IPCC第5次報告書の市民向け要約

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2013年9月28日の朝日新聞朝刊紙面より

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2013年10月2日の朝日新聞夕刊紙面より

13.1 シンプルな比例関係

第11章で解説したとおり、IