気温上昇の停滞と人為的温暖化説の破綻

10.1 1998年以降の不都合な真実

IPCCの気候モデル(の中央値)は第6章の(6-3)式で表されるから、そして、1998年のCO2濃度は366.65ppmで、2012年のCO2濃度は393.81ppmだから、IPCCの人為的温暖化説が正しければ、1998年からの15年間に気温は0.3℃上がっているはず。

(10-1)    \displaystyle 3 \, \frac{\ln \left( 393.81 / \, 366.65 \right)}{\ln \left( 2 \right)} = 0.3

だからこそ、我国おける人為的(排出CO2)温暖化説の権威と目されている(らしい)人物は、このように言い張っている。


平均気温上昇の原因は? 地球全体の傾向、やはりCO2
2013.8.13 01:18
日本でも、ついに史上最高気温が41度に達した。平均気温は過去100年で1.15度上昇しており、平成6(1994)年に和歌山県と静岡県で40.6度を観測するなど、特に90年代に入ってから気温の上昇が目立つ。専門家によると地球温暖化が根本的な原因という。日本の夏はどこまで暑くなるのか。
「熱を吸収しやすい二酸化炭素(CO2)の大気中濃度が増えているのだから、最高気温が更新されるのは当然」
地球温暖化に詳しい海洋研究開発機構、松野太郎・特任上席研究員(78)はこう話す。
松野研究員によると、気温上昇は地球全体の傾向で、全国どこでも史上最高気温の更新はあり得る。「気象条件や地形などの要因で気温が上がる場所は変わる。12日は偶然、高知県四万十市だったが、各地で記録更新が相次ぐ状況にこそ気温上昇が顕著に表れている」と指摘する。
松野研究員は「CO2濃度が増えるほど気温が上がる。どこまで暑くなるかはCO2排出量をどれだけ減らせるか次第」と話した。
一方、世界的には地球温暖化が止まったかもしれないとの説もある。過去60年間で見ると、2000年ごろまで上昇していた世界平均気温が頭打ちし、以降はほぼ横ばいに推移しているからだ。

気象庁で温暖化を担当する及川義教調査官(42)によると、2、3年前から研究者の間でこうした説が言われるようになったという。
「原因として有力視されているのが深層部分での海水温上昇」(及川調査官)。これまで大気中にためられていた熱エネルギーが、海の流れを介して深さ2千メートルを超える深層へ届けられ、気温の代わりに水温が上がっているという。
ただ実際の水温上昇を裏付けるデータが少なく、現在は世界中の研究機関が海水を調査している段階。及川調査官は「地球全体で見れば熱エネルギーが移動しただけなので温暖化が止まったとまでは言いがたい。平均気温が再び上昇に転じる可能性もある」と話しており、日本の気温変化にどう影響するかは未知数だ。


(MSN産経ニュース)

ところが、この記事にも見えるとおり、そして、下図に見えるとおり、気温上昇は1998年から停滞している。

2013101501
図10-1 1997年6月から2013年7月までの全球平均気温偏差の推移

この事実はIPCCの気候モデルに致命傷を与えた。
NOAAの報告書「State of the Climate in 2008」には次のような記述がある。


Near-zero and even negative trends are common for intervals of a decade or less in the simulations, due to the model’s internal climate variability. The simulations rule out (at the 95% level) zero trends for intervals of 15 yr or more, suggesting that an observed absence of warming of this duration is needed to create a discrepancy with the expected present-day warming rate.


(「Do global temperature trends over the last decade falsify climate predictions?」より-「State of the Climate in 2008」は膨大なので、この部分だけを抜き出したPDFがこちらからダウンロードできる。)

IPCCの気候モデルで気温上昇が15年間停滞する可能性は5%であり、従って、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説は既に95%の確率で破綻しているのだ。

もちろん、IPCC学派は肯んじない。
J.Geophys.Res.,116(2011)D22105」が、気温上昇が17年間停滞しない限りIPCCの人為的温暖化説は破綻していない、と言い出した。
さらに、15年間の気温上昇停滞は温暖化の一時的な中断にすぎないと言い張り、「ハイエイタス(hiatus)」と呼んで、様々な言い逃れを図っている。


地球温暖化が減速か、各国の政策や企業経営にも影響
2013年04月18日 17:31 JST
[オスロ 16日 ロイター] 異常気象の原因になっているとされる地球の温暖化。ただ一部では温暖化スピードが減速しているとの見方が出ており、科学者らはその現象を説明するのに苦慮している。
100年単位など長いスパンでの傾向を分析する多くの気候モデルでは、気温上昇のスピードが2000年ごろから減速するとは予想されていなかった。科学者らは原因の解明を急いでおり、この減速が一時的なものか、より長期的な傾向なのかを見極めようとしている。

この現象を正しく理解することは、各国政府の短期的または長期的な計画にとって非常に重要であり、エネルギーや建設、農業や保険といったさまざまなビジネス分野にとっても大きな意味を持つ。科学者の多くは、今後数年で温暖化は元のペースに戻ると予想している。
温暖化の減速について考えられる要因はいくつかある。海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられているという説、アジアでの大気汚染や雲が太陽光を遮っているという説、温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ないという説などが取りざたされている。


(ロイター)

ならば、「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられているという説、アジアでの大気汚染や雲が太陽光を遮っているという説、温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ないという説」を検証してみよう。

下図に見えるとおり、中国とインドでは2000年以降の日射量が減少している。

2013091101図10-2 「Bull.Amer.Meteor.Soc.,93(2012)27」より

それが「アジアでの大気汚染や雲が太陽光を遮っているという説」の拠りどころであり、例えば、「PNAS,118(2011)11790」が主張していた。
しかし、日射を遮るエアロゾルと共にススも排出され、第7章で解説したとおり、ススは温暖化を招く。
実際、「Nature Geoscience,6(2013)258 」、及び、「Geophys.Res.Lett.,41(2014)4711」に依れば、エアロゾルに因る冷却効果はススに因る温暖化効果で打ち消される。
しかも、温暖化を招く他の物質も見つかった。


温暖化防止に新たな難敵 車から排出の酸化鉄が影響
竹野内崇宏
2017年5月17日9時04分
大気中の微小粒子状物質PM2.5に含まれる黒色の酸化鉄の粒が、太陽光を吸収して地球温暖化に関わっていることが、東京大や気象庁気象研究所などの研究でわかった。自動車などから排出されているとみられ、今後規制などの議論につながる可能性がある。
研究は16日、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。
酸化鉄は、砂に含まれているほか、高温になる自動車のエンジンやブレーキ、製鉄の工程など人為的にも発生すると考えられている。茂木信宏・東大助教(大気環境科学)らのチームは、日本周辺の上空で中国大陸から流れてくる空気を採取して調べたところ、小さな粒が集まって人為的に生じたとみられる200~2千ナノメートル(ナノは10億分の1)の酸化鉄粒子が多量に含まれていることがわかった。
この粒子の構造から、太陽光の吸収量を計算すると、温暖化物質のうち、二酸化炭素など気体を除く微粒子では最も大きく影響する黒色炭素(すす)の4~7%に相当する大気加熱率があることもわかったという。
茂木さんは「人間の活動から出る酸化鉄も、温暖化に影響を与えうる粒子として、研究や排出抑制の議論を進める必要がある」と話している。(竹野内崇宏)


今回の研究で見つかった黒色酸化鉄粒子の電子顕微鏡写真=気象庁気象研究所提供


(朝日新聞デジタル)

