北極圏の全く不都合な真実

8.1 エアロゾル冷却効果の不都合な真実

前章までの解説に対して、温暖化対策を騒ぎ立てている環境NPOなどは、IPCCがCO2の影響を過大評価していると言うが、下図に見えるとおりIPCCの気候モデルは1970年以降の気温上昇を再現しているではないか、と言い立てるだろう。

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図8-1 IPCC第5次報告書第10章の図10.1(a)

しかし、図2-2の赤線は1970年以降が観測値(黒線)よりずっと高いのに、なぜ、上図ではそれが下がったのか?
IPCCは次のように説明している。


Over the 1951-2010 period, greenhouse-gas-attributable warming at 0.6-1.4K is significantly larger than the observed warming of approximately 0.6K, and is compensated by an aerosol-induced cooling of between 0 and -0.8K (Figure 10.4b) (Jones et al., 2012). These results are supported by a complementary analysis in which a simple climate model was constrained using observations of near-surface temperature and ocean heat content, as well as prior information on the magnitudes of forcings, and which concluded that greenhouse gases have caused 0.6°C-1.1°C warming since the mid-20th century (Huber and Knutti, 2012).


(IPCC第5次報告書草稿第2稿 第10章の15頁及び16頁より)

ここで言うエアロゾルは、化石燃料を使用してCO2と同時に排出されたエアロゾル、平たく言えば、大気汚染である。
IPCCに依れば、下図に見えるとおり、エアロゾルの放射強制力は負。
つまり、気温を下げる。

fig 08-02図8-2 「STOP THE 温暖化 2012」より(原典はIPCC第4次報告書のFAQ2-1の図2)

エアロゾルはそれ自体が日光を反射し気温を下げる効果がある。(直接効果)
しかも、エアロゾルは雲をつくる核になり得るから、エアロゾルの増加で雲が増え、雲は日光を反射するから、気温を下げる効果がある。(雲のアルベド効果)
CO2に因る温暖化の一部がエアロゾルに因る冷却効果で打ち消された、と言うのである。

しかし、それは辻褄合わせにすぎない。
下図に見えるとおり、1980年以降、地表に達する日射は増加している。

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図8-3 「Bull.Amer.Meteor.Soc.,93(2012)27」より

従って、IPCCの理屈に依れば、1980年以降、エアロゾルが減少したはずであり、図2-2の赤線(気候モデル)と黒線(観測データ)の差は縮まっていなければならない。
ところが、むしろ、差は開き気味。
さらに、図2-2の黒線を見ても、図5-5を見ても、1940年頃と1980年頃の気温はほぼ同じ。
その間の気温低下がエアロゾルに因るなら、その間は赤線が黒線よりも上にあるはずだが、赤線が黒線よりも高いのは1960年以降。
1940年から1980年までの気温低下の原因がエアロゾルであろうはずがない。

もちろん、気温低下の原因は一つではないかもしれない。
しかし、1940年からの気温低下の原因が1960年以降も続いているのなら、しかも、1960年以降はさらにエアロゾルで気温が下がったのなら、黒線のように気温が上がるはずはない。
ということは、1940年までの気温低下の原因は1980年には終わった、ということである。
11章で解説するとおり、それは60年~70年周期の気候の内部変動。
1940年から1980年までの気温低下にエアロゾルは関係ない。
「greenhouse-gas-attributable warming at 0.6-1.4K is compensated by an aerosol-induced cooling of between 0 and -0.8K」はこじつけである。

実際、「Science,340(2013)727」に依れば、エアロゾルに因る冷却効果は過大評価されている。


Sulfur dioxide is as antagonist of greenhouse gases less effective than previously assumed. It forms sulfate aerosol particles in the air, which reflect sunlight, and as so-called cloud condensation nuclei influence the chemical processes within clouds. Therefore, sulfate aerosol particles help to cool the earth, making them an important factor in climate models. However, a team around researchers from the Max Planck Institute for Chemistry found out that it is likely most models overestimate the cooling effect of these particles. The reason is a largely disregarded reaction pathway catalysed by mineral dust within clouds, which has a strong influence on the life span of sulfate aerosol particles and their ability to reflect sunlight.


(「プランク研究所のresearch news」より)

さらに、「雲のアルベド効果」も過大評価されている。


雲の温暖化抑制効果は?従来予測より気温上がる可能性 米研究
2016年4月9日 16:18 発信地:ワシントンD.C./米国
温暖化の影響で地球の気温は従来の予測より大幅に高くなる可能性があるという論文が今週、米科学誌サイエンスに掲載「Science,352(2016)224」された。これまでの科学的モデルには雲の作用が正確に反映されていないためだという。
一般的に、大気中の二酸化炭素が倍増することによって地球の気温は2.1~4.7度上昇すると予測されている。
しかし、今回論文を発表した米エール大学と米ローレンス・リバモア国立研究所の研究チームは、こうした科学的モデルでは雲が太陽光を反射して地球の大気の温暖化を妨げる作用が過大評価されていると主張している。
論文の主著者でエール大学のアイビー・タン(Ivy Tan)氏は、気温上昇幅はこれまでの科学的モデルでは4度だったが、雲に含まれる液体と氷の量を観測結果に近付くように修正した各種モデルでは5~5.3度になることが分かったと述べた。
雲に含まれている氷が多い場合、気温が上昇すればより多くの液体を生じ、雲の中の液体が増えれば温暖化は抑制される。しかし大半の科学的モデルでは、雲に含まれる氷の量が実際より多く見積もられているという。
共同執筆者のマーク・ゼリンカ(Mark Zelinka)氏は「温暖化抑制についていえば、雲は私たちの役に立ってくれそうにない」と述べた。同研究は、米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省科学部の資金で行われた。


(AFP)

「雲が太陽光を反射して地球の大気の温暖化を妨げる作用が過大評価されている」ということは、「雲のアルベド効果」は過大評価されているということである。[注1]
J.Clim.,28(2015)4794」に依れば、エアロゾル(直接効果+雲のアルベド効果)の放射強制力は-0.3W/(m^2) と-1W/(m^2) との間である。
中央値を採れば図8-2の約半分の値になる。
現在進行中の別の研究でも同じ結果が示唆されている。

