ホッケー・スティック曲線の虚実

5.1 パリ協定の不都合な真実

冒頭で紹介した2013年5月22日の朝日新聞記事に見えるとおり、これまでは「2℃目標」が声高に叫ばれてきたが、下記の朝日新聞社説に見えるとおり、2015年のCOP21では、さら「1.5℃目標」が追加された。


温暖化対策の新合意 危機感共有の第一歩だ
「今日、私たちは人類にとって最大級の試練、気候変動に直面して、ここにいる。ツバルのような国の生き残りはこの会議の決定にかかっている」
こんな悲痛な首脳演説で幕を開けたフランス・パリでの国連気候変動会議(COP21)が、2020年以降の地球温暖化対策に関する新しい国際枠組みでようやく合意に達した。
複雑に絡む利害を反映し、各国が折り合いをつけた結果だけに、不足はいろいろある。
それでも、平均気温の上昇を2度未満に抑えるというこれまでの目標だけでなく、「1.5度未満に抑えるよう努める」と明記した意義は大きい。
二酸化炭素など温室効果ガスの排出をできるだけ早く減少に転じ、今世紀後半には森林や海による吸収以下にする「実質ゼロ」の長期目標も盛り込んだ。
「数カ月前まで考えられなかった」と環境団体も驚く。
2度と1.5度では温暖化による海面上昇で決定的な差が生じるという数値予測がある。国土の水没を恐れるツバルなど小さな島国の懸命な訴えを、大国も軽んじられなかったのだ。
6年前に温暖化交渉は一度決裂した。だがその後、先進国を含む世界各地で記録的な熱波や大雨、干ばつ、強烈な嵐など気象異変が相次ぎ、多くの人々が気候変動への懸念を強めたことが交渉の原動力になった。
■京都議定書を超えて
核兵器による突然の破滅が人類にとって急性疾患とすれば、温暖化はじわじわと苦痛や危機をもたらす慢性疾患といえる。
合意された排出の削減や抑制は自主的な取り組みとはいえ、途上国も参加する。先進国だけに削減を義務づけた京都議定書から大きく前進した。
温暖化への危機感を世界が共有して踏み出す第一歩である。
世界が地球益の下に結束して「共通だが差異ある責任」を果たそうと誓ったのがパリ協定であり、各国は様々な被害軽減などにもこぞって乗り出す。
今回の最大の推進役は、皮肉にも共和党政権下で京都議定書を離脱した米国だった。
オバマ民主党政権は、首脳会談を通じて世界最大の排出国になった中国やインドを巻き込んだ。さらに、削減機運を高めようと島国や欧州連合(EU)などがつくった「野心連合」に電撃的に参加を表明し、合意への流れを確実にした。
来年の大統領選もにらんだ積極的な動きだった。
■後悔しない政策を
米国の共和党支持層には温暖化懐疑論が根強い。
確かに温暖化の研究は進んでいるが、完璧には程遠い。人類の知恵が十分及ばぬほど地球環境システムは複雑だからだ。
だが産業革命以後、石炭や石油などの化石燃料を人類が大量に燃やし始め、大気中の二酸化炭素が急速に増えたことは確かだ。この濃度の急上昇により、近年の温暖化は説明できる。
この先も二酸化炭素濃度が上がれば気温も上がると予想される。しかし、どのぐらいの濃度になると何度気温が上がると正確に予測する精度はない。
さらに言えば、温暖化の原因はほかにあるかも知れない。それでも、国際社会は現時点では温室効果ガスが最も疑わしいと判断し、排出削減で温暖化を抑えようと決意したのである。
温暖化の科学に不確実さがあっても、将来に向けて「後悔しない政策」を選択したのだ。

■日本も決意が要る
そんな決意の乏しい日本政府は、パリでほとんど存在感を示せなかった。米国の野心連合参加も寝耳に水だったという。
会場の展示で各国は競うように自国の立場をアピールした。だが、日本のブースは四方を壁で囲っただけの空間。世界の流れに目や耳をふさぐかのような、象徴的な造りだった。
世界は脱化石燃料・脱炭素社会に大きくかじを切る決意をした。今回、長期目標が従来よりずっと野心的なものになったことで、世界経済の潮流も急速に変わっていくだろう。
国内総生産で世界3位、ガス排出量でも5位の日本が、この変化に受け身のままでいいはずがない。社会や産業の構造を、もっと積極的に脱炭素に切り替えていくべきである。
パリ協定は高い目標を掲げたとはいえ、達成の道筋や仕組みの検討はこれからだ。日本は政府も企業も様子見をやめて、今後の過程で貢献することが重要だ。ここで追いつかなければ、まさに化石になりかねない。
協定が変革を迫っているのは政府や企業だけではない。
家庭や自治体、さらには社会も、従来のエネルギー多消費型から省エネを考えたものに変わっていかなければいけない。
海外に比べて日本で弱いのは、個を超えた共同での省エネ化だ。個人や家庭、企業がつながることで、無理なく、より効率的に省エネが進む。
案じるよりも、みんなで一歩を踏み出す決意を持ちたい。


(2015年12月15日の朝日新聞社説)

「どのぐらいの濃度になると何度気温が上がると正確に予測する精度はない」けれど、「この先も二酸化炭素濃度が上がれば気温も1.5℃までは上がると予想される」。
その理由は以下のとおり。
IPCCに依れば、CO2排出に因る気温上昇は(北半球の)高緯度ほど大きく、全球平均の2倍の速さで進行する。


フィンランド、世界最速の気温上昇 世界平均のほぼ2倍
2014年12月23日 13:22 発信地:ストックホルム/スウェーデン
北欧フィンランドの気温が過去166年間に、世界平均のほぼ2倍のペースで上昇していたことが分かった。フィンランド気象庁が22日、東フィンランド大学の研究に基づいて発表した。地球温暖化の影響は高緯度ほど大きいとの説を裏付けるものとなった。
フィンランド気象庁によると、同国の平均気温は1847年から2013年までの166年間で2度以上も上昇した。10年ごとの気温上昇は平均0.14度で、世界平均のほぼ2倍だという。
実際、冬に湖が凍結する時期が遅くなったり、春に花が咲く時期が早くなったりするなど、気温上昇の影響は日常の生活でも目に見えて表れ始めている。月別にみると気温上昇が最も顕著なのは11、12、1月で、3、4、5月はそれほどではないという。


(AFP)

ところが、当該論文を見ると、1940年前後の気温は2000年以降と同じほど高かった。

2014122501
図5-1 「Stochastic Environmental Research and Risk Assessment,29(2015)1521」より

フィンランドだけではない。
下図に見えるとおり、アイスランドでも1940年前後の気温は2000年以降と同じほど高かった。

2017011601
図5-2 「Arktos,2(2016)24」より

グリーンランドも然り。[注1]

2017011602
図5-3 「Geological Survey of Denmark and Greenland Bulletin,35(2016)71」より

以上の3地域以外も同様であり、北半球高緯度全般で1940年前後の気温が2000年以降と同じほど高かった。

2014022401
図5-4 北緯70度から90度の平均気温推移(「Climate4you」より)

CO2の排出は20世紀後半に激増したから、「この濃度の急上昇により、近年の温暖化は説明できる」のなら、21世紀の北半球高緯度は20世紀前半よりもはるかに気温が高いはず。
ところが、20世紀前半と大差ない。
「(CO2の排出に因る)地球温暖化の影響は高緯度ほど大きい」のなら、北半球高緯度の気候変動とCO2排出との因果関係は弱い、という皮肉な結果になってしまうのだ。

確かに、下図に見えるとおり、全球平均気温では21世紀が20世紀前半よりも0.4℃高い。

fig 06-03
図5-5 「STOP THE 温暖化 2012」より(原典はIPCC第4次報告書のFAQ3.1の図1)

しかし、CO2排出の影響が一番大きいはずの北半球高緯度ですら、CO2の影響がハッキリとは認められないのだから、「この濃度の急上昇により、近年の温暖化は説明できる」はずがない。
「かも知れない」ではなく、確かに「温暖化の原因はほかにある」。
北半球高緯度の気温を見れば、少なくとも、20世紀前半までの気温上昇は自然要因であり、従って、次の結論が下せる。[注2]

過大に評価しても、1940年前後と2000年以降の気温差0.4℃がCO2の排出に因る気温上昇である。

過大評価して0.4℃だから、実際には、それよりも小さい可能性が高い。
その意味では「温暖化の科学に不確実さ」がある。
しかし、「将来に向けて『後悔しない政策』を選択」するために、過大に評価した値を用いよう。
そうすると、フィードバックで3倍に増幅されるから、産業革命以降にCO2単独の温室効果は0.13℃上がっただけである。
再び(2-1)式を用いて、この事実を考察しよう。[注3]

第3章図3-1の赤線は20世紀の気温上昇を概ね再現できるように見えるけれど、自然変動は20年周期と60年周期だから、1880年と2000年の気温差は専らCO2の排出が原因であり、CO2の排出に因る気温上昇は0.4℃にすぎないという事実に反している。
ということは、産業革命時における赤外吸収・射出の平均回数  n_0 は80よりずっと多い、ということである。
そこで、産業革命時における赤外吸収・射出の平均回数を175に採ると、15μm帯域の温室効果は

(5-1)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,175 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 175}} - 255 = 7.525

CO2濃度が産業革命時の280ppmから現在(2010年)の390ppmに増えると、赤外吸収・射出の平均回数が(390÷280)×175=244に増えるから、現在(2010年)の15μm帯域の温室効果は

(5-2)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,244 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 244}} - 255 = 7.658

(5-1)との差はちょうど0.133℃。
フィードバックで3倍に増幅されると0.4℃。
産業革命時における15μm帯域の温室効果は既に7.5℃を超えていたのである。
第1章で解説したとおり、15μm帯域の温室効果の上限は8℃だから、気温が上がる余地は0.5℃も残っていない。
フィードバックで3倍に増幅されるけれど、CO2を排出し続けても気温上昇は1.5℃未満に収まる。
「将来に向けて『後悔しない政策』を選択」した結果がこれである。
「脱化石燃料・脱炭素社会に大きくかじを切る決意を」しなくても1.5℃未満に収まるのだ。
「そんな決意の乏しい日本政府は、パリでほとんど存在感を示せなかった」と喚き立てる朝日新聞社説は「科学的事実に目や耳をふさぐかのような、象徴的な造りだった」。

5.2 太陽活動の不都合な真実

20世紀の気温上昇0.8℃のうちの半分は自然要因だが、では、自然要因とは一体何か?
それは太陽である。
下図に見えるとおり、20世紀前半、太陽の放射が増加していたのだ。

Solar variability and climate change: is there a link?
図5-6 「Astronomy & Geophysics,43(2002)5.09」より

第7回 大気化学勉強会ノート」の(11)式に依れば、アルベド(A)を0.3とすると、地球が太陽から受け取るエネルギーが1平方メートル当たり1363Wから1366Wに増加したことに伴う気温の変化は、

(5-3)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1366}{4\,\sigma }} - \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1363}{4\,\sigma }} = 0.14

第2章で説明したとおり「feedback that amplifies any initial forcing by a typical factor of three」だから、もちろん、この値もフィードバックで3倍に増幅される。
従って、太陽活動の増大に因る気温変化は0.4℃。[注4]
これが20世紀前半における温暖化の正体である。

前節で解説したとおり、このことを考慮すれば、産業革命時における赤外吸収・射出の平均回数は175。
従って、CO2濃度が産業革命時の倍になれば、赤外吸収・射出の平均回数は350になる。
その時、15μm帯域の温室効果は

(5-4)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,350 \times \left( 255^4 - 0.21 \times 215^4 \right)}{1 + 0.79 \times 350 }} - 255 = 7.761

(5-1)式との差は0.236℃。
であるから、フィードバックを考慮すれば、3×0.236=0.71℃温暖化する。
しかし、既に0.4℃上昇しているから、今後は0.3℃温暖化するだけ。
しかも、温暖化するとは限らない。
太陽の活動が低下する可能性が出てきたからである。[注5]


地球は「ミニ氷河期」入りか、2030年までに-科学者が警告
By Shawn Langlois
2015年7月14日 19:14 JST
今から15年かそこらすれば、「極渦」(北極上空を取り囲む強い気流)もそれほど悪く聞こえないかもしれない。
欧州の科学者たちは、2030年までに過去370年ほど経験したことのない「ミニ氷河期」が訪れる可能性があると警告している。
バレンティーナ・ザーコバ教授率いる英ノーサンブリア大学の研究者たちは、数学モデルに基づき、太陽活動が60%低下し、地球の気温が急低下すると予想「The Astrophysical Journal,795(2014)46」した。英インディペンデント紙によると、前回こうした状況が起きたのは1645~1715年のことだ。
この説にはもっと多くの検証が必要だが、ザーコバ氏は自身の見解に確信を持っている。
同氏は、太陽内部にある異なる層を伝わる「2つの波を総合し、太陽の現在の活動周期の実際のデータと比較することによって、われわれの予想が97%の確率で正確であることが分かった」と説明した。
覚えているだろうか?米航空宇宙局(NASA)のコンサルタントやスペースシャトル・エンジニアを務めた経験のあるジョン・ケイシー氏も同じような懸念を表明したことで知られている。ケイシー氏は「ダーク・ウインター」というタイトルの著書で、穀物の不作や食糧暴動が起きる可能性について警告している。
ケイシー氏は以前に、米メディア、ニューズマックスに対して「われわれに10年は残されていない」とし、「われわれはオバマ政権の8年間を無駄にしている。8年も無駄にする時間はないのに」と話していた。


(ウォール・ストリート・ジャーナル)

確かに「この説にはもっと多くの検証が必要だが」、その後の研究でも、太陽活動低下の近づいていることが確認された。


ミニ氷河期の前兆なのか?もうじき太陽の輝きが弱まる理由(米研究)
2018年2月17日
2050年までに、太陽は異常なほど冷え込むと予想されている。
これはいわゆる「極小期(grand minimum)」と呼ばれる期間で、通常の11年の活動周期に比べても特に活動が低下する。
活動周期の間、太陽は活発化と不活発化を行き来する。活発な時期は、太陽のコアで起きる核融合が磁気ループを大気の高いところまで到達させる――こうして紫外線放射が増え、黒点とフレアも多く発生する。
逆に不活発な時期では、太陽の表面は穏やかになり、紫外線放射が減る。
ところが最新の研究では、こうした太陽活動周期にはさらに大きな活動周期があるという証拠が突き止められている。
極小期
研究で着目されたのは、特に寒冷だった17世紀の期間である。
1645~1715年は「マウンダー極小期」と知られる地球の気候が著しく寒冷化した時期である。
この間、イングランドではテムズ川が凍結。またバルト海が氷で覆われたため、スウェーデン軍は1658年にその上を渡りデンマークに侵入したという記録が残されている。

しかし気候の低下は一様ではなく、歪んだ気候パターンゆえにアラスカやグリーンランドでは気温の上昇が見られている。
次の極小期はわずか数十年後
こうした記録はIUE(国際紫外線天文衛星)が20年に渡り収集したデータならびに太陽に似た付近の恒星の観測データと組み合わされた。
これに基づき、カリフォルニア大学サンディエゴ校の物理学者ダン・ルビン(Dan Lubin)博士は、次の極小期における太陽活動の強度を試算し、その結果を『Astrophysical Jornal Letters』で発表した。
試算によれば、太陽は通常の活動が最も弱まる期間よりも7パーセント冷える可能性が高い。
さらに最近の太陽活動周期の寒冷化スパイラルに基づけば、次の極小期はわずか数十年後にやってくると推測される。
太陽活動の低下による影響
太陽の活動低下は地球にも大きな影響を与える。
ルビン博士によれば、まず成層圏にあるオゾン層を薄くする。これは大気の絶縁効果に影響を与え、結果として風や気候パターンなどを大きく変化させる。
しかしそれによって現在の温暖化傾向が止まることはないとルビン博士は説明する。
「数十万年の間、大気中の二酸化炭素が300ppmを超えたことはありませんでしたが、産業革命以降、今や温室効果ガスの濃度は400ppmを超えています」
現在の地球の気候を前提として極小期をシミュレーションした結果、2020~2070年の50年間で太陽による温度上昇は0.25パーセント低下すると予測された。そのため、最初の期間では世界の地表平均気温は「コンマ数度程度」下がるようだが、それもその後の急激な温度上昇によって覆される。
「将来的な太陽極小期によって温暖化の進行が遅まることはあっても、止まることはない」と研究では述べられている。


(カラパイア)

太陽活動が「マウンダー極小期」並に低下すると、(全球平均)気温はどれほど下がるのか?
下図に見えるとおり、マウンダー極小期後の日射量は1平米当たり1360Wから1365Wに増加した。
(これでも0.5%未満の変動にすぎない。)

fig 07-02
図5-7 「Astronomy & Astrophysics,529(2011)A67」より

(5-3)式と同様に計算すれば、それに伴う気温変化は

(5-5)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1365}{4\,\sigma }} - \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1360}{4\,\sigma }} = 0.234