第7章の第4節で引用した「北極評議会が会合、ウクライナ情勢余波で冷たい雰囲気」という見出しの記事に見えるとおり、「黒色炭素の温暖化への影響は二酸化炭素(CO2)の2000倍」。
その5%なら、「酸化鉄の温暖化への影響は二酸化炭素(CO2)の100倍」。
もちろん、濃度も違うし、雨が降れば洗い落とされてしまうから、単純に「CO2の100倍」とは言えないけれど、その100分の1としても、「酸化鉄の温暖化への影響は二酸化炭素(CO2)と同等」。
「アジアでの大気汚染や雲が太陽光を遮って」も、CO2の排出に因る気温上昇が抑えられることは無い。
もちろん、それは50年代から80年代にも当て嵌まる。
第7章の第1節で解説したとおり、IPCCの気候モデルではCO2だけなら20世紀第4四半期の気温(偏差)が高すぎるから、50年代からは日米欧の大気汚染がCO2の増加に因る気温上昇を抑えた、と言い立てているけれど、それが辻褄合わせのイカサマにすぎないこともハッキリしたと言えよう。
「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」のだ。

もちろん、IPCCは肯んじない。
だから、結局は「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられているという説」に頼らざるを得ず、実際、1998年以降は「海が多くの熱を吸収した」と言い立てている。


地球温暖化の熱、海の吸収量が急加速
2016年1月19日 15:16 発信地:パリ/フランス
最近20年間に海洋が吸収した地球温暖化による熱の量は、それ以前の130年間の熱吸収量に匹敵するとの研究結果が18日、発表された。
この熱吸収の加速は、人間の居住地の気温上昇を防ぐ助けになっている一方で、長期的に見ると、地球全体の天候と気候を混乱させる「作動中の時限爆弾」となる恐れがあると、科学者らは警告している。
米ローレンス・リバモア国立研究所のピーター・グレックラー(Peter Gleckler)氏率いる研究チームは「1865年以降の世界の海洋による熱の総吸収量の半分は、1997年以降に蓄積したと推計される」と報告している。
最近の熱蓄積の3分の1は、日光が届かない水深700メートル以上の深海域で起きていることを、研究チームは発見した。これによって、20世紀末に海表面で観測された温暖化の「停滞(ハイエイタス)」は、これで説明できる可能性があるという。
これまでは、このハイエイタスを温暖化全体の減速と解釈する見方も一部にあった。

以前は海面表層が、海洋に取り込まれる熱の大半を吸収していたと考えられている。この比率が変化した理由については、まだ十分に解明されていない。
英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に発表された研究成果「Nature Climate Change,6(2016)394」は、大部分が観測データに基づくものだ。最古のデータは19世紀、英海軍艦船「チャレンジャー(HMS Challenger)」の調査隊によって収集された。英国王立協会(British Royal Society)が開始したこの科学的遠征調査は、現代海洋学の基礎を築いたと評価されることが多い。
最近の観測データは、数十年分の航海記録や、海洋全体に分布する観測用漂流ブイ「アルゴ(Argo)フロート」によって得られたものだ。アルゴフロートは、水深2000メートルまでのデータ測定に対応している。
地球表面の3分の2を覆う海洋は、人為的な温室効果ガスによって生成される過剰な熱の90%以上を吸収してきた。
この作用によって、人類にとっては幸運なことに、過剰熱によって地球表面で本来起きるはずの気温上昇が軽減されている。だがこの先の未来には、深刻な結末が待っている恐れがあると、科学者らは警告する。
英気象庁の気象学者、マット・パーマー(Matt Palmer)氏は、今回の研究が「気候変動の兆しが時間とともに強まり、深海にまで届くようになっていることを示している」と指摘した。いわゆるハイエイタスは、表層の現象にすぎないことを今回の結果は示しているとパーマー氏は言い「地球温暖化は今も進行中で、海洋はその熱の大半を取り込んでいる」と述べた。


(AFP/Marlowe HOOD)

「1865年以降の世界の海洋による熱の総吸収量の半分は、1997年以降に蓄積したと推計される」は下図である。

2016012401
図10-3 「Nature Climate Change,6(2016)394」の図4

しかし、これはおかしい。
IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説では、大気中のCO2が増え、その結果、気温が上がり、その結果、大気からの下向き赤外放射が増すから、海に余分な熱が溜まるはず。
第1章の図1-1で示したとおり、それがIPCCの吹聴する人為的温暖化の基本原理だから、図10-1に見えるとおり気温上昇が停滞していれば、下向き赤外放射は増えない。
現に、1998年以降に下向き赤外放射の増加は認められない。[注1]


図10-4 「全天日射量と下向き赤外放射量の経年変化」より

赤外放射が増しているかのごとくに赤線を引いているが、1998年以前を利用した目くらましにすぎず、1998年以降に下向き赤外放射の増加は認められない。
それは図10-1と整合する。
(図10-1は2013年までだが、気温上昇の停滞はその後も続いている。それに関しては第13章で解説する。)
下向き赤外放射が増えていないのに、「最近20年間に海洋が吸収した地球温暖化による熱の量は、それ以前の130年間の熱吸収量に匹敵する」はずがない。

上の記事にも見えるとおり、そもそも、「人為的な温室効果ガスによって生成される過剰な熱の90%以上」は海に貯まる。


第二に、温室効果ガス濃度の増加によってこれまで地球の気候システムに蓄積されてきた熱量の90%以上は海水の温度上昇に使われており、ハイエイタスの期間においても海洋の温暖化は続いていること。これに対して大気の温度上昇に使われた熱量は1%程度であって、海洋内部の変動に伴う熱の吸収量のわずかなゆらぎの影響が、大気の側にとっては大きなゆらぎとして現れているに過ぎないとも考えられる。


(「異常気象レポート2014」の60ページから61ページ)

「大気の温度上昇に使われた熱量は1%程度」だから、「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられている」としても、つまり、1998年以降に気温が上がり続けていれば、大気の温度上昇に使われていたはずの1%の熱量が海に吸収されたとしても、92%が93%になるだけ。
気象庁の及川義教は「これまで大気中にためられていた熱エネルギーが、海の流れを介して深さ2千メートルを超える深層へ届けられ、気温の代わりに水温が上がっている」と、そして、英気象庁のマット・パーマーも「気候変動の兆しが時間とともに強まり、深海にまで届くようになっている」言い張っているけれど、92%が93%になっても、「気温の代わりに水温が上がっている」と認め得るほどの変化は起こり得ない。
実際、「深さ2千メートルを超える深層」で水温は上がっていない。[注2]


地球温暖化の「停滞」、海による熱吸収ではない 研究
2014年10月7日 16:48 発信地:ワシントンD.C./米国
地球温暖化がここ数年そのペースを緩めているのは、深海が熱を吸収しているからではないとする論文「Nature Climate Change,4(2014)1031」が、6日の英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載された。
米航空宇宙局(NASA)によると、21世紀初頭に温室効果ガスが増え続けている一方、平均地表気温の上昇は停滞している。一部研究では、熱が一時的に深海に吸収され、「ハイエイタス」と呼ばれる地球温暖化の停滞現象が起きているとされていた。
今年8月には、過去15年にわたるハイエイタス現象について、大西洋や南極海の深海に熱が吸収されているとする別の論文が、米科学誌サイエンスに発表されていた。
だが、今回の論文によると、2005年~2013年にかけて収集された人工衛星からのデータおよび海洋での水温計測によると、水深1995メートル以下の深海では目立った水温の上昇が見られないことが判明している。
この結果は科学者に新たな疑問を投げかけるものとなった。それでも論文の共同執筆者の一人で、NASAのジェット推進研究所のジョシュ・ウィリス(Josh Willis)氏は、気候変動が現実に起きていること自体に疑いはないとしながら、「海面はいまだに上昇しており、一連のデータを理解するために研究を続けている」と述べている。
NASAの研究者らによると、今回の調査では、海洋の水温を直接計測するだけでなく、人工衛星による観測も初めて取り入れたという。


(AFP)

