アル・ゴアの全く不都合な真実

6.1 CO2が氷河期を終わらせた?

周知のとおり、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化を吹聴するのに大きな役割を果たしたのが、元米国副大統領のアル・ゴアである。

この映像を見れば分かるとおり、やはり、真っ先にホッケー・スティック曲線を持ち出しているが、その虚構は前章で解説したとおり。
そこで、さらに南極の氷床から得られたデータを持ち出しているが、それと同じものが下図である。

南極ボストーク基地付近のアイスコアから得られたCO2濃度と気温
図6-1 南極ボストーク基地の氷床から導き出された過去40万年間の気温と大気中CO2濃度
(「国連環境計画ウェブページ」より。元論文は「Nature,399(1999)429」

下側のパネルに見えるとおり、地球の気候は約10万年周期で氷期と間氷期を繰り返してきた。
上側のパネルに見えるとおり、大気中のCO2濃度も気温と共に変化してきた。
CO2が増えたから気温が上がったようにも見えるが、「Quaternary Science Reviews,20(2001)583」、及び、「Science,299(2003)1728」に依れば、気温上昇がCO2の増加に先行していた。[注1]
そこで現れたのが、この論文。


CO2急増が氷河期終わらせる
2012年4月5日 02時00分
約1万年前に地球規模の温暖化で氷河期が終わった最大の要因は、大気中の二酸化炭素(CO2)の急激な増加だったとする研究結果を、米ハーバード大などのチームが5日付の英科学誌ネイチャーに発表「Nature,484(2012)49」した。
チームの研究者は「現在は氷河期の終わりより早いペースでCO2濃度が上昇しており、大きな影響が出る可能性がある」としている。
チームは約2万2千年前に太陽を回る地球の軌道の変化で北半球の陸の氷が局地的に解け、海流変化が起きて約1万9千年前に深海から大量のCO2が大気中に放出されたとみられるのを突き止めた。


(共同)

論文のタイトルは「Global warming preceded by increasing carbon dioxide concentrations during the last deglaciation」で、それを示しているのが下図である。

2012041401
図6-2 最終氷期からの全球平均気温推移(青線):「Nature,484(2012)49」より

青線が全球平均気温で黄色の丸印はCO2濃度。
明らかに青線は黄色の丸印よりも右にずれている。
図6-1は南極の気温とCO2濃度だが、全球平均気温とCO2濃度を調べたら、CO2の増加が気温上昇に先行していた、と言うのである。
CO2が増加したから気温が上がり、氷河期が終わった、と言うのである。

第2章の(2-3)式に依れば、産業革命時(間氷期)における赤外吸収・射出の平均回数nは40で、CO2の温室効果は6℃。
一方、氷期のCO2濃度は180ppmだから、赤外吸収・射出の平均回数nは(180÷280)×40=26。
第2章の(2-1)式より、この時のCO2の温室効果は

(6-1)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,26 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 26}} -255 = 4.89

間氷期との差は1.1℃。
これがフィードバックで3倍に増幅されるから、氷期と間氷期の気温差に占めるCO2の寄与は3.3℃。
上図で氷期と間氷期の気温差は4℃。
これなら、確かに「CO2急増が氷河期終わらせる」と言える。

下図に見えるとおり、現在は過去40万年間で類を見ないほど急激にCO2が増加している。[注2]

2017012403
図6-3 40万年前から現在までの大気中CO2濃度の変化
(「Climate change: How do we know?」より)

アル・ゴアは、この図を盾にして、CO2が増えたから氷河期が終わった(気温が上がった)のだから、化石燃料を燃やしてCO2を排出したから気温が上がったのだ、と煽り立てた。
そうすると、図6-1と図6-3からは、100ppmの増加で4℃上がったことになるから、単純に比例すると、280ppmから400ppmに増えると気温は1.2×4=4.8℃上がる。
冗談ではない。
上の論文と同じ Nature 誌にそのような論文が現れた。


地球の高温化は不可避、過去200万年の温度推移明らかに 研究
2016年9月27日 15:02 発信地:パリ/フランス
大気中の温室効果ガスのレベルが現在のまま保たれた場合でも、地球の気温は今後、耐え難いほど高温になる恐れがあるとする研究論文が26日、発表された。研究では過去200万年の地球の表面温度が初めて明らかにされている。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究論文Nature,538(2016)226によると、「温室効果ガスが今日のレベルで安定するということは、今後数千年の間に地球全体の平均気温が5度上昇する恐れがあることを示している」という。
英オックスフォードで先週行われた会議では、地球の平均気温は産業革命前と比べて1度上昇しており、今後10年以内に1.5度の上昇となる可能性もあることが専門家から報告されている。
米スタンフォード大学の古気候学者キャロリン・スナイダー(Carolyn Snyder)氏が行った今回の研究では、過去200万年にわたる地球の平均表面温度の推移が初めて明らかになった。
研究でスナイダー氏は、59の海洋堆積物コアから2万ビットのデータを抽出し、1000年間隔の気温年表を作成した。この同氏が採用の手法について、ある気象専門家は「独自のアプローチ」と述べている。
そして、この手法で導き出された結果は、地球の平均気温と大気圏の温室効果ガス濃度との間の確立された関連性に合致していた。新たなデータからは、大気圏の二酸化炭素濃度が2倍になると、地球の平均気温が9度上昇する可能性も示された。こうした気温上昇の下では、氷床が融解し、海水面が数十メートル上昇する恐れもあるという。
ただスナイダー氏の研究に参加していない別の専門家らは、同氏の論文は真偽が定かでない仮説を多数論拠としているとして注意を促している。


(AFP/Marlowe HOOD)

しかし、記事にも見えるとおり、この論文には批判の声が上がった。


Probably not
The good news is that’s probably not right.
We talked to Gavin Schmidt, head of NASA’s Goddard Institute for Space Studies, and Penn State’s Richard Alley. Both agreed that the reconstruction itself was significant. Schmidt said it probably deserved to be in a high-profile publication, and Alley said it “may prove to be of wide value.” Still, both of them pointed out issues with the sensitivity analysis.
The problem is that glacial cycles are triggered by changes in sunlight caused by orbital forcings. This triggers changes in the amount of carbon dioxide in the atmosphere, but it also triggers changes in everything from ocean levels and atmospheric dust to the amount of sunlight that hits highly reflective ice when it reaches the Earth. All of this affects the global temperature significantly. But, for the purposes of this analysis, Snyder only compared the temperature and CO2, ensuring that all these other impacts were ascribed to that gas.
“This assumes that all of the temperature change over the ice-age cycles arose from the greenhouse-gas change,” Alley told Ars. “But, we have high confidence that the ice ages were driven by features of Earth’s orbit and that the temperature would have changed (just not as much) if the greenhouse-gas forcing had not changed.” Alley went on to say that “the ‘sensitivity’ calculated in the new paper is an upper limit, because we know that some of the temperature change was not caused by greenhouse gases.”
Schmidt, for his part, focused on the consequences of what would happen if this sensitivity were right. “If I move the CO2 levels today to glacial levels – 180 [parts-per-million] – would I get an ice sheet the size of what we had at the height of the last glacial maximum?” he asked. “And the answer has to be no. The forcing is too small in the places where the ice would grow for that to happen.”
So, most of the paper is solid, telling us new things about the recent history of our planet. But there appears to be some significant issues with one aspect of the analysis: the part that attempts to calculate how sensitive our climate is to rising greenhouse gasses. Unfortunately, that’s the aspect that’s most relevant to non-scientists, and it’s the detail likely to attract the most attention.


(「New data set shows global temperatures over the last two million years」より)


‘A very confused message’
Professor Jeffrey Severinghaus, from the Scripps Institution of Oceanography at the University of San Diego, also found a problem with the study.
“She made a very, very basic logical error,” he said.
“Climate sensitivity is essentially the change in temperature divided by the change in CO2.
“The important part about that is that if you want to infer that from an actual situation in the Earth, you know, what the Earth did in the past, you have to make sure that temperature change is only due to an increase in CO2, whereas the ice ages, we know very well the temperature change was due to a combination of increasing CO2 and changes in the Earth’s orbit around the sun.
“In fact, it’s probably something like two-thirds of the temperature change is due to the orbit and only one-third to the CO2.
“So that’s probably why she got a factor of three larger.”

The study’s author Carolyn Snyder was not available for an interview.


(「Climate change study accused of erring on rising temperature predictions」より)

当然であろう。
上で説明したとおり、「CO2急増が氷河期終わらせる」は産業革命時(間氷期)における赤外吸収・射出の平均回数nが40に相当するけれど、第3章で解説したとおり、それは水蒸気を考慮していないのだから。
前章の第1節で解説したとおり、水蒸気を考慮すれば、産業革命時における15μm帯域の温室効果は7.5℃で、赤外吸収・射出の平均回数nは175。
氷期のCO2濃度は180ppmだから、赤外吸収・射出の平均回数nは(180÷280)×175=112。
再び(2-1)式より、氷期における15μm帯域の温室効果は

(6-2)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,112 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 112}} - 255 = 7.26

(5-1)式との差をとれば、CO2の寄与は0.26℃にすぎない。

これでは「one-third to the CO2」よりもかなり低いけれど、「one-third to the CO2」は、CO2単独の効果が3分の1、という意味ではない。
フィードバックで3倍に増幅されるから、CO2単独の効果が3分の1なら、「CO2急増が氷河期終わらせる」になってしまう。
フィードバックで3倍に増幅された値が「one-third to the CO2」であり、CO2単独の効果は9分の1、つまり、4℃÷9=0.44℃にすぎない。
それでもなお、0.26℃より大きいけれど、これも理の当然である。
前章で解説したとおり、IPCCは、太陽活動を過小評価して、CO2の効果を過大評価しているのだから。
「one-third to the CO2」は過大評価であり、CO2は氷河期が終わった要因の5分の1にすぎない。

上記の映像におけるアル・ゴアのイカサマは明らかである。

2013090501

6.2 CO2の排出が氷河期到来を阻んだ?

しかし、「only one-third to the CO2」だとしても、「氷河期が終わった最大の要因は、大気中の二酸化炭素(CO2)の急激な増加だったとする研究」も間違っているのだから、激しく批判されていたかと思いきや、我国のメディアまでが報じていることからも明らかなとおり、持て囃されていたのだ。
「only one-third to the CO2」と言いながら、その実は、「CO2急増が氷河期終わらせる」を黙認していたのである。
(この事実は「only one-third to the CO2」の過大評価を露呈している。)
だから、図6-2の論文の著者らは図に乗って、さらにこんな論文まで書いていた。


地球の気温、過去1万1000年の大半より高い
2013年3月08日 13:35
By GAUTAM NAIK
2000年から09年の10年間の地球の平均気温は、過去1万1300年の大半の期間よりも高かった。科学誌サイエンスが7日公表した新たな研究Science,339(2013)1198で明らかになった。この発見は現代の気候変動を評価する際の長期的な背景状況を提供するものだ。
今回の研究の目的は、過去1万1300年間の地球の気温の全体的な概況を提供することにあった。
この期間は「完新世」と呼ばれる比較的温和な時期で、最終氷河期の終了後に始まり、現代を含む人類の文明期全てが含まれている。
研究論文によると、地球は気温が1度変動するのに、最終氷河期が終わってから約1万1000年かかった。しかし、同じく1度変動するのに、産業革命の初期から現在までの150年間で再現されていることが判明したという。
この150年間の枠組みの中では、2000‐09年の10年間が近代的な形で記録を取り始めてから最も温暖だった時期の1つだが、世界の気温の中央値は、 完新世の初期の水準ほど高くなかった。しかし、研究論文によると、世界の気温の中央値は今後、その水準に達する公算が大きいという。科学者らの予想が正しければ、2100年の地球の気温は過去1万1300年よりも高くなるとみられる。
研究はオレゴン州立大学とハーバード大学が共同で実施し、全米科学財団(NSF)から資金援助を受けた。この研究は、ある重要な疑問に焦点を当てることも目的としている。それは、過去150年に記録された地球の気温上昇が異例なものなのか、つまり、人的活動から生じる温室効果ガスの排出によるのか、それとも長期的な気温の自然変動なのかという疑問だ。
研究論文は、この原因が人的活動にあると指摘した。理由は、気温の急激な変化が長期的なトレンドと一致していないように見えるからだ。
論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士は「違うのは変化の速さだ」と指摘し、「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」と述べた。
古気候学として知られる古代の地球の気候を推測する学問は、難しい作業だ。それはプロキシ(代用的)尺度に依存しているためだ。つまり、過去の温度の物理的な記録を提供する海の化石や氷床コアから採取した代用的な指標だ。例えば、科学者らはこのプロセスの一環として、さまざまな温度条件で海洋生物を育て、 異なる水温と、海洋生物の殻の化学的な特徴の変化とを関連づける。こうして得られたデータは海の化石の研究に使うことができる。発見した結果を裏付けるため、研究者は通常、ある1つの情報源(例えば海の化石)から得られた温度の記録が、これと関連のない別の情報源(例えば氷床コア)から得られた温度記録と合致するかをチェックする。
今回出された新しいデータは、地球の気温上昇の理由をめぐる議論を再燃させる可能性がある。多くの科学者は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出増が原因だとしているが、雲の量が増えるといった自然的な要因が原因だと反論する向きもある。
完新世の気温をめぐる従来の再現作業は、地域に限定されがちだった。これに対し、マーコット博士のチームは73カ所からデータを収集し、1万1300年前以降のもっと地球規模の姿を構築した。データは海洋化石のほか、グリーンランドの氷床や湖からの花粉の記録から得た。
温度の再構築作業の結果、最近の温暖化傾向は過去2000年間という脈略でみると型破りだったことが既に示されてきた。新研究は、これは1万1300年間のスパンで見ても同様に異例だと結論した。
世界の平均気温は完新世の間、セ氏1度の範囲内で変動した。それは主として地球の軌道が徐々にシフトしたことによるものだった。軌道のシフトで、地球の異なる部分に降り注ぐ太陽光の量が変化した。
完新世の前半期は温暖だった。その後、冷却トレンドになり、5000年程度続いた。200年ほど前、温度は着実に上昇し始めた。
予測では、地球の大気の温度は2100年までにセ氏2-5度上昇する可能性があるという。
米海洋大気局(NOAA)で古気候学プログラムを指揮しているデービッド・アンダーソン氏は「この論文は、地球が温暖化途上にあることを示すことによって、 (温暖化否定論者に)挑戦状を突き付けている」と述べ、「2100年までには、地球は1万1000年前よりもはるかに温暖になっているだろう」と語った。同氏は今回の研究に関与していない。