IPCCがエアロゾル(大気汚染)の冷却効果を過大評価していることが分かったが、実のところ、大気汚染は冷却どころか、逆に、温暖化を招く。
北極圏温暖化の一因はそれである。

8.2 ススの不都合な真実

IPCC学派は、人為的(排出CO2)温暖化でグリーンランドの氷床が急速に解けている、と騒ぎ立てている。


グリーンランド氷床の融解速度、近年倍増 観測研究
2015年12月17日 15:35 発信地:パリ/フランス
デンマーク領グリーンランドの氷床では、2003年~2010年の期間に、20世紀全体のペースの2倍の速さで質量が失われたとの研究結果が16日、発表された。氷床の融解は、陸地を浸食する海面上昇の重大な一因となる可能性があるとされている。
英科学誌ネイチャーに掲載された研究論文[Nature,528(2015)396]によると、グリーンランド氷床の減少は、1990年~2010年の期間に世界平均で25ミリの海面上昇を引き起こしたが、これは主に表面融解によるものだという。失われた質量は、合計で9000ギガトン(9兆トン)超だった。
これは、氷の融解による減少量から、降雪や降雨による氷の増加量を差し引いた「純損失」だ。
欧州とカナダの研究チームによると、小氷期後にグリーンランド氷床が後退を開始した19世紀末以降の氷床減少をめぐり観測に基づくデータが提示されたのは、今回の研究が初めてだという。
今回の研究は、地球温暖化に起因する海面上昇の予測で考慮すべき「氷床の消失」での過去と、そして予想される未来の状況に関する貴重な知見をもたらすものだ。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が作成した各報告書には、グリーンランド氷床に関する十分なデータが記載されていないと研究チームは指摘する。
論文の共同執筆者、デンマーク自然史博物館(Natural History Museum of Denmark)のクルト・キアル(Kurt Kjaer)氏は「海面の今後の変化を予測し、その予測を信頼の置けるものとするためには、過去に発生したことに関する理解が不可欠だ」と述べる。
これまでの研究は主に数理モデルに基づくものだったが、今回の最新研究では、過去に撮影された航空写真から得られたデータを、人工衛星やその他データと組み合わせて使用された。
航空写真では、後退する氷が数十年の間に地形に残した痕跡を調べることができた。
氷床から失われた氷の質量は、1900年~1982年の期間は年間約75.1ギガトン、1983年~2003年は年間73.8ギガトンだった。しかし、2003年~2010年は年間186.4ギガトンに上っていたことを、研究チームは突き止めた。
この研究論文について、ネイチャー誌の要約記事では「最近観測された、グリーンランド氷床の質量消失量の増加と、その結果として生じた海面上昇の加速は、小氷期以降で初の現象と思われると、論文の執筆者らは説明している」とあり、また「観察される質量消失と海面上昇の全体的傾向は、当分の間継続する可能性が高いことを、論文執筆者らは示唆している」とも記されている。


(AFP)

しかし、人為的なCO2排出は20世紀後半に激増したのだから、第5章でも指摘したように、CO2が原因で「デンマーク領グリーンランドの氷床では、2003年~2010年の期間に、20世紀全体のペースの2倍の速さで質量が失われた」のであれば、グリーンランド氷床では2000年以降の気温が20世紀前半よりも遥かに高いはずだが、20世紀前半の気温は2000年以降と同じほど高かった。

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図8-4 グリーンランド氷床の気温推移(「Clim.Past,9(2013)583」より)

「デンマーク領グリーンランドの氷床では、2003年~2010年の期間に、20世紀全体のペースの2倍の速さで質量が失われた」のだとしても、人為的なCO2排出が主因でないことは明らかである。
ならば、何が主因か?

人間が化石燃料を燃やすと、CO2や日射を遮るエアロゾルと共にススが放出される。
日射を遮るエアロゾルとは逆に、ススは日射を吸収する。
のみならず、大気からの下向き赤外放射をも吸収する。
そのススが気流に乗ってグリーンランドにまで達し、グリーンランドの氷床や氷河の表面を覆うと、氷床・氷河を解かしてしまう。
実際、下図に見えるとおり、グリーンランドの氷床はススで黒く汚れ、それが原因で解け出している。

Ice Melt
図8-5 グリーンランドの氷床。手前は解けた水が流れ込む水路(米ワシントン大提供)

「今回の最新研究では、過去に撮影された航空写真から得られたデータを、人工衛星やその他データと組み合わせて使用された。航空写真では、後退する氷が数十年の間に地形に残した痕跡を調べることができた」と言い立てているが、グリーンランドの氷床を空から見ると、こうなっている。

グリーンランドの氷床・氷河の汚れを示す証拠は枚挙にいとまが無いけれど、UCLA(カリフォルニア大学ロスアンジェルス分校)の映像も衝撃的である。[注2]

もちろん、グリーンランドだけではない。
下図に見えるとおり、アラスカの氷河も黒ずんでいる。

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図8-6 アラスカのYakutat Glacier(ロイター

ナショナルジオグラフィックが、人為的(排出CO2)温暖化を「証明する」ために、アラスカのコロンビア氷河が2006年から2012年の間に急激に解けたことを示すアニメーションを掲載しているけれど、2006年には黒く汚れていたことが分かる。

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図8-7 米国アラスカ州コロンビア氷河の2006年と2012年の比較

CO2ではなく、ススで解けたことを「証明」してしまったのである。

8.3 エアロゾルに因る北極圏の温暖化

ススは直接に氷を解かすだけでない。
氷河や氷床のアルベトを下げ、前章の(7-3)式で示したとおり、それが気温を上げる。
ススの温暖化効果はCO2の2000倍もあるのだ。