「熱が一時的に深海に吸収され」ていないことは「J.Phys.Oceanogr.,44(2014)2013」と「Surveys in Geophysics,36(2015)209」でも確認されている。
また、図10-3では「最近の熱蓄積の3分の1は、日光が届かない水深700メートル以上の深海域で起きている」が、「Science,349(2015)532」に依れば「no significant increase in the rate of warming below 700m since 2003」、「the net amount of heat absorbed by the ocean below 700m are overestimated」である。
「大気の温度上昇に使われた熱量は1%程度」であるにもかかわらず、図10-3のようなことが起きているのなら、「海洋内部の変動に伴う熱の吸収量のわずかなゆらぎの影響が、大気の側にとっては大きなゆらぎとして現れている」のではなく、全く逆に「大気内部の変動に伴う熱の吸収量のわずかなゆらぎの影響が、海洋の側にとっては大きなゆらぎとして現れている」ことになるが、もちろん、それはあり得ない。
気象庁の及川義教は「地球全体で見れば熱エネルギーが移動しただけなので、温暖化が止まったとまでは言いがたい」と言い張っていたけれど、それは全くの論理倒錯であり、実際は「地球全体で見れば1%の熱エネルギーが移動しただけなので、海が多くの熱を吸収した結果として温暖化が止まった、とは言いがたい」のだ。

10.2 太平洋十年規模振動(PDO)

しかし、「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられている」を真に受けたとすると、では、なぜ「海が多くの熱を吸収した」のか?


太平洋の海面水温が低下 温暖化のペース鈍らす
米大学チーム、再び上昇の可能性は高く
2013/9/21 10:30
熱帯域の太平洋の海面水温がこの10年ほど低い傾向にあるために、今世紀に入って世界の平均気温の上昇ペースが鈍っているとする研究結果を、米カリフォルニア大サンディエゴ校の小坂優研究員らのチームがまとめた。海面水温は将来、再び高温傾向になる可能性が高く、その時は、地球温暖化が急速に進む恐れがあるという。
高知県四万十市で8月、観測史上最高の気温41度を記録するなど、日本は近年、猛暑の印象が強いが、世界的に見ると年平均気温は2000年ごろからほぼ横ばいで推移している。一方で、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は一貫して増え続けていることから、温暖化の仕組みと矛盾しているように見え、専門家の間で何が原因なのか議論になっていた。
チームは、海面水温が1年程度高くなるエルニーニョ現象が起きる熱帯太平洋東部に着目。この海域では、数十年とより長い周期でも低温と高温を繰り返しており、地球全体の気候に影響を及ぼしている可能性があることから、過去の海面水温データを使って、世界の平均気温がどう変わるかシミュレーションした。
その結果、最近約15年の気温上昇の停滞や、1970年代後半から約20年続いた急速な温暖化をほぼ観測通りに再現することに成功。「気温上昇が鈍ったのは海面水温が低温傾向にあるのと関係している」と結論付けた。
チームは、こうした変動は自然のゆらぎによるもので、今後も海面水温に応じて気温上昇が進んだり鈍ったりする可能性があるが、長期的には温暖化は止まらないと指摘している。
成果は英科学誌ネイチャーに発表「Nature,501(2013)403」した。
▼近年の気温上昇の停滞 産業化に伴い二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの大気中濃度が増加して地球の平均気温が上昇する地球温暖化が進行しており、気温上昇のペースは、20世紀後半には10年当たり約0.13度だった。ところが1998年以降の最近約15年間は、ほぼ横ばいに鈍化。温暖化に矛盾するとして、専門家の間で「ハイエイタス」問題と呼ばれて注目を集めている。原因は、大気中の微粒子や水蒸気の量の変化、火山の噴煙、太陽活動の強弱、海による熱の取り込みの変化などさまざまな説が提示されている。


(日本経済新聞 電子版)

「自然のゆらぎ」が原因と言うのだが、下図のパネルbの赤線(POGA-C)が「自然のゆらぎ」である。

2013101603
図10-5 「Nature,501(2013)403」より

1975年と1998年の差は0.4℃。
一方、「1970年代後半から約20年続いた急速な温暖化をほぼ観測通りに再現することに成功」はパネルaの赤線(POGA-H)を指しているが、1975年から1998年までの気温上昇は0.8℃。
だから、「1970年代後半から約20年続いた急速な温暖化」の半分は「自然のゆらぎ」が原因。
しかし、IPCCのこれまでの説では、「1970年代後半から約20年続いた急速な温暖化」は専らCO2の排出が原因。
ということは、「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」ということである。
「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられている」のではなく、実は「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」のだ。

「この海域では、数十年とより長い周期でも低温と高温を繰り返しており」に関して、クライメイトゲートで悪名を馳せたケヴィン・トレンバースは次のように説明している。


These increases are certainly less than the warming rates of the 1980s and first half of the 1990s of about 0.15 to 0.20°C (.27 and .36 F respectively) and per decade. The earlier period may have provided an unrealistic view of the global warming signal, says Kevin Trenberth, climate scientist with the National Center for Atmospheric Research in Boulder, Co.
“One of the things emerging from several lines is that the IPCC has not paid enough attention to natural variability, on several time scales,” he says, especially El Ninos and La Ninas, the Pacific Ocean phenomena that are not yet captured by climate models, and the longer term Pacific Decadal Oscillation (PDO) and Atlantic Multidecadal Oscillation (AMO) which have cycle lengths of about 60 years.
From about 1975, when global warming resumed sharply, until the 1997-98 El Nino, the PDO was in its positive, warm phase, and heat did not penetrate as deeply into the ocean. The PDO has since changed to its negative, cooler phase.
“It was a time when natural variability and global warming were going in the same direction, so it was much easier to find global warming,” Trenberth says. “Now the PDO has gone in the other direction, so some counter-effects are masking some of the global warming manifestations right at the surface.”


(「W[h]ither Global Warming? Has It Slowed Down?」より)

クライメイトゲートの主役フィル・ジョーンズ、ホッケー・スティック曲線のマイケル・マン、そして、NASAのギャビン・シュミットらと共に、気温上昇にエルニーニョ・南方振動が大きく寄与していると指摘した論文「J.Geophys.Res.,114(2009)D14104」に難癖「J.Geophys.Res.,115(2010)D09110」をつけていたトレンバースが、今頃ヌケヌケと「El Ninos and La Ninas, the Pacific Ocean phenomena that are not yet captured by climate models」と言い立てるのは噴飯物だが、本章の始めに指摘したとおり、IPCCの人為的温暖化説が正しければ、1998年以降の15年間に気温は0.3℃上がっているはずだから、「Now the PDO has gone in the other direction, so some counter-effects are masking some of the global warming manifestations right at the surface」ということは、自然要因(PDO)だけなら、1998年以降の15年間に気温は0.3℃低下していたということになる。
Geophys.Res.Lett.,41(2014)4704」も「the pause (1998-2013) - a natural cooling of -0.3 K - is not exceptional」と言っている。
従って、逆に「It was a time when natural variability and global warming were going in the same direction, so it was much easier to find global warming」ということは、「From about 1975, when global warming resumed sharply, until the 1997-98 El Nino」は自然要因で0.3℃温暖化していたということに他ならない。
だからこそ、「the IPCC has not paid enough attention to natural variability」と認めたのである。

そこで、PDO(太平洋十年規模振動)を検証すると、

2014021901
図10-6 「Nature,505(2014)276」より

「Warm-phase PDO」と「Earth warmed rapidly」が同期している。
それが「It was a time when natural variability and global warming were going in the same direction, so it was much easier to find global warming」に他ならない。
気象庁の及川義教は「地球全体で見れば熱エネルギーが移動しただけなので温暖化が止まったとまでは言いがたい」と言い張っていたけれど、その後、気象庁もこの事実を認めた。