(ウォールストリートジャーナル)

「新研究は、これは1万1300年間のスパンで見ても同様に異例だと結論した」は下図である。

fig aa-01
図6-4 「ウォールストリートジャーナル」より

これを見ると、気温は5000年前から下がり続け、1000年前から急激に下がり始めたが、150年前から「過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激」に上がり始めた。
「論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」はこのように述べている。


Wobbly planet
The gradual changes through the Holocene were driven by changes in Earth’s rotation, says Marcott. The planet is tilted about 23° relative to the plane of its orbit, and this tilt increased early in the Holocene before decreasing again. “It sort of wobbles,” Marcott says. A greater tilt increases the amount of sunlight at the poles during summer, and this keeps the planet warmer.
If humans had not begun warming the planet by releasing greenhouse gases, Earth would eventually return to an ice age. “If we were following the orbital trend we’d still be cooling,” Marcott says.


(「True face of climate’s hockey stick graph revealed」より)

「人的活動から生じる温室効果ガスの排出」が無ければ、氷河期に突入していた、と言うのだが、この論文の1年前には、こんな論文が発表されていた。[注3]


【コラム】人類は地球の寒冷化に歯止めをかけているのか
2012年1月16日 18:06
1万年の文明の歴史は、地球の比較的最近の異常なほどに温かい期間に発生している。過去数百万年のうち、現在と同じくらい温暖かもっと温暖だった時期は1割未満に過ぎない。間氷期として知られる11回の期間だ。農業や定住というのは、気候変動が大きく、全般的に乾燥した二酸化炭素不足の氷河期においては不可能というのが1つの理論だ。そうした環境では作物の生育に一段と時間がかかり、より温かい地域でさえ生育状況は予測し難い。
この温暖な気候は既に1万1600年にわたり続いており、自然の成り行きからして終了するのは必然のはずだ。1970年代初期には、約20年ほど若干寒冷な時期が続いたことから、科学者の多くがこうした瞬間が間近に迫っていると確信していた。タイム誌は1974年に、科学者の多くは「自分たちが研究している異常気象は次の氷河期の前触れである可能性があると、懸念を深めていた」ことを伝えた。さらに、ニューズウィーク誌は1975年、気象学者の「ほぼ一致した」見方として、寒冷化トレンドのために「今世紀の残りは農産物が減少し、その結果として発生する大規模な食糧不足は悲劇的な状況につながる可能性がある」と記した。