北極評議会が会合、ウクライナ情勢余波で冷たい雰囲気
2015年4月25日 12:32 発信地:イカルウィット/カナダ
北極の環境問題などを協議する政府間協議体「北極評議会」は24日、カナダ北東部バフィン島にある北極圏の町イカルウィットで会合を開き、環境や北極圏に住む地域が直面している危機に警鐘を鳴らした。
参加国はカナダ、米国、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデンの8か国。
北極圏では地球上のどこよりも速いペースで温暖化が進んでおり、米政府機関が先月発表したところによると、1970年代後半に衛星観測を始めて以来、冬季の海氷面積が最小となった。
北極圏の温暖化問題に関しては、海面上昇をもたらす氷の溶解に注目が集まる一方、新たな商業航路や海底油田・天然ガス開発への期待も高まっている。
今回の会合でカナダから議長国を引き継いだ米国のジョン・ケリー国務長官は「現在、われわれが直面する最大の課題として誰もが口にするのが気候変動だ。控えめに言っても、あらゆる数値は警戒レベルにある」と述べた。
米国はメタンガス排出およびガスの燃焼や石油探査活動で放出される黒色炭素(ブラックカーボン)を規制する行動計画の枠組みを提出している。ケリー長官は、黒色炭素の温暖化への影響は二酸化炭素(CO2)の2000倍で、永久凍土の溶解で放出されるメタンガスが大気におよぼす悪影響はCO2の20倍だと警告した。
ウクライナ情勢をめぐる緊張はこの会議にも影響を与え、ロシアはセルゲイ・ラブロフ外相ではなくセルゲイ・ドンスコイ天然資源環境相を出席させた。
ドンスコイ氏は「他の場所で何が起きていようと北極圏での協力は前進している。ここに対立や恐怖を利用する余地はない。ロシアは北極の政治化に反対する」と述べた。


(AFP)

下図に見えるとおり、北極圏の気温上昇の主因の一つはそれである。

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図8-8 「Science,324(2009)323」より(元論文は「Nature Geoscience,2(2009)294」)

もちろん、この値をそのまま真に受けることはできないけれど、ススが北極圏気温上昇の主因の一つであることは確実。

これに対して、IPCC学派は、図8-2に見えるとおり、気候モデルでは「雪上の黒色炭素」も考慮している、と言い立てるだろうが、CO2の影響を著しく過大評価し、そのために、ススの影響を著しく過小評価しているのだ。
その証拠に、誤魔化し切れなくなり、事実を認めてしまった。


2016年5月25日
理化学研究所計算科学研究機構複合系気候科学研究チームの佐藤陽祐基礎科学特別研究員と富田浩文チームリーダーらと、東京大学、九州大学、国立環境研究所らの共同研究グループは、スーパーコンピュータ「京」を用いた超高解像度シミュレーションにより、気候変動に大きな影響を与える粒子状の大気汚染物質である「すす(黒色炭素」の北極域への輸送メカニズムを解明しました。
エアロゾルの一種である黒色炭素の多くは人間活動によって放出され、大気中の長い距離を輸送されます。北極圏の雪や氷の上に降り積もった黒色炭素は、その色を黒く変えてしまい、太陽光の反射率を低下させて地球温暖化を促進します。このように、北極圏の黒色炭素量は地球温暖化に直接影響を及ぼす可能性があることから、人間活動が活発な中緯度帯から北極圏への黒色炭素輸送量の正確な推定が必要とされています。しかし、これまでの北極圏における観測結果はシミュレーションよりも多量の黒色炭素の存在を示しており、従来の気候モデルの表現する”清浄すぎる北極圏”と現実との間には不整合が存在していました。
共同研究グループは、基本原理に忠実な全球大気モデルと精緻化されたエアロゾルモデルを融合させて、「京」を最大限に駆使し、従来よりも一桁高い数km水平解像度でのシミュレーションを実施しました。これにより、黒色炭素の北極への輸送量について、実際の観測結果をより良く再現しました。同時に、従来の低解像度のシミュレーションでは、低気圧周辺において空気の混合が弱く輸送が十分ではなかったため、および、降水に伴って大気中から過剰に除去していたため黒色炭素輸送量を過少評価していたことが明らかになりました。
今後、より高性能なスーパーコンピュータの性能を最大限駆使することで、より不確実性を減らした気候変動予測が可能になると期待できます。
成果は、英国の科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(5月25日付け:日本時間5月25日)に掲載されます。


(「北極域への「すす」の輸送メカニズムを解明」より)

しかも、気温上昇の原因はススだけではない。
上で説明したとおり、IPCCは、エアロゾルの増加で雲が増え、「雲のアルベド効果」が増すから気温が下がると言い立てているけれど、逆に、北極圏では雲の増加は温暖化を招く。


【気候変動】夜間の曇天でグリーンランド氷床の融解が増える
Nature Communications,7(2016)10266
2016年1月13日
Climate change: Cloudy sky at night enhances Greenland plight
グリーンランド氷床で夜間に雲が発生すると、融解水の流出が毎年30%以上増えるという結論を示した論文が、今週掲載される。この新知見は、気候モデルに雲の影響を正確に表現して、全球的海水準上昇に対するグリーンランド氷床の寄与度に関する将来予測の精度を高める必要のあることを明らかにしている。
グリーンランド氷床の融解は、近年の全球的海水準上昇の主たる要因となっている。この融解の程度を決定する要因の1つが上空の雲量で、これが、太陽からの入射放射量と氷床表面からの放射量に影響を及ぼす。しかし、同じ雲でも種類(例えば、氷だけの雲や液体を含んだ雲)によって、融解量に正反対の影響を及ぼすことがある。また、直接測定が行われておらず、気候モデルの違いもあって、それぞれの種類の雲が融解にどのように寄与するのかを正確に理解できていない。
今回、Kristof Van Trichtたちは、衛星リモートセンシングと地上観測、地域気候モデルを組み合わせて、グリーンランド氷床の表面全体における入出射エネルギーの収支に対する雲量の影響を定量化した。ここで、Van Trichtたちは、氷だけの雲も液体を含んだ雲も氷床表面からの放射量を抑制することでグリーンランド氷床の表面を暖めるが、この氷床表面の応答が予想に反していることを明らかにした。つまり、雲が日中の温度上昇を通して氷床表面の融解を直接増やすのではなく、雲の温暖化効果は夜間が最も強く、晴天シナリオに反して、雲の存在によって氷床表面上の水分の再凍結が抑制され、年間の融解水の流出が30%以上増えるのだ。
今回の研究では、グリーンランド氷床表面のエネルギー収支が雲量に対して非常に敏感であることが明らかになったが、氷床表面上の雪塊とその上空の大気との間の温暖化フィードバック効果が考慮されていない。雲の影響は、このフィードバック効果のために、もっと複雑なものとなっている可能性がある。