世界は史上2位、日本は8位=平均気温13年確定値-気象庁
2014/2/3-16:57
気象庁は3日、世界と日本の2013年の平均気温確定値を発表した。世界は平年(1981~2010年の30年平均)を0.2度上回って1891年の統計開始以来2番目、日本は0.34度上回って1898年の統計開始以来8番目。順位は昨年暮れに発表した速報値と変わらなかった。
世界の平均気温を月別にみると、9月が平年を0.26度、11月が0.31度上回り、いずれも統計開始以来トップ。9~11月の3カ月間も0.26度上回りトップだった。一方、世界の陸地だけの年間平均気温は平年を0.34度上回り、4番目に高かった。
年平均気温の上昇ペースを100年当たりでみると、日本は1.14度と、世界の0.69度より速い。90年代から記録的な高温となる年が増えており、 気象庁は二酸化炭素などの温室効果ガスによる温暖化と自然の周期的変動が重なったことが原因と分析している。


(時事ドットコム)

しかし、自然変動の気温上昇は、「Warm-phase」の期間に起こるのではなく、「Cold-phase」の底から「Warm-phase」の頂点に移行する期間に起こる。
第5章で解説したとおり、20世紀前半の気温上昇は自然要因だから、1950年と21世紀初頭との気温差は「二酸化炭素などの温室効果ガスによる温暖化と自然の周期的変動が重なった」結果、と考えるべきである。
上で説明したとおり、自然変動に因る気温上昇は0.3℃だから、そして、IPCC第5次報告書第10章(883ページ)に依れば、「Over the 1951-2010 period, the observed GMST increased by approximately 0.6°C」だから、CO2の排出に因る気温上昇は0.3℃、ということになる。
1951年から2010年までの60年間で0.3℃だから、10年当たり0.05℃。
前章で引用した「オゾン層保護条約、地球温暖化『減速』の助けに」という記事に見えるとおり、「1998年~2012年、地球全体の平均温度は10年当たり平均0.05度の割合で上昇した」。
「温暖化に矛盾するとして、専門家の間で『ハイエイタス』問題と呼ばれて注目を集めている」が、「ハイエイタス」こそがCO2の排出に因る「温暖化」である。
気象庁の及川義教は「温暖化が止まったとまでは言いがたい」と言い張っていたけれど、それは正しかった。

10.3 大西洋数十年規模振動(AMO)

ということは、「Now the PDO has gone in the other direction, so some counter-effects are masking some of the global warming manifestations right at the surface」ではなかった、ということである。
それを説明するため、19世紀末から今日までの全球平均気温(偏差)の推移を直線で近似してみよう。

2013100503
図10-7 「世界の年平均気温の偏差の経年変化」より

観測値(青線)は赤線の上下を行き来しているが、それが「the IPCC has not paid enough attention to natural variability」。
1990年頃を境に青線が赤線の下側から上側に抜け出たが、それが「It was a time when natural variability and global warming were going in the same direction, so it was much easier to find global warming」。
「Now the PDO has gone in the other direction, so some counter-effects are masking some of the global warming manifestations right at the surface」なら、青線は再び赤線の下に潜っているはずだが、今なお、上に出ている。

さらに、「natural variability」だけを見るために、赤線が水平になるように上図を回転させてみよう。

2013100504
図10-8 図10-7を傾けたグラフ

「Now the PDO has gone in the other direction, so some counter-effects are masking some of the global warming manifestations right at the surface」なら「natural variability」の位相は負のはずだが、逆に、位相は正。
2000年以降、「natural variability」はピーク状態にある。
「1998年以降の最近約15年間は、ほぼ横ばいに鈍化」しているのはそれが原因である。
「Now the PDO has gone in the other direction, so some counter-effects are masking some of the global warming manifestations right at the surface」だから、ではない。

その証拠に、下図に見えるとおり、太平洋に熱は貯まっていない。

2015052001図10-9 「Scinece,345(2014)897」より

図10-5の論文は「海面水温が1年程度高くなるエルニーニョ現象が起きる熱帯太平洋東部に着目。この海域では、数十年とより長い周期でも低温と高温を繰り返しており、地球全体の気候に影響を及ぼしている可能性がある」と言い立てていたけれど、従って、「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられている」のなら、太平洋に熱が貯まっているはずだが、そうはなっていない。

トレンバースも「the longer term Pacific Decadal Oscillation (PDO) and Atlantic Multidecadal Oscillation (AMO) which have cycle lengths of about 60 years」と言っていたが、そして、上図の論文の著者も別の論文「PNAS,110(2013)2058」で指摘しているけれど、図10-8の青線は大西洋数十年規模振動(AMO)が原因であろう。


【日曜に書く】論説委員・長辻象平 始まるか、北半球の寒冷化
2013.10.20 03:20
◆IPCCと異なる見解
「地球は間違いなく寒冷化に転じると思いますよ」
大気海洋地球物理学者の中村元隆さんは断言する。海洋研究開発機構の主任研究員だ。

早ければ数年後に、北半球が寒冷化に向かう変化が起きる可能性が高いという。そうした予測を含む研究論文「J.Climate,26(2013)8576」を6月末に発表している。
国連の「気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)」による最新版の将来予測とは、真反対の見解だ。
IPCCは今世紀末までに最大ケースで2.6~4.8度の気温上昇を予測している。
中村さんも二酸化炭素などによる温室効果を認めているが、それを打ち消す気温の低下を見込んでいるのだ。
北半球の寒冷化を予告することになった論文名は「グリーンランド海の表面水温変化とそれに伴う北半球の気候変容」。意外なことに、内容のポイントは1980年ごろからの温暖化への転換点の解明なのだ。
◆寒冷化危惧した70年代
団塊の世代以上の人なら覚えているだろう。
1940年代から70年代にかけて気候は、寒冷化していたのだが、80年代以降、温暖化に転じ現在に至っている。
その転換は何によるものか。中村さんは、米海洋大気庁や英国気象庁などの過去からの大量の観測データを分析した。
その結果、79年2月から3月にかけて、北極に近いグリーンランド海の表面水温が一気に2度も上昇し、周辺の大気の流れに影響が及んで、温暖化への引き金が引かれていた事実に行き着いた。
北大西洋では、海面水温が約70(±10)年周期で、ほぼ35年ごとの上昇、下降を繰り返し、北半球全体の気候に影響を及ぼす「大西洋数十年規模振動」という現象が知られている。

過去からの振動のデータは、ちょうど80年ごろから、約35年間続く温暖化の時期に入ることを示しており、そこに79年の水温急上昇が加わったのだ。
1980年から数えて35年後は2015年にあたるので、そのころグリーンランド海で水温変化の可能性があるという。
「この大西洋数十年規模振動は、大西洋熱塩循環流という海水の流れと密接に関係しています」と中村さんは説明する。
北極の寒気で冷やされた低温・高塩分の海水は、重くなって沈み込み、深層流となって北極海から大西洋に南下する。そのスタート地点がグリーンランド海なのだ。
この流れに連動し、暖かい熱帯域の海水が北大西洋の表層を北上するので膨大な熱量が運ばれて、気候に強く影響する。
グリーンランド海は、地球の海水循環における心臓のような存在だ。だから、その水温変化は大きな意味を持っている。
気候変動シミュレーションの高精度化には、数理モデルに、グリーンランド海を舞台とする変化のプロセスを正確に表現することが不可欠らしい。
◆いま気温は高止まり中
「現代は、世界中が地球温暖化を危惧していますが、1940年代からは気温が下がり、60~70年代には、地球寒冷化が騒がれていました」
中村さんの言う通り、当時は「氷河期へ向かう地球」「飢えを呼ぶ気候」といった図書が多数出版されている。
「当時は既に二酸化炭素の排出が増えていました」。だが、大西洋数十年規模振動が下降期だったので、温室効果の影響は消し去られていたようだ。
80年代からの温暖化は、振動の上昇期と二酸化炭素の影響が合わさった結果のはずだが、IPCCは原因を後者にのみ求める見方を強める一方だ。