これがフィードバックで3倍に増幅されるから、太陽の活動がマウンダー極小期並に低下すると、気温は0.7℃下がる。
「将来的な太陽極小期によって温暖化の進行が遅まることはあっても、止まることはない」どころか、CO2濃度倍増に因る気温上昇が完全に相殺され、20世紀中頃の気候に戻る。
しかし、逆に言えば、CO2の排出で0.7℃上がるから、太陽活動がマウンダー極小期並みに低下しても、「1645~1715年の『マウンダー極小期』と知られる地球の気候が著しく寒冷化した時期」ほど寒冷化しない。
元来、稲は亜熱帯の植物であるにもかかわらず、我国で北陸や東北が米どころになっているのは、一つには不断の品種改良の成果だけれど、やはり、温暖になったことが一番の理由。
もし、CO2の排出(に因る気温上昇)が無かったら、20世紀中頃の(全球平均)気温より0.7℃下がるから、つまり、19世紀末の(全球平均)気温より、さらに0.3℃下がるから、北陸や東北の米作は壊滅し大飢饉になる。
我国だけでなく世界中が飢饉になるから、食糧を輸入できないから、多くの国民が餓死する。
CO2の排出は好ましいことなのである。
冒頭で紹介した朝日新聞社説は「ここで追いつかなければ、まさに化石になりかねない・・・案じるよりも、みんなで一歩を踏み出す決意を持ちたい」と喚き立てていたけれど、そんな扇動に乗せられると、「まさに化石になりかねない」。

5.3 イングランドの不都合な真実

もちろん、IPCC学派は肯んじない。
気候を支配しているのはCO2であり、太陽活動の変動は気候に殆ど影響しない、と言い張る。
それが有名なホッケー・スティック曲線である。

2011090706
図5-8 「RealClimate」より

だから、太陽の活動がマウンダー極小期並に低下しても、CO2の排出に因る温暖化を抑える効果はほとんど無いと言い張る。[注6]


太陽活動低下で地球温暖化は鈍らない=専門家報告
2012年1月24日 11:14
英気象庁と同国レディング大学の専門家は23日、今世紀の太陽活動の低下によって地球温暖化が大幅に鈍ることはなさそうだとの研究報告J.Geophys.Res.,117(2012)D05103を発表した。
報告は、太陽活動は2100年まで減少するが、これによる地球の温度低下はセ氏0.08度にとどまるとしている。

科学者らは、今世紀に地球の温度が高まる中で、世界全体で異常気象が発生する公算が大きくなると警告している。地球の温度は、温室効果ガスの排出増加を反映して今世紀中に2度以上高くなると予想されている。世界各国は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量を減らす約束をしているが、気温の上昇を食い止めるには不十分と見られている。
今回の研究に参加した気象庁のガレス・ジョーンズ氏は「太陽活動の変化は地球の温度に大きな影響を与えず、温室効果ガス排出で予想される温暖化のペースを大きく鈍らせることはできないだろう」と指摘した。
20世紀の間に太陽活動は極大化し、最近の研究では極大期の終わりに到達したか近づいていることが示唆されている。ジョーンズ氏らの研究では、極大のレベルを起点として今世紀の太陽活動の変化を予測した。
報告によると、太陽活動がマウンダー極小期(1645-1715年)のレベルを下回れば、地球の温度は0.13度低下する見込みだという。レディング大学の太陽研究専門家マイク・ロックウッド氏は、最も公算の大きいシナリオは、太陽活動が1820年ごろに起きたダルトン極小期のように低下するというものだと述べた。ダルトン極小期はマウンダーほど目立ったものではなかった。同氏によれば、マウンダー極小期ほどの低下が起きる確率は8%程度だという。


(時事ドットコム)

しかし、前節で引用した記事も書いていたとおり、マウンダー極小期には、この連中が住んでいる「イングランドではテムズ川が凍結」したのだ。
それは単に、当時の風景を描いた絵が残っている、文字で書いた記録が残っている、というだけではない。
イングランドには、世界でただ一つ、マウンダー極小期からの寒暖計の記録が残っているのだ。

2015030801
図5-9 1660年以降のイングランドの年平均気温

最小二乗法を使って評価してみると、それが上図の橙色の線だが、1900年から今日(2012年)までの気温上昇は100年間当り0.8℃。
これは20世紀における全球平均気温の上昇と完全に一致している。
(但し、年々の気温変動は全球平均気温のそれよりも激しいが、特定の地域の気温だけを見れば、それは当たり前。)
一方、1900年以前の気温上昇を調べると、それが上図の青色の線だが、1659年以降の約240年間で0.31℃。
しかし、この勾配は、明らかに、マウンダー極小期の著しい低温が原因であり、もし、マウンダー極小期の気温変動がもっと弱ければ、青い線はほとんど水平になるだろう。
図5-8が正にそれである。[注7]
つまり、ホッケー・スティック曲線はマウンダー極小期の変動を正しく反映していないのだ。

そこで、マウンダー極小期が終わった後、1695年から1734年までの40年間を調べてみると、それが上図の赤線だが、気温上昇は1.5℃。
もちろん、IPCC学派は、それは一地域の気温変動にすぎない、と言い立てるだろうが、上で説明したとおり、20世紀におけるイングランドの気温変動は全球平均気温の変動と完全に一致していた。[注8]
確かに、100年よりも短い期間では、イングランドの気温変動が全球平均気温の変動よりも大きい可能性は高い。
それでも、5、6倍も大きい(図5-8では高々0.3℃の上昇)ことはあり得ない。
大きくても2倍であろう。
実際、イングランドにおける1961年から2000年までの40年間の気温上昇は、それが図5-9の緑色の線だが、1.06℃で、一方、図5-5の橙色の線より、この間の全球平均気温上昇は0.52℃だから、イングランドの気温上昇は全球平均の倍になっている。
従って、マウンダー極小期後の全球平均気温上昇は0.7℃~0.8℃と見積もれる。
誤差を考慮すれば、図5-7から得られた値と一致するとみなしてよい。
太陽活動の変動が気候に大きな影響を及ぼすことは明らかである。

5.4 マウンダー極小期の不都合な真実

それでも、IPCC学派は肯んじない。
マウンダー極小期の気温低下は太陽活動が低下したからではなく、火山の噴火が原因と言い張る。[注9]