(natureasia.com)

冬の天気予報で、放射冷却が起こるので明朝は冷え込みます、という解説をよく耳にするが、逆に、夜間に曇れば冷え込まないのと同じ理屈である。
その効果は気温の低い北極圏で著しい。
この論文のabstructには「This impact results from a cloud radiative effect of 29.5 (±5.2)W/m^2」とある。
図8-2に見えるCO2の放射強制力の15倍以上。
もちろん、その値は夜間の曇り空の時だけだから、そして、北極圏だけだから、図8-2の値と単純には比較できないけれど、エアロゾルが北極圏の温暖化を招いていることは明らかである。

8.4 微生物の不都合な真実

さらに、エアロゾル以外にも北極圏温暖化の原因がある。
化石燃料の使用に伴うエアロゾル以外にも、人類は多くの物質を大気中と海洋に放出しているが、人間の活動によって排出される有機物が北極圏にまで拡散し、微生物がそれを栄養源として繁殖し氷を解かしている。


微生物で汚れて加速 解けるグリーンランド氷河
2012年9月16日12時21分
氷河に立ち、驚いたのは氷表面の汚れだ。赤茶や灰色に染まっている。墨のように黒い所もある。その正体は雪や氷にすむ微生物だった。採取して顕微鏡で見ると、赤茶色のソーセージのような形や緑色の楕円(だえん)形など色も形も様々だ。色素を持った微生物で氷に色がつけば、太陽光はより吸収されやすくなり、 氷の融解にも拍車がかかる。
標高600~800メートル付近の氷の上には、あちこち小さな穴が開いていた。中には、解けた水がたまって、底に1~2ミリの茶色の粒が集まっている。雪氷微生物の集合体「クリオコナイト」だ。「氷河まりも」とも呼ばれる。
国立極地研究所の植竹淳特任研究員は「高緯度の極地まで、たくさんいることが確認できた。氷の融解に拍車をかけている可能性がある」と話す。

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(朝日新聞デジタル)


北極に「黒い氷」広がる 温暖化、氷床融解を加速
2016年5月7日 06時22分
温暖化が進む北極圏グリーンランドで、微生物が大量に繁殖し氷床が黒くなる現象が確認され、2012年には黒い部分の面積が、四国の1.5倍に相当する約2万7千平方キロメートルに拡大したことが7日、千葉大の竹内望教授(雪氷生物学)らの衛星画像を使った調査で分かった。国際科学誌電子版「Front. Earth Sci.,4(2016)43」に発表された。
竹内教授は「黒い氷は太陽光を吸収しやすい。気温上昇に加え、さらに融解を速める一因となっている可能性がある」と指摘している。
竹内教授によると、黒い氷の原因は藻類やバクテリアなどの微生物などに由来する「クリオコナイト」と言われる直径1~2ミリの物質。

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黒く染まった北極圏の氷床=2012年7月、グリーンランド・カナック(共同)


(共同)

海洋汚染で海が富栄養化して赤潮が発生するのと同じ原理である。
WWFが、CO2でグリーンランドが解けている~、と騒ぎ立てているけれど、その証拠として挙げている写真を見ても、やはり、微生物で黒ずんでいる。

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図8-9 「New melt record for Greenland ice sheet」より

先の図8-5でも、スス以外に「あちこち小さな穴が開いている」のが分かる。
微生物がグリーンランド氷床融解の大きな要因であることは「Microbiology Ecology,89(2014)402」や「Geochem.Persp.Lett,2(2016)I06」で立証されている。

グリーンランドだけではない。
世界中の氷雪が微生物で汚れて解けている。

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図8-10 アラスカのExit Glacier(「Everywhere Once」より」)


微生物が生む「赤雪」
昨年春、日本の山岳地帯を覆う残雪が、一面真っ赤に染まった。「赤雪」という現象で、昨年の赤雪は過去にないほど鮮やかだった。
赤雪という現象は、雪氷藻類と呼ばれる微生物の大繁殖が原因で起きる。この微生物は細胞内に赤い色素を持ち、光合成で繁殖する藻の仲間である。しかし、この微生物についてはまだ謎が多く、いつどのように広がり、どんな条件で雪を赤く染めるのか、詳しいことは分かっていない。
地表面を白く化粧する雪は、地球への太陽光の吸収を制限するため、気候に大きな影響を及ぼす。特に、近年の気温上昇による積雪面積の減少は地球温暖化をさらに加速すると考えられる。
雪の色は積雪が解ける速さを決める重要な要因の一つだ。もともと白く熱を吸収しにくい雪も、赤雪のように色がつくと融解が速くなる。従って雪を赤く染める雪氷藻類は、積雪の融解を速めて気候への影響力を持つ微生物なのである。北半球最大の氷河「グリーンランド氷床」も微生物の繁殖によって融解が加速されていることが分かってきている。
刻々と宇宙から送られてくるひまわり8号の画像は、流れゆく雲だけでなく、白く雪に覆われた地表面も見事に映し出す。その鮮やかなカラー画像を使って赤雪の謎にせまることができるのではと期待している。(竹内望・千葉大教授)
共同企画・監修 情報通信研究機構(NICT)/千葉大環境リモートセンシング研究センター

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米アラスカに広がった微生物の影響で赤く染まった雪=2010年8月、竹内望・千葉大教授撮影


(毎日新聞2016年6月10日 東京朝刊)

Nature Communications,7(2016)11968」に依れば、「赤雪」だけで、北極圏のアルベドが13%も下がっている。

8.5 白クマの不都合な真実

以上から明らかなとおり、北極圏の温暖化にはCO2以外の人為的要因が大きく作用している。
事実が発覚し、窮したIPCC学派(と環境NPO)は、問題から目を逸らすために、CO2を排出し続けると白クマが絶滅する、と騒ぎ始めた。