それ以来、ご存知の通り、おそらく人類の活動による二酸化炭素の排出が少なくとも一因となり、温暖な気候が戻っている。こうした二酸化炭素の排出が氷河期への回帰を防いでいる可能性があると指摘するケンブリッジとロンドン、フロリダの大学からの新たな研究報告Nature Geoscience,5(2012)138が先週、話題を集めた。だが、この報告に関するもう1つの事実はあまり注目されていない。彼らは、今の時代と「酷似した」78万年前の前回の温暖期と同様に、次の氷河期が「今後約1500年以内に」始まると予想しているのだ。ずいぶん先の話である。
ただ、間氷期が突然の温暖化で始まり、急に頂点に達し、その後徐々に寒冷になり、さらにそれが加速して氷結に突入するというのは注目に値する。前回の間氷期――13万5000年~11万5000年前に発生した(この時代の温暖な気候を好む貝殻類の生物の化石が発見された付近に流れるオランダの川にちなんで名づけられたエーミアン間氷期と呼ばれる時期)――は、12万7000年~12万年前に摂氏約2度づつ不規則に気温が下がり、その後冷却化が加速した。
地球の軌道の循環的変化によりおそらく北半球では夏の太陽光が弱まり、緩やかな寒冷化が進んだ。北半球は大半が陸地であるため、太陽光線のこうした変化により表面を覆う雪や氷が徐々に増すことになり、こうした雪や氷により大気中に光が反射された。このため空気が一段と冷え、徐々に海も冷やされたようだ。温度の下がる海水に二酸化炭素の多くが吸収されたため、二酸化炭素の水準は約11万2000年前までそれほど低下しなかった。
現在の間氷期は同様のパターンを示している。グリーンランドの氷床コア(氷床を掘削して得られる氷の柱)などによる推定では、気温は約7000年前にピークを付けたことが示されている。当時の北極海は現在よりも数度温度が温かく、シベリアのはるか北部で木が育ち、サハラ砂漠はカバが住めるほど湿気があった(アフリカ大陸は通常、温暖な時には湿気が増す)。また、南半球からのデータでは、この「完新世の最適条件」の規模は世界的だったことが示されている。
その後、気温が不規則に低下し、ミノアとローマ時代、中世といった温暖期にピーク気温が下がり続け、氷河が世界中に達した1550~1850年代の「小氷河期」と呼ばれる例外的な寒冷期に低温化が最も進んだ。グリーンランドの氷床コアをみると、こうした時期は、現在の間氷期の中では最長かつ最も一貫した寒冷期だったことがうかがえる。
言い換えれば、現在の間氷期は、突然に始まり、急激にピークを付け、徐々に寒冷化した以前の間氷期と同様のパターンをたどっている。問題は、最近の温暖化が氷河期に至る前の一時的なものなのか、もしくは、人類の活動が環境に与える影響で現在、寒冷化トレンドに歯止めがかかっているのか、ということだ。
記者: Matt Ridley


(ウォールストリートジャーナル)

「次の氷河期が『今後約1500年以内に』始まると予想しているのだ」から、つまり、産業革命前後に氷河期が始まっていたのではないから、「二酸化炭素の排出が氷河期への回帰を防いでいる」はずがない。
このことだけでも、図6-4のいかがわしさは窺い知れようが、詳しく検討してみよう。
「最近の温暖化傾向は過去2000年間という脈略でみると型破りだった」は下図である。

2013030901
図6-5 「A new, longer, hockey stick」より

このグラフの横軸は図6-1の横軸と同じで、目盛0は1950年に相当する。
従って、紫色の線の右端は1940年。
「2000年から09年の10年間の地球の平均気温は、過去1万1300年の大半の期間よりも高かった」と騒ぎ立てているけれど、この論文の「温度の再構築作業」は20世紀前半まで。
「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」は19世紀と20世紀前半の気温上昇である。
実際、前章図5-5の黄色の線に見えるとおり、2000年の気温偏差は0.4℃で、上図の紫色の線の右端(1940年)は0.6℃だから、この論文に依れば、(全球平均)気温は20世紀前半の方が2000年よりも高かったのだ!
CO2の排出が激増したのは20世紀後半だから、IPCCの人為的温暖化説が正しいのなら、そんなことはあり得ない。
「この論文は、地球が温暖化途上にあることを示すことによって、(温暖化否定論者に)挑戦状を突き付けている」どころか、全く逆に「(温暖化脅威論者に)挑戦状を突き付けている」のだ。

前章の[注7]で紹介したとおり、マイケル・マンのイカサマを暴いたのはマッキンタイアだが、彼が「論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」にこの問題を問い質したところ、このように弁明している。


McIntyre emailed Marcott to ask how he got the conclusions in the Science article from the data in his dissertation. Marcott replied that his reconstruction of 20th-century temperatures was probably “not robust.” In other words, probably not accurate.
When that revelation became public, Marcott promised to clear up things in an online post. But when it finally appeared Sunday, Marcott admitted, “[The] 20th-century portion of our paleotemperature stack is not statistically robust, cannot be considered representative of global temperature changes, and therefore is not the basis of any of our conclusions.”
In other words, the 20th century portion of their findings is useless.
The authors now say there is a warming spike if a 20th-century thermometer record is grafted onto their chart.