「気候変動の原因は太陽」という説を覆す研究結果が発表される
2013年12月25日 6時00分32秒
By Jason Major
2013年は砂漠気候帯に属するエジプトで1979年以来となる雪が降ったり、日本でも西日本の夏平均気温が1946年以降で第1位の高温を記録の高温を記録するなど、極端な気候変動が確認されています。過去にもたびたび発生している気候変動の原因は諸説あるものの、今まで太陽活動によって発せられる熱が主な原因と考えられていましたが、エディンバラ大学が過去1000年分のデータを調査をしたところ、原因は他にあることが判明しました。
エディンバラ大学の地球科学科の研究チームは、樹木の年輪やサンゴ礁などあらゆる記録から集めた過去1000年間の気候の変化を可視化し、太陽の活動変化や火山活動、温室効果ガスとの関連性を調査。調査の結果、地表面の温度変化は太陽の活動による影響をほとんど受けていない、ということが判明し、今までの説を覆すことになりそうです。
14世紀半ばから19世紀半ばにかけて続いた、過去1000年の間でも最も長い気候変動の1つである小氷期は、主に火山の噴火によって大気中に噴出されたエアロゾルにより、地球に届く太陽光が遮断されていたことが主たる原因であることがわかり、1900年以降続いている気候変化についても、太陽ではなく人間が排出している温室効果ガスが大きく影響していることも同時に判明しました。
1900年以降の気候変動の原因とされている温室効果ガスは、地表から放射された赤外線の一部を吸収して温室効果をもたらす気体。世界気象機関が公表しているグラフを見ると、1900年頃から二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が急激に増加しており、また、2013年には温室効果ガスの平均濃度が過去最高の値を記録したこともわかっています。
エディンバラ大学の研究チームを率いたAndrew Schurer博士は「太陽活動の気候変動に対する影響について、我々科学者は大きな間違いを犯してきたようです。今回の発見が、過去や今後の地表面の温度変化の研究について大きな手助けになると期待しています」と語っています。


(GIGAZINE)

「火山の噴火によって大気中に噴出されたエアロゾルにより、地球に届く太陽光が遮断されていたことが主たる原因である」の論拠は下図である。

2014032301
図5-10 「Nature Geoscience,7(2014)104」より

パネル(a)の灰色の縦線を見ると、1640年頃と1670年頃、そして、1600年代末に噴火があったということになっているが、ウィキペディアの「噴火」を見ると、1600年末に世界的な気温低下を引き起こすような噴火(火山爆発指数6以上の噴火)は見当たらない。
1670年頃の噴火はインドネシアのムラピを指していると思われるが、日本語版のウィキペディアに依れば、火山爆発指数は不明である。
1600年代における火山爆発指数6の噴火は、1つは、エーゲ海のKolumboだが、これは海底火山だから、著しい気温低下を引き起こさない。
もう一つは、ニューギニアのLong Islandだが、日本語版のウィキペディアに依れば、噴火の年はハッキリしない。
火山爆発指数5の噴火であれば、下図に見えるとおり、1663年の有珠山、1667年の樽前山があるが、上図のパネル(a)には記されていない。(「J.Geophys.Res.,87(1982)1231」の表3も参照。)

2015070801
図5-11 我国における火山噴火の歴史

以上から、図5-10のパネル(a)の赤線が全くの虚構にすぎないことは明らかであろう。
実際、小氷期の原因が火山の噴火なら、19世紀末から20世紀初頭にかけても、1883年のクラカトウ、1902年のサンタマリア、1912年のノヴァラプタと火山爆発指数6の噴火が続いているから、20世紀前半は気温が上がっていないはずである。

しかも、図5-10のパネル(b)を見ると、温室効果ガス(GHG)だけなら、2000年までに気温は1.6℃上がったが、エアロゾル(Aerosols)に因って0.9℃低下し、農地化や開発(Land use)に因ってさらに0.3℃低下したから、人為的要因の気温上昇は0.4℃に止まる。
観測データは0.8℃だから、残り半分は自然要因。
つまり、「1900年以降続いている気候変化についても、人間が排出している温室効果ガスだけでなく、太陽が大きく影響していることも同時に判明しました」。
[注7]で紹介している記事にも見えるとおり、IPCC学派は第3次報告書以来ずっとホッケー・スティックを握り締めてきたくせに、「太陽活動の気候変動に対する影響について、我々科学者は大きな間違いを犯してきたようです」と白を吐いているが、この論文は「人間活動の気候変動に対する影響について、我々IPCCの科学者は大きな間違いを犯してきたようです」を満天下に曝け出してしまっただけである。

しかし、IPCC学派は尚も抗う。
英国気象庁とレディング大学が、またしても、このような論文を発表した。


【気候科学】将来の太陽極小期に地域的な気候寒冷化が起こる可能性
2015年6月24日
将来太陽活動が大きく低下すると、北ユーラシアと米国東部の冬の気温が影響を受ける可能性のあることを明らかにした研究についての報告「Nature Communications,6(2015)7535」が、今週掲載される。太陽から放射される紫外線が地球に到達する量は太陽活動によって決まるが、太陽活動は時間の経過に伴って変動する。
太陽活動は、最近まで比較的活発だった(太陽極大期)。しかし、過去数年間の太陽活動は平均レベルを下回っており、この太陽極大期が終わりに近づいている可能性が示唆されている。太陽極小期には英国とヨーロッパが厳冬になることが明らかになっており、マウンダー極小期(1645~1715年)にはテムズ川に霜がおりるのが普通だった。統計的予報によれば、太陽活動が今後40年間にマウンダー極小期のような活動レベルに戻る確率が15~20%とされ、全球の気温に対する影響は非常に小さいものの、地域的な影響は大きくなるとされる。
今回、Sarah Ineson たちは、マウンダー極小期のような極小期が再来するというシナリオにおける地域的影響の可能性を調べるため、今後起こり得る紫外線放射量の減少幅に対応した2つの実験を実施した。その結果、北ユーラシアと米国東部の冬の気温が最大摂氏0.75度低下する可能性のあることが明らかになった。ただし、この程度の寒冷化では気候変動に対抗できない。また、このモデルの結果からは、冬の降水域が南方のヨーロッパ南部に移動し、ヨーロッパ北部と米国南東部において冬日が増えることも示唆されている。こうした変化は多めの見積りと考えるべきだが、今後、新たな気候強制力シナリオを作成する場合には、温室効果ガスとともに太陽活動の変化を考慮に入れるべきことが、今回の研究結果によって示唆されている。