北極圏の海氷減少続く、ホッキョクグマ生息に不可欠 研究
2016年9月15日 11:54 発信地:パリ/フランス
ホッキョクグマが生息する北極圏の19のエリアで、狩りや休息、繁殖に不可欠な海氷の減少が続いていると警告する研究論文が14日、発表された。
欧州地球科学連合(EGU)の専門誌「The Cryosphere」に掲載された論文は、気候変動により北極圏の平均気温が上がったため、春の融氷が早まり、秋の氷結が遅くなっていると指摘している。 [The Cryosphere,10(2016)2027]
研究チームによると、1979~2014年に19のエリアが氷に覆われていた日数の合計は、10年毎に7~10日の割合で減少していることが衛星データから明らかになったという。
ホッキョクグマの世界全体の個体数は、約2万5000頭と推定されている。氷が解けるとホッキョクグマは陸に上がり、再び氷が形成されるまでの間、体に蓄えた脂肪で生き延びるが、この期間が一部で徐々に長くなっているという。
国際自然保護連合(IUCN)は昨年、ホッキョクグマの個体数は今世紀半ばまでに3分の1近くに減少する恐れがあると発表している。
世界の野生動植物の絶滅危機の度合いを示すIUCNの「レッドリスト(Red List、絶滅危惧種リスト)」では現在、ホッキョクグマは絶滅の危険が増大している「絶滅危惧Ⅱ類」に分類されている。
一方で、世界自然保護基金(WWF)は、海氷が減少するに伴い、陸上で生活するわれわれ人間とホッキョクグマとの接触機会が増えるだろうと指摘している。
さらに、北極海航路のさらなる利用や、石油や天然ガス開発機会の増大なども、ホッキョクグマの生息環境を脅かす存在となっている。


(AFP/Mariette Le Roux)


ホッキョクグマの個体数、今後35年で30%超減少の恐れ 研究
2016年12月7日 15:14 発信地:パリ/フランス
温暖化が進む北極圏で海氷が縮小し、今世紀半ばまでにホッキョクグマの個体数が3分の1減少する恐れがあると警告する研究論文が7日、英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載「Biol.Lett.,12(2016)20160556」された。
論文によると、世界全体で2万6000頭と推定されるホッキョクグマの個体数が今後35年で30%以上減少する確率は70%に上るという。
他の調査でも同様の結果が示されており、国際自然保護連合(IUCN)が作成する世界の野生動植物の絶滅危機の度合いを示す「レッドリスト(Red List、絶滅危惧種リスト)」でも、ホッキョクグマは絶滅の危険が増大している「絶滅危惧Ⅱ類」に分類されている。
今回発表された論文はこれまでで最も包括的な内容で、35年間の北極圏の海氷の衛星データと、北極圏に4か所ある生息域に散らばる19のホッキョクグマの群れの移動状況を組み合わせ、結果を算出した。
論文は「ホッキョクグマは生活の大部分を海氷に依存している」と指摘している。最も重要なことは、開けた海域ではホッキョクグマより上手に泳ぐアザラシを捕獲するため、ホッキョクグマは海氷を海に浮く小さな桟橋として利用していることだ。


(AFP/Marlowe HOOD)


ホッキョクグマ脅かす海氷縮小、「密着カメラ」で影響観察 米
2017.1.12 12:46
北極圏の急激な気温上昇で海氷や雪が減り続ければ、ホッキョクグマの生存は難しくなる――。米内務省の魚類野生生物局(FWS)がこのほど発表した新たな報告書で、強い警告を発している。
北極圏では地球上の他地域の2倍の速さで気温が上昇している。FWSによると、氷の上でえさを捕まえるホッキョクグマにとって、温暖化は最大の脅威だ。
FWSは「(気温を)大幅に下げない限りホッキョクグマが戻ってくる見込みはない」と指摘し、絶滅の危機は避けられないとの見方を示唆した。

米地質調査所(USGS)は最近、ホッキョクグマが海氷の縮小でどんな影響を受けているかを把握しようと、雌の成体にカメラを取り付けた。クマの視点で見た北極海の日常を撮影することで、摂食行動などに変化が起きているかどうかを調べることができる。
その映像には、クマにとって海氷がいかに重要かが表れていた。
ホッキョクグマはアザラシが海氷の割れ目から顔を出したところを狙ってえさにする。世界自然保護基金(WWF)の英国支部でホッキョクグマの保護に取り組むロッド・ダウニー氏がCNNに語ったところによると、ホッキョクグマがつがいになる相手を求めて移動する際などにも、海氷は不可欠だという。
空腹を抱えたクマが村落などに入り込み、人間と遭遇するケースが増えている。通学中の子どもが襲われる恐れもある。
「住民がクマを退治しようとするのはもっともな反応だ」と、ダウニー氏は指摘する。このためWWFは、クマを殺さずに爆竹で撃退する方法や、食料の正しい貯蔵法などの知識普及に努めているという。
FWSは2008年、ホッキョクグマを絶滅危惧種法に基づく保護対象に指定。人間との遭遇や狩猟を防ぎ、生息地を守り、石油流出事故のリスクを抑えるなどの対策を呼び掛けてきた。
同時に長期的な対策として、気候変動問題への対応を強く呼び掛けている。
世界には現在、約2万6000頭のホッキョクグマが生息していると推定される。しかし気温上昇がこのまま続けば、このうち3分の1は2050年までに死滅してしまうと、科学者たちは警告する。

ダウニー氏はCNNとのインタビューで「ホッキョクグマのいない北極を私たちは知らない。北極圏とそこに住む人々にとって、そして人類にとって大きな損失になるだろう」と述べた。
米航空宇宙局(NASA)が最近公開した北極圏のアニメーション映像には、1984年以降の海氷の変化が映し出される。何年間も融けずに残るはずの古い氷の面積が、急激に縮小している様子が分かる。
北極圏では昨年、過去の平均を20℃以上も上回る気温を記録した。この現象をどう説明すればいいのか、科学者たちの間で議論が続いている。


(CNN)

この「ホッキョクグマの個体数は今世紀半ばまでに3分の1近くに減少する恐れがある」、「温暖化が進む北極圏で海氷が縮小し、今世紀半ばまでにホッキョクグマの個体数が3分の1減少する恐れがある」、「北極圏の急激な気温上昇で海氷や雪が減り続ければ、ホッキョクグマの生存は難しくなる・・・しかし気温上昇がこのまま続けば、このうち3分の1は2050年までに死滅してしまうと、科学者たちは警告する」は気候モデルに基づいている。