地球温暖化問題は、排出量取引などの金融メカニズムや南北問題とも関係し、国際政治交渉の課題と化している。冷戦構造消失後の世界の緊張軸という見方も可能だ。
ところで、猛暑が続く日本では実感しにくいが、世界の平均気温は、この10年ほど上昇が停止している。
中村さんによると、この高止まりは、大西洋数十年規模振動が上昇期から下降期に転じるカーブの頂点だ。

これから20年後の北半球は、どんな気候になっているのだろうか。太陽研究者の間では、百数十年ぶりの太陽の磁場活動の低下が気温低下との関連で注目されている。
ここ数年、冬の寒さが戻ってきている。気象庁の長期予報では今冬も寒くなるらしい。(ながつじ しょうへい)


(MSN産経ニュース)

確かに、2000年以降は「大西洋数十年規模振動が上昇期から下降期に転じるカーブの頂点だ」。

2016061205
図10-10 「Nature,484(2012)170」より

中村元隆も「二酸化炭素などによる温室効果を認めている」けれど、CO2の効果が大きいのなら「この高止まりは、大西洋数十年規模振動が上昇期から下降期に転じるカーブの頂点」であっても、気温は上昇し続けているはず。
にもかかわらず、「1998年以降の最近約15年間は、ほぼ横ばいに鈍化」しているのは、それこそがCO2の排出に因る温暖化であることを示している。
「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」のだ。

しかし、IPCC学派は尚も喚き立てている。


ニューヨーク、47年に気温の転換点-平均に戻らない見通し
2013年10月9日
ニューヨークの気温は上昇し2047年以降は過去約150年間の平均気温に戻らないとの見通しが9日、科学誌「ネイチャー」に掲載された研究論文「Nature,502(2013)183」で示された。
同研究によると、各年の平均気温が1860-2005年の平均を超える「クライメート・デパーチャー(気候離脱)」が起きるのはインドネシアのジャカルタとナイジェリアのラゴスで2029年、北京で46年、ロンドンで56年と予想される。
同研究は、温暖化で絶滅に追い込まれる種が出るほか、食物供給が危機に陥ったり病気がまん延したりする恐れがあるとして温暖化ガスの排出削減の緊急性を訴えている。50年までには50億人が極端な気候に見舞われ、移民や天然資源争奪が活発化し暴動や混乱のきっかけとなる可能性があるという。
ハワイ大学マノア校の地理学者で研究報告の主要執筆者であるカミロ・モラ氏は「結果は衝撃的だ。想定に関係なく変化は間もなく起きるだろう。私の世代に、これまでなじんできた気候が過去のものになりそうだ」との声明を発表した。
モラ氏は電話会議で記者団に「熱帯地域は世界の他地域に比べて15年早く前例のない気温上昇を経験する見通しだ。われわれはこの研究を開始した時には非常に保守的な見方をしていたが、こんなに早く変化の一部が起きる可能性があるのはかなり意外だった」と述べた。


(ブルームバーグ)

AMOのピークが2000年で、AMOの全球平均気温への寄与が0.2℃だと仮定しても、CO2の排出に因る気温上昇は10年当たり0.05℃だから、2030年まで気温は上がらない。
Geophys.Res.Lett,40(2013)5497」と「Climate Dynamics,42(2014)2763」も同じ結論である。
しかも、第5章の第2節で解説したとおり、21世紀半ばには太陽活動がマウンダー極小期並みに低下する恐れがある。
そうなると、気温は0.7℃下がり、20世紀始めの気候に戻る。
それこそ「食物供給が危機に陥り」、「移民や天然資源争奪が活発化し暴動や混乱のきっかけ」となり、世界は生き地獄と化すであろうが、CO2の排出に因る僅かな気温上昇はそれを緩和してくれるかもしれない。
にもかかわらず、あべこべに「温暖化で絶滅に追い込まれる種が出るほか、食物供給が危機に陥ったり病気がまん延したりする恐れがあるとして温暖化ガスの排出削減の緊急性を訴えている」のは、馬鹿馬鹿しいを通り越して、犯罪的である。

10.4 太平洋数十年規模振動

「この高止まりは、大西洋数十年規模振動が上昇期から下降期に転じるカーブの頂点だ」はIPCC学派に極めて不都合な真実。
そこで、「Nature,484(2012)228」が、エアロゾルが原因で海水温が下がったのをAMOと見なしているだけである、つまり、AMOと呼ばれているのはエアロゾルの結果にすぎない、と言い出した。
しかし、それが非科学的な強弁にすぎないことは、図10-2に関して解説したとおり。
しかも、エアロゾルが無ければ気温はもっと上がっていたのなら、そして、エアロゾルの冷却効果がAMOの原因なら、AMOの位相は今なお負のはずだが、「大西洋数十年規模振動が上昇期から下降期に転じるカーブの頂点」にある。

だから、さらに、ホッケー・スティック曲線のマイケル・マンがしゃしゃり出てきた。
図10-10は間違いであり、AMOはハイエイタスに寄与していない、と言い出したのだ。

2016061204
図10-11 「Geophys.Res.Lett.,41(2014)3211」より

「differenced」と記された線が正しいAMO、というのがこの論文の主旨だが、通常、論文の新しい知見は目立つ色で描くのに、わざわざ薄い灰色で描いて、目立たないようにしている。
このことだけを以ってしても、この論文の科学的信憑性は窺い知れようが、AMOが上図のようであれば、ハイエイタスをどう説明するのか?
そこで、さらに、このような論文を出してきた。

2015030202
図10-12 「Science,347(2015)988」より

AMOに対抗するため、PDOに代えて、これまで聞いたことも見たこともないPMO(太平洋数十年規模振動)なる代物を持ち出してきたのだが、図10-8に見えるとおり、2000年以降は自然変動の位相が正のはずだから、そして、図10-9に見えるとおり、太平洋に熱は貯まっていないのだから、たとえPMOであろうとも、ハイエイタスを説明できないことは明白である。
つまり、PMOはでっち上げである。
図10-10を否定しないかぎり、IPCCの崩壊は不可避。
そこで、またもや、マイケル・マンの御登場、と相成ったわけである。
IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説を正当化するためにホッケー・スティック曲線をでっち上げたマイケル・マンが、またしても不正に手を染めたのである。

当然のことだが、上図の論文には批判のコメント「Science,350(2015)1326b」が寄せられている。
それに対する回答「Science,350(2015)1326c」はほとんど居直りだが、内容よりも注目すべきは、その執筆者である。
言うまでもなく、「回答」は元論文の執筆者が反論するものだが、驚くべきことに、論文の執筆者ではない人物が反論に加わっている。
コメントを寄せた研究者達もさぞ驚いたであろう。
前代未聞である。

その前代未聞の人物も「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられているという説」を唱えていた。