(「Scientists on climate change: Er, never mind!」より)

それならば、前章図5-5では1940年前後の気温偏差は0℃だから、紫色の線の右端を0℃に下げて、それを「Mann et al.」(「Proc.Nati.Acad.Sci.,105(2008)13252」)と比較してみよう。
「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」だの、「これは1万1300年間のスパンで見ても同様に異例だ」だのと言えないことは明らかである。[注4]

しかし、紫色の線に限れば、右端を0℃にしても、なお「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」から、「理由は、気温の急激な変化が長期的なトレンドと一致していないように見えるからだ」と言うのなら、「研究論文は、この(20世紀前半の気温上昇の)原因が人的活動にあると指摘した」ことになる。
そうすると、どういうことになるだろうか?
第2章で解説したとおり、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説では、CO2濃度が倍増すればCO2の温室効果は1℃上がり、それがフィードバックで3倍に増幅される。
それを簡単な数式で表すと、

(6-3)    \displaystyle 3 \, \frac{\ln \left( d_1 / \, d_0 \right)}{\ln \left( 2 \right)} + c

これを観測値と比較したのが下図の青線である。
 d_0 は280ppmに固定。CO2増加の影響は1年後れて表れると仮定し、 d_1 には翌年のCO2濃度を用いる。つまり、2001年の気温偏差は2000年のCO2濃度から計算する。)

図6-6 1880年以降の気温変動(HadCRUT3)とIPCCの人為的温暖化説でフィードバック係数を3にした場合(青線)と9にした場合(赤線)

20世紀第4四半期の急激な気温上昇(前章図5-5の黄色の線に相当)をおおよそ再現できるというのが、IPCCが人為的(排出CO2)温暖化を正当化する拠り所。
しかし、1970年以前は観測値を全く再現できない。
(だから、青線を上にずらしている。そうすると、第2章図2-2に見えるとおり、今度は20世紀第4四半期が再現できなくなるから、次章で解説するとおり、CO2の増加に因る気温上昇がエアロゾルに因る冷却効果で部分的に打ち消された、と言い張っている。それでも、21世紀の気温上昇停滞を再現できない。第10章で解説するとおり、それはIPCCの気候モデルの破綻をハッキリと示している。)
特に、20世紀前半の気温上昇は20世紀第4四半期と同じほど急激だから、青線では再現不可能。
20世紀前半の気温上昇を再現するには、フィードバック係数をかなり大きくする必要がある。
赤線に見えるとおり、フィードバック係数を9にすると、おおよそ再現できる。
「理由は、気温の急激な変化が長期的なトレンドと一致していないように見えるからだ」なら、CO2濃度が産業革命時の倍になれば気温は9℃上がる。
冗談ではない。
前節で引用したキャロリン・スナイダーの研究からは「大気圏の二酸化炭素濃度が2倍になると、地球の平均気温が9度上昇する可能性も示された」。
「論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」は図6-2の論文の著者の一人(図6-2の論文の筆頭著者も図6-5の論文の著者の一人)で、図6-2の論文では「CO2急増が氷河期終わらせる」だから、つまり、キャロリン・スナイダーの論文と同じだから、「理由は、気温の急激な変化が長期的なトレンドと一致していないように見えるからだ」ということは、「大気圏の二酸化炭素濃度が2倍になると、地球の平均気温が9度上昇する」ということなのだ。
しかし、前章で見たとおり、それは「very, very basic logical error」。
図6-5に科学的な価値は全く無い。

図6-1に見えるとおり、地球の過去40万年間はほとんど凍えていた。
上で引用した「人類は地球の寒冷化に歯止めをかけているのか」と題するコラムに見えるとおり、「農業や定住というのは、気候変動が大きく、全般的に乾燥した二酸化炭素不足の氷河期においては不可能」。
この論文の執筆者らは「If humans had not begun warming the planet by releasing greenhouse gases, Earth would eventually return to an ice age」と言い立てているけれど、本当に氷河期へ突入していたら・・・、想像するだにゾッとするではないか。
確かに、CO2が増加すれば気温は上がるけれど、前章の第1節で解説したとおり、CO2を排出し続けても気温上昇は1.5℃未満に止まるから、氷河期に入れば2℃は下がる。
「そうした環境では作物の生育に一段と時間がかかり、より温かい地域でさえ生育状況は予測し難い」。
しかし、4℃低下に比べれば遥かにましであり、CO2濃度の高さが「農産物が減少し、その結果として発生する大規模な食糧不足は悲劇的な状況につながる」ことを少しは緩和してくれるだろうから、CO2の排出は好ましいことなのである。

[注1] 一方、「CO2急増が氷河期終わらせる」という論文と同時期の「Clim.Past,8(2012)1213」と「Science,339(2013)1060」は、南極の気温上昇はCO2濃度上昇とほぼ同時に起こった、と言い立てている。
それなら、そして、CO2濃度上昇が全球平均気温上昇に先んじていたのなら、先ず南極が温暖化し、それから、他の地域の気温が上がったということになるが、「太陽を回る地球の軌道の変化で北半球の陸の氷が局地的に解け」と矛盾する。