北極海:夏季の海氷、2050年代消滅? 異常気象増加も 米中チーム予測
地球温暖化が加速すると、北極海の夏季の海氷が今世紀半ばに、ほぼ消滅するとの予測を、米中のチームが米科学アカデミー紀要「PNAS,110(2013)12571」に発表した。海氷の上で暮らすホッキョクグマなど生態系への影響が出るほか、大気の循環が変わって日本など中高緯度地域の異常気象が増える恐れがある。
北極海の海氷は、毎年9月ごろ最小となる。昨年は観測史上最小の約340万平方キロとなり、2000年までの約20年平均に比べほぼ半減した。
チームは、30種類のコンピューターシミュレーションを使い予測。現状のような温暖化が続いた場合、海氷面積は60年代初期には昨年から半減となる170万平方キロとなった。化石燃料への依存度が高まり、温室効果ガスの大気中濃度が倍増すると、54~58年にほぼ消滅するとの結果だった。
一方、海氷減少は大西洋などからの暖かい海水の影響もあり、チームは「多角的な分析が必要」と述べている。【田中泰義】


(毎日新聞 2013年7月20日 東京夕刊)

けれども、第5章、そして、本章の第2節で解説したとおり、人為的に排出されたCO2が原因で「北極圏では地球上の他地域の2倍の速さで気温が上昇している」のなら、北極圏の21世紀の気温は20世紀前半よりも遥かに高いはずなのに、20世紀前半は21世紀と同じほど気温が高かったのだから、IPCCの気候モデルが人為的排出CO2の影響を著しく過大評価していることは明らかであり、「温室効果ガスの大気中濃度が倍増すると、54~58年にほぼ消滅するとの結果」は全く非科学的で、全くナンセンスである。

しかし、IPCC学派は尚も抗う。
観測データから「30種類のコンピューターシミュレーションを使い予測・・・温室効果ガスの大気中濃度が倍増すると、54~58年にほぼ消滅するとの結果だった」が裏づけられた、と言い張っている。

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2016年11月4日の朝日新聞朝刊紙面より

「CO2の排出が現在の水準で続くと、夏の北極の海氷が今世紀半ばに消失するとの研究結果をドイツなどの研究者がまとめ、4日付の米科学誌サイエンスに発表」したマックス・プランク研究所のプレスリリースには下図が掲載されている。

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図8-11 マックス・プランク研究所のプレスリリースより

詳細は第13章(の図13-1)で解説するけれど、IPCCは第5次報告書で「大気中に放出されたCO2の累積量と気温上昇とが正比例の関係にある」という見解を新たに打ち出した。
上図は、その「新見解」を基に、夏の北極の海氷は大気中に放出されたCO2の累積量に比例して縮小する、従って、「夏の北極の海氷が今世紀半ばに消失する」と言い張っているのである。
しかし、IPCCの「新見解」は、20世紀の気温上昇は専ら人為的排出CO2が原因、ということに他ならない。
第5章第6章で解説したとおり、少なくとも20世紀前半の気温上昇は太陽活動の活発化が原因だから、「大気中に放出されたCO2の累積量と気温上昇とが正比例の関係」は成り立たない。
従って、上図も成り立たない。
上図では、CO2の累積排出量が2500Gtを超えると、「夏の北極の海氷が消失する」が、第13章の図13-1を見ると、その場合の(産業革命時からの)気温上昇は4℃以上。
CO2を排出し続けても、気温上昇は1.5℃未満に止まるのだから、上図は全く非科学的で、全くナンセンスである。
他でもない北極圏の気温の記録がその事実を示しているのだ。

さらに、詳細は第11章第15章で解説するけれど、1998年から気温上昇はほぼ停滞し続けている。
ところが、第13章の図13-1では1998年以降も、それ以前よりも急激に気温が上がり続けている。
IPCCの「新見解」は事実に全く反している。
しかも、これまた第11章第13章で解説するけれど、1998年以降に気温上昇が停滞しているということは、第5章の図5-5の黄色の線に見える急激な気温上昇には自然変動が寄与している、ということである。
実際、北極圏でも、特に、カナダ北西部とグリーンランドの気温上昇が顕著だが、自然変動の寄与が大きいことが既に分かっている。


Rapid Arctic warming and sea-ice reduction in the Arctic Ocean are widely attributed to anthropogenic climate change. The Arctic warming exceeds the global average warming because of feedbacks that include sea-ice reduction and other dynamical and radiative feedbacks. We find that the most prominent annual mean surface and tropospheric warming in the Arctic since 1979 has occurred in northeastern Canada and Greenland. In this region, much of the year-to-year temperature variability is associated with the leading mode of large-scale circulation variability in the North Atlantic, namely, the North Atlantic Oscillation. Here we show that the recent warming in this region is strongly associated with a negative trend in the North Atlantic Oscillation, which is a response to anomalous Rossby wave-train activity originating in the tropical Pacific. Atmospheric model experiments forced by prescribed tropical sea surface temperatures simulate the observed circulation changes and associated tropospheric and surface warming over northeastern Canada and Greenland. Experiments from the Coupled Model Intercomparison Project Phase 5 models with prescribed anthropogenic forcing show no similar circulation changes related to the North Atlantic Oscillation or associated tropospheric warming. This suggests that a substantial portion of recent warming in the northeastern Canada and Greenland sector of the Arctic arises from unforced natural variability.


(「Nature,509(2014)209」のabstruct)

従って、近年の北極の海氷減少にも自然変動の寄与が大きい。
実際、下図に見えるとおり、北極の海氷は増減していた。

2014122701図8-12 北極の海氷の推移(「PNAS,110(2013)19737」より)

CO2排出は20世紀後半に激増したにもかかわらず、20世紀前半の海氷減少が最も急激である。
上でも述べたとおり、それは太陽活動の活発化が原因である。
その後は増加に転じ、近年は再び減少に転じているが、2000年の海氷面積は増加に転じる以前の面積と同等、もしくは、多い。
ということは、近年の海氷減少にも自然要因の寄与が大きい、ということである。
図8-11は全くの虚構であり、「温暖化が進む北極圏で海氷が縮小し、今世紀半ばまでにホッキョクグマの個体数が3分の1減少する恐れがある」に科学的根拠は全く無い。

但し、先に解説したとおり、大気汚染が原因で北極圏の温暖化が進んでいることは事実であり、大気汚染を放置すれば「海氷が縮小し、ホッキョクグマの個体数が減少する恐れがある」。
しかも、ススや微生物を繁殖させる有機物で汚染されているということは、他の有毒な物質でも汚染されているということを意味する。[注3]


ホッキョクグマに迫る汚染物質の脅威、研究
2017年1月6日 11:46 発信地:パリ/フランス
ホッキョクグマは一時も心を休めることができない。
北極圏に生息する巨大な肉食動物のホッキョクグマが、気候変動を切り抜けるためにすでに苦闘しているのに加えて、化学物質中毒のリスクにも直面していることが、5日に発表された研究報告で明らかになった。その中毒リスクは、大人のクマで安全とみなされる水準を100倍も上回るという。
米環境毒性化学会(SETAC)の学会誌に掲載された研究論文によると、汚染された母乳で育つ子グマの場合、このリスクが1000倍に増大するという。
論文の主執筆者で、イタリアのミラノ・ビコッカ大学の毒物学者のサラ・ビジャ(Sara Villa)氏は「今回の研究は(POPsとして知られる)残留性有機汚染物質が北極圏の生態系に及ぼす全般的なリスクを定量化する世界初の試みだ」と述べた。
ビジャ氏と研究チームは今回の研究で、ホッキョクグマ、アザラシ、ホッキョクダラについて、これらの極めて毒性の強い化合物への暴露に関する40年分の調査データを詳細に調べた。
調査データは、米アラスカ州から、スカンジナビア半島の北にあるノルウェー・スバルバル諸島までの範囲に生息するホッキョクグマを対象とした。これらの地域に比べて、ロシアの北極圏の個体群に関するデータははるかに少ない。
拡散性の高い化学物質のPOPsは、自然環境に数十年間残留する可能性があり、食物連鎖で上位に行くほど濃縮され、濃度が高くなる。POPsはプランクトンから魚、アザラシ、ホッキョクグマに至るまでに、高い中毒量にまで蓄積される。工業や農業で使用されるほか、一部は繊維の難燃剤などの消費者向け製品にも使われている。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)と呼ばれる化学物質群は、がんやホルモンの混乱を引き起こすことが判明し、1970年代に広く使用禁止となったが、1990年代になっても、北極圏の哺乳類動物の体内には依然として高濃度で蓄積されていた。
その痕跡は今日でもなお残っている。
だが、PCBが減少しても、代わりに新たな汚染物質群が出現し、現在では化学物質による最大の脅威をホッキョクグマに及ぼしていることが、今回の研究で明らかになった。

■子グマに高リスク
「(PFOSとして広く知られる)ペルフルオロオクタンスルホン酸は、哺乳類にとっては猛毒とみなされている」と、論文は指摘する。ホッキョクグマのPFOS体内濃度は驚くほど高く、アザラシの100倍にも及ぶ。さらには、ホッキョクグマが汚染されたアザラシを食べると、毒素の濃度が34倍に高まる。
PCBと異なる点は、PFOSが現在もまだ製造されていることと、脂肪ではなくタンパク質(筋肉)に蓄積することだ。
PFOSは主に、紙、包装、繊維などの撥水・撥油処理剤や、ある種の消火剤の泡などに使われている。

ホッキョクグマの体内組織に存在する有機化合物19種が及ぼす混合の「有害リスク」については、PFOSに由来するリスクがその半分を占めていた。
子グマは特に顕著なリスクに直面している。
これらの新たな脅威を考慮に入れなくても、約2万6000頭と推定されるホッキョクグマの総個体数は今世紀半ばまでに3分の1を失う方向に向かっていることが、最近の調査で結論付けられている。
主な脅威は、海氷の急速な減少だ。ホッキョクグマはアザラシの狩りをするのに、海に浮かぶ海氷を足場として用いる。氷のない海での泳ぎでは、ホッキョクグマはアザラシに勝てない。
科学者らによると、北極圏の気温を地球平均の2倍のペースで上昇させている地球温暖化により、20~30年以内に夏季の北極海で海氷が消失する可能性があるという。

こうした脅威が加わることを踏まえた上で「新たに出現する汚染物質に対する規制措置を継続的に導入していくことが不可欠となる」と、ビジャ氏は警鐘を鳴らした。


(AFP/Marlowe HOOD)

子どもに、化石燃料で白くまが死んじゃう、と思い込ませるために、こんな絵本まで出版されているけれど、大気汚染や化学物質という本当の脅威から目を逸らすのに役立つだけである。


北極の生き物に会える 絵本「北をめざして」
2016年5月24日16時30分
春から夏にかけて、北極には世界中からさまざまな生き物が集まってくる。「北をめざして」は子ども向けの絵本だが、目の前に生き物がいるかのような臨場感がある。
温暖化による北極の気温上昇は世界平均の2倍以上。今世紀中ごろの夏には氷が消えるという予測もある。温暖化を防ぎ、生き物たちを絶滅から救うには、実際の自然に触れ、環境に優しい行動の実践につなげるのが一番だ。
でも、北極に行くのが難しければ、絵本に触れるのもいいかもしれない。

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絵本「北をめざして」


(朝日新聞デジタル)

こんな絵本が白クマを殺すことになるのだ。

8.6 サンタクロースの不都合な真実

「温暖化が進む北極圏で海氷が縮小し、今世紀半ばまでにホッキョクグマの個体数が3分の1減少する恐れがある」の嘘がばれてしまったので、今度は、CO2を排出し続けると、サンタクロースがクリスマスプレゼントを持って来なくなる、と言い出した。