温暖化の熱の一部は海中に潜んでいる?
Ben Jervey
for National Geographic News
February 12, 2014
地球温暖化に由来するエネルギーの大部分が、近年は太平洋の水面下に潜んでおり、いずれその熱が一気に放出されるおそれがあることが、最新の研究「Nature Climate Change,4(2014)222」によって指摘された。
研究によると、赤道付近を吹く貿易風は、過去20年間にわたって太平洋上で激しさを増しており、その結果、 海中に追い込まれる熱量が以前よりも多くなっているという。
2001年以降、地表の平均気温の上昇は以前よりも緩やかになっている。気候変動に懐疑的な陣営は、この「停滞」を根拠に、地球温暖化は収束したと主張している。この冬、アメリカを記録的寒波が襲っていることも、こうした主張の補足材料となっている。
だが地球温暖化が収束していないのは明らかだ。観測史上の年平均気温の上位10カ年は、いずれも1998年以降の年代が占めており、2010年が過去最高となっている。熱を閉じ込めてしまう温室効果ガスの濃度は、依然として上昇を続けている。にもかかわらず気温の上昇ペースが以前よりも落ち着いているのはなぜか、気象学者らは 研究を急いでいる。
研究の蓄積によって、数値に現れないでいる熱量の一部が、太平洋に潜んでいる可能性が浮かび上がった。
◆海中の熱の移動
今回の研究は、オーストラリア研究会議(ARC)気候システム科学センター(CoECSS)のマシュー・イングランド(Matthew England)氏がリーダーとなって行ったもの。研究チームは、観測データと詳細なコンピュータ ー・シミュレーションを用いて、地表の気温に対する貿易風の影響を明らかにした。赤道付近を西向きに吹く貿易風によって、温かい海水が押し流され、太平洋西部に溜まっているという。
1990年代以降、貿易風は激しさを増しており、一部地域では50%も加速している。この「強い貿易風によって、太平洋の赤道付近では、比較的低温の海水が海面近くまで上昇し、(従来よりも)多くの熱量が海中へと送り込まれている」と、研究の共著者である米国立大気研究センター(NCAR)のジェラルド・ミール(Gerald Meehl)氏は言う。
その結果、地球温暖化に由来する熱のうち、数値に現れていない部分は、太平洋西部の海中深くに蓄えられることになったとイングランド氏らは主張する。研究チームの試算によると、貿易風の激化によって、地表の平均気温は全世界で摂氏0.1~0.2度低下したという。「2001年以降に観測された地表の温暖化の中断の大部分を説明する」には十分な数値だと論文には書かれている。
「この20年ほどの(貿易)風の激化がなければ、おそらく最近の10年間には、かなりの気温上昇が観測されていただろう」とイングランド氏は言う。
下降したものはいずれ上昇する
貿易風が激化した原因のひとつは、「太平洋数十年規模振動(IPO)」という、エルニーニョ現象に似た自然な周期的気候変動であるとイングランド氏は言う。
ただし、ここまで風が強くなったのは観測史上先例がなく、その原因は十分には解明されていない。原因の特定が重要なのは、それが分かれば、貿易風が再び弱まる時期を予測できる可能性があるためだ。貿易風が弱まると、現在太平洋に蓄えられている熱の再放出につながるおそれがある。
熱を海底に送り込み続けることはできない。年々送り込んでいけば、いつかは熱が再び大気と接触し、気温を上昇させるのを目の当たりにすることになる」とイングランド氏は言う。
いずれ、中断などなかったかのように、気温は上昇するだろう。(中断が)終わるのが数年後のことか10年後のことかは分からないが、いずれにせよ私たちの研究では、その後の温暖化はかなり急激なものになると予測されている」とイングランド氏は言う。
地球温暖化の中断の原因を貿易風の激化によって説明した今回の論文は、「Nature Climate Change」誌オンライン版に2月9日付けで掲載された。


(ナショナルジオグラフィックニュース)

しかし、「PMO」ではなく「IPO」である。
日本語に訳せば、どちらも「太平洋数十年規模振動」だが、全くの別物であり、図10-6のPDOと本質的に同じ。

Box 2.5 fig 1
図10-13 IPCC第5次報告書第2章のBox2.5の図1(c)

21世紀はIPOの位相が負になったから、「下降したものはいずれ上昇する」と言い立てているのだが、1940年以降も「下降」し、80年以降は「上昇」に転じた。
だから、「下降したものはいずれ上昇する」ということは、第2節で解説したとおり、「停滞」以前の気温上昇の半分は「自然な周期的気候変動」に因る、ということである。
従って、「地球温暖化が収束した」と見える現象こそが「(CO2の排出に因る)地球温暖化」、という結論にならざるを得ない。
その意味では、確かに「地球温暖化が収束していないのは明らかだ」。
「この20年ほどの(貿易)風の激化がなければ、おそらく最近の10年間には、かなりの気温上昇が観測されていただろう」は全く馬鹿げている。

しかも、1940年以降も「下降」していたのだから、1940年以降の気温上昇停滞もIPO、または、PDOが原因のはず。


熱帯太平洋「冷や水効果」 海水温低下で0.3度抑制
18世紀後半の産業革命以降、地球の温暖化傾向が続いている中、熱帯太平洋の海水温の低下が一時的な「冷や水」となり、地球の温度上昇を0.3度程度、抑制する効果があったとする研究結果を、小坂優・東京大准教授(気候科学)らが英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス「Nature Geoscience,9(2016)669」に発表した。【渡辺諒】
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)によると、地球の平均気温は1880~2012年に0.85度上がったが、右肩上がりではなく、階段状に上昇と停滞を繰り返してきた。温度上昇が一時的に止まる現象は、英語で「停滞」を意味する「ハイエイタス(hiatus)」と呼ばれるが、原因は分かっていなかった。
研究チームは、熱帯太平洋の海水温に着目。過去120年間に、10~40年継続する海水温の低下時期が複数確認され、気温上昇の伸びが鈍るタイミングとほぼ一致した。
こうした「冷や水効果」がなければ、産業革命前から12年までの二酸化炭素(CO2)による気温上昇は1.2度と推定される。00年代以降は停滞期で、現在は転換期に入っているとみられる。
小坂准教授は「海水温の周期的な変動は、太平洋上の東風の強弱によって起こると考えられる。将来もハイエイタスは起こりうるが、CO2が増え続ける限り、温暖化は続く」と話す。

2016090802


(毎日新聞2016年8月23日 東京朝刊)

ところが、マシュー・イングランドは、1940年以降の気温上昇停滞はエアロゾルが原因、と言い張っている。


The latest generation of climate model simulations are used to investigate the occurrence of hiatus periods in global surface air temperature in the past and under two future warming scenarios. Hiatus periods are identified in three categories, (i) those due to volcanic eruptions, (ii) those associated with negative phases of the Interdecadal Pacific Oscillation (IPO) and (iii) those affected by anthropogenically released aerosols in the mid 20th Century. The likelihood of future hiatus periods is found to be sensitive to the rate of change of anthropogenic forcing. Under high rates of greenhouse gas emissions there is little chance of a hiatus decade occurring beyond 2030, even in the event of a large volcanic eruption. We further demonstrate that most non-volcanic hiatuses across CMIP5 models are associated with enhanced cooling in the equatorial Pacific linked to the transition to a negative IPO phase.


(「Geophys.Res.Lett.,41(2014)5978」のabstract)

だから、IPOからPMOに寝返った。
IPOとPDOでは1940年から1980年までの位相は負だが、PMOでは正。
「those affected by anthropogenically released aerosols in the mid 20th Century」のためには、PMOでなくてはならない、というわけである。
しかし、先に解説したとおり、太平洋に熱は貯まっていないのだから、PMOのイカサマは明白。
第1節で解説したとおり、「温室効果ガスが閉じ込める熱の量」を著しく過大評価し、「those affected by anthropogenically released aerosols in the mid 20th Century」と言い立てて辻褄を合わせ、それを正当化するために、PMOをでっち上げたのだ。

10.5 インド洋

それでも、IPCC学派は「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられているという説」を諦めない。
その説が誤っていれば、つまり、「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」ことが露呈すれば、IPCCは終わりだから。
そのためには図10-9が目障り。
そこで、このようなことを言い出した。