[注2] 最新の研究に依れば、現在は過去6600万年で類を見ないほど急激にCO2が増加している。


CO2排出、過去6600万年で最速ペース
2016年3月22日 13:48 発信地:パリ/フランス
人類は地球上で過去6600万年の間に起きた自然な温暖化のどれよりも10倍速いペースで、大気中に温室効果ガスを排出しているとする研究が21日、発表された。
研究者らによるとこの排出ペースは、5580万年前の気候大変動さえも上回り、人類を未知の危険な領域に追い立てているという。
5580万年前の「暁新世(ぎょうしんせい)始新世(ししんせい)境界温暖化極大期(Paleocene-Eocene Thermal Maximum、PETM)」と呼ばれる期間には、2000~3000年の間に地表の温度が5度以上上昇した。
一方、2世紀前から現在の気候変動は、特に過去50年が顕著だが、気温上昇はこれまでわずか1度にとどまっている。しかし、すでに超巨大ハリケーンや海面上昇による高潮、壊滅的な干ばつなどが発生しており、このままの道をたどれば、温室効果ガスによって地球の気温は2100年までに3~4度上昇するだろう。
二酸化炭素(CO2)汚染によって起こり得る同様の影響を予測するために、PETMについては詳しい研究が行われてきたが、大量のCO2排出とそれに続く急速な気球温暖化、生物種の大規模な消滅と、状況は現在と相似している。一方、約5600万年前に種の絶滅が起きたのは主に海だったが、現在のいわゆる「6度目の大量絶滅期」では、海と陸の両方で種が絶滅の危機にひんしている。
論文の主筆者リチャード・ジーベ(Richard Zeebe)氏は「生態系への影響は、気温変化の幅よりも速度で現れる傾向がある」と述べる。地球上で現在起きている変化は、その速さの面でPETMのような時期よりも、彗星の激突によって恐竜が絶滅した白亜紀(Cretaceous)末期に近いと同氏はいう。
米カリフォルニア大学サンタクルーズ校、ハワイ大学の科学者らによるこの研究は、英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ「Nature Geoscience,9(2016)325」に掲載された。


(AFP/Marlowe HOOD)

先に「気温が上がったからCO2が増えたのかもしれない」と言ったけれど、もちろん、それは氷河期から間氷期への移行過程での話。
20世紀における大気中CO2濃度の増加は「気温が上がったからCO2が増えた」のではなく、人間が石炭や石油を消費した結果である。
「人類は地球上で過去6600万年の間に起きた自然な温暖化のどれよりも10倍速いペースで、大気中に温室効果ガスを排出している」ことは、それを裏づけている。
しかし、前章の第1節で解説したとおり、「このままの道をたどれば、温室効果ガスによって地球の気温は2100年までに3~4度上昇する」ことはない。