温暖化の影響、サンタにも? トナカイが絶滅危惧種に
2016年12月19日10時35分
地球温暖化の影響が、サンタクロースのそりの引き手にも忍び寄っている。気温上昇で北極圏のトナカイがエサを取れずに餓死したり、やせ細ったりしているという論文が相次いで報告された。国際自然保護連合(IUCN、本部・スイス)も温暖化でトナカイの生息数が減っているとして、新たに絶滅危惧種に分類した。
英国やノルウェーの研究チームは今月英国で開かれた学会で、北極圏のトナカイの体重が1994年から2010年までに12%減ったと発表した。(論文は「Global Change Biology」に掲載されている。)研究者は温暖化の影響の可能性があると指摘する。北極圏で気温が上昇して雪が雨に変わると、冬場に草地が氷で覆われてエサが取りにくくなるからだという。
フィンランドやオーストリアなどの研究チームも11月、やはり気温上昇の影響で、トナカイが餓死の危機に陥っているとする論文を英専門誌「バイオロジー・レターズ」電子版に発表 [Biol.Lett.,12(2016)20160466] した。13~14年にロシアのヤマル半島では約6万頭が死んだという。
IUCNは今年公表した「レッドリスト」でトナカイを初めて絶滅危惧種に分類。絶滅の恐れはない「軽度懸念」から、絶滅の危険が増大している「絶滅危惧2類」に引き上げた。約21~27年間で個体数が40%減少したと推定している。(小堀龍之)

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絶滅が危ぶまれているトナカイ=2016年1月、ノルウェー


(朝日新聞デジタル)

しかし、第5章の図5-14で解説したとおり、ヤマル半島の20世紀前半の気温は2000年と同じほど高かった。
一方、「英国やノルウェーの研究チームは今月英国で開かれた学会で、北極圏のトナカイの体重が1994年から2010年までに12%減ったと発表した」はノルウェーのスヴァールバル諸島に生息するトナカイのことであるが、下図に見えるとおり、スヴァールバルでも20世紀前半の気温は2000年と同じほど高かった。

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図8-13 「Polar Research,33(2014)21349」より

従って、第5章で解説したとおり、大げさに評価しても、CO2の排出に因る気温上昇は0.4℃であり、CO2を排出し続けても、気温上昇は1.5℃未満に収まる。
1.5℃は過去の自然変動の範囲内だから、しかも、第6章の[注6]で解説したとおり、西暦1000年前後は現在よりもずっと気温が高かったのだから、CO2の排出が原因でトナカイが絶滅するのなら、トナカイは既に絶滅していたはずであり、サンタクロースはクリスマスプレゼントを持って来ないはずである。

上図を見ると、確かに21世紀は20世紀前半よりも気温が高い。
しかし、先に解説したとおり、それは大気汚染が原因である。
実際、スヴァールバルの氷河もススで黒ずんでいる。

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図8-14 「Svalbard’s glaciers are shrinking」より

Physics and Chemistry of the Earth,28(2003)1217」の abstract は「The anthropogenic infuence on Svalbard environment is illustrated by increased levels of non-sea-salt sulphate, nitrate, acidity, fly-ash and organic contaminants particularly during the second half of 1900s」と明言している。
事態は白クマの場合と全く同じであり、「地球温暖化の影響が、サンタクロースのそりの引き手にも忍び寄っている」などと煽り立てることこそ、真の脅威から目を逸らし、トナカイを絶滅の危機に陥れるのだ。

[注1] にもかかわらず、この論文はあべこべに「雲に含まれる液体と氷の量を観測結果に近付くように修正した各種モデルでは5~5.3度になる」と言い立てている が、「雲が太陽光を反射して地球の大気の温暖化を妨げる作用が過大評価されている」なら「CO2が赤外線を吸収して地球の大気の温暖化を起こす作用が過大 評価されている」という事実には知らんぷりし、CO2の過大評価はそのままに、「雲が太陽光を反射して地球の大気の温暖化を妨げる作用」のみを弱めたから にすぎない。
もちろん、論文の著者達もそれは百も承知であろう。
「こうした科学的モデルでは雲が太陽光を反射して地球の大気の温暖化を妨げる作用が過大評価されている」と言うだけでは、IPCCがCO2の影響を過大評価していることを暴くことになり、IPCC学派から攻撃され、研究職をも奪われかねず、さらには、環境団体から攻撃されて、身に危険が及びかねないので、「雲に含まれる液体と氷の量を観測結果に近付くように修正した各種モデルでは5~5.3度になることが分かった」と煽り立てることで、カモフラージュしたのであろう。
科学的な思考ができる人間なら、「こうした科学的モデルでは雲が太陽光を反射して地球の大気の温暖化を妨げる作用が過大評価されている」という部分を見れば、自分達の真意は分かるはず、と思っているのだ。

[注2] これほど黒ずんでいるにもかかわらず、「Geophys.Res.Lett.,42(2015)9319」は、グリーンランドの氷河・氷床は真っ白、と言い張っている。

[注3] さらに、抗生物質の効かない耐性菌までが世界中の雪氷に拡散している。


氷河や雪渓にも耐性菌 遺伝子変異を知る手がかりに
2013年1月30日22時54分
【中山由美】抗生物質の効かない耐性菌が、人間社会から離れた雪や氷の上にまで広がっていることがわかった。京都府立大や国立極地研究所など日本やチリの研究者のチームが、世界各地の氷床や氷河、雪渓の雪や氷を分析して、英国の環境微生物学誌「Environmental Microbiology Reports,5(2013)127」で報告した。
研究チームが1998~2011年にかけて、北極や南極、日本、中国、アフリカなど世界51地点の氷床や氷河、雪渓で雪や氷を集め、細菌を採取。その耐性遺伝子を調べたところ、アジアは数も種類も多く、グリーンランドでも多数確認された。南極でみつかったのは8地点中一つ、航空機が離着陸する所だけで、南緯70度以南はなかった。
瀬川高弘・極地研特任研究員は「人間の活動の影響から隔絶した雪や氷の上でも多くみつかったことに驚いた」という。「耐性菌は主に北半球を起源とし大気循環で広がったようだ」と牛田一成・京都府立大教授はみている。

2016052501
抗生物質耐性菌を探すため、滅菌した無塵服を着て雪を採取する研究者たち=2011年3月、チリ・パタゴニア氷原のサンラファエル氷河、瀬川高弘研究員提供


(朝日新聞デジタル)

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