一人は以下のように答えている。


Q. Is the rate of global temperature rise over the last 100 years faster than at any time during the past 11,300 years?
A. Our study did not directly address this question because the paleotemperature records used in our study have a temporal resolution of ~120 years on average, which precludes us from examining variations in rates of change occurring within a century. Other factors also contribute to smoothing the proxy temperature signals contained in many of the records we used, such as organisms burrowing through deep-sea mud, and chronological uncertainties in the proxy records that tend to smooth the signals when compositing them into a globally averaged reconstruction. We showed that no temperature variability is preserved in our reconstruction at cycles shorter than 300 years, 50% is preserved at 1000-year time scales, and nearly all is preserved at 2000-year periods and longer.


(「Fresh Thoughts from Authors of a Paper on 11,300 Years of Global Temperature Changes」より)

上図のような気候復元では、300年間の中で起こる気候変動は平滑化されてしまうから、図6-4の赤線で示したような変動が起こったことまでは判らない、ということである。

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