[注3] その後、このような論文も現われた。


温室効果ガスの排出が次の「氷河期を遅らせた」?
ジョナサン・エイモス BBC科学担当編集委員
2016年1月14日
人類が大気に排出してきた温室効果ガスによって、次の氷河期の開始が5万年以上後ろ倒しになったかもしれない。ドイツの研究チームがこう指摘している。
1万2000年以上に地球を襲った氷河期など、氷河作用のきっかけとなる条件を分析した。
太陽の周りを移動する公転軌道上の今の位置は、氷河作用開始につながり得るが、それには大気中の二酸化炭素の量が多すぎるのだという。
ポツダム気候影響研究所の研究チームは、地球では今後しばらく温暖期が続くという分析を科学誌ネイチャー「Nature,529(2016)200」に発表した。
同研究所のアンドレイ・ガノポルスキ博士はBBCニュースに対して、「理論の上では次の氷河期の開始はずっと後のことなのかもしれないが、それが5万年後なのか10万年後なのか議論しても、実際にはあまり役に立たない」と話した。
「それよりも、我々人間が地球に影響力を持つようになったことを示しているのが大事だ。人間は、何万年にもわたる自然の動きを変えることができる」
地球は地質学上「第4紀」と呼ばれる過去250万年の間に、氷河期と温暖期の周期を繰り返してきた。
この間、地球上で氷床は出現しては消えていった。前回の氷河期のピークには、北米大陸から欧州北部、ロシア、アジアのほとんどが凍りついた。南半球でも、現在のチリとアルゼンチンのかなりの部分が凍結した。
揺れる惑星
地球が氷河期に入るかどうかを決める基本的な要因は、公転軌道の変化だ。
太陽の周りを移動する地球の軌道は真円ではなく、地軸(地球が自転する際の軸)も前後に揺れる。
こうした動きによって、太陽から地上に到達する放射能の量は変化するし、北半球の中緯度帯でそれがしきい値に到達すれば、氷河作用が始まることもある。
ガノポルスキ博士をはじめとする研究チームによる実験モデルはこれを確認すると共に、大気中に大量に存在する温室効果ガスの影響も浮き彫りにしている。
研究ではさらに、おそらく数百年前に実は氷河期が始まるはずだったのが、かろうじて免れたらしいということも分かった。産業革命が本格化する直前のことだ。
「現在の地球は太陽から最も遠い場所で(北半球が)夏を迎える時期にいる」とガノポルスキ博士は説明する。「通常ならば間氷期は終わり、次の氷河期が始まるはずの時期だ。天文学上は、氷河期開始にうってつけの状況にある。(200年前の)大気中の二酸化炭素濃度が240ppm(百万分の一)だったなら氷河期の開始もあり得たが、幸いにしてそれより高い280ppmだった」。
そして更なる工業化によって現在の濃度は400ppmを超えている。
速い新陳代謝
研究チームによると、仮に二酸化炭素の量が18世紀のままだったとしても、間氷期の気候は今後少なくとも2万年は続いただろうし、5万年続いた可能性もあるという。
しかし産業革命以降、大気中に排出された二酸化炭素は500ギガトン近い。そのため、氷河期開始に最適な天文学上の条件が次に揃っても氷河作用は起きないだろうし、今後さらに500ギガトン排出すれば「今後10万年の間に氷河作用が始まる可能性は相当少なくなる」と研究チームは論文で見解を示している。
その上にさらに500ギガトンを追加すれば、10万年たった後にも氷河期はおそらく始まらないだろう。
この研究論文について英ケンブリッジ大学のエリック・ウォルフ教授は、「次の氷河期開始は何万年後のことだと示唆する論文は過去にもあった。氷河期の開始を決めるのは、氷床が形成される緯度が季節ごとの太陽エネルギーをどれだけ受けるかと、二酸化炭素の組み合わせだと、これまでも言われていた。しかしこの論文はそのしきい値がどこにあるのか、数値化に向けてさらに前進している」と説明。「氷河期開始につながる太陽光の照射と二酸化炭素の組み合わせがどのレベルか、比較的簡単に推測する方法があるとあらためて分かった」と評価している。
ユニバーシティー・コレッジ・ロンドンのクリス・ラプリー教授も、「興味深い結果だ。人類の行動が惑星の新陳代謝そのものを左右する、新しい『人新世』の時代に入ったという証拠がこれでさらに得られたことになる」と補足した。


(BBC)

「おそらく数百年前に実は氷河期が始まるはずだったのが、かろうじて免れたらしいということも分かった。産業革命が本格化する直前のことだ」は「論文の主執筆者でオレゴン州立大学の古気候学者のショーン・マーコット博士」の言い分を正当化しているように見えるけれど、図6-3に見えるとおり、間氷期のCO2濃度は280ppmだから、「大気中の二酸化炭素濃度が240ppm(百万分の一)だったなら氷河期の開始もあり得た」ということは、「If humans had not begun warming the planet by releasing greenhouse gases, Earth would eventually return to an ice age」ではない、ということである。
その証拠に、「仮に二酸化炭素の量が18世紀のままだったとしても、間氷期の気候は今後少なくとも2万年は続いただろうし、5万年続いた可能性もある」と言っている。

[注4] 本当に「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激だ」と言えるのか、と問い詰められた著者の一人は以下のように答えている。


Q. Is the rate of global temperature rise over the last 100 years faster than at any time during the past 11,300 years?
A. Our study did not directly address this question because the paleotemperature records used in our study have a temporal resolution of ~120 years on average, which precludes us from examining variations in rates of change occurring within a century. Other factors also contribute to smoothing the proxy temperature signals contained in many of the records we used, such as organisms burrowing through deep-sea mud, and chronological uncertainties in the proxy records that tend to smooth the signals when compositing them into a globally averaged reconstruction. We showed that no temperature variability is preserved in our reconstruction at cycles shorter than 300 years, 50% is preserved at 1000-year time scales, and nearly all is preserved at 2000-year periods and longer.


(「Fresh Thoughts from Authors of a Paper on 11,300 Years of Global Temperature Changes」より)

図6-4では300年間に起こる気候変動は平滑化されてしまっているから、「過去150年にわれわれが目撃した変化は、過去1万1000年で目撃したどの変化よりも急激」とは判断できない、ということである。

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