(natureasia.com)

この論文には「The relative annual global mean near-surface temperature change for the period 2050-2099 is a cooling of 0.13 and 0.12°C for EXPT-A and EXPT-B, respectively」と書いてあるから、その点は先の論文と全く同じだが、「全球の気温に対する影響は非常に小さいものの、地域的な影響は大きくなる」ので、イングランドの気温を盾にホッケー・スティック曲線を否定することはできない、と言うのである。
では、どれほど「地域的な影響は大きい」のか?

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図5-12 「Nature Communications,6(2015)7535」の図2より

イングランドの気温低下は0.5℃以下。
上図は21世紀後半の予測値だが、太陽活動が20世紀後半の状態からマウンダー極小期並みに低下した場合の値だから、マウンダー極小期から回復する17世紀末以降のイングランドの気温上昇も0.5℃以下のはず。
しかし、図5-9の赤線に見えるとおり、寒暖計に記録された気温上昇は1.5℃。
図5-7に見える太陽活動の変動を考慮しない限り、マウンダー極小期の気候を再現できないことは明らかである。
この論文は、太陽放射の変動は極めて小さい(0.1%未満)ことを示そうと目論んだものの、全く逆に、太陽放射の変動はずっと大きい(それでも0.5%未満ではあるが)ことを立証してしまったのである。

IPCC学派が何と喚き立てようとも、図5-8と寒暖計の記録である図5-9では、その信頼性は比べ物にならない。
英国気象庁と同国レディング大学が、世界最古を誇る自国の記録をも顧みずに、「太陽活動がマウンダー極小期のレベルを下回れば、地球の温度は0.13度低下する見込み」などと言い立てたのは、まことに恥知らずと言えよう。[注10]
なぜ、このように破廉恥なことが起こるのか?
太陽活動の変動は気候にほとんど影響しないと、始めから決めつけているからである。
なぜ、始めから決めつけているのか?
20世紀の気温上昇は偏にCO2の排出が原因と、始めから決めつけているからである。
太陽活動が気候に影響することが分かると、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説の非科学性が露呈してしまうからである。

5.5 それでもホッケー・スティック、そして、終焉

だから、下図に見えるとおり、IPCC学派は尚もホッケー・スティック曲線を正当化し続けている。

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図5-13 「Nature,536(2016)411」の図1より

論文の著者はこのように言い立てている。


Humans have caused climate change for 180 years
25 August 2016
An international research project has found human activity has been causing global warming for almost two centuries, proving human-induced climate change is not just a 20th century phenomenon.
Lead researcher Associate Professor Nerilie Abram from The Australian National University (ANU) said the study found warming began during the early stages of the Industrial Revolution and is first detectable in the Arctic and tropical oceans around the 1830s, much earlier than scientists had expected.
“It was an extraordinary finding,” said Associate Professor Abram, from the ANU Research School of Earth Sciences and ARC Centre of Excellence for Climate System Science.
It was one of those moments where science really surprised us. But the results were clear. The climate warming we are witnessing today started about 180 years ago.”
The new findings have important implications for assessing the extent that humans have caused the climate to move away from its pre-industrial state, and will help scientists understand the future impact of greenhouse gas emissions on the climate.
“In the tropical oceans and the Arctic in particular, 180 years of warming has already caused the average climate to emerge above the range of variability that was normal in the centuries prior to the Industrial Revolution,” Associate Professor Abram said.
The research, published in Nature, involved 25 scientists from across Australia, the United States, Europe and Asia, working together as part of the international Past Global Changes 2000 year (PAGES 2K) Consortium.
Associate Professor Abram said anthropogenic climate change was generally talked about as a 20th century phenomenon because direct measurements of climate are rare before the 1900s.
However, the team studied detailed reconstructions of climate spanning the past 500 years to identify when the current sustained warming trend really began.
Scientists examined natural records of climate variations across the world’s oceans and continents. These included climate histories preserved in corals, cave decorations, tree rings and ice cores.
The research team also analysed thousands of years of climate model simulations, including experiments used for the latest report by the UN’s Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC), to determine what caused the early warming.
The data and simulations pinpointed the early onset of warming to around the 1830s, and found the early warming was attributed to rising greenhouse gas levels.
Co-researcher Dr Helen McGregor, from the University of Wollongong’s School of Earth and Environmental Sciences, said humans only caused small increases in the level of greenhouse gases in the atmosphere during the 1800s.
“But the early onset of warming detected in this study indicates the Earth’s climate did respond in a rapid and measureable way to even the small increase in carbon emissions during the start of the Industrial Age,” Dr McGregor said.

The researchers also studied major volcanic eruptions in the early 1800s and found they were only a minor factor in the early onset of climate warming.
Associate Professor Abram said the earliest signs of greenhouse-induced warming developed during the 1830s in the Arctic and in tropical oceans, followed soon after by Europe, Asia and North America.
However, climate warming appears to have been delayed in the Antarctic, possibly due to the way ocean circulation is pushing warming waters to the North and away from the frozen continent.


(Australian National University のプレスリリース)

「the earliest signs of greenhouse-induced warming developed during the 1830s in the Arctic and in tropical oceans」の拠りどころは下図の太い黒線である。

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図5-14 「Nature,536(2016)411」の図2より

しかし、赤茶色のデータ(または、細い黒線)を見ると、20世紀前半はかなり急激に気温が上がっていたこと、そして、1950年前後の気温は2000年前後の気温と変わらないことに気づく。
CO2の排出は20世紀後半に激増したのだから、「the earliest signs of greenhouse-induced warming developed during the 1830s in the Arctic and in tropical oceans」なら、20世紀後半の「Arctic」の気温は、20世紀前半を遥かに上回る勢いで上がり続けていたはずだが、全く逆に、ほとんど上がっていない。
その意味においては、正に「It was an extraordinary finding」であり、「It was one of those moments where science really surprised us」である。
この論文の後、ホッケー・スティック曲線の元祖マイケル・マンも、CO2の排出で19世紀後半に気温が0.2℃上がった、と言い張っている「Nature Climate Change,7(2017)563」けれど、「the Earth’s climate did respond in a rapid and measureable way to even the small increase in carbon emissions」は否定されたのであり、図5-13が1900年以前の気候を正しく再現していないことは明らかである。
IPCC学派がいかに足掻こうとも、科学的事実は覆らないのだ。

[注1] 第13章の第7節で採り上げるけれど、IPCC学派は、2016年の全球平均気温は過去最高だった、温暖化が進んでいる、と騒ぎ立てている。
グリーンランドの気温も上がり、氷床が著しく解けた、と騒ぎ立てている。


グリーンランドの気温が過去最高に、氷床の融解進む
2016年9月14日 10:22 発信地:コペンハーゲン/デンマーク
デンマーク領グリーンランドの気温が今夏、観測史上最高を記録した。デンマーク気象研究所(DMI)が13日、発表した。氷床の一部は例年よりもかなり早い時期に融解を始めており、北極圏の温暖化が続いていることを示す新たな証拠とDMIは述べている。
グリーンランド南東沿岸のタシーラク(Tasiilaq)では今夏、平均気温が8.2度となり、1895年の観測開始以降で最高となった。またこれは、1981年~2010年の同平均気温よりも2.3度高いという。
南部と北東部でも同様に最高記録を更新している。春には、観測所14か所のうち6か所で過去最高が記録されていた。DMIは4月、氷床融解の度合いが記録的なぺースとなっていることを受け、観測モデルの有効性を疑問視していた。
DMIによると今年は、例年よりもかなり早いタイミングで氷が解け始めたとされ、過去に10%以上の融解がみられた年の内、最も早い時期を記録した上位3年より約1か月早い時点ですでに12%が解けたという。
グリーンランド氷床の融解は海面上昇の大きな潜在的要因。2003~2010年の間だけで、20世紀全体のペースの2倍の速さで氷床の質量が失われている。


(AFP)

しかし、下図に見えるとおり、やはり、タシーラクでも20世紀前半は2000年代と同じほど気温が高かった。


図5-15 タシーラクの夏季の気温推移(「Polar Research,35(2016)28858」より)

因みに、DMIのデータを見ると、確かに「4月、氷床融解の度合いが記録的なぺースとなっている」けれど、それ以外は平年以下だった。

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図5-16 グリーンランドの氷床融解の推移。

[注2] こちらのブログで紹介されているとおり、ドイツIPCC学派の代表的な存在であるMojib Latifでさえ、20世紀における0.8℃の気温上昇のうち0.4℃は自然要因であると、つまり、人為的要因の気温上昇は0.4℃にすぎないと認めている。

[注3] 「地球温暖化懐疑論批判」は「議論26」において「こうした見積りから、たとえ水蒸気が最も重要な温室効果ガスであっても、二酸化炭素濃度が産業革命以前と比べ2倍、3倍となれば気候に影響を与えうることは十分に納得できるであろう」と言い張っていたけれど、二酸化炭素の寄与は、第2章で解説したとおり280ppmで6℃、390ppmで6.13℃なのだから、(2-1)式に頼らずとも、「二酸化炭素濃度が産業革命以前と比べ2倍、3倍となっても気候に大きな影響を与え得ないことは十分に納得できるであろう」。

[注4] 太陽の放射に関しては、下図のように、図5-6よりも低い値を示すデータがある。

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図5-17 太陽放射の推移(黒線)

しかし、これを使っても結果は(5-3)と同じ。

(5-6)    \displaystyle \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1361}{4\,\sigma }} - \sqrt[4]{\frac{\,0.7 \times 1358}{4\,\sigma }} = 0.14

[注5] これ以前にも「Journal of Geology & Geophysics」で論じられている。

[注6] その後の論文「Geophys.Res.Lett.,40(2013)1789」も、2025年から2065年までの間に太陽活動が図5-6の1900年の水準に下がっても、気温は下図の青線のように上がり続ける、と言い張っている。

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図5-18 「Geophys.Res.Lett.,40(2013)1789」の図2

始めの10年間を除けば、青線は黄色の線と同じペースで上がり続け、2080年頃には黄色の線と一致している。
つまり、青線は黄色の線が10年ほど後ろにずれただけである。
しかし、太陽活動が図5-6のように変動するということは、20世紀前半の気温上昇は太陽活動の活発化が原因ということであり、CO2の排出に因る気温上昇は0.4℃にすぎないということであり、IPCCの気候モデル、すなわち、橙色の線はCO2の排出に因る気温上昇を著しく過大評価しているということだから、そんな結果になるはずがない。
全く非論理的である。
IPCC学派は太陽活動は気候に殆ど影響しないと言い張っているけれど、実のところ、気候モデルは、太陽活動の変動が大きくても、気候にほとんど影響しないように、設計されているのだ。

[注7] もちろん、それは1700年までの話。
IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説に依れば、20世紀の気温上昇は偏にCO2の排出が原因だから、IPCCが正しいのなら、19世紀以前の気温はほぼ一定でなければならず、そのために恣意的なデータ処理を行って、1400年までがほぼ平坦なグラフを導き出した結果が図5-8なのである。