インド洋は太平洋が冷えるのと同時に温められている
Nature Geoscience,8(2015)445
2015年5月19日
Indian Ocean heats up as the Pacific cools
1998年以降、地表の温暖化が減速した時期に太平洋に流入した熱の余剰分はインド洋に輸送されたという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この発見は、過去15年ほどの期間に太平洋で熱の吸収が強化されたが、そこで観測された熱の蓄積は減少しているという報告と矛盾しない。
大気最上層の観測は地球が継続して温暖化していることを示唆しているにも関わらず、全球の平均地表温度は1998年以降ほとんど一定値を保っている。この熱の多くは太平洋に流入していると考えられているが、実際の観測結果は太平洋の熱容量の減少を示している。
Sang-Ki Leeたちは、全球海洋-氷モデル・シミュレーションとともに観測データを解析し、太平洋の熱吸収の増加は、インドネシア多島海を通るインド洋への熱輸送の増加によって埋め合わされていることを見つけた。
インド洋での熱の増加は、全球海洋上層700mでの熱容量の70%に相当する。著者たちは、もし輸送が継続するならば、インド洋での熱の蓄積は、20世紀中頃からすでに十分加熱されている大西洋に反映されると示唆している。
関連する News&Views で Jerome Vialard は「過去10年間にわたりインド洋に蓄積された熱が、中断期が終わった後の急速な温暖化に寄与するかどうかは、(継続した)観測によってのみ分かるだろう」と書いている。


(natureasia.com)

しかし、なぜ、どのようにして、「太平洋に流入した熱の余剰分はインド洋に輸送された」のか?
それは前節で採り上げたマシュー・イングランドの論文と密接に関係している。
「赤道付近を吹く貿易風は、過去20年間にわたって太平洋上で激しさを増しており」、「赤道付近を西向きに吹く貿易風によって、温かい海水が押し流され」て、「インドネシア多島海を通るインド洋への熱輸送の増加によって埋め合わされている」と言うのである。
けれど、「地球温暖化に由来する熱のうち、数値に現れていない部分は、太平洋西部の表層に蓄えられることになった」のなら、その理屈が成り立つ可能性もあるが、「太平洋西部の海中深くに蓄えられることになったとイングランド氏らは主張する」のだ。
「海中深くに蓄えられ」た熱が、風で「押し流されて」、インド洋に運ばれるだろうか?
あり得ないだろう。
「太平洋西部の海中深くに蓄えられることになった」熱が拡散するとしても、インド洋だけに流れていく理由は無い。
過半は太平洋自体に拡散しているはず。
第1節で採り上げた「Science,349(2015)532」は「cooling in the top 100-meter layer of the Pacific Ocean was mainly compensated for by warming in the 100- to 300-meter layer of the Indian and Pacific Oceans」と書いている。
だから、やはり、太平洋に熱が溜まっているはずだが、「そこで観測された熱の蓄積は減少している」。
それとも、インド洋が冷えていたので、インド洋に流れたと言うのだろうか?
しかし、第1節で引用した「地球温暖化の熱、海の吸収量が急加速」という見出しの記事に見える「地球表面の3分の2を覆う海洋は、人為的な温室効果ガスによって生成される過剰な熱の90%以上を吸収してきた」は太平洋に限らない。
図10-3に関して解説したけれど、「過剰な熱の90%以上を吸収してきた」のは、CO2が増加して気温が上がり、大気からの下向き赤外放射が増加するからであり、従って、太平洋だけでなく、インド洋も熱を吸収してきたはず。
にもかかわらず、インド洋が冷えていたのなら、やはり、「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」のだ。

10.6 20年間の気温上昇停滞

ハイエイタスの言い逃れには「海が多くの熱を吸収した結果、予想よりも気温が低く抑えられているという説、アジアでの大気汚染や雲が太陽光を遮っているという説」以外にも、第2節で引用した「太平洋の海面水温が低下 温暖化のペース鈍らす」という見出しの記事に見えるとおり、「水蒸気の量の変化、火山の噴煙」という説もある。
前者に関しては「Science,327(2010)1219」が、成層圏の水蒸気減少が原因、と言い立てていた。
第7章図7-2を見ると、確かに、成層圏の水蒸気に放射強制力が設定されている。
人間の経済活動が大気中の水蒸気を増やすことはなく、CO2の排出が原因で気温が上がり、その結果として水蒸気が増す、というのがIPCCの見解であり、だからこそ、対流圏の水蒸気には放射強制力が設定されていないのに、成層圏の水蒸気に放射強制力が設定されているのは摩訶不思議だが、成層圏の水蒸気の放射強制力はCO2の放射強制力よりもずっと弱いから、成層圏の水蒸気が減ったとしても、CO2の増加に因る気温上昇を相殺できるはずがない。
にもかかわらず、成層圏の水蒸気が「ハイエイタス」の原因と言うのは、「温室効果ガスが閉じ込める熱の量が想定よりも少ない」と認めたに等しい。

後者に関しては、「Science,333(2011)866」、及び、「Geophys.Res.Lett.,40(2013)999」があったが、さらに、このような論文が出ている。


火山噴火、人為的温暖化の「減速」に一部貢献か 研究
2014年2月24日 15:44 発信地:パリ/フランス
太陽光を反射する微粒子を大気中に放出する火山は人為的な炭酸ガス排出の影響を部分的に相殺してきた──そのように結論付ける研究論文が、23日の英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に発表された。特に過去15年間については、地球温暖化をめぐって常に議論の的となってきた。
これまでで最も暖かい年の上位14年のうち13年が、今世紀に入って発生していることからもわかるとおり、気温は容赦なく上昇している。しかし、その一方で、上昇速度が人為的な温室効果ガスの増加速度をはるかに下回っているのも事実だ。
予想される気温と現実の気温との間にこうした差がみられることを、懐疑論者らは人為的な地球温暖化が「緑の恐怖」や疑似科学である証拠として持ち出している。
気候変動懐疑論者らは、1998年以降の温暖化のいわゆる「休止」状態を根拠にして、主流の科学者らに異論を唱えている。
だが今回の研究によると、温暖化の減速と思われる現象の一部を「火山噴火」で説明できるという。
米ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)などの研究チームは衛星データを用いて、2000年以降に発生した火山噴火20回近くの影響と地表温度との間の関連性を発見した。
■微粒子の「エアロゾル」効果
研究チームによると、火山から噴出される霧状の硫黄が太陽光を反射するため、下層大気の温度がわずかに下がるのだという。
研究チームの数字によると、1998年~2012年の期間の予想される気温と測定された気温との差の15%に相当する部分は、この微粒子の「エアロゾル」効果で説明できるという。
論文の共同執筆者で、同研究所のベン・サンター(Ben Santer)氏は、AFPの電子メール取材に「1998年以降の『温暖化の休止』には多くのさまざまな原因がある」と語る。
「21世紀初めの火山噴火に起因する気温低下も、この原因の1つだ」
温暖化「休止」現象のその他の説明としては、海洋による大気熱の吸収量が予想より大きかったことや、太陽活動の低下などが挙げられている。
大型噴火、特に1991年のフィリピン・ピナツボ山(Mount Pinatubo)の噴火は、気温低下に関して認識可能な影響を地表に及ぼしたことが知られている。
だが温暖化の「休止」をめぐる論争の中で、火山がこれまで注目されなかった主な理由は、議論の的になっている「休止」現象が1998年に始まって以降、大規模な噴火は一度も発生しておらず、影響の測定が困難なレベルの小規模な噴火しか発生していないことだった。
■モデルの改善が必要
論文は、気候変動のコンピューターモデルが不完全なままの状態にあるのは、この「差」が原因だと示唆する。
論文は「火山性エアロゾルの噴火に特化した特性を対象とした観測の改善とともに、気候モデルシミュレーションにおけるこれらの特性の表現の改善が必要」としている。
地球温暖化の懐疑論者らは、モデルに欠陥があることの証拠としてこの「休止」を挙げる。こうした「欠陥」モデルが、温暖化を予測するため、ひいては気候変動に対処する政策を推し進めるのに重要な役割を担う目的で用いられているというのだ。
またこれらのモデルが、化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素(CO2)による温暖化効果を誇張していると、懐疑論者らは強く主張している。
今回の最新の研究結果は、このような主張を「支持しない」とサンター氏は言う。
同氏は「これまでは幸運なことに、自然的な気温低下の影響(21世紀の火山活動の上昇)は、人為的な温暖化の影響を部分的に弱めてきた」と説明。また火山活動が今後数十年にわたってどのようになるかは分からない。われわれの幸運もどの程度続くか分からない」と続けた。


(AFP)

ところが、実のところ、「今回の最新の研究結果は、このような主張を『支持している』」のだ。
この論文は、人工衛星で観測された気温から火山噴火の影響とENSO(エルニーニョ・南方振動)の影響を取り除き、純粋に「人為的な温暖化の影響」として下図を示している。

2016010702
図10-14 「Nature Geoscience,7(2014)185」より

(10-1)式と同様に計算すれば、1993年(CO2濃度は357.07ppm)から2012年(CO2濃度は393.81ppm)までの20年間の気温上昇は0.42℃。

(10-2)    \displaystyle 3 \, \frac{\ln \left( 393.81 / \, 357.07 \right)}{\ln \left( 2 \right)} = 0.42

もちろん、この値に火山噴火とENSOの影響は含まれていないから、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説が正しければ、上図の赤線(または青線)は1993年以降に0.4℃上がっているはず。
ところが、1993年以降に有意な気温上昇は認められない。
「気候変動懐疑論者らは、1998年以降の温暖化のいわゆる『休止』状態を根拠にして、主流の科学者らに異論を唱えている」けれど、実のところ、CO2の排出に因るはずの気温上昇は1990年代の前半からほとんど進んでいなかった。

この事実は成層圏の気温にも表れている。
IPCCに依れば、CO2が増すと、対流圏とは逆に成層圏の気温は下がる。
ところが、第4章図4-3に見えるとおり、1990年代の前半から下げ止まっている。
火山噴火の影響は、やはり、対流圏と成層圏では正反対で、対流圏では気温が下がるのに対し、成層圏では気温が上がる。
1992年前後に成層圏の気温が一気に上がっているのはピナツボ火山噴火の影響だから、上図と同様に火山噴火の影響を取り除けば、成層圏の気温は1993年から下げ止まっているはず。
前章図9-10に見えるとおり、80年代、90年代の成層圏の気温低下にはオゾンホールの影響もあるが、逆に言えば、オゾンホールは対流圏の気温を上げる効果がある、ということである。)

さらに、その後の研究でも裏づけられている。
地表面からの上向き赤外放射(surface upwelling longwave radiation)と大気の上端から宇宙に出て行く赤外放射(TOA outgoing longwave radiation) の差(Ga)は「化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素(CO2)による温暖化効果」の指標になるが、下図に見えるとおり、その偏差(Gaa)も1990年代前半からほとんど変わらない。

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図10-15 「Scientific Reports,6(2016)33315」より

さらに、CO2濃度の増加率からも裏づけられた。


【気候科学】大気中二酸化炭素濃度の上昇傾向の加速に歯止め?
Nature Communications,7(2016)13428
2016年11月9日
人間活動による二酸化炭素(CO2)排出量が増加しているにもかかわらず、最近になって大気中CO2濃度の上昇率の増加傾向が止まっているという見解を示した論文が、今週掲載される。この新知見は、陸上の植生による炭素吸収量が増加して、大気中に残留する人間活動によるCO2排出量の割合が小さくなったことを示唆している。
大気中CO2濃度の絶対値は、産業革命以降、上昇を続けているが、その上昇率には有意な年々変動が認められ、主な原因として植物の成長が年によってばらつくことが挙げられる。CO2は気候変動を促進する役割を果たすため、大気中CO2濃度の上昇率の変化を定量化することは非常に重要だ。ところが、植物の成長は、さまざまな過程(特にCO2の吸収量と放出量の収支)によって制御されるため、大気中CO2濃度上昇率の変化を評価するのは難しい。
今回、Trevor Keenan の研究グループは、各種観測データと植生モデルを用いて、こうしたさまざまな駆動要因の収支を求めた。そして Keenan たちは、大気中CO2濃度の上昇によって光合成(CO2吸収過程の1つ)が増えたが、全球気温の上昇傾向が鈍化したために呼吸(CO2放出過程の1つ)が減ったことを明らかにした。この2つの要因は、植物によるCO2吸収量が増え、人為的に排出され大気中に残留するCO2の占める割合が2002年から2014年の間に年約2.2%のペースで減ったことを意味している。
Keenan たちは、大気中CO2濃度の上昇率の増加傾向が止まっているのは一時的なことである可能性があり、CO2濃度の絶対値の増加が続いていることを踏まえると、植物による炭素貯蔵を増やすことで気候変動の問題は解決しない、と警告している。


(natureasia)

「大気中二酸化炭素濃度の上昇傾向の加速」は下図である。

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図10-16 「Nature Communications,7(2016)13428」より

1990年代前半の大きな落ち込みはピナツボ火山の噴火が原因だから、それを除けば1990年代前半から上がっていない。
実際、赤い実線を1992年まで伸ばせば、青線と同じ高さになる。

全く独立した4つのデータ、しかも、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説の根幹に関わるデータによって、1990年代前半からの気温上昇停滞が裏づけられたのである。[注3]
第8章の第4節で紹介したとおり、「スイスのアルプス山脈の高峰、ユングフラウで10日、気温が11月としては観測史上最高の7.2度を記録した・・・同観測所で1992年に測定された従来の最高記録の4.7度は、あっけなく破られた」けれど、1993年以降はCO2の排出に因る温暖化が進んでいないのだから、それは、一つには自然現象であり、一つには大気汚染(と微生物)が原因である。

「特に過去15年間については、地球温暖化をめぐって常に議論の的となってきた」けれど、実は、気温上昇は20年間も停滞していたのだ。
第1節で紹介したとおり、IPCC学派は、気温上昇が17年間停滞しない限り、IPCCの人為的温暖化説(=気候モデル)は破綻していない、と言い立てていたけれど、既に17年間を超えて20年間も停滞していたのである。
因みに、その論文の筆頭著者は、誰あろう、ベン・サンター。
「これらのモデルが、化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素(CO2)による温暖化効果を誇張している」ことはもはや隠しようもない。

[注1] 下向き赤外放射が正確に測定できるようになったのは1993年以降だが、1980年から観測されていた。
1993年以前のデータを補正して、1980年からの下向き赤外放射を再現したのが下図である。

fig 01-05図10-17 「高層気象台彙報 第69号」の「館野における下向き長波長放射の長期変化の特徴と気温や温室効果ガスの寄与について」より

1980年以降、CO2が増加したにもかかわらず、1980年前後と2000年以降の下向き赤外放射量に差はほとんど無い。
これが事実なら、IPCCの人為的温暖化説は根本的に間違っている。

[注2] この論文に依れば「The net warming of the ocean implies an energy imbalance for the Earth of 0.64 ± 0.44 W/(m^2)」だが、別の論文を見ると、

2016061402
図10-18 「Nature Geoscience,5(2012)691」より

「Surface imbalance」は0.6±17で、正か負かさえ不明。
「Surface imbalance」が負なら、大気からの下向き赤外放射が増して海に熱が貯まったのではなく、海に熱が貯まったのは自然現象、ということになってしまう。
J.Climate,25(2012)6123」に依れば、1984年から2006年までの海水温上昇は自然変動であるが、それが事実なら、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説は完全に破綻している。

[注3] 下図の「t0」は地中海沿岸に生育する「Quercus ilex」の成長が始まる日(元日からの日数)の変化を示している。

2017020601
図10-19 「Global Change Biology,23(2017)42」より

温暖化と共に「t0」は早まっていく。
実際、1960年代から早くなり続けてきた。
しかし、1990年代の前半から止まっている。
破線と斜線で強調して、21世紀に入ってから止まったかのように見せかけているけれど、むしろ、1990年代後半よりも遅くなっているから、1990年代の前半から止まっていることは明らかである。

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