江守正多の全く不都合な真実

15.1 「97%」の不都合な真実

これまでの解説でIPCCのデタラメさが余す所無く示されたと思うが、IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者に唯一人の日本人として名を連ねている江守正多はこのように喚き立てている。


科学者の合意も想像してみてほしい
ところで、この記事に何度も出てきた Nature Climate Change という雑誌は、Nature の系列紙である。厳密にいえば学術誌ではなく科学雑誌であるが、そこらの学術誌よりもよほど厳しい論文審査がある。
科学にまったく興味が無い方でも、Nature という雑誌は聞いたことがあるだろう。小保方さんのSTAP論文が掲載され、後に取り下げられることになった権威ある雑誌が、その Nature だからだ。Nature に載った論文に不正が一つでもあればどんな大騒ぎになるかは、みなさんご覧になってよくご存じのとおりだ。
その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる。
もちろん、世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう。
審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある。残りの3%のうちのある割合は、既に述べた組織的な懐疑論・否定論活動に影響されているはずだ。
テレビの討論番組や公開討論会で、「温暖化論者」と「懐疑論者」を同数呼んで議論させるものがあるが(筆者も何度か経験した)、これだと「懐疑論者」側の声が実態よりもずっと大きく聞こえることになる。「温暖化論者」と「懐疑論者」を97対3の割合で呼んで議論したらどういう光景になるかは、こちらをご覧頂きたい。
もちろん、科学は多数決ではない。しかし、97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい。


(「【COP21閉幕】温暖化への対処をみんなで議論する時代へ 異論を唱えるにも「懐疑論」は不要」より)

「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある」は、これを指しているのだろう。


We analyze the evolution of the scientific consensus on anthropogenic global warming (AGW) in the peer-reviewed scientific literature, examining 11944 climate abstracts from 1991-2011 matching the topics ‘global climate change’ or ‘global warming’. We find that 66.4% of abstracts expressed no position on AGW, 32.6% endorsed AGW, 0.7% rejected AGW and 0.3% were uncertain about the cause of global warming. Among abstracts expressing a position on AGW, 97.1% endorsed the consensus position that humans are causing global warming. In a second phase of this study, we invited authors to rate their own papers. Compared to abstract ratings, a smaller percentage of self-rated papers expressed no position on AGW (35.5%). Among self-rated papers expressing a position on AGW, 97.2% endorsed the consensus. For both abstract ratings and authors’ self-ratings, the percentage of endorsements among papers expressing a position on AGW marginally increased over time. Our analysis indicates that the number of papers rejecting the consensus on AGW is a vanishingly small proportion of the published research.


(「Environ.Res.Lett.,8(2013)024024」の「abstract」)

しかし、33%の97%だから、実際は1/3にすぎない。
我国の研究者を調べた結果も同じ。


「暑い理由」CO2派は7割
「地球温暖化」気象学者の本音
編集部 小田光康 ライター 奥山暁子
日本の気象学者は、地球温暖化の主な原因をどう見ているのだろうか。アエラでは、日本気象学会に所属する研究者らを中心に、アンケートをした。
「最近の地球表面の気温上昇を指す『地球温暖化』の主な原因が、二酸化炭素などの温室効果ガスにある」との学説に対して、強く賛成する「1」から、強く反対する「5」までの5段階評価をしてもらった。約100人の専門家に送り、半数近い46人から回答が寄せられた。
結果は、賛成にあたる「1」と「2」を合わせると33人で、約7割が温室効果ガス主因説を支持。反対にあたる「4」「5」は4人で1割弱だった。中間の「3」に「その他」を合計すると9人で、約2割だ。
この結果からも、日本の気象学者はおおむね、地球温暖化の温室効果ガス主因説を支持していると考えられる。
だが、いみじくもIPCCの第4次報告書が地球温暖化と温室効果ガスの因果関係を「very likely」(可能性がかなり高い)と表現したように、コンセンサスは決定論的に位置づけられず、議論の余地があることは確かだ。
にもかかわらず、肝心のその議論が盛り上がっているようには見えない。これは記者を含めた多くの素人にとって、不思議なことではないか--

2012091901


(AERA 2012年9月24日号)

記事は「7割」と言い立てているけれど、100人中33人、つまり、1/3。
ほとんどの気候学者の本音は以下のとおり。


前章で地球温暖化問題の概要を述べたが、こういった状況に対し、気候や気象を専門としている科学者・研究者はどのような見解を持っているのだろうか。国立研究機関所属のAとB(共にプロジェクト研究員であり、気候学と気象学を専門としている)は以下のように答えている。

A:「本当に地球は温暖化するのか?」と聞かれて、我々としては「さあ…」とか「実際なってみなけりゃ分からない」というのが正直なところだ。
B: しかしそれでは困る、暖かくなってもらわないと困るという人がたくさんいると思う。

・・・中略・・・

それほど地球温暖化に関する科学的な見解は曖昧であるにもかかわらず、「温暖化するのは確実」という風潮になっているのは何故でしょう。

A: そう言ったほうがおもしろいからだと思う。情報を利用する側の問題。
A:日本ではよく使われる、世界中の温度が将来どうなるかを示す真っ赤になるシミュレーションの結果があるが、あれはIPCCのモデルの中で一番上のものを使用している。少なくとも、全部のモデルを平均したらあのような結果にはならない。ああいう演出にすると、世間がそちらの方向を向きやすい。

・・・中略・・・

科学と社会が繋がり科学が少し変質したというのはつまり、科学データが社会的に利用されることになり、事実だけを淡々と求めるはずの科学や科学者の姿勢が揺らいでいるということであろうか。その疑問に答えるのが、AとBの次の発言である。

A:IPCCはもともと政治的な意味合いの強い存在だったので、「あまり自分たちとは関係ないな」と思っていた。

・・・中略・・・

(クライメートゲート)事件が日本であまり報道されなかったことについては。

A: 言っても分からないからだろう。アメリカなど懐疑論派ががんばっている国だと、議員が言って話が大きくなったりしたが、日本の国会議員には温暖化懐疑派がいない。それが大きな原因では。
B: あまり興味がないのか、詳しいところが分からないからか。世の中の関心度がよそとは違ったのが大きいのでは。

・・・中略・・・

では、同じような構造で温暖化も色んな異常現象の原因にされている?

A: そういう面もあると思う。たとえば雨の降り方で言うと、長いスパンで見ると実は正常な範囲内に収まるし、100年間の記録を見てみるとそれぐらい降ったこともある。また今年の9月、統計を取り始めて以来もっとも暑かったのは事実だが、その原因がどこにあるかというのは議論の余地がある。温暖化か、海の影響か、色々絡み合った末の自然現象か…。
B:長いスパンで考えると、自然変動の幅が地球温暖化による変動、いわゆるトレンドよりもはるかに大きいので、断定できない。今年の夏も、暑かったのは間違いないが、もともと気温はそういう動きをしているものである。
A:「温暖化の影響ですかねえ?」とぼかして言っても、温暖化という言葉を出すだけで皆は関係あるのかなと思ってしまう。

・・・中略・・・

本来科学は真理を探究するものだと思いますが、そのように政治や産業界に影響されるのが現状ということでしょうか。

A: 出資してくれる人の都合もあるし、その人たちの都合の良い方向に研究を進めていかなければならない。
A: 自然現象としておもしろいから研究したいけど、少し余分に色を付けて、「こういうふうにすると環境問題的な視点から社会に貢献できる」というような書き方をすることは皆やっている。
B: そうしないと、国民の税金から支払ってもらっている以上研究費が出ない。


(「同志社社会学研究 No.15、2011、57」より)

実は、「97%」という数字が初めて表れたのはコチラ。


An invitation to participate in the survey was sent to 10,257 Earth scientists.
・・・中略・・・
1. When compared with pre-1800s levels, do you think that mean global temperatures have generally risen, fallen, or remained relatively constant?
2. Do you think human activity is a significant contributing factor in changing mean global temperatures?
・・・中略・・・
Of these specialists, 96.2% (76 of 79) answered “risen” to question 1 and 97.4% (75 of 77) answered yes to question 2.


(「EOS 90(2009)22」より)

10257人の「Earth scientists」のうち、回答したのは80人にも満たず、そのうちの97%が「合意」したにすぎない。
実は1%の合意も無いのだ。

しかし、たとえ「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した」を真に受けても、それらは気候モデルを用いた論文。
世界中の大学・研究所がそれぞれに気候モデルを開発しているけれど、それらの基本部分は同一であり、プログラミングコードまで同一だから、気候モデルを用いた論文が同じ結論(CO2を排出したから気温が上がった)になるのは当たり前。
基本的に同じことをしているだけの、同じ結論になることが始めから分かりきっている論文は、何本あろうとも、まとめて「1つ」として数えるべき。
100の論文のうち、97が気候モデルを使っていても、それらの論文の一つ一つは「1」ではなく「97分の1」にすぎないのだ。
従って、「97%」ではなく、全く逆に、「審査を経て出版された学術論文の1/31=1-0.97=3%が温暖化の科学に合意した」にすぎない。

「97%は温暖化の科学に合意した」論文には、気候モデルを用いた論文以外に、気候モデルの結果に依存した論文もある。
例えば、第9章の第1節で引用した「南極海に吹く風、過去1000年で最も強く 豪研究」という見出しの記事が採り上げている論文。
「我々の観測結果と気候モデルとを照らし合わせると、温室効果ガスの上昇との関連性があることは明白だ」と言い張っていたけれど、その論文で得られた知見、すなわち、図9-1からは、そのような結論は導けない。
気候モデルに迎合しているだけ。
江守正多は「もちろん、科学は多数決ではない」と抗弁しているけれど、「多数」に迎合しているだけ。
そのような論文を盾にして、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容である」と言い立てようとも、科学的に意味は無い。
同じ結論になることが始めから分かりきっている論文、それに迎合する論文が97%を占めているとしても、それは「談合」であり「合意」ではない。

第10章の第1節で解説したとおり、1998年以降、気温上昇は進んでいない。
2012年の時点で停滞は既に15年間に及んでいた。
NOAAの報告書「State of the Climate in 2008」は、気温上昇が15年間停滞していれば気候モデルは95%破綻している、と認めていたが、ドイツの Hans von Storch に依れば、95%ではなく98%。


At my institute, we analyzed how often such a 15-year stagnation in global warming occurred in the simulations. The answer was: in under 2 percent of all the times we ran the simulation. In other words, over 98 percent of forecasts show CO2 emissions as high as we have had in recent years leading to more of a temperature increase.


(「Why Is Global Warming Stagnating?」より)

「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚き立てているけれど、98%の確率で破綻しているにもかかわらず、「97%は温暖化の科学に合意」と言い張るのは「茶番」も「茶番」、臍で茶を沸かすとはこのことであろう。
しかし、温暖化の科学に合意」は「談合」だと理解すれば納得できる。

15.2 ホッケー・スティック

第12章図12-1に見えるとおり、IPCCの拠り所はホッケー・スティック曲線。
江守正多は、その図が掲載されているIPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者だから、このように言い張っている。


「過去の自然の気候変動を無視している」
温暖化の研究は過去(たとえば数100年~数10万年)に起こった自然の気候変動を無視していると思われていることがあるが、それも誤解である。過去の気候変動に関する知見は、将来の温暖化を考える上で明らかに重要と認識されており、さかんに研究されている。例えば、気候モデルを用いて過去1000年の気候変動を再現する研究が世界中で行われている。過去の気候についてのデータには不確実性が大きいが、数100年スケールの変動は太陽活動の変動と火山噴火で概ね説明できる一方で、20世紀の温暖化は人間活動の影響を入れないと説明できない。したがって、現在の温暖化が過去の自然変動の延長ではないか、という素朴な問に対しては、根拠を持って否ということができる。
間違っている可能性は無いのか
これらの誤解について読者に正しく認識してもらった上で、現時点の温暖化の科学が間違っている可能性について考えてみたい。先ほど述べたように、現時点で知られている気候変化の外部要因に関する知見と、気候モデル(これは気候システムに関する知見の結晶と見ることもできる)に基づけば、20世紀の世界平均気温上昇は人間活動による温室効果ガスの増加により説明でき、かつそれを抜きにしては説明できない。それにもかかわらず温暖化の科学が間違っているとしたら、どんな可能性が考えられるだろうか。
例えば、実は「未知のプロセス」があって、このまま温室効果ガスが増えても、気温を抑制するフィードバックが働き、気温はほとんど上がらないかもしれない。その場合、「未知のプロセス」抜きの気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現されてしまうのはなぜか。それはたまたまかもしれない。20世紀も温室効果ガスの増加によって気温が上昇したのではなく、「未知の外部要因」のせいで上昇したのかもしれない。
このような批判的な考察は、科学を進める上で時として非常に有用であろう。未知の要素を2つ以上導入すれば、温暖化の科学が間違っている可能性を考えることができることはわかった。では、果たしてそんなことはありえるだろうか。筆者なりに答えるならば、その可能性がゼロであるとは原理的にいえない。しかし、現時点で、その可能性を真剣に考えなければならない証拠を温暖化の科学は突きつけられていない。


(「いまさら温暖化論争? 温暖化はウソだと思っている方へ」より)

しかし、第12章図12-3に見えるとおり、20世紀前半の気温上昇は20世紀後半と同じほど速かったから、そして、CO2の排出は20世紀後半に激増したから、CO2の増加で20世紀前半の全球平均気温上昇を説明できない。
前節で見たとおり、「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚き立てていたけれど、「20世紀の世界平均気温上昇は人間活動による温室効果ガスの増加により説明でき」ないにもかかわらず、「気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現され」ないにもかかわらず、「20世紀の世界平均気温上昇は人間活動による温室効果ガスの増加により説明でき、かつそれを抜きにしては説明できない」、「『未知のプロセス』抜きの気候シミュレーションで20世紀の気温上昇が再現されてしまうのはなぜか」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。

だから、こんなことも書いている。


木の年輪等を用いた北半球の過去の気温変動の復元研究(それはいわゆる「ホッケースティック」だから信じないという方は、こちらを)によれば、マウンダー極小期前後の「小氷期」の気温低下は1℃未満である。テムズ川の周辺では自然変動等の別の要因も重なってもっと寒かったかもしれないが、北半球平均ではこの程度ということだ。しかも、このすべてが太陽活動の効果でなく、火山噴火も寒冷化要因として効いていたと考えられる。
マウンダー極小期の寒冷化効果は0.1~0.3℃という研究もあるが、仮に最大限大きく見積もって、小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせいだったとしても、温室効果ガスの増加により今世紀中に予想される世界平均気温上昇(2℃~4℃程度)より小さい。つまり、太陽活動の弱まりが温暖化を一部打ち消すことはあっても、すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらすとは考えにくい。


(「それでも寒冷化が正しいと思っている方へ 世界でも撤退が目立つ温暖化科学への懐疑論」より)

しかし、第5章の第3節で解説したとおり、「マウンダー極小期の寒冷化効果は0.1~0.3℃という研究」を「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。
第5章の第4節で解説したとおり、「火山噴火も寒冷化要因として効いていた」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。
第5章図5-9に見えるとおり、イングランドにはマウンダー極小期からの寒暖計の記録が残っていて、マウンダー極小期の気温低下は1.5℃と分かるにもかかわらず、「もっと寒かったかもしれない」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。

「小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせいだったとしても」と抗弁しているけれど、ということは、太陽活動の変動が気候に及ぼす影響を軽視する気候モデルはCO2の影響を過大評価しているということだから、「温室効果ガスの増加により今世紀中に予想される世界平均気温上昇(2℃~4℃程度)」はあり得ず、「太陽活動の弱まりが温暖化を一部打ち消すことはあっても、すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらすとは考えにくい」とは「考えにくい」。
第5章で解説したとおり、「小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせい」なら、少なくとも20世紀前半の気温上昇は太陽活動の活発化が原因であり、従って、CO2の排出に因る気温上昇は過大に評価しても0.4℃。
太陽活動がマウンダー極小期並みに低下すると、CO2濃度倍増に因る気温上昇を「すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらす」、そして、20世紀中頃の気候に戻ってしまう。
「小氷期の1℃の寒冷化がすべて太陽活動のせいだったとしても」と言いながら、「太陽活動の弱まりが温暖化を一部打ち消すことはあっても、すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらすとは考えにくい」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。

IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者が「現時点で、その可能性を真剣に考えなければならない証拠を温暖化の科学は突きつけられていない」と言い張るのは、そして、「太陽活動の弱まりが温暖化を一部打ち消すことはあっても、すべて打ち消して正味で寒冷化をもたらすとは考えにくい」のは、ホッケー・スティック曲線が「相当に何か」であり、ホッケー・スティック曲線に基づくIPCCの人為的(排出CO2)温暖化説が「相当に何か」であることを、従って、IPCC第5次報告書に基づいた「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番である」ことを、物の見事に露呈したと言えよう。

15.3 クライメートゲート

第5章の[注7]で紹介したとおり、「クライメートゲート事件」で流出したメールの中で、フィル・ジョーンズは「MMのその他の論文はまったくクズだ……こういう論文はIPCCの次の報告書ではあるわけない、査読付き論文の定義を変えなければならなくても、ああいうのは追い出してやる」と息巻いていた。

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図15-1 フィル・ジョーンズ(「Nature,468(2010)362」より)

それは、ホッケー・スティック曲線が科学的批判を浴び、従って、ホッケー・スティック曲線を拠り所にするIPCCの人為的(排出CO2)温暖化説が科学的批判を浴びたからに他ならない。
そうではないと言うのなら、しかも、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容である」と言い立てるのなら、「査読付き論文の定義を変えなければならなくても」と言い放ったフィル・ジョーンズを糾弾すべきであろう。
ところが、あべこべに、このように喚き立てている。


「クライメートゲート事件」の背後にあるもの
さて、ではそんなに自信があるなら、なぜ研究者たちはデータの改ざんや公開拒否などを行ったのだろうか、と思うかもしれない。いわゆる「クライメートゲート事件」(イーストアングリア大学メール流出事件)の件である。実は、筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない。この事件の後、英国政府および大学の委託による3つの独立調査委員会が調査を行ったが、どの委員会の報告書も、科学的な不正は無かったと結論している(クライメートゲート事件を「データねつ造」として紹介する論者が、この重要な事実にほとんど触れない傾向があるのは興味深い)。
温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化懐疑論・否定論活動の存在である(たとえば、『世界を騙しつづける科学者たち』(楽工社)を参照)。身も蓋もなくいえば、気候変動政策を妨害するために、その基礎となる科学に対する不信感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている言論活動があるということだ。
たとえば、映画『不都合な真実』でも紹介された「クーニー事件」では、石油業界のロビイスト出身者がブッシュ政権に雇われて温暖化の科学に関する政府の文書を書き換えていたとされる。「クライメートゲート事件」をスキャンダルとして騒ぐのであれば、「クーニー事件」についてももっと騒がないのはおかしい(しかも「クライメートゲート事件」の方は実際には不正は無かったのだから)。「クライメートゲート事件」で流出したメールの中で、気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるように見えるのも、もとはといえば彼らが常日頃からこのような妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある。日本国内ではこのような組織的な活動の存在を筆者は知らないが、影響は国内にも大きく波及している。ネット等で出回る欧米発の温暖化懐疑論の多くはこのような組織的な活動に由来する可能性が高いが、これらをせっせと「勉強」して国内に紹介してくださる「解説者」が少なくないからだ。
本当は、このことを指摘するのはあまり気が進まなかった。傍から見れば「お前はインチキだ。」「いや、そっちこそインチキだ。」という泥仕合になってしまうからである。そして、この状況こそが、組織的な懐疑論・否定論活動の思うつぼなのである。彼らは科学的な議論に勝つ必要は無く、この問題が論争状態にあると人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ。これが、最初の方で述べた、筆者が「常識者」対「反常識者」の論争の構図を好まない理由である。温暖化の科学の真偽をめぐって科学的な議論を深掘りすることはもちろん重要だが、それが結果的に一部の政治勢力の片棒を担いでしまう可能性については、十分に自覚的でありたい。


(「いまさら温暖化論争? 温暖化はウソだと思っている方へ」より)

第5章の[注7]で解説したとおり、マイケル・マンのホッケー・スティック論文「Nature,392(1998)779」の不正は科学的に立証されている。
(日本語の詳しい解説では「現代化学,466(2010)58」を参照。)
第1節で見たとおり、「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚き立てていたけれど、「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。
前節で解説したとおり、太陽活動の気候への影響は江守正多らのIPCCには全く不都合な真実。
「気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるのも、もとはといえば、彼らが常日頃からこのような太陽研究の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある」。
だからこそ、またしても「ああいうのは追い出してやる」が起こった。
第5章の第2節で紹介したとおり「バレンティーナ・ザーコバ教授率いる英ノーサンブリア大学の研究者たちは、数学モデルに基づき、太陽活動が60%低下し、地球の気温が急低下すると予想した」けれど、それを知った「97%」はバレンティーナ・ザーコバの研究発表を妨害しようと図ったのだ。


英ノーザンブリア大学のワレンティナ・ジャルコワ(Valentina Zharkova)教授は、35年に及ぶ太陽活動の低下は”氷河期”の到来を告げる可能性があると主張している。しかし彼女の説は温暖化説の支持者による強い抵抗にあっている。
ジャルコワ教授のチームは、太陽活動が1600年代の小氷河期以来なかったレベルにまで低下する可能性があるとした黒点モデルの研究を発表した。論文では活動レベルの低下は世界の気候モデルに大きな意味合いを持つと結論付けているが、一部の学者からは激しい反発を受けた。
太陽活動の変化を発見
ジャルコワ教授が発見したのは、太陽活動が太陽内部から発生している2つの磁気波に応じて弱まったり、強まったりしているということだ。
研究チームが太陽のデータを予測モデルに当てはめたところ、1600年代後半のマウンダー極小期のような低活動期に移行しつつあることが判明。南半球については不明な点も多いが、少なくともきちんと気候が観察記録されている北半球ではうまく予測されるはずだという。
太陽の活動と世界の平均気温は密接な関連があると考えられている。「河川は氷り、冬ばかりで夏がなくなったりするでしょう」とジャルコワ教授。
過去の小氷河期の原因は依然不明
しかし、いわゆる”小氷河期”については専門家の間でも議論がある。太陽活動の低下がヨーロッパや北アメリカが経験した寒冷気候の原因であるとする説もあれば、真の原因は火山活動で、太陽活動が低下する以前に気温は低下していたという説もある。
一部の気候学者は、イギリスの王立天文学会にジャルコワ教授の主張をもみ消すよう要請した。王立天文学会はジャルコワ教授に、彼らと議論するよう連絡を寄越したという。
「私の論旨を証明するために8通か、10通ほどメールでやりとりしました。その中で、彼らの研究内容を喜んで直視する旨、自分たちの結果や太陽が私たちに説明していることがらも喜んで直視する旨を伝えました。彼らの結果は私たちの結果とは違います。私たちの結果以外のものは想定できません。そこで、彼らとぜひ共同研究したいことや、私たちの結果に彼らのデータを付け加えたいといったことも伝えてあります」


(「小氷河期が到来してる。氷河期派の主張と反対派の主張」より)

「彼らは科学的な議論に勝つ必要は無く、この問題が論争状態にあると人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」と喚き立てているけれど、「気候学者は、イギリスの王立天文学会にジャルコワ教授の主張をもみ消すよう要請した」のは、「彼らは科学的な議論に勝つ見込みは無く、この問題が論争状態にないと人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」。
前節で見たとおり、「現時点で、その可能性を真剣に考えなければならない証拠を温暖化の科学は突きつけられていない」と言い張っていたのも、「江守正多らは科学的な議論に勝つ見込みは無く、この問題が論争状態にないと人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」。
「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある・・・97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい」と泣き喚いていたのも、「江守正多らは科学的な議論に勝つ見込みは無く、この問題が論争状態にないと人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」。
前節で見たとおり、「それはいわゆる『ホッケースティック』だから信じないという方は、こちらを」と言い立てていたけれど、その「こちら」とは「Skeptical Science」というサイト。
実は、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析」を発表したのは、そのサイトに関与している連中。
もちろん、科学者でも何でもない。
第12節で明らかとなるが、「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化プロパガンダ活動の存在である。身も蓋もなくいえば、気候変動政策を正当化するために、その基礎となる不正に対する信頼感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている言論活動があるということだ」。

もう一度言うが、ホッケー・スティック論文の不正は明らかである。
我国の古気候学者も認めている。


米政権交代で弾み? 「温暖化CO2主因説」の再検証
2017年4月3日20時16分04秒
・・・前略・・・
ホッケースティックは陰謀だった?
科学者の中にも強硬な脅威論者はいる。日経サイエンスの4月号に英オックスフォード大学のレイ・ピアハンバート教授による「気候変動陰謀論はばかげている」というコラムが掲載された。人間活動による温暖化の脅威を主張しているが、温暖化理論が40年も前に確立されていたとか、雲の作用はないとか事実に反する記述が目立つ。
20世紀後半の急激な気温上昇を示す「ホッケースティック曲線」は、データが恣意的に処理されていたにもかかわらず、当時のIPCC幹部の目に留まり、2001年の報告書に大々的に喧伝(けんでん)されたが、後でほぼ否定された。同教授はこの報告書の主著者のひとりだったので、責任の一端はある。
首都大学東京の三上武彦名誉教授(古気候学)は「ホッケースティック曲線は一般の人に分かりやすくアピールする政治的な狙いがあったが、はっきり言ってやりすぎだった」と振り返る。
■米国では激論、日本はなんとなく定着
1970年代は気温の低下が明らかで、世の中には地球寒冷化論が満ちあふれていた。80年代に入り、人為的温暖化論が急速に台頭したが、日本では何が受け入れられるきっかけだったか判然としないまま、いつの間にか反論を許されないほどの「学説」として扱われている。
米国では温暖化対策について、以前から民主党が推進論、共和党が否定論を唱え、政争の具となっていた。90年代には連邦議会などで激論が交わされてきた点が日本の事情と大きく異なる。ホッケースティック曲線についても同様で、一連のトランプ発言はこの流れの中にあり、政権交代で弾みがついたといえそうだ。
トランプ氏の温暖化否定論が極端にすぎるとしても、もしCO2の影響が想定より少ないことが判明すれば、近い将来に温暖化対策の方向性を変えていく必要はあるだろう。「何があってもCO2削減の手を緩めるな」という威勢のいい主張は、目的と手段を取り違えた議論にみえる。
(科学技術部シニア・エディター 池辺豊)


(日本経済新聞 電子版より)

第1節で見たとおり、「小保方さんのSTAP論文が掲載され、後に取り下げられることになった権威ある雑誌が、その Nature だからだ。Nature に載った論文に不正が一つでもあればどんな大騒ぎになるかは、みなさんご覧になってよくご存じのとおりだ」と言い立てていたけれど、STAP論文では、我国においてES細胞研究の第1人者と目されていた研究者が自殺に追い込まれた。
科学において、論文の不正とはそれほどに重大な問題。
自然科学の他の分野なら、マイケル・マンのような輩はとっくに研究者生命を絶たれている。
ところが、「温暖化の科学」では、マイケル・マンが今なおデカイ面をして居座っている。

2016082001
図15-2 マイケル・マン(「Scientific American,292(2005)34」より)

ホッケー・スティック曲線はIPCCの生命線。
「97%は温暖化の科学に合意」は、すなわち、「97%はホッケー・スティック曲線に合意」。
「97%は温暖化の科学に合意」は、すなわち、「97%は不正に合意」。
だからこそ、「この事件の後、英国政府および大学の委託による3つの独立調査委員会が調査を行ったが、どの委員会の報告書も、科学的な不正は無かったと結論している」。
「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚き立てていたけれど、「どの委員会の報告書も、科学的な不正は無かったと結論している」のは正に「茶番」。
にもかかわらず、「クライメートゲート事件を『データねつ造』として紹介する論者が、この重要な事実にほとんど触れない傾向があるのは興味深い」と喚き立てるのは「興味深い」。
「身も蓋もなくいえば、気候変動政策を正当化するために、その基礎となる不正に対する信頼感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている独立調査委員会があるということだ」。

だから、マイケル・マンはますます図に乗り、その後も「ああいうのは追い出してやる」と喚き続けている。
第7章の第6節で引用した2018年2月2日の朝日新聞記事に見えるとおり、IPCC学派は「ホッキョクグマ 薄氷の狩り」と騒ぎ立てたけれど、白クマの専門家・Susan Crockford はそのデタラメを喝破した。
彼女は、それ以前から、科学的なデータを示して白クマに関するデマを喝破し続けてきた。
(最新の報告書はコチラ。)
白クマの真実に逆上したマイケル・マンらは Susan Crockford を貶めようと図ったのだ。
(詳しくはコチラを参照。)
「批判者に対して攻撃的であり排他的で」なければ、「温暖化の科学」は成り立たないからである。

その決定的な証拠がこれであろう。


科学者、世界各地でデモ=米大統領らの言動に危機感
2017/4/23-05:46
【ワシントン時事】トランプ米大統領が地球温暖化を「でっち上げ」と言い放つなど、科学を軽視する風潮が世界的に広がりつつあると危機感を募らせた科学者らによるデモ行進が「地球の日」の22日、米首都ワシントンをメイン会場に、世界600カ所以上(主催者発表)で行われた。
「マーチ・フォー・サイエンス(科学のための行進)」と銘打ったこのイベントは、科学的知見に基づく政策判断が政治の義務だと訴えるのが狙い。主催者によれば、世界各国の科学者がこうした目的で一斉に声を上げたのは初めてだ。
悪天候の中、ホワイトハウス前に設営されたメイン会場には数千人が集結。気候学者のマイケル・マン氏らがステージに上がり「地球温暖化は現実だ」「科学の否定は民主主義の否定だ」「科学との戦争はやめよ」と次々と訴えた。
この後、参加者は「科学は本物、トランプは偽物」「地球をもう一度偉大に」と訴えるプラカードを掲げ、大通りをデモ行進。主催者によると、ロサンゼルス、茨城県つくば市、ロンドン、シドニーなど世界各地で同様の行進が行われた。
トランプ大統領は22日、地球の日に当たり声明を出し「米国の勤労者世帯を害することなく環境保護を進めなければならない」と主張。行き過ぎた環境規制は撤廃すべきだと訴えた。


(時事ドットコム)


科学者ら世界各地でデモ 米政権へ「科学基づく政策を」
2017年4月23日21時33分
トランプ米政権に科学の大切さを訴えるデモ行進「マーチ・フォー・サイエンス」(科学のための行進)が22日、米ワシントンなど世界各地で行われた。研究予算の削減など、科学への風当たりの強まりを受け、研究者らが「科学に基づく政策を」と訴えた。
トランプ氏は、過去に地球温暖化を「でっちあげ」と表現し、環境規制などを撤廃する動きを見せるほか、国立保健研究所(NIH)などの予算を大幅に削減する方針も示している。
デモは、今年1月にワシントンであった「女性マーチ」に触発された若手研究者らがネットで呼びかけたことがきっかけ。科学誌サイエンスを発行する米科学振興協会(AAAS)など、主要な科学団体や学会などが協力を表明し、世界規模のイベントに発展した。主催者によると、学会や大学、NGOなど約280団体が協賛し、ワシントンのほか、ニューヨークやロンドン、パリ、東京など世界600カ所以上で行われたという。
ワシントンでは、行進前のイベントに著名な科学者や元宇宙飛行士らが登壇。気候学者のマイケル・マン博士は「私たちは今、岐路に立っている。科学がこれほど攻撃を受けたことはなかったし、これほど必要とされたこともない」などと語った。
参加者らはその後、ホワイトハウス近くの広場を出発。「科学は偽ニュースではない」などと書かれたプラカードを掲げ、約2キロ先の連邦議会前まで練り歩いた。オハイオ州から7時間半かけて車を運転してきたという製造業の研究者リチャード・フォレスターさん(62)は「科学を後退させることは許されない。ここに来ることが大切だと感じた」と話した。
東京では、日比谷公園から東京駅近くまで約1.5キロを、集まった米国人ら約150人が「科学なくして未来なし」などと繰り返しながら行進。取りまとめ役を務めたリッチ・ベイリーさん(47)は「科学が重要で支援されるべきだというのは、米国以外の国でも普遍的なことだ」と話した。(ワシントン=小林哲、小宮山亮磨)


デモ行進する参加者たち=ワシントン、小林哲撮影


(朝日新聞デジタル)

己らこそが「ああいうのは追い出してやる」と「科学との戦争」「科学への攻撃」を仕掛けながら、あべこべに「科学との戦争はやめよ」「科学がこれほど攻撃を受けたことはなかったし、これほど必要とされたこともない」と言い放って憚らない醜悪さ卑劣さは言語に絶しているが、「身も蓋もなくいえば、気候変動政策を正当化するために、その基礎となる不正に対する信頼感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている街頭活動があるということだ」。

15.4 Grant Foster と愉快な仲間たち

ハイエイタスに関して、江守正多はこのように言い張っていた。


今世紀に入ってからの気温上昇停滞期には、熱帯東太平洋の海面水温が相対的に低いラニーニャに近い状態が続いていた。これが今年はエルニーニョ「気味」になってきたと思ったら、強いエルニーニョの発生を伴わずとも世界平均気温は大きく上がってしまった。今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていたという印象を受ける。
今後の顕著な気温上昇の兆しか
もし、今年を境にエルニーニョ気味の状態が長期的に維持されるならば、世界平均気温は80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向に再び戻るだろう。
・・・中略・・・
地球全体が持つエネルギーが年々増加しているにもかかわらず、今世紀に入って世界平均気温の上昇が停滞していたのは、増加分のエネルギーが海洋深層に運び込まれ、地表面付近に配分されていなかったせいであることが、徐々にわかってきている。詳細なメカニズムの解明にはまだ研究が必要だが、ラニーニャ気味の期間にはそのようなことが起こるようだ。逆にエルニーニョ気味の期間が始まれば、増加分のエネルギーは地表面付近の顕著な温度上昇となって現れるだろう。


(「今年の世界平均気温が観測史上最高となる見通し」より)

「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」はコレである。

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図15-3 「Environ.Res.Lett.,6(2011)044022」より

観測された気温から火山活動の影響とENSOの影響を取り除いたら、つまり、人為的要因(=CO2の排出)だけなら「気温変動のベースが上がってきていた」と言うのだ。
しかし、「今年を境にエルニーニョ気味の状態が長期的に維持されるならば、世界平均気温は80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向に再び戻るだろう」ということは、そして、「逆にエルニーニョ気味の期間が始まれば、増加分のエネルギーは地表面付近の顕著な温度上昇となって現れるだろう」ということは、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」は「エルニーニョ気味の状態が現れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」にすぎず、ENSOを取り除けば、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」ではなくなるから、上図のようになるはずがなかろう。[注1]

ところが、この論文はIPCC第5次報告書(第10章の887ページ)に採用されていた。
信じられないことだが、IPCCの面々は上図が正しいと考えているのだ。
第2節で見たとおり、江守正多が「現時点で、その可能性を真剣に考えなければならない証拠を温暖化の科学は突きつけられていない」と言い張ったのも、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」にENSOは寄与していない、と言うことに他ならない。
江守正多と共に政策策定者向け要約の執筆者に名を連ねる Jochem Marotzke も、このように言い張っている。
(ここで「could you not therefore explain the accelerated warming of the 80s and 90s as being driven by the other phase of natural variability?」と問い質しているのは、前章の第1節で引用した「観測史上初、大水害が続く英国」という見出しの記事に見える、ジュリア・スリンゴ。)


At a Royal Society meeting in 2013, Julia Slingo of the Met office played devil’s advocate and posed the following question to Prof Jochem Marotzke of the German Max Planck Institute of Meteorology, see the 42:46 mark royalsociety.org/marotzke.mp3:

“…it’s a great presentation about 15 years being irrelevant, but I think, some of us might say if you look at the Pacific Decadal Oscillation and it’s timescale that it appears to work, it could be 30 years, and therefore I think, you know, we are still not out of the woods yet on this one. … If you do think it’s internal variability, and you say we do think the Pacific Decadal Oscillation is a key component of this, and it’s now in it’s particular phase, but was previously in the opposite phase, could you not therefore explain the accelerated warming of the 80s and 90s as being driven by the other phase of natural variability?”

Simplifying Slingo’s incoherence: “If the current cooling is due to the negative PDO phase, then wouldn’t the warming of the 80s and 90s be a result of the positive PDO phase back then?”
Marotzke answers after much incoherence of his own:

“Um…I guess I’m not sure.”

These people make no sense at all. They are sure it’s the oceans’cold phase gobbling up heat when temperatures fail to rise. But when temperatures increase, they just can’t be sure that the oceans are involved at all, and insist they would not bet much money on it. Of course it just can’t work only one way. Marotzke is delivering only what would call unadulterated absurd science


(「Oops…Trenberth Concedes Natural Ocean Cycles Contributed To 1976-1998 Warming … CO2 Diminishes As A Factor」より)

やはり、「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」と言い張りながら、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」は「エルニーニョ気味の状態が現れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」ことには知らんぷり。

第1節で見たとおり、「その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と喚き立てていたけれど、「系列紙の Nature Climate Change」に掲載された解説は次のように指摘している。


Interestingly, no one really talks about the other side of this situation: global warming acceleration. The mid-1970s through to the mid-1990s was a period of positive PDO and saw an acceleration in warming. If you consider the arguments about the effect of the negative phase on warming, then a positive PDO should result in the opposite.


(「Nature Climate Change,4(2014)158」より)

「97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい」と喚いていたけれど、「97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返して」も「no one really talks about the other side of this situation」。
第10章の第4節で引用した「温暖化の熱の一部は海中に潜んでいる?」という見出しの記事に見えるとおり、マシュー・イングランドが「この20年ほどの(貿易)風の激化がなければ、おそらく最近の10年間には、かなりの気温上昇が観測されていただろう」と言い張っていたけれど、それも図15-3と全く同じ。
これまた第10章の第4節で引用した「熱帯太平洋『冷や水効果』 海水温低下で0.3度抑制」という見出しの記事に見えるとおり、そして、前章の第8節で引用した2017年2月26日の朝日新聞記事に見えるとおり、小坂優が「こうした『冷や水効果』がなければ、産業革命前から12年までの二酸化炭素(CO2)による気温上昇は1.2度と推定される」だの、「自然変動を除くと1.2度ほど上がった計算になる」だのと言い張っていたけれど、それも図15-3と同じ。

そこで注目すべきは図15-3の論文の著者。
筆頭著者の「Grant Foster」は気候(気象)学者ではない。
「よほど強い動機と思い込み」があるのか、はたまた、何らかの背後関係があるのか、定かではないけれど、「Open Mind」なるブログ上で温暖化を煽り立てている人物であり、上図はそのブログの記事を論文に仕立て上げたものである。
それだけではない。
第10章の第2節でも言及したけれど、既に「J.Geophys.Res.,114(2009)D14104」が「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」は「エルニーニョ気味の状態が現れた形で、気温変動のベースが上がってきていたという印象を受ける」と指摘していたにもかかわらず、「J.Geophys.Res.,115(2010)D09110」は難癖をつけていたが、その筆頭著者も「Grant Foster」。
第3節で見たとおり、「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」と言い張っていたけれど、共著者はフィル・ジョーンズとマイケル・マン!
驚くなかれ、江守正多らIPCCの面々は「Grant Foster」に盲従していたのだ!
「そのことを考えると、温暖化がウソでなかったり、間違いでなかったり、正しかったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。
第1節で見たとおり、「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚いていたけれど、「Grant Foster」に盲従するIPCCの報告書に基づいた「今回のCOP21がすべて茶番でないと信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。

15.5 Dana Nuccitelli と愉快な仲間たち

それだけではない。
第3節で指摘したとおり、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析」を発表したのは「Skeptical Science」の面々だが、その一人(下の写真の右側の男)も、ハイエイタスに関して、このように言い立てていた。


fig 09-02

The confusion on this subject lies in the fact that only about 2 percent of global warming is used in heating air, whereas about 90 percent of global warming goes into heating the oceans (the rest heats ice and land masses). But humans live at the Earth’s surface, and thus we tend to focus on surface temperatures. Over the past 10-15 years, Earth’s surface temperature has continued to rise, but slowly. At the same time, the warming of the oceans — and the warming of the Earth as a whole — has accelerated.
This was the conclusion of a scientific paperPhys.Lett.,A376(2012)3466I co-authored last year, in which our team found more overall global warming (of the oceans, air, land, and ice combined) over the past 15 years than during the prior 15 years. Just recently, another paper published in the journal Geophysical Research Letters 「Geophys.Res.Lett.,40(2013)1754」 found that the warming of the oceans since the turn of the century has been the most sustained in the past 50 years. They also found that, consistent with my team’s research, about 30% of overall global warming has gone into the deep oceans below 700 meters due to changing wind patterns and ocean currents. This accelerated deep ocean warming is also unprecedented in the past 50 years.
We often hear from the media that the (surface air) warming has slowed or paused over the past 15 years. This isn’t a puzzle; climate scientists are well aware of several contributing factors, as a recent Reuters article — “Climate scientists struggle to explain warming slowdown” — eventually discussed. The accelerated warming of the oceans is likely the main contributor.
During years with La Nina events, more heat is transferred to the oceans, and surface temperatures are relatively cool as a result. The opposite is true during El Nino years. During the 1990s, there were more El Nino than La Nina events, which resulted in more surface air warming. One of the strongest El Nino events of the century happened in 1998, which not coincidentally was 15 years ago.
When people say ‘no warming in 15 years’, they’re cherry picking the timeframe to begin in an abnormally hot year. It’s like arguing that your car must have broken down because it hasn’t moved in the 15 seconds while you’ve been stopped at a red light. The argument selects a short timeframe that’s not representative of the whole.
Since 2000, there has been a preponderance of La Nina events, which has acted to temporarily bury more global warming in the oceans. A new study published in Nature Climate Change 「Nature Climate Change,3(2013)649」 found that by taking into account the short-term changes caused by factors like El Nino and La Nina cycles, they could accurately forecast the slowed warming at the surface several years in advance. The paper concluded,
“Our results hence point at the key role of the ocean heat uptake in the recent warming slowdown.”


(「Why is Reuters puzzled by global warming’s acceleration?」より)

要するに、図15-3と同じことを言い張っているのだが、「During years with La Nina events, more heat is transferred to the oceans, and surface temperatures are relatively cool as a result. The opposite is true during El Nino years」なら、「80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向」は「エルニーニョ気味の状態が現れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」はずだから、「more overall global warming (of the oceans, air, land, and ice combined) over the past 15 years than during the prior 15 years」などあり得ない。
実際、第10章の第1節で解説したとおり、そして、第13章の図13-1で解説したとおり、「overall global warming has gone into the deep oceans below 700 meters」ではない。
ところが、江守正多は、「Nuccitelli(上の記事の写真の右側の男)」が自慢げに「This was the conclusion of a scientific paper I co-authored last year」と言い立てている論文を盾にして、こんなことを言っている。
(この論説を書いたのは明日香壽川、こと、張壽川だが、「謝辞」に江守正多の名が見えるから、江守正多の入れ知恵であり、江守正多の主張そのものであると看做してよい。)


そもそも数年~10年程度のスケールでは自然変動の影響が出やすい気温データを用いて気候変動問題における長期傾向や気候感度を論じることに問題がある(Fusullo and Trenberth 2012Schmidt 2015Mann 2014)なぜなら、温室効果によって地球に蓄えられるエネルギーの9割以上は海が吸収するからである(IPCC AR4 WG1 Chap.5, 5.2.2.3)。すなわち、陸上あるいは海上の気温として現れる地表のエネルギー吸収分は非常に小さい。それゆえに、エルニーニョのような内部変動がもたらすノイズによって地表気温は大きく影響を受けて変動する。一方、海洋の熱吸収量の変化を見ると、実際に1998年も停滞することなく一定の割合で上昇中である(例えば Nuccitelli et al. 2012)。すなわち、地球全体で見れば温暖化は途切れなく続いている。


(「気候感度および気温上昇停滞(ハイエタス)に関する最新の科学的知見」より)

Nuccitelli et al. 2012」は「Phys.Lett.,A376(2012)1226」へのコメント。
(コメントへの回答は「Phys.Lett.,A376(2012)3673」。
その論文は「This accelerated deep ocean warming is also unprecedented in the past 50 years」でも、「Since 2000, there has been a preponderance of La Nina events, which has acted to temporarily bury more global warming in the oceans」でもないと指摘していた。
第12章図12-10図12-11に見えるとおり、それは正しかったのだが、「Nuccitelli」らは難癖をつけていた。
そのくせに、自慢げに「This was the conclusion of a scientific paper I co-authored last year」と言い立てているのだから呆れ返るが、江守正多は「Nuccitelli」を真に受けているのだ。
「そのことを考えると、温暖化がウソでなかったり、間違いでなかったり、正しかったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。

確認しておくが、本章で筆者が江守正多の言説を採り上げているのは、もちろん、それが日本語で書かれているからだが、江守正多がIPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者であり、IPCCを象徴しているからである。
その証拠に、第12章図12-9は「Nuccitelli et al. 2012」の図1と本質的に同じ。
なんと!、IPCCの報告書は「Nuccitelli et al. 2012」に基づいていたのだ。
だからこそ、IPCCの第4次報告書を盾に「なぜなら、温室効果によって地球に蓄えられるエネルギーの9割以上は海が吸収するからである」と言いながら、「海洋の熱吸収量の変化を見ると、実際に1998年も停滞することなく一定の割合で上昇中である」では、第5次報告書の図12-9ではなく、「Nuccitelli et al. 2012」を引用しているのである。

第3節でも言及したとおり、フィル・ジョーンズは「MMのその他の論文はまったくクズだ」と喚いたけれど、「Phys.Lett.,A376(2012)1226」を見たケヴィン・トレンバースも「まったくクズだ」と喚き散らした。
そのトレンバースも、フィル・ジョーンズ、マイケル・マンと共に、「Grant Foster」が筆頭著者の「J.Geophys.Res.,115(2010)D09110」の共著者。
(ギャビン・シュミット、そして、我国の海洋研究開発機構に所属している J.D.Annan も共著者。)
もはや、嗤うしかあるまい。
Rojer Pielke は、クライメートゲートから何も学んでいない、とトレンバースを批判したけれど、第3節で指摘したとおり、「気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるのも、もとはといえば、彼らが常日頃から『温暖化懐疑論・否定論』との『科学的な議論に勝つ』ことができないことに辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある」。
「そのことを考えると、温暖化がウソでなかったり、間違いでなかったり、正しかったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。

15.6 世界を騙しつづける科学者たち

第10章第12章第13章の初めの3節、そして、上記の第4節と第5節に見えるとおり、ハイエイタスにうろたえたIPCCは、海に熱が溜まったから気温が上がらなかった、と抗弁したけれど、逆に、その非科学性が露呈してしまい、IPCCがCO2の効果を著しく過大評価していることが露見してしまった。
もはや、IPCCに残された道は、データを改竄して、ハイエイタスを消し去ることのみ。
だからこそ、第13章の第6節で採り上げた「研究報告:『温暖化は停滞』に反論 米海洋大気庁が『サイエンス』誌に」という見出しの記事に見えるとおり、ナオミ・オレスケスが「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と喚き立てた。
そのナオミ・オレスケス(気候学者ではない)に「存在しない現象を説明するために、膨大な量の研究と努力が積み重ねられたのです」とバカにされたにもかかわらず、第13章の第7節で採り上げた「2015年の世界平均気温 過去最高を大幅更新」という見出しの記事に見えるとおり、ギャヴィン・シュミットは「過去数十年間で、気温上昇の傾向が弱まったとか止まったとか、または小休止していると示す証拠はない」と同調した。
そして、江守正多も追従した。

WEBRONZAより

「米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した」は第13章図13-20に他ならない。
江守正多が、ハイエイタスはなかった、と泣き喚くのを「とうとう見るときがきちゃったのか」。
しかし、第13章図13-21に見えるとおり、人工衛星のデータはハイエイタスを示している。
第3節で見たとおり、「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」、「クライメートゲート事件を『データねつ造』として紹介する論者が、この重要な事実にほとんど触れない傾向があるのは興味深い」と喚いていたけれど、「クライメートゲート事件を『彼らはデータの改ざんなど行っていない』として紹介する論者が、この重要な人工衛星のデータにほとんど触れない傾向があるのは興味深い」。
「彼らは科学的な議論に勝つ必要は無く、この問題が論争状態にあると人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」と喚き立てていたけれど、人工衛星のデータに頬かむりを決め込むのは「科学的な議論」から逃げる以外の何物でもない。
「江守正多らは科学的な議論に勝つ必要は無く、このハイエイタス問題が論争状態にないと人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」。
データを改竄・捏造してハイエイタスを消し去ったことは明らかであろう。
第12章の第3節と第4節で解説したとおり、ハイエイタスの問題は、すなわち、20世紀の気候の問題であり、20世紀までの過去1000年間の気候の問題。
江守正多らのIPCC学派がハイエイタスを消し去ったのは、ホッケー・スティック曲線のでっち上げを裏づけたのだ。

第1節で見たとおり、「その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と喚いていたけれど、「その Nature」はこんなことを仕出かした。


「科学界の10人」に米長官 その皮肉な理由とは
小堀龍之
2017年12月19日08時21分
英科学誌ネイチャーは今年の科学界で話題になった人物10人を選び、18日付で発表した。その1人、米国のトランプ政権で環境保護局(EPA)長官に就いたスコット・プルイット氏を「汚染防止政策を弱め、多くの科学者らを怒らせている」と紹介した。
トランプ政権は、前オバマ政権の科学に基づく政策を一変させた。その象徴が温暖化に懐疑的なプルイット氏のEPA長官就任。ネイチャーによれば、それまでオクラホマ州司法長官として、EPAに対する訴訟を少なくとも14回起こしていた。
プルイット氏は2月の就任直後から多くの環境規制を妨害したり廃止したりしている。10月には発電所の温室効果ガス排出規制の撤廃も発表した。ネイチャーは何度もプルイット氏にインタビューを申し込んだが、これまで応じていないという。
ほかに生物の遺伝子を狙った通りに改変する「ゲノム編集」技術の改良に取り組む米国の生化学者デービッド・リウ氏や、盗聴が困難で安全性が高いとされる「量子通信」に取り組む中国の物理学者パン・ジャンウェイ氏、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長などを選んだ。(小堀龍之)


ホワイトハウスで記者会見をするスコット・プルイット米環境保護局長官=ワシントン、ランハム裕子撮影


(朝日新聞デジタル)

しかし、下のツィッターに見えるワシントン・ポストが報じているとおり、「その皮肉な理由とは」、実のところ、「米国のトランプ政権で環境保護局(EPA)長官に就いたスコット・プルイット氏」が人工衛星のデータに言及したからである。

それに対する「Scientists just published an entire study refuting Scott Pruitt on climate change」は第13章図13-23だけれど、第4節で解説したとおり、江守正多らは、1998年以降は自然変動(ラニーニャが優勢な負位相のPDO)で気温上昇が鈍化した、と言い張りながら、1998年以前の自然変動(エルニーニョが優勢な正位相のPDO)には知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいた。
ところが、図13-26のRSS4.0は、全く逆に、「We find that in the last two decades of the twentieth century, differences between modelled and observed tropospheric temperature trends are broadly consistent with internal variability」、「We conclude that model overestimation of tropospheric warming in the early twenty-first century is partly due to systematic deficiencies in some of the post-2000 external forcings used in the model simulations」と、つまり、1998年以前の気候モデルと観測値の差は自然変動が原因だが、1998年以降に自然変動は寄与していない、と言い張っていた。
RSS4.0がハイエイタスを消し去るためにデータを改竄したことは明白であり、従って、STARのイカサマも明白であり、図13-23のイカサマも明白。
ハイエイタスは現実。

それでも尚、科学が進歩した結果、ハイエイタスは存在しなかったことが分かったのだ、気温は気候モデルの計算どおりに上がり続けている、と言い張るのなら、ハイエイタスが存在していたと考えられていた時に、海に熱が溜まったからと説明したのは間違いだった、我々の説明に納得しなかった懐疑論者の方が正しかった、と認めねばならない。
懐疑論者との論争はデータを見直してハイエイタスが存在しなかったことを見出すきっかけとなった、懐疑論者との論争は科学的に有益だった、と感謝すべきである。
ところが、第3節で見たとおり、「彼らは科学的な議論に勝つ必要は無く、この問題が論争状態にあると人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」と罵り散らした。
さらに、こんなことまで喚き散らしていた。


温暖化の科学への懐疑を主張される方々の多くにとって、科学への懐疑は言いたいことの本質なのだろうか。ディベートのためのレトリックや理論武装ではないのか。周囲で撤退が始まり、梯子を外され、肝心の武装も穴だらけであることに薄々気づきながら、最後まで立てこもって守り続けるほどの価値のある主張なのだろうか。
そのような方々が本当に言いたいことは、温暖化対策の進め方への違和感などではないのだろうか。もしそうなのであれば、それをご自身の価値観とともにストレートに主張された方が、ご自身にとっても社会にとっても有益な議論になるのではないか。


(「それでも寒冷化が正しいと思っている方へ 世界でも撤退が目立つ温暖化科学への懐疑論」より)

フィル・ジョーンズが「ああいうのは追い出してやる」と喚いたのと全く同じではないか。
「身も蓋もなくいえば、気候変動政策を妨害するために、その基礎となる科学に対する不信感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている言論活動があるということだ」と、そして、「気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるように見えるのも、もとはといえば彼らが常日頃からこのような妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある」と喚き立てていたけれど、江守正多は自らの「言論活動」で「気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的である」ことを立証した。
なぜなら、「江守正多らは科学的な議論に勝つ必要は無く、このハイエイタス問題が論争状態にないと人々に思わせることができれば、それで目的は果たせるからだ」。
それは、ハイエイタスを消し去るためにデータを改竄したことを、物の見事に露呈したのだ。

その証拠に、ハイエイタスが存在しなかったのなら、海に熱が溜まったから気温上昇が鈍化した、と抗弁していたのは「ディベートのためのレトリック」にすぎなかった、「肝心の武装も穴だらけ」だったということになる。
図15-3の論文で「Grant Foster」に協力した人物も、「米国の海洋大気局(NOAA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した」に小躍りしていた。

前節で採り上げた「Nuccitelli」の左側に見える禿げた男も、NOAAがハイエイタスを消し去ったのを見て、「With hope, this will end the discussion of the so-called “pause” or “hiatus”, which never existed in the first place」と小躍りしていた。(コチラを参照)
「肝心の武装も穴だらけであることに薄々気づきながら」、海に熱が溜まったから気温上昇が鈍化した、と言い張っていたのだ。
しかし、前節で採り上げた解説で江守正多自身が書いていたとおり、「温室効果によって地球に蓄えられるエネルギーの9割以上は海が吸収する」から、そして、温室効果はIPCCの人為的(排出CO2)温暖化説の根幹だから、海に熱が溜まったから気温上昇が鈍化したという説明は、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説の根幹に関わる。
根幹の部分で「肝心の武装も穴だらけ」だったということは、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説は「肝心の武装も穴だらけ」だった、ということである。
「身も蓋もなくいえば」、IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説は「身も蓋もなく」、中身は空っぽだった、ということである。
「周囲で撤退が始まり」、江守正多も敗走して、IPCC学派はハイエイタスから全面撤退したけれど、「身も蓋もない」気候モデルの計算どおりに気温が上がり続けているはずがないから、ハイエイタスを消し去るためにデータを改竄・捏造したことは明らかである。

前節で紹介したとおり、トレンバースは「Phys.Lett.,A376(2012)1226」を「まったくクズだ」と罵ったけれど、「クライメートゲート事件」ではトレンバースのメールも流出した。


The fact is that we can’t account for the lack of warming at the moment and it is a travesty that we can’t. The CERES data published in the August BAMS 09 supplement on 2008 shows there should be even more warming: but the data are surely wrong. Our observing system is inadequate.


(ケヴィン・トレンバースからマイケル・マンへのメール)

実にこれこそが、NASAやNOAAがデータを改竄してハイエイタスを消し去る原点だったのだ。
江守正多が「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」、「『クライメートゲート事件』で流出したメールの中で、気候研究者たちが批判者に対して攻撃的であり排他的であるように見えるのも、もとはといえば彼らが常日頃からこのような妨害活動の影響を受けて辟易し、腹に据えかねるほど憤っていたことが背景にある」と喚き立てた理由も明らかであろう。

IPCCの人為的温暖化説は「最後まで立てこもって守り続けるほどの価値のある主張なのだろうか」?

先に紹介したWEBRONZAに見える「トランプ政権に科学の尊重を求める集会」はコレである。


科学者が抗議集会 “トランプ大統領は科学重視を”
2017年2月20日 7時15分
「地球温暖化はでっちあげだ」などと主張するトランプ大統領に対し、科学者たちが抗議する集会がアメリカ東部、ボストンで開かれ、トランプ大統領に対して科学を重視するよう訴えました。
この集会は19日、世界最大の学術団体、AAAS=アメリカ科学振興協会の年次総会にあわせてボストンで開かれました。20日で就任1か月となるトランプ大統領は、地球温暖化対策に強く反対してきた人物をエネルギー省や環境保護局の長官に指名したり、政府機関のウェブサイトから温暖化についての記述を削除したりするなどしており、温暖化対策の後退が懸念されています。
会場には白衣姿の科学者や科学を専攻する学生などおよそ2000人が集まり、「いまこそ、科学のために立ち上がろう」などと声をあげトランプ政権に対する危機感を次々に表明しました。
このうち、ハーバード大学のナオミ・オレスケス教授は、「科学的事実を述べることは本来、政治とは関係ないはずだ。いま温暖化などを研究している科学者は正しいことをしているのに攻撃されている。民主主義に欠かせない科学を守るために立ち上がらないといけない」と訴えていました。
主催者の1人は「これほど多くの人が集会に参加したのは危機感の表れだと思う。科学者は真実を求めて研究している人たちで公共の利益のために働いている。科学が社会で果たす役割について広く伝えいかないといけない」と話していました。

2017022301


(NHK)

「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化懐疑論・否定論活動の存在である(たとえば、『世界を騙しつづける科学者たち』(楽工社)を参照)。身も蓋もなくいえば、気候変動政策を妨害するために、その基礎となる科学に対する不信感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている言論活動があるということだ」と喚き立てていたけれど、「温暖化懐疑論者・否定論者」が人工衛星の観測という「科学的事実を述べることは本来、政治とは関係ないはずだ」。
ところが、人工衛星の観測という「科学的事実を述べること」を拒んでいるIPCCの連中が「意図的に展開されている言論活動がある」と喚き立て、「いま温暖化などを研究している懐疑論者・否定論者は正しいことをしているのに攻撃されている」。
第1節で見たとおり、「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚いていたけれど、自分達こそが、「科学的事実を述べる」懐疑論者・否定論者を「攻撃」しているにもかかわらず、「科学的事実を述べることは本来、政治とは関係ないはずだ。いま温暖化などを研究している科学者は正しいことをしているのに攻撃されている」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。

「『世界を騙しつづける科学者たち』(楽工社)」の著者は、誰あろう、ナオミ・オレスケス。
あべこべに「科学的事実を述べることは本来、政治とは関係ないはずだ。いま温暖化などを研究している科学者は正しいことをしているのに攻撃されている」と喚き立てたのは、ナオミ・オレスケス(下の写真の左端)やケヴィン・トレンバース(左から3人目)や(その右隣の)マイケル・マンらこそが「世界を騙しつづける科学者たち」であることを立証した。

20161605図15-4 「世界を騙しつづける科学者たち」の揃い踏み(「Some first impressions from #AGU14」より)

第1節で見たとおり、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある・・・97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい」と泣き喚いていたけれど、「温暖化の科学に合意」の言い出しっぺ「Science,306(2004)1686」もナオミ・オレスケス。
「温暖化の科学に合意」は「世界を騙しつづける」という「合意」に他ならない。

15.7 hide the decline

「クライメートゲート」で流出したメールではコレも重要。


そこで、先述した1通のメールが大問題としてかかわりを持ってくる。そのメールはIPCC第3次報告書(2001年)のまとめを前にした時期のもので、その一部を逐語的に訳すと、こう書いてあったのだ。
■懐疑派は「捏造」と主張
「私(ジョーンズ)は、低下傾向を隠すというキース(CRU副所長)のために、1981年からの過去20年間の系列と1961年からの(系列)に対し、真の気温を勘定に入れるというマイクのネイチャーでのトリックを完了させたところだ」
地球温暖化に懐疑的な人々や欧米のマスコミは、「トリック」という言葉にかみついた。
欧米マスコミのブログに残されたコメントや懐疑派のサイトなどを見ると、このメールはデータが故意に操作され、温暖化の「傾向」そのものが捏造されたなどという主張が続々登場した。
この大騒動に、当のジョーンズはCRUのホームページ上で、メールは本物だとした上で、「1960年までの(年輪による)データと61年以後の観測によるデータの両方をグラフのカーブは含んでいる。それについての議論だ」と説明。さらに、「トリック」については、「口語で『賢いやり方』という意味で使った。不穏当な何かを示唆しているなんてばかばかしい」と一蹴している。英和辞典にも確かにそういう訳語がある。


(AERA2009年12月14日号より)

有名な「hide the decline」。
(「私(ジョーンズ)は、低下傾向を隠すというキース(CRU副所長)のために、1981年からの過去20年間の系列と1961年からの(系列)に対し、真の気温を勘定に入れるというマイクのネイチャーでのトリックを完了させたところだ」の原文は「I’ve just completed Mike’s Nature trick of adding in the real temps to each series for the last 20 years (i.e., from 1981 onwards) and from 1961 for Keith’s to hide the decline.」)
「不穏当な何かを示唆しているなんてばかばかしい」と泣き喚いているけれど、ハイエイタスを消し去ったのは「hide the decline」の精神に基づいているのだ。

第10章の第6節で引用した「熱帯太平洋『冷や水効果』 海水温低下で0.3度抑制」という見出しの記事中の図に見えるとおり、1998年以降のハイエイタスは1940年からの気温低下(80年までの40年間を見れば停滞)と同じ自然変動に因る。
1940年からの気温低下を見れば、1998年からのハイエイタスが現実であることは、従って、NASAやNOAAがハイエイタスを消し去るためにデータを改竄・捏造したことは、そして、「現実問題として統計的に顕著な停滞など見られません。これまでもなかったのです」と喚き立てるナオミ・オレスケスらが「世界を騙しつづける科学者たち」に他ならないことは、明らかである。
だから、「私(ジョーンズ)は、低下傾向を隠すという『世界を騙しつづける科学者たち』のために、1941年からの過去20年間の系列と1961年からの(系列)に対し、真の気温を勘定に入れるというマイクのネイチャーでのトリックを完了させたところだ」。


図15-5 HadCRUT3とHadCRU4の比較

江守正多はこのように言い張っている。


一方モデルは過去の計算をし直すことができます。実際にモデルと観測結果が合わなくて観測データが見直された例があります。たとえば、過去100年の海面水温について調べると、1940年代の観測データに目立ったピークがあり、モデルの結果と合いませんでした。第二次世界大戦の終戦前後で主な測定方法が変わったためです。終戦前に多かったアメリカの船の観測ではエンジンルームに入ってきた海水の温度を測っていました。一方、終戦後に多くなったイギリスの船は、バケツですくった海水の温度を測る方法をとっていました。エンジンルームで測ると水温は高めに、バケツで測ると水温は低めに出ますが、その補正をしていなかったため、擬似的なピークが出てしまったということです。そういう問題がのちにわかったので補正すると、モデルが再現した過去の温度に近くなったのです。


(「気候のコンピュータモデルと観測データの相乗効果」より)

第13章の第6節で採り上げた「研究報告:『温暖化は停滞』に反論 米海洋大気庁が『サイエンス』誌に」という見出しの記事に見えるとおり、「第二次世界大戦以降、商用船ではエンジン冷却水の取り入れ口に付けた温度センサーで海水温を測定しているものとしてデータを得ていたが、NOAAのチームによると、今日でも多くの商用船が昔ながらの方法、つまりバケツを下ろして海水を汲み、温度を測っているという」と言い立てて、海水温を吊り上げたのと全く同じ。
しかも、NOAAで2000年以降の海水温が上がったのは、海洋気象ブイの設置数が商用観測船の数を上回ったからだが、1970年以前に海洋気象ブイは無かったのだから、「その補正をしていなかったため、擬似的なピークが出てしまったということです」のイカサマは明白である。
「私(ジョーンズ)は、低下傾向を隠すという江守正多(IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者)のために、1941年からの過去20年間の系列と1961年からの(系列)に対し、真の気温を勘定に入れるというマイクのネイチャーでのトリックを完了させたところだ」。

しかも、1940年前後の気温(海水温)はもっと高かった。


1.背景
北極圏は地球温暖化の影響を最も受けやすい地域の1つです。地球温暖化によって海氷や雪氷が融解すると地球外へ反射される太陽光が減少し、北極圏が吸収する太陽からのエネルギー量が増加します。その結果、地表面温度が上昇し、更に海氷や雪氷が融解して温暖化を促進するというサイクルが存在すると考えられています。このような地球温暖化の影響によって、北極圏の気温は1970年から2000年代までの間に約1.2℃以上も上昇しました。一方、地球温暖化の原因である大気中の二酸化炭素濃度が現在と比べて非常に低かったはずの20世紀前半にも、北極圏の陸上では同程度の気温上昇が観測されていました。将来の気候予測や過去の気候再現に用いられる多くの気候モデルではこの20世紀前半の温暖化を説明・再現することができず、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。
・・・中略・・・
2.研究方法・成果
今回の研究「PNAS,114(2017)6227」では、海面水温、海面気圧、海上風観測の最新データベースと大気や海洋の影響を加味したシミュレーション結果を詳細に解析しました。その結果、20世紀前半には熱帯太平洋や北大西洋における海面水温の昇温が従来考えられていたよりも大きかったことを突き止めました。この水温上昇は太平洋や大西洋に内在する数十年規模変動の一部と考えられます。この海面水温上昇の効果を大気のモデルで検証したところ、冬季のアリューシャン低気圧やユーラシア大陸北部の西風が強化され、北極圏の陸上温暖化を促進する地表付近の熱の動きがあることが分かりました。一方、これらの海域の海水面温度が上昇しない場合をシミュレーションすると、20世紀前半の北極の温度上昇が実際の観測と比べ約43%も小さくなることが分かりました。また、大気中の二酸化炭素濃度上昇や火山噴火に伴う火山灰エアロゾルなどの影響を受けないよう設定された数百年以上の気候シミュレーションを解析した結果、20世紀前半の北極圏温暖化と非常に類似した現象が再現されていることが分かりました。これらの気候シミュレーションでは、熱帯太平洋と北大西洋の海面水温が数十年規模で同時に上昇した場合には北極圏を温め、逆に同時に下降した場合には北極圏を冷やす効果を持つことが示されました。
・・・後略・・・


(「20世紀前半の北極圏温暖化、遠く離れた海洋の温度上昇が影響」より。この論文を主導したのは、江守正多と共にIPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の執筆者に名を連ねている Shang-Ping Xie 。)

これは後から分かったこと、という言い逃れは通用しない。
「北極圏は地球温暖化の影響を最も受けやすい地域の1つ」だから、そして、「地球温暖化の原因である大気中の二酸化炭素濃度が現在と比べて非常に低かったはずの20世紀前半にも、北極圏の陸上では同程度の気温上昇が観測されていました」ことは始めから分かっているのだから、「20世紀前半には熱帯太平洋や北大西洋における海面水温の昇温が大きかったこと」も始めから分かっている。
「モデルは過去の計算をし直すことができます。実際にモデルと観測結果が合わなくて観測データが見直された例があります」と言い張るのは、気候モデルの計算結果と一致するようにデータを改竄し続けていることを、自白したも同然である。

15.8 「とうとう見るときがきちゃったのか」?

第6節で紹介したとおり、江守正多は、「米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した」と言い立て、「とうとう見るときがきちゃったのか」と喚き立てていたけれど、その文章の中で、さらに、このように喚き立てていた。
(但し、WEBRONZAは有料だから、以下では「Yahoo」に掲載された文章から引用するけれど、そして、WEBRONZAの文章とは表現が少し異なるようだが、中身は全く同じ。)


いささか鮮度の落ちた話だが、国内であまり話題になった形跡が無いので、紹介しておきたい。
・・・中略・・・
ひと月ほど前に米国カリフォルニア大学バークレー校の Zack Labe という博士課程の学生が Twitter でこのグラフを紹介したところ、大議論が巻き起こった。(筆者はそのずっと後にネット記事を追いかけて知った)
・・・中略・・・
Twitter の議論の初期には、測器の故障によるエラーである可能性が指摘されたようだが、すぐに否定された。現時点でわかっている限り、このグラフはデータの間違いでもグラフの描き方の間違いでもなく、現実を表しているものらしい。
・・・中略・・・
特に、海氷の減少を議論する際に通常注目されるのは、北極海の海氷が最小になる9月の面積である。9月の北極海海氷面積は最少記録を2012年に更新したが、今年はそれに次ぐ2番目の記録となった。なので、今年は記録更新がなかったことで筆者も油断していた。
ところが、その後の10月以降、今年のデータは過去の最少記録を下回り続ける。北極では秋から冬に向かって海氷が増えていくが、その増え方が例年よりかなり遅いということだ。
同時に南極の海氷も最少記録を下回り始めた。南極では春から夏に向かうので海氷が減っていくが、その減り方が例年より急なのだ。
その結果、両者を合わせたグラフはこのようにショッキングなものとなった。
データソースである前出のNSIDCも12月6日にプレスリリースを出しており、北極、南極ともに平年よりも高い気温、海水温、風のパターンが今年の海氷減少をもたらしているようだと説明している。
論争に終止符?
思い返せば、海氷の減少は温暖化問題の中で論争的なテーマの一つだった。
北極海の海氷減少が記録を更新するとニュースになるが、社会の中には「温暖化の報道は大げさで、特定政策への誘導の意図が感じられる」と思っている人たちが一定数いて、その人たちは異論を唱えた。
たとえば、「減少するとニュースになるが、次の年に面積が回復してもニュースにならないではないか」という指摘を見たことがある。
確かに海氷の面積は(同じ月で比べても)年々変動する。しかし、面積が回復したようにみえるのは薄い一年氷が張っているのであって、分厚い多年氷はかなり一方的に減少を続けていたのだ。
また、少し詳しい人が「南極の周りの海氷はむしろ増えているではないか」と指摘するのも何度か聞いた。
確かにその通りだ。南極の海氷増加を説明する理論はいくつかあるが(オゾン層の減少による風の変化、海水の密度成層の変化、詳しく知りたい方はこちら)、筆者の認識ではこれは現在の気候科学で明確な解答の出ていない難問の一つだった。
しかし、今年は南極の海氷もはっきりと減った。科学者が海氷増加の謎に頭を悩ます必要も減ったのかもしれない。
もちろん、南北両半球の海氷がこのまま激減するのか、それとも今年だけの特異な出来事なのかはわからない。減少のメカニズムもこれから解明されなければならない。海氷の減少がどんな影響をもたらすかも解釈が分かれるだろう。議論は続く。
しかし、海氷の減少にこれまで異論を唱えていた人の(全部ではないにしても)ある部分は、このグラフを見れば「もはやそこを議論してる場合じゃあないみたいだ」と、ぞっとしながら気付くのではないか。
とうとうこういうグラフを現実のデータとして見るときがきちゃったのか、という感慨がある。


(「南北両半球で海氷面積の減少がすごいことになっている件」より)

しかし、第7章の第7節で解説したとおり、北極海の海氷の減少には自然変動の寄与が大きい。
それは専門家も認めるところ。


米政権交代で弾み? 「温暖化CO2主因説」の再検証
2017年4月3日20時16分04秒
■大きな自然変動要因
3月18日、都内で開かれた北極域の研究報告会で、国立極地研究所国際北極環境研究センター長の榎本浩之教授(雪氷学)は、北極研究を富士登山に例えると何合目に達したかと司会者に問われ、「少し登ったつもりでもまだ麓をうろついているだけ。何かが分かったと思うのは間違いだ」と、科学的な知見がまだ乏しいことを素直に認めた。
その端的な例として榎本教授が示したのは、最近、英科学誌に掲載された米カリフォルニア大学の論文だ。最近の北極海氷の減少の半分近くは自然変動がもたらしているという内容で、定量的な分析は初めてという。北極域は地球温暖化の影響が最も現れていると見なされてきたが、自然変動要因がこれほど大きいとなると、温暖化の解釈は容易ではなくなる。
20世紀末から観測された地上気温の停滞(ハイエイタス)は、CO2濃度が高くなると気温が上がるとする単純な温暖化シミュレーションが通用しないことを物語った。大気と海洋の相互作用を加味すると、気温の再現性が改善されることが分かった。この場合、人間の手が直接及ばない海洋の影響がやはり半分ほどになるという。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人為的な温暖化ガス排出のリスクを評価し、実質的にはパリ協定を通じて各国に対策を促している。しかし、温暖化ガス以外の気候変動要因を深く検証することはせず、むしろ軽んじてきたのが実情だ。この結果、シミュレーションでは再現できないハイエイタスのような現象に向き合いにくい。


(日本経済新聞 電子版より)

第6節で見たとおり、「周囲で撤退が始まり、梯子を外され、肝心の武装も穴だらけであることに薄々気づきながら、最後まで立てこもって守り続けるほどの価値のある主張なのだろうか」と喚き立てていたけれど、江守正多が国立極地研究所に「梯子を外され」るのを「とうとう見るときがきちゃったのか」。
「英科学誌に掲載された米カリフォルニア大学の論文」は、第7章の第6節で引用した「北極海の海氷減少に対する自然要因の寄与を定量化する」という見出しの記事が採り上げている論文で、Nature Climate Change に発表された。
第1節で見たとおり、「その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と泣き喚いていたにもかかわらず、「英科学誌に掲載された米カリフォルニア大学の論文」には頬かむりを決め込んで、「とうとう見るときがきちゃったのか」と喚き立てているのだ。
確かに、その論文が発表されたのは上記の論説の後だけれど、その後も言及なし。
「温暖化懐疑論にこれまで異論を唱えていた人の(全部ではないにしても)ある部分は、この事実を知れば『もはや江守正多の言うことを信じている場合じゃあないみたいだ』と、ぞっとしながら気付くのではないか」。

一方の「今年は南極の海氷もはっきりと減った」は下図である。


図15-6 南極の海氷の年最小面積の推移(JAXA)

「とうとう見るときがきちゃったのか」なら、遅くとも2010年以降は減り続けていたはず。
ところが、2013年から2015年の3年間の海氷面積はそれ以前よりも大きかった。
グラフ全体を見れば、如何なる傾向も認められない。
「今年は南極の海氷もはっきりと減った。科学者が海氷増加の謎に頭を悩ます必要も減ったのかもしれない」などと言えるはずがなかろう。
それは専門家も認めるところ。


南極の海氷、観測史上最小に 2000年代より3割減
小坪遊
2017年3月23日19時38分
国立極地研究所と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は23日、南極域の海氷面積が3月1日に過去最小を記録したと発表した。JAXAの観測衛星「しずく」のデータを分析した。
発表によると、この日の面積は約214.7万平方キロ。1978年に始めた観測で、これまでの年最小面積だった97年2月19日の約225.1万平方キロを下回った。今回の値は2000年代の年最小面積の平均より3割も少ないという。
今年は2月11日に97年の記録を更新、3月1日まで小さくなり、2日からは回復傾向が確認されたという。面積が最小となったことに、極地研は「海水温や気温、風など様々な要因が考えられる」とし、「地球温暖化とは時間スケールも大きく異なり、直接その影響を検討することはできない」とコメントした。
海氷は南極では9月ごろ最大に、2月ごろに最小となる。北極はほぼその反対で、地球上にある海氷面積の合計は例年2月ごろに最小となる。米航空宇宙局(NASA)も23日、今年2月13日に合計面積が観測史上最小になったと発表した。


(朝日新聞デジタル)

江守正多が再び国立極地研究所に「梯子を外され」るのを「とうとう見るときがきちゃったのか」。
江守正多は、上のグラフも示さずに、「とうとう見るときがきちゃったのか」と喚き立てているのだ。
「温暖化懐疑論にこれまで異論を唱えていた人の(全部ではないにしても)ある部分は、この事実を知れば『もはや江守正多の言うことを信じている場合じゃあないみたいだ』と、ぞっとしながら気付くのではないか」。

15.9 気候感度

第12章の第7節で解説したとおり、(平衡)気候感度は0.75℃である。
第2節で見たとおり、「20世紀の世界平均気温上昇は人間活動による温室効果ガスの増加により説明でき、かつそれを抜きにしては説明できない」と言い張っていたけれど、それを真に受けても、IPCC第5次報告書の下限値(1.5℃)にすぎない。
これに対して、江守正多はこのように言い張っている。
(この論説を書いたのは明日香壽川、こと、張壽川だが、張にこのような知識はない。「謝辞」に江守正多の名が見えるから、江守正多の入れ知恵であり、江守正多の主張そのものであると看做してよい。)


しかし、IPCC AR5において下限が広がった理由は、IPCC AR4以降、気候感度の様々な計算方法の一つであるエネルギー・バジェット・アプローチを用いた研究(たとえば Otto et al. 2013)での試算結果が低い数値を示したからである(Mann 2014)。
・・・中略・・・
山口(2014)秋元(2014)は、2015年の先進国首脳会議(G7サミット)で決定した「2050年までに2010年比で40%から70%の幅の上方の削減」のようなレベルのGHG排出削減に疑義を唱える文脈で、エネルギー・バジェット・アプローチを用いた研究である Lewis and Curry(2014)を引用する。確かに、この IPCC AR5後に発表された研究論文は低い気候感度を示している。しかし、この研究論文の方法論や結論に対しては、1)エアロゾール・海洋蓄熱量などに関する最新データを用いていない、2)5-95%信頼区間の数値は他の研究で示されている5-95%信頼区間の数値と大きく変わらない、3)最近のハイエタスが影響している(ハイエタスに関しては後述)、などが指摘されている(Miller 2014Rogelj et al. 2014)。また、IPCC AR5後でも、IPCC AR4での推定の上限に近いような高い数値を示す研究論文(例えば Sherwood et al. 2014Fasullo et al. 2015)がIPCC AR5前と同じように発表されている。
さらに、最近になってエネルギー・バジェット・アプローチが、その簡略化した前提(気候フィードバックは時間的に変化しない)のために気候感度を低く見積もるという方法論的問題を指摘する研究論文が複数発表されている(例えば Armour et al. 2013;Long and Collins 2013)。そのような論文の中には、エネルギー・バジェット・アプローチ自体の考案者である Jonathan Gregory によるものさえある(Gregory et al. 2015)。
・・・中略・・・
また最近になって、1998年以降の気温上昇停滞の一部が、1)極地域における観測地点の不備、2)異なる海水温観測方法を用いた観測データ間の未調整、3)統計的処理の誤り、などによることを示す研究論文が複数発表されている(Cowtan and Way 2014Karl et al. 2015Rajaratnam et al. 2015)。すなわちハイエタスは当初思われていたものより小さかった可能性がある。
・・・中略・・・
しかし、少なくとも現時点において、気候感度の最良推定値を下方修正することに科学者間で合意があるわけではない。


(「気候感度および気温上昇停滞(ハイエタス)に関する最新の科学的知見」より)

「気候感度の最良推定値を下方修正することに科学者間で合意があるわけではない」はコレである。

2016031101図15-7 「Earth Will Cross the Climate Danger Threshold by 2036」より

IPCC報告書も「平衡気候感度は1.5~4.5℃の範囲である可能性が高く」だから、中央値を採れば3℃。
なぜ3℃なのか?
「エネルギー・バジェット・アプローチが、その簡略化した前提(気候フィードバックは時間的に変化しない)のために気候感度を低く見積もるという方法論的問題」と喚いているけれど、「エネルギー・バジェット・アプローチ」で説明できるのだ。
「3)最近のハイエタスが影響している」と言い立てているのは、第12章図12-1の「Historical」と記された黒線に他ならない。
それに依れば、気温は1.1℃上がっている。
「1)エアロゾール・海洋蓄熱量などに関する最新データを用いていない」と言い張っているのは、第12章の第2節で言及した「もしPM2.5の濃度が上昇していなければ、この温度上昇にさらに約0.5度上乗せがあったと見積もられています」に他ならない。
従って、気温はさらに0.5℃上がる。
〆て1.6℃。
第12章の(12-12)式の分子の0.4を1.6に置き換えれば、

(15-1)    \displaystyle \mbox{ECS} = \frac{3.71 \times \, 1.6}{2.29 - 0.3} = 3

というわけである。
「その簡略化した前提(気候フィードバックは時間的に変化しない)のために気候感度を低く見積もる」とは、1)ホッケー・スティック曲線が正しい、2)気温上昇は停滞していない、3)気温上昇はエアロゾルで隠されている、ということに他ならない。
その証拠に、図15-7(の解説)の著者はマイケル・マン。
そして、やはり、人工衛星の観測に頬かむりを決め込み、第13章の第4節の図13-3と第6節で採り上げたNOAAの論文を盾にして、「また最近になって、1998年以降の気温上昇停滞の一部が、1)極地域における観測地点の不備、2)異なる海水温観測方法を用いた観測データ間の未調整」と言い張っている。
さらに、「Rajaratnam et al. 2015」の図1を見ると、第7節で江守正多が「その補正をしていなかったため、擬似的なピークが出てしまったということです。そういう問題がのちにわかったので補正すると、モデルが再現した過去の温度に近くなったのです」と喚き立ていたとおり、1940年前後のピークを消してしまっている。
「3)統計的処理の誤り」を正すと言い立てて、データを改竄したのだ。

「エネルギー・バジェット・アプローチ」を使えば、IPCC学派が言い張っていることの内容が、そのイカサマが理解できる。
前節で見たとおり、「海氷の減少にこれまで異論を唱えていた人の(全部ではないにしても)ある部分は、このグラフを見れば『もはやそこを議論してる場合じゃあないみたいだ』と、ぞっとしながら気付くのではないか」と喚いていたけれど、「温暖化懐疑論にこれまで異論を唱えていた人の(全部ではないにしても)ある部分は、『エネルギー・バジェット・アプローチ』を知れば『もはや江守正多の言うことを信じている場合じゃあないみたいだ』と、ぞっとしながら気付くのではないか」。

第5章の冒頭で引用した朝日新聞社説は「それでも、平均気温の上昇を2度未満に抑えるというこれまでの目標だけでなく、『1.5度未満に抑えるよう努める』と明記した意義は大きい・・・国土の水没を恐れるツバルなど小さな島国の懸命な訴えを、大国も軽んじられなかったのだ」と喚き立てていたけれど、その後、「1.5度未満に抑えるよう努める」に関して、このような論文が発表された。


世界の平均気温上昇2度未満、実現の可能性は5% 研究
2017年8月1日 11:42 発信地:パリ/フランス
2015年に採択された地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」では、世界の平均気温上昇を2度未満に抑える目標が掲げられたが、これが実現する可能性は5%とする研究論文が7月31日、発表された。
世界196か国が参加する同協定では、上昇幅1.5度の努力目標も掲げられた。しかし英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された研究Nature Climate Change,7 (2017)637は、この実現可能性はわずか1%にすぎないとしている。
今回の研究では、人口増加予測値を用いて、今後の化石燃料の生産量やその燃焼で発生する炭素排出量を推算した。
これらのデータから、世界の気温上昇の範囲は2~4.9度になると予想される。中央値は3.2度で、目標の2度未満を達成できる可能性は5%」と論文には記された。
これらの数値は、エネルギー消費を抑制しない場合の最悪のシナリオでの予測値をベースにしたものではなく、温室効果ガス排出量削減のための政策の影響を踏まえたものだと同研究チームは説明。「上昇値を1.5度未満に抑える目標の達成には、炭素強度を近年よりもはるかに速いペースで低下させる必要がある」ともしている。
第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)では、壊滅的な海面上昇や干ばつ、暴風雨、その他の気象への悪影響を避けるため、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2度より「十分に低く」、できれば1.5度程度に抑えるよう努力することで合意した。
国連は、世界人口は現在の約75億人から2100年までに112億人に増加すると推計しており、エネルギー資源がさらにひっ迫する恐れを指摘している。


(AFP)

気候感度は0.75℃だから、CO2を排出し続けても、気温上昇は1.5℃未満に収まる。
「この実現可能性はわずか1%にすぎない」ということは、「温暖化の科学」は99%の確率で破綻している、ということである。
第1節で見たとおり、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析がある・・・97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい」と喚き立てていたけれど、99%の確率で破綻しているのに、「97%は温暖化の科学に合意」と言い張るのだから、嗤るしかあるまい。
IPCCの人為的温暖化説は「最後まで立てこもって守り続けるほどの価値のある主張なのだろうか」。

15.10 アドボカシー

ここまで見たきたとおり、江守正多はメディア上やネット上で発信し続けているが、それに関して、このように言い立てている。


江守:われわれ専門家や科学者の役割は何でしょうか?
シェルンフーバー:私は基礎物理学の出身だ。博士論文では物理学の重要な問題を解いたが、社会的な議論とはまったく関係がなかった。気候科学者も、科学的な水準は基礎物理と同じように高くなければいけない。一方で、気候科学者の知見は社会に直接的な意味を持つ。その点が基礎物理と違う。
たとえば、あなたがウィルス学者だったとして、感染力が強く対処法の知られていない新種のウィルスを発見したらどうするか。論文誌に発表して仲間内だけで議論するのか、それとも政策決定者に伝える責任があると思うのか。気候科学者も同じで、高水準の科学研究を行うと同時に、その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない。ある意味で2つの人格を持つ必要がある。
科学者は政治的主張を避けるべきか
江守:科学者が政治的な主張をすると、その人の科学自体も政治的に偏っているという印象を与え、科学の信頼性を貶めるという見方もあります。科学とアドボカシー(特定政策の提言、擁護)についてどう考えますか?
シェルンフーバー:その問題は私もずっと考え続けてきた。それについて、私のロールモデル(模範となる人物)はアルバート・アインシュタインだ。アインシュタインは間違いなく最も偉大な科学者の一人だが、同時に非常に政治的でもあった。彼は平和、文化、宗教などについて考え、1955年には有名なラッセル=アインシュタイン宣言で軍拡競争に反対した。アインシュタインの人生を見ると、最高水準の科学と、その意味を社会に説明する責任は必ずしも矛盾しないことがわかる。
あなたの科学が社会に高い関連性を持つならば、その意味を社会に説明する道義的責任があると思う。それを仲間内だけで話しているのはほとんど犯罪的ではないか。科学の意味を社会に説明することが科学の質を損なうという誤った考えは、温暖化否定論者が持ち込んだものではないかと思う。
まとめると、アドボカシーはあなたの科学の質を損なわないし、あなたの科学が人類の重大な関心事であるならばアドボカシーはむしろ必要である。


(「『脱炭素』は、産業革命か、共産主義革命か」より。WEBRONZAは購読しないと一部しか読めないけれど、コチラにほとんど同じ文章が掲載されている。)

これ自体はドイツのポツダム気候影響研究所のハンス・シェルンフーバーの台詞だが、これ以前に、江守正多自身が気象学会の会誌「天気,62(2015)591」に書いていたから、江守正多自身の発言と看做してよい。
しかし、江守正多らが何をしてきたかと言えば、第8節で解説したとおり、「『英科学誌に掲載された米カリフォルニア大学の論文』の意味するところを一般市民や政策決定者に説明」せず、「図15-6の意味するところを一般市民や政策決定者に説明」せず、「とうとう見るときがきちゃったのか」と喚き立てただけ。
第6節で解説したとおり、「人工衛星の観測の意味するところを一般市民や政策決定者に説明」せず、「米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した」と喚き立てただけ。
もう一度言うけれど、科学が進歩した結果、ハイエイタスは存在しなかったことが分かったのだ、と言い張るのなら、ハイエイタスの説明を受け入れなかった「温暖化否定論者」の方が正しかった、と認めねばならない。
「温暖化否定論者」の批判は、データを見直してハイエイタスが存在しなかったことを見出す、きっかけとなった、「温暖化否定論者」との科学論争は「科学の意味を社会に説明することが科学の質を高める」好例となった、と言うべきであろう。
ところが、あべこべに「科学の意味を社会に説明することが科学の質を損なうという誤った考えは、温暖化否定論者が持ち込んだものではないかと思う」と罵った。
それは、シェルンフーバーや江守正多らIPCCの面々こそが「科学の意味を社会に説明することが科学の質を損なうという誤った考え」の持ち主であり、IPCCこそが「科学の質を損なう」ことを、つまり、IPCCの非科学性を露呈したのである。

第6節で解説したとおり、逆に、政策決定者である「米国のトランプ政権で環境保護局(EPA)長官に就いたスコット・プルイット氏」は「人工衛星の観測の意味するところを一般市民に説明」した。
にもかかわらず、第3節で見たとおり、ホッケー・スティック曲線をでっち上げたマイケル・マンは「科学との戦争はやめよ」だの、「科学がこれほど攻撃を受けたことはなかった」だのと罵り散らした。
ところが、アメリカ科学振興協会(AAAS)は、そのマイケル・マンを、「その意味を社会に説明する道義的責任」のお手本として賞したのだ。

これが「アドボカシー」の真相。
「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」とは、実のところ、「世界を騙しつづけなければならない」ということに他ならない。
「アドボカシー」とは、すなわち、「科学との戦争」であり、「民主主義の否定だ」。

15.11 2℃目標

第5章の冒頭で引用した朝日新聞社説に見えるとおり、パリ協定(COP21)では、産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑える、という目標が明記されたけれど、その「2℃目標」を仕掛けたのは、誰あろう、ハンス・シェルンフーバー。


2017年10月30日の朝日新聞朝刊紙面より

前節で引用したインタビューでも、自画自賛している。


江守 あなたが「2度目標」の生みの親であるとどこかで読んだのですが、正しいですか?
シェルンフーバー 温暖化を2度で抑えるのが合理的だと言った人は他にもいたが、私の知る限り、それを政治プロセスに持ち込んだのは私が関わったものが初めてだ。1994年にドイツの「地球変動に関する諮問委員会」の中で私が言い出して議論し、1995年にベルリンで行われたCOP1に向けてドイツ政府に提案した。COP1を取り仕切っていたのは現在ドイツ首相であるアンゲラ・メルケルだ。
江守 当時は環境大臣でしたね。
シェルンフーバー 私が彼女に「2度」を提案した。その後、この提案はドイツ政府を通じて欧州理事会で議論され、1996年に欧州理事会の正式な決議になった。
「失われた20年」を振り返る
江守 それからちょうど20年が経っています。今やそれが国際合意になったのはすごいことです。しかし、その20年の間に温室効果ガスの排出量も大気中濃度も上昇を続け、目標の達成はどんどん難しくなってきました。20年間で、「2度目標」に関するあなたの認識は変化しましたか?
シェルンフーバー まず、国際合意になったのは本当にすごいことだ。今やわれわれは気候問題の対策において一つのナラティブ(物語)を共有しているのだから。そして、一つの数字(2度)をも共有している。これが非常に重要だ。世界の気温上昇は、温室効果ガスの排出量の累積に依存するので、残された排出可能な量が規定される。言ってみれば「2度」がすべてを規定するのだ。
一方で、おっしゃるとおり、そこに至るのは非常に遅かった。1996年に欧州理事会が「2度」を採用したときに、中国、米国なども合意していたら……と思うが、もちろんそれは当時不可能だった。中国も、インドも、排出の権利を主張していた。それが政策決定の現実だ。みんなが合意するには、長い長い時間がかかる。20年が失われた。「2度未満」の実現は、20年前は比較的実現性が高かったが、今は非常に難しい。
しかし同時に、この20年の間に2度を超えるべきでない理由がより明らかになった。いくつかの危険なティッピングポイント(大規模で不可逆な影響の起きる閾値)を超えてしまうかもしれないといったことだ。それに、「2度」は非常に難しいが不可能ではない。特にドイツの固定価格買い取り制度導入以降、太陽光発電と風力発電のコストが劇的に安くなってきている。
つまり、失われた20年の間に得られるものもあったということだ。希望はまだある。


(「『脱炭素』は、産業革命か、共産主義革命か」より)

人工衛星の観測に依れば、1998年から気温上昇は停滞しているのだから、「温暖化が失われた20年」であるにもかかわらず、やはり、「人工衛星の観測の意味するところを一般市民や政策決定者に説明」せず、「20年が失われた。『2度未満』の実現は、20年前は比較的実現性が高かったが、今は非常に難しい。しかし同時に、この20年の間に2度を超えるべきでない理由がより明らかになった」と喚き立てているのだから、「アドボカシー」が「世界を騙しつづける」に他ならないことは明らか。
それでも、江守正多は「パリ協定=2度目標」を正当化し続けている。


2017年12月7日の朝日新聞朝刊紙面より

ところが、この論文「Nature,552(2017)45」はこう書いている。


We find that the observationally informed ECS prediction has a mean value of 3.7 °C (with a 25-75% interval of 3.0 °C to 4.2 °C) and that 68% of the observationally informed distribution of ECS is above the raw model mean of 3.1 °C


Nature,552(2017)45」より

(平衡)気候感度は3.7℃だった、と言うのである。
第9節で解説したとおり、「エネルギー・バジェット・アプローチ」を使えば、それが何を意味するかが理解できる。
(15-1)式の  F_{2\times}=3.71  \Delta F=2.29 は動かしがたい数値で、第12章の[注9]で解説したとおり、 \Delta Q=0.3 も最新の「State of the Climate in 2016」で裏づけられているから、気候感度が3.7℃なら、 \Delta T がさらに大きな値になる。