■短いメールが波紋呼ぶ
ことの発端は11月中旬、英イーストアングリア大学で起きたデータ盗難だった。同大の気候研究ユニット(CRU)は世界の気候研究の中心の一つで、そのコンピューターから、同ユニットの研究者たちが送受信したメール約1000通とデータやプログラムの含まれたファイルが、ネットワーク経由でごっそり盗まれたのだ。
犯人は確信犯だった。彼(彼らかも)は、そのメールやデータの束を世界の複数のネットワークに送信。
そのデータは、なんと検索機能付きのデータベースにおさまり、誰でも見られるWEBに公開されていた。
問題はメールの中身だった。中でも、1999年11月16日付のCRU所長フィリップ・ジョーンズが、レイモンド・ブラッドレー(マサチューセッツ大アムハースト校教授、同気候システム研究センター長)、マイケル・マン(ペンシルベニア州立大教授)、マルコム・ヒューズ(アリゾナ大教授)の3人の気候学者に宛てた1通の短いメールが波紋を呼んだ。
その3人は前年、英科学誌「ネイチャー」に画期的な論文Nature,392(1998)779を発表していた。「過去6世紀にわたる地球規模の気温傾向と気候強制」という題名で、世界のあちこちに埋もれた古い樹木の年輪を調べて、時代ごとの気温を推定。今に至る600年間の変化をグラフに表したのだ。
データは数十年間ではアップダウンの凸凹があるが、均してみれば、15世紀から19世紀まではほぼ横ばい、20世紀に入ってからは急な上昇を示しているように見える。さらに3人は、99年にも400年分のデータを加え1000年間の気温傾向を発表「Geophys.Res.Lett.,26(1999)759」している。
このデータは、産業革命以後の温暖化を主張する IPCCの目にとまった。IPCC第2次報告書(95年)の時点では、20世紀に入って気温が上昇傾向にあるかどうかについて、論議は尽くされていなかった。きちんとした気温測定のデータがあるのはせいぜい最近の200年ほどで、それ以前と比較できなかったからだ。それゆえ、マンたちのデータは画期的で、IPCCの主張の正当性を裏付けることになった。
・・・中略・・・
■米国議会で追及の動き
ところが、問題はこれだけではなかった。ジョーンズらが、IPCC の見解に反対する学者に対し、論文の専門誌掲載を拒否するなどの圧力をかけていたと推察されるメールも流出データに含まれているという。
例えば、04年7月8日付のジョーンズからマンに宛てたメールだ。
「MMのその他の論文はまったくクズだ……こういう論文はIPCCの次の報告書ではあるわけない、査読付き論文の定義を変えなければならなくても、ああいうのは追い出してやる」
MMの論文Energy & Environment,14(2003)751とは、その前年マンたちの主張に対し「データ処理が間違っている」と反論したカナダの社会科学系の研究者マッキンタイアとマキトリックの論文だ。必ずしも気候研究の専門家ではないが、方法論の違いなどで論争になっていた。それを意図的に「無視」するのはフェアでない、というわけだ。
その後、二人の論文は地球科学専門誌「Geophys.Res.Lett.,32(2005)L03710」に掲載され、マンらと同じ土俵で議論されるようになったため、問題はとりあえず解決はしている。


(AERA2009年12月14日号より)

マッキンタイアとマキトリックが正しいデータ処理を行った結果は下図である。

2016042801
図5-19 「Energy & Environment,14(2003)751」より

1500年以前は20世紀後半と同じほど気温が高かったという結果になったが、その後、それを裏づける論文が現れた。

fig 07-05
2013年6月5日の朝日新聞夕刊紙面より(当該論文は「PNAS,110(2013)9839」)

朝日新聞は、「地球温暖化の影響で20世紀以降、解けつつあり、最近は年3~4ミリずつ後退している」と言い立てて、人為的温暖化を煽っているつもりだろうが、「外部からの侵入ではなく、400年以上も前の小氷河期(1550~1850年)に閉じ込められたことがわかった」ということは、1500年以前は、氷河が現在と同じかそれ以上に後退していたということであり、従って、現在と同じかそれ以上に気温が高かった、ということに他ならない。
(氷河は動くから、コケは見つかった地点よりも高いところに、つまり、現在も氷河に覆われている地点にあったはずである。そのことを鑑みれば、1500年以前は現在よりも気温が高かった可能性が高い。)
これは文字通りの「生き証人」であり、図5-8の虚構は明らかである。

[注8] 第2節で引用した「ミニ氷河期の前兆なのか?もうじき太陽の輝きが弱まる理由」と題する記事も「気候の低下は一様ではなく、歪んだ気候パターンゆえにアラスカやグリーンランドでは気温の上昇が見られている」と記していたが、下図の青線がグリーンランドの(氷床から導き出された)気温変化。


図5-20 「Clim.Past,9(2013)583」より

確かに、1640年頃から気温が上がった。
しかし、1660年頃以降は急激に気温が下がった。
そして、その前後も波のように気温の上下動が繰り返し起こっている。
おそらく、それは大西洋数十年規模振動(AMO)が原因であろう。
灰色のゾーンは太陽活動が低下していた時期(古い順に、ウォルフ極小期、シュペーラー極小期、マウンダー極小期、ダルトン極小期)であり、AMOに因る気温の上下動を別にしても、1400年代の初頭から1700年代の初頭までは気温が下がり続けていたから、「グリーンランドでは気温の上昇が見られている」は全くの誤りである。

[注9] 同年に別の論文も同じことを言い立てていた。

2013102101
図5-21 「Nature,496(2013)201」より

[注10] しかし、年輪から推定されたスコットランドの(夏季の)気候を見ても、やはり、マウンダー極小期の気温低下は1.5℃。


図5-22 「Climate Dynamics,49(2017)2951」の図5より

IPCCの気候モデルがマウンダー極小期の気候を全く再現できないこと、CO2の影響を過大評価し、そのために、太陽活動の変動とそれが気候に及ぼす影響を過小評価していることは明らかである。

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