(15-2)     \displaystyle \mbox{ECS} = \frac{3.71 \times 2}{2.29 - 0.3} = 3.7

(15-1)式の  \Delta T は2011年までの値だから、そして、第6節で見たとおり、江守正多自身が「米国の海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は、昨年2016年の世界平均・年平均気温が観測史上最高記録を更新したことを、1月18日に発表した」と喚き立てているのだから、産業革命時からの気温上昇は既に2℃を超えていることになる。
「観測データによるモデルの性能評価を反映させたもので、より信頼性が増した予測と言える」なら、「パリ協定の目標を目指す必要性が、改めて確認された」と言えるはずが無い。
「パリ協定の目標を目指す必要性が、改めて確認された」のなら、「観測データによるモデルの性能評価を反映させたもので、より信頼性が増した予測と言える」はずが無い。
ということは、「パリ協定の目標を目指す必要性が、改めて確認された」も、「観測データによるモデルの性能評価を反映させたもので、より信頼性が増した予測と言える」もデタラメ、ということである。
IPCCの人為的温暖化説(=気候モデル)は全く非科学的なデタラメ、ということである。
第1節で見たとおり、「温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と泣き喚いていたけれど、「観測データによるモデルの性能評価を反映させたもので、より信頼性が増した予測と言える」「パリ協定の目標を目指す必要性が、改めて確認された」と「信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。
「世界を騙しつづける」という「強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。
シェルンフーバーや江守正多らのIPCC学派は「世界を騙しつづける科学者たち」に他ならないことが「改めて確認された」のだ。

15.12 不都合な真実2

しかし、「世界を騙しつづける」のに最も貢献したのは、この男であろう。


2017年11月18日の朝日新聞土曜版の別刷り「be」より


2017年11月18日の朝日新聞土曜版の別刷り「be」より

第7章で解説したとおり、グリーンランドの氷河・氷床は大気汚染が原因で解けているにもかかわらず、尚も「(CO2の排出が原因で)氷河が解けゆくグリーンランド」。
前章の第9節で解説したにもかかわらず、「(CO2の排出が原因で)大型台風に襲われたフィリピン」。
第11章の第10節で解説したにもかかわらず、「(CO2の排出が原因で)海面上昇で路上に水があふれ、魚が泳ぐ米フロリダ州」。

ところが、江守正多はゴアを、そして、この映画を持て囃していた。


ドキュメンタリー映画「不都合な真実2」が映す未来への希望
江守正多 国立環境研究所気候変動リスク評価研究室長
2017年11月10日
「ヒーロー企業にならないか?」
国連の気候変動交渉COP21が開催されているパリから、アル・ゴア元米副大統領が電話をかけ、アメリカの太陽光発電企業ソーラーシティのリンドン・ライブCEOをこんなふうに口説く。交渉で態度の固いインドを軟化させるため、ソーラーシティの太陽光発電技術をインドへ無償提供することを提案するシーンである。
ドキュメンタリー映画「不都合な真実2 放置された地球」が11月17日、日本で公開される。試写を見ながら筆者の脳裏に浮かんだのは、有名な「沈没船ジョーク」だ。
沈没船の船長が、乗客に海に飛び込むよう説得してまわる。まずアメリカ人のところに行き、「ヒーローになりたければ飛び込んでほしい」というとアメリカ人は飛び込む。ゴアのセリフは、可笑しいくらいこれとそっくりだ。ちなみにこのジョークは、イギリス人には「紳士ならば飛び込んでほしい」、ドイツ人には「これは規則だから飛び込んでほしい」という具合に続く。各国の国民性を皮肉っているのである。
気候変動に立ち向かう姿を描く
映画は、2006年に上映された「不都合な真実」の続編であり、前作に続き、アメリカ元副大統領のアル・ゴアが気候変動問題に立ち向かうために世界を変えようと奮闘する姿を描いたドキュメンタリーである。
気候変動(ここでは「地球温暖化」と同じ意味で用いる)は、ご存知のとおり、人間活動に起因する二酸化炭素などの温室効果ガスの排出により、大気の温室効果が強まり、地球の平均気温が上昇する問題である。これに伴い、極端な気象の増加、氷床の融解、海面上昇、生態系の変化などが起き、人間社会に深刻な悪影響がもたらされることが懸念されており、その一部はすでに起き始めていると考えられる。
アル・ゴアは世界各地で講演活動を行い、この問題について人々にわかりやすく語るとともに、一緒に活動する人々を育て、「産業活動に伴う気候の変化が人類に深刻な悪影響をもたらす」という「真実」を「不都合」に思う人たちと戦ってきた。その戦いの歴史を振り返ってみると、あまりの浮き沈みの連続に改めてこの問題の困難さを実感できる。
ゴアと世界の気候変動政策の栄光と挫折
20年前の1997年。京都で行われていた国連気候変動枠組条約の第3回締約国会議(COP3)に、当時アメリカ副大統領だったゴアが乗り込み、京都議定書の交渉を政治決着させた。ゴアのこの問題における最初の栄光の瞬間といえるだろう。
2000年、アメリカ大統領選の民主党候補になったゴアは、共和党候補のブッシュに僅差で敗れる(本当は勝っていたなどの話があるが、公式には敗北であることに変わりない)。ブッシュはアメリカ経済への悪影響を理由に京都議定書の批准を拒否。ゴアと気候変動政策にとっての大きな敗北となった。
2006年、政治家を引退して講演活動を続けていたゴアは、映画「不都合な真実」のスクリーンで人々の前に再び現れる。映画はアカデミー賞を受賞し、翌2007年にゴアは「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)とともにノーベル平和賞を受賞。この映画の効果で世界中の多くの人々が気候変動問題の認識を深めた。再び訪れたゴアの栄光である。(ただし、ゴアの影響でアメリカ国内においては気候変動政策が「リベラルのアジェンダ」とみなされ、社会における保守とリベラルの分断を深めたという批判もある)。
2008年には気候変動政策に積極的なオバマ大統領が誕生。2009年に京都議定書の次の枠組づくりを目指すコペンハーゲンでのCOP15に臨むが(日本では民主党政権が誕生し、鳩山首相が出席)、交渉は失敗におわる。ゴアに目立った出番は無かったが、世界の気候変動政策にとっては再び大きな挫折となった。
しかし、その後のCOPでも粘り強い議論が続けられ、仕切り直しとなった新しい枠組づくりの大舞台となったのが2015年、パリでのCOP21だ。ここで国際社会は歴史的なパリ協定の合意に成功する。パリ協定では、すべての国が対策に参加する形で、長期目標として世界の温室効果ガス排出量を今世紀中に正味でゼロにすること(本質的には「脱化石燃料」といってもよい)に合意したのだ。映画で描かれているように、ゴアにとっても三度目の栄光の瞬間である。
そして現在、アメリカではトランプ大統領が誕生し、パリ協定の離脱を表明した。国際的にはパリ協定の求心力が維持されているが、アメリカ国内においては、三度目の挫折の真っ只中といえるかもしれない。なんという目まぐるしさだろうか。
パリ協定を可能にした世界の変化
しかし、これらの激しい浮き沈みの裏側で、変わらずに進行していた世界の変化が少なくとも3つあった。そのどれもが、パリ協定の合意をもたらした背景として重要なものだ。
一つめは、中国、インドなどの新興国の目覚ましい経済発展である。京都議定書の時代には、途上国は、これまで地球環境を汚しながら発展してきた先進国を非難し、自国の発展の権利を主張し、先進国にのみ対策を求める立場だった。ところが、今や中国、インドやこれから発展する他の国々も対策を行わなければ気候変動は止まらないことが次第に誰の目にも明らかになってきた。
二つめは、気候変動の進行と悪影響の発現である。大気中二酸化炭素濃度は増加の一途をたどり、2014年、2015年には世界平均気温が最高記録を顕著に更新した。アメリカでは2012年にニューヨークとニュージャージーを襲ったハリケーン・サンディーが気候変動の脅威をアメリカ国民に印象付けた。もちろん、個々の異常気象の原因を人間活動に求めることはできないが、気候変動が異常気象の頻度を上げ、威力を強めている可能性は高い。これに加えて、中国やインドなどでは深刻化した大気汚染への対策が化石燃料の利用を削減する大きな誘因となってきている。
そして三つめは、イノベーションによる対策技術の進歩である。再生可能エネルギーや蓄電池などのイノベーションが進み、価格の低下と導入量の伸びがおおかたの予想を大きく上回る速度で起きている。原理的には、再生可能エネルギーのコストが蓄電池などの安定化コストを含めて、化石燃料よりも安くなってしまえば、世界のエネルギー供給は一気に脱化石燃料にシフトしてもおかしくない。現時点ではまだ乗り越えるべき課題が多いが、将来そのようなシフトが実際に起きる可能性が、次第に現実味を増してきている。
途上国の象徴としてのインド
「不都合な真実2」で描かれているインド政府の交渉ポジションは、象徴的にこれらの変化を反映しているようにみえる。
映画で描かれているように、奇しくもCOP21の期間中にインドのチェンナイで大洪水が起きた。インドでは毎年のように熱波や洪水で多くの犠牲者が出ており、気候変動への危機感はもともと強かっただろう。しかし、チェンナイの洪水被害が象徴的にモディ首相をはじめインド政府のパリ協定合意への決意を新たにさせた効果はあったかもしれない。


(「京都議定書からパリ協定へ アル・ゴアの20年」より。WEBRONZAは購読しないと「そして三つめは」以下が読めないけれど、コチラに全文転載されている。)

第10節で見たとおり、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」と言い立てながら、ゴアの非科学性を説明するどころか、自らも「アメリカでは2012年にニューヨークとニュージャージーを襲ったハリケーン・サンディーが気候変動の脅威をアメリカ国民に印象付けた」と煽り立て、前章の第6節で解説したにもかかわらず、「映画で描かれているように、奇しくもCOP21の期間中にインドのチェンナイで大洪水が起きた。インドでは毎年のように熱波や洪水で多くの犠牲者が出ており、気候変動への危機感はもともと強かっただろう」と同調し、またしても、人工衛星の観測には知らぬ顔の半兵衛で、「大気中二酸化炭素濃度は増加の一途をたどり、2014年、2015年には世界平均気温が最高記録を顕著に更新した」と喚き立てる有様。
やはり、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」とは、「世界を騙しつつけなければならない」ということである。

その証拠に、上の文章の最後では、こんな暴言を吐いている。


では私たちは日本をどうすべきか
冒頭の「沈没船ジョーク」のオチはこうだ。ほとんどみんなが飛び込んだ後、船長は最後に日本人のところにやってきて言う。「みんな飛び込んでいますよ。さあみなさんも……」
パリ協定の合意の半年ほど前、2015年6月に世界で一斉に行われた「世界市民会議」という社会調査によれば、世界平均では3分の2の人が「気候変動対策は生活の質を高める」と回答している一方、日本では3分の2が「気候変動対策は生活の質を脅かす」と回答した。日本では、気候変動対策に我慢、辛抱、負担のイメージがいまだに付きまとう。まず、この時代遅れな後ろ向きの感覚を、前向きに変えていこう。
そして、日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか遠慮なく、新しい競争でいち早くチャンスをつかむために、脱化石燃料という挑戦の海原に果敢に飛び込んでいってほしい。ゲームのルールが変わっているのに、自分たちだけが古いルールに従ったまま苛烈な国際競争に参加しているとしたら…。そんな状況は、想像するだけで恐ろしいではないか。


(「京都議定書からパリ協定へ アル・ゴアの20年」より。上で述べたとおり、WEBRONZAでは購読しないと読めないけれど、コチラで読める。)

「パリ協定の合意の半年ほど前、2015年6月に世界で一斉に行われた『世界市民会議』という社会調査によれば・・・日本では3分の2が『気候変動対策は生活の質を脅かす』と回答した」はコレである。


温暖化対策:生活脅かす? 「質高める」世界平均66% 日本わずか17%
「地球温暖化対策は生活の質を向上させる」と考える市民が、世界平均では66%に上るのに対し、日本では17%にとどまるとの意識調査結果が、11日閉幕した国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の準備会合で報告された。温暖化への懸念は共通していても、対策が日常生活に与える影響への受け止めには市民レベルでも各国に差がある実態が浮かぶ。
調査は同条約事務局などが主催し、日本時間の6~7日、79カ国計100会場で計1万人を対象に実施。年齢、性別、職業などが各地域の縮図になる構成で各会場100人を集め、少人数で議論をした後、29の質問に答えた。日本では6日に東京都内で開かれた。
集計結果によると、温暖化の被害を「とても心配している」と回答したのは世界平均で79%。「ある程度心配している」も含めると、二酸化炭素(CO2)排出量が最も多い中国は89%で、日本、米国、インドはいずれも9割を超えた。2013年に巨大台風に襲われたフィリピンは100%だった。
「温暖化対策が生活の質を高める」と答えたのは、世界平均で66%。フランスは81%に達し、米中印も過半数を占めた。一方、日本は17%で、逆に対策が「生活の質を脅かす」と考える人が60%に上った。
現在の同条約では、中国やインドは「途上国」の位置づけで、課せられている責任が先進国と異なるが、今後もこの扱いを変えないことに日本で賛成したのは2%。インドも8%だったが、中国は28%で、途上国間でも傾向が分かれた。【大場あい】


(毎日新聞 2015年06月13日 東京朝刊)

「世界市民会議」と嘯いているけれど、「国連気候変動枠組み条約の事務局が主催し」た。
「年齢、性別、職業などが各地域の縮図になる構成」と嘯いているけれど、環境NPOのメンバーが紛れ込み、「温暖化対策が生活の質を高める」という結論に誘導しようと図ったことは明白。
にもかかわらず、「対策が『生活の質を脅かす』と考える人が60%に上った」。
一般市民に質問すれば、「対策が『生活の質を脅かす』と考える人が97%に上った」だろう。
「世界平均では3分の2の人が『気候変動対策は生活の質を高める』と回答している」と喚いているけれど、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」と言ったのだから、「日本では3分の2が『気候変動対策は生活の質を脅かす』と回答した」という事実に真摯に向き合って、今まで以上に「その意味するところを一般市民に説明」に努めねばならない、と言うかと思いきや、「この時代遅れな後ろ向きの感覚」と見下した挙句、「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか遠慮なく」と言い放ったのだ。
第1節で見たとおり、「温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と喚いていたけれど、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」と言いながら、「どうか(一般市民に)遠慮なく」と言い放つのは「よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。

実は、これ以前にも、こんな高言を吐いていた。


2つめに、大転換を起こすために社会のほとんどの人たちが問題に関心を持ち、科学的知見と倫理的規範を共有する必要は、必ずしも無い。
科学と倫理は「点火」の段階でのみ必要なのであり、制度ができて経済にまで火が付けば、あとは勝手に燃え広がる。問題に無関心な人が多くいたとしても、彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう。


(「温暖化対策計画 2050年80%削減は可能? 『分煙革命』を参考に考える『脱炭素革命』の意味」より)

これまた、第1節で見たとおり、「世界の首脳が集まってたいへんな交渉の末に合意に至った今回のCOP21がすべて茶番であると信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」と喚いていたけれど、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」と言いながら、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」と「信じ続けることにも、相当に何かが必要だろう」。
本当に「その意味するところを一般市民に説明しなければならない」と思っているのなら、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」だの、「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか遠慮なく」だのの台詞は絶対に出てこない。
「その意味するところを一般市民に説明しなければならない」は「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか遠慮なく」と全く相容れない。
やはり、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」とは、「世界を騙しつづけねばならない」ということだった。
だから、「日本では3分の2が『気候変動対策は生活の質を脅かす』と回答した」のを見て、つまり、市民を騙せないと見るや、一転して市民に背を向け、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか(一般市民に)遠慮なく」と言い放ったのだ。

そこで、もう一度、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」という台詞を見直すと、シェルンフーバーがドイツ語で喋ったのか、英語で喋ったのかは定かでないが、それを日本語に訳したのは江守正多だから、江守正多が「政策決定者」と考えているわけである。
しかし、江守正多が執筆者のIPCC報告書の要約の英語名は「Summary for Policymakers」。
英和辞典で調べたら、「policy-maker」の日本語訳は「政策立案者」。
この訳語は尤もである。
(但し、本稿では中間を採って「政策策定者向け要約」と記しているけれど。)
議院内閣制において、内閣の大臣等は一部の例外を除いて国会議員であり、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ(憲法66条)」から、そして、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である(憲法41条)」から、「決定者」は国会議員である。
そして、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する(憲法43条)」から、最終的な「決定者」は一般市民である。
一般市民には専門知識がなく、政策を立案できないから、専門家や官僚が立案するけれど、彼らは「政策決定者」ではない。
にもかかわらず、「一般市民」と対峙させて「一般市民や政策決定者」と言うのは、専門家や官僚が「政策決定者」と言うことに他ならず、始めから市民を排斥しているのだ。
だからこそ、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか(一般市民に)遠慮なく」と言い放ったのだ。

国民の血税で生活する身でありながら、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない(憲法第15条第2項)」にもかかわらず、「政策決定者」、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」、「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか(一般市民に)遠慮なく」と高言して憚らないのは「相当に何かが必要」で、「よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。
その「相当に何か」と「強い動機と思い込み」は、「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか遠慮なく」と言い放った論説に、ハッキリと表れている。


ゴアの希望と、パリ協定のパラダイムシフト
さて、アメリカ連邦政府の態度が気候変動問題に関して絶望的な状況にありながらも、現在のゴアはこの戦いの「勝利」に関して楽観的であり、希望に満ち溢れている。これはもちろん映画の大部分がトランプ政権誕生前の材料に依っているせいでもあろうが、ゴアの希望にはもっと確かな根拠があるように感じられる。
京都議定書とパリ協定ではパラダイムが変わった、ということがよく言われる。京都議定書の交渉は、負担の押し付け合いのゲームだった。しかし、パリ協定以降の世界は機会(チャンス)の取り合いのゲームに変わった。今世紀中に世界が脱化石燃料を目指す流れは定まり、その移行の過程をいかにリードし、その過程で生じるビジネスの機会をいかにものにしていくかという新たな競争が始まったのだ。
トランプ政権がパリ協定の離脱を表明しても、米国内の多くの大企業が再生可能エネルギー100%の目標を掲げ、気候変動対策に積極的に取り組んでいる事実が、雄弁にそのことを物語っている。


(「京都議定書からパリ協定へ アル・ゴアの20年」より。これもコチラで読める。)

第3節で見たとおり、「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化懐疑論・否定論活動の存在である。身も蓋もなくいえば、気候変動政策を妨害するために、その基礎となる科学に対する不信感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている言論活動があるということだ」と泣き喚いていたけれど、自身は「ビジネスの機会をいかにものにしていくかという新たな競争が始まったのだ」と言い放った。
「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な『世界を騙しつづけるIPCCの科学者たち』の存在である。身も蓋もなくいえば、気候変動政策を正当化するために、その基礎となるIPCCに対する信頼感を人々に植え付ける効果を狙って意図的に展開されている疑似科学があるということだ」。
そんな連中に騙され続けていたら、私たち一般市民の生活はどうなるのか?
「想像するだけで恐ろしいではないか」。

15.13 「97%の宗教」vs. 「3%の科学」

IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説の非科学性を世界に知らしめたのがコレであろう。


ローマ法王、地球温暖化に警鐘 公文書で呼びかけ
2015年6月19日07時52分
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は18日、環境問題に特化した公文書を発表し、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出、海洋の酸性化といった環境汚染が続けば、「今世紀は並々ならぬ気候変動と空前の生態系破壊を目撃することになる」と警鐘を鳴らした。
法王は、道徳や教義への法王の立場を示す公文書「回勅」の中で、「数々の科学研究が、ここ数十年の地球温暖化の原因は主に人間活動の結果排出される温室効果ガスの濃縮によるものだと示している」と指摘。温室効果ガスを排出し続けて経済成長を遂げた先進国が、貧困の克服や社会の発展を目指す途上国の温暖化対策に技術などで協力するよう呼びかけた。一方、二酸化炭素の排出量取引については、現状が必要とする「根本的な変化」につながらず、過度の消費を維持したい国々の策略に使われかねないと指摘した。
温暖化対策を巡っては、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、京都議定書に続く新しい枠組みで合意できるかが焦点。カトリック信者は12億人おり、法王の呼びかけが、カギとなる途上国の動きに影響を与えるか注目される。(アテネ=山尾有紀恵)


(朝日新聞デジタル)

江守正多は、このように囃し立てていた。


また、米国の温暖化懐疑論勢力の一部はキリスト教原理主義の宗教保守により支えられてきたと考えられるが、今年6月にローマ法王が地球温暖化の重大性を大々的に認め、温暖化を止めるための文化的革命まで世界人類によびかけてしまったものだから、宗教保守勢力の懐疑論離脱も進むことが想像される(ちなみに、イスラム、仏教、ヒンズーといった他の様々な世界宗教からも、宗教指導者による気候宣言が出されている)。


(「それでも寒冷化が正しいと思っている方へ 世界でも撤退が目立つ温暖化科学への懐疑論」より)

第10節で見たとおり、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」と言っていたけれど、それが真意なら、「よびかけてしまったものだから」などという台詞は出てこない。
「よびかけてしまったものだから」と言うのは、ローマ法王が呼びかけさえすれば、カトリック信者は盲従する、と言う以外の何物でもなく、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」と全く相容れない。
第11節で見たとおり、「パリ協定の目標を目指す必要性が、改めて確認された」と言い張っていたけれど、「よびかけてしまったものだから」と口を滑らして「しまったものだから」、「その意味するところを一般市民や政策決定者に説明しなければならない」は「世界を騙し続けねばならない」に他ならないことが「改めて確認された」。

第3節で見たとおり、「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、欧米の産業界の一部の意を汲むといわれる組織的な温暖化懐疑論・否定論活動の存在である」と泣き喚いているけれど、それは、裏を返せば、「温暖化論争をフォローするうえでぜひ知っておいて頂かなければいけないことは、江守正多らIPCCの面々に科学論争を挑んで勝利した温暖化懐疑論・否定論活動の存在である」ということに他ならない。
江守正多らは温暖化懐疑論・否定論との科学論争に敗れて「しまったものだから」、その結果、前節で見たとおり、世界を騙しにくくなって「しまったものだから」、ローマ法王に泣きついたのだ。
その証拠に、ローマ法王を誘い出したのはハンス・シェルンフーバー。


シェルンフーバーさんは、ドイツのアンゲラ・メルケル現首相が環境大臣であった20年前から、気候問題について彼女の科学アドバイザーを務めてきた。また、昨年6月にローマ法王が発表した気候変動問題についての「回勅」の作成においても中心的な役割を果たした。


(「『脱炭素』は、産業革命か、共産主義革命か」より)

前節で見たとおり、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」と言い放ったけれど、「よびかけてしまったものだから」はそれと全く同じ意図。
ローマ法王に「従うようになるだけだろう」と期待しているのだ。
第6節で解説したとおり、ハイエイタスでIPCCの人為的(排出CO2)温暖化説の非科学性が露呈して「しまったものだから」、宗教にすがりついたのである。
その証拠に、江守正多は、こんなことを書いていた。


そこに登場するのが、敬虔なキリスト教徒であると同時に気候科学者であるテキサス工科大学のキャサリン・ヘイホー准教授である。しかも、彼女の夫は牧師だ。夫はこう語る。「私は敬虔なキリスト教徒だし、共和党員だし、あらゆる意見は保守的だ。同時に、気候変動の科学を信じている。気温計は共和党員でも民主党員でもないのだからね。」
保守的なキリスト教徒たちに向けた、キャサリン・ヘイホーの気候変動の講演が、科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていくのかは、ぜひ本編をご覧頂きたい。


(「米国のドキュメンタリー番組が描く気候変動と社会」より。これも購読しないと一部しか読めないけれど、コチラに転載されている。)

「キャサリン・ヘイホーの気候変動の講演が、科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていくのかは、ぜひ本編をご覧頂きたい」と囃し立てているけれど、第13章の第7節で紹介したとおり、キャサリン・ヘイホーも、人工衛星のデータに頬かむりを決め込んで、「温暖化が止まったという見方は科学者の間では完全に否定されている」と喚き立てていた。
人工衛星のデータから目を逸らし、IPCCのデタラメを「科学」と見せかけるために、「科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていくのかは、ぜひ本編をご覧頂きたい」と囃し立てていることは明らかだろうが、それをより深く理解するために「ぜひコレをご覧頂きたい」。


人は科学的根拠に基づく事実を知ったところで、信じたくないものは信じない(米研究)
2014年7月11日
ピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ人の33%が進化論を信じておらず、26%が地球温暖化を否定しているそうだ。これらを信じるか信じないかは、個人の信条、宗教や支持する政党によって大きく異なる。例えば、地球温暖化に関しては、共和党支持者の46%が否定するが、民主党支持者でこれを否定する人の割合は11%である。
アメリカの研究者らがこの件に関しての研究を行ったところ、人は、どんなに科学的根拠を積み上げて説得していっても、信じたくないものは信じないということがわかった。
コネチカット州、エール法科大学院の教授、ダン・カーハン氏率いる研究チームは、信仰心のあつい人とそうでもない人に、進化論を信じるか?信じないかに関する調査を行った。次に進化論についての知識に関するテストを行った。
その結果、信仰心のあつい人もそうでもない人も科学的知識に差がないことがわかった。また、例え正しい知識を持ち合わせていても、信仰心のあつい人は進化論を否定する傾向が強いこともわかった。これは何を意味するか?人は例え真実を知っていたとしても、信じたくないものは信じないのだ。
世の中の多くの人々は、実際には思っているより科学的根拠に基づく知識を持っている。ただしそれが自分の理念や信条、政治的・宗教的な見解とぶつかるような場合には、それを認めたくないのだ。
大量破壊兵器やワクチン問題、健康被害などについて話す時もそうだ。科学的証拠をどんなに突きつけたところでそれが逆効果になり、頑なに自分の信じていることを曲げない人がいる。人は、事実がどうであるかよりも、自分の立場が大切なのだ。カーハン氏の今回の研究は、人がなぜそうなるかについての理解を深めるのに役立つかもしれない。
「我々のアイデンティティと、”科学的な根拠に基づく真実”、を切り離して考えればよいのだ。例えば、ボブ・イングリス共和党前議員や、福音派のキリスト教徒であり気象学者であるキャサリン・ヘイホーのように、アイデンティティと関係なく、人間がこの温暖化をもたらしていると信じることはできる。」
「それにはまず最初に、政治的、宗教的指導者や発言力を持った著名人が、間違った情報を拡散するのを減らす必要がある。」カーハン氏はそう語る。
一度文化的、政治的な視点ができあがってしまうと、例え事実がどうであろうと、それがどのようなメッセージに使われている場合でも、人々の信念を元の白紙状態に戻すことはとても難しいのだ。
もっとも問題なのが、普通に生活を送る一般市民が、自らの価値観や理念に関係した問題に、特定のアイデンティティをもつ団体が下心をもって関与してくるということだ。
これらの団体は、大衆を動員し、大衆の利益の代弁者のようにふるまうが、これは偏極した時代の最も有毒な副産物であり、「事実」を隠ぺいしている場合もある。

残念ながら現状では、科学的根拠に基づく真実を知ったところで、結局のところは真実を信じていることの代用にはならない。


(カラパイア)

「我々のアイデンティティと、”科学的な根拠に基づく真実”、を切り離して考えればよい」ということは、科学と宗教を切り離す、ということに他ならないから、「科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていく」と囃し立てるのはおかしい。
「科学と宗教の対立をどのように解きほぐしていく」とは、すなわち、「科学のアイデンティティと、”科学的な根拠(人工衛星のデータ)に基づく真実(ハイエイタス)”、を切り離して考えれば」、「キャサリン・ヘイホーのように、科学のアイデンティティと関係なく、人間がこの温暖化をもたらしていると信じることはできる」ということである。
「IPCCの人は例え真実(人工衛星のデータ)を知っていたとしても、信じたくないもの(ハイエイタスと気候モデルの破綻)は信じないのだ」。
もちろん、人工衛星のデータだけではない。
前節で解説したとおり、「科学的証拠をどんなに突きつけたところでそれが逆効果になり、頑なに自分の信じていることを曲げない人(アル・ゴアと江守正多)がいる」。
ホッケー・スティック曲線の虚構は科学的に立証されているにもかかわらず、第3節で見たとおり、「筆者の認識では、彼らはデータの改ざんなど行っていない」と言い張るのは、「IPCCの人は、どんなに科学的根拠を積み上げて説得していっても、信じたくないものは信じないということがわかった」。
「保守的なキリスト教徒たちに向けた、キャサリン・ヘイホーの気候変動の講演」は「普通に生活を送る一般市民が、自らの価値観や理念に関係した問題に、特定のアイデンティティをもつ団体が下心をもって関与してくる」の典型。
ローマ法王の「回勅」は「偏極した時代の最も有毒な副産物」。

第3節で指摘したとおり、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析」を発表したのは「Skeptical Science」の面々であり、その後も、キャサリン・ヘイホーと組んで、「97%の側の科学者がどんなに厳密な相互検証を繰り返してその合意に至っているのかについても、想像をめぐらせてみてほしい」と喚き立てる論文(もどき)「Theoretical and Applied Climatology,126 (2016)699」を書いているけれど、「審査を経て出版された学術論文の97%は温暖化の科学に合意した内容であるという分析」の元は「PNAS,107(2010)12107」。
その「abstract」には「温暖化の科学に合意」の正体がハッキリと表れている。


Here, we use an extensive dataset of 1,372 climate researchers and their publication and citation data to show that (i) 97-98% of the climate researchers most actively publishing in the field surveyed here support the tenets of anthropogenic climate change outlined by the Intergovernmental Panel on Climate Change


(「PNAS,107(2010)12107」の「abstract」より)

自然科学の他の分野で「tenet」という言葉にお目にかかることはまずないだろう。
JST科学技術用語日英対訳辞書に依れば、「tenet」とは「教条」、すなわち、「教会が公認した教義」。
(最も一般的であろうと思われる「研究社の新英和中辞典」でも「(個人または集団が信奉する)主義、教義」だから、本質的に同じ。科学において「仮説」は存在しても「教義」は存在しない。科学者は「仮説」を「信奉」などしない。)
「科学的証拠をどんなに突きつけたところでそれが逆効果になり、頑なに自分の信じていることを曲げないIPCCの人がいる」のも理の当然。
ローマ法王に「回勅」を求めたのも理の当然。

ホッケー・スティック曲線をでっち上げたマイケル・マンは、第6節で解説したとおり、人工衛星のデータ(UAH)を葬り去るためにRSSの改竄に手を貸し、第3節で見たとおり、「科学の否定は民主主義の否定だ」「科学との戦争はやめよ」と喚き立てていたけれど、その最中に、UAHの John Christy の研究室に銃弾が打ち込まれた。(コチラを参照。)
IPCCの人為的(排出CO2)温暖化説こそが「科学との戦争」である。
前節で見たとおり、「日本の政治やビジネスのリーダーは、どうか(一般市民に)遠慮なく」、「彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう」と言い放ったけれど、それは「民主主義の否定」に他ならない。
「科学(=IPCC批判)の否定は民主主義の否定だ」!

[注1] 図15-3は5つのデータの平均値だが、個々のデータを示したのが下図。

20161602
図15-8 「Environ.Res.Lett.,6(2011)044022」より

しかし、第10章図10-14に見えるとおり、人工衛星のデータ(UAHとRSS)からENSOの影響と火山噴火の影響を取り除けば、1993年以降に気温はほとんど上がっていない。
図15-4は全くのイカサマ。
図10-14の論文は「Nature Geoscience」。
第1節で見たとおり、「その Nature や系列紙の Nature Climate Change、Nature Geoscience といった雑誌に、温暖化の科学が正しいことを前提とした論文が常に何本も掲載されているのだ。そのことを考えると、温暖化がウソだったり間違いだったり不正だったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」と喚き立てながら、図10-14には目もくれず、「今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていた」と言い張っていたのだ。
「そのことを考えると、温暖化がウソでなかったり、間違いでなかったり、正しかったりすることを信じ続けるためには、よほど強い動機と思い込みが必要であるように筆者には思われる」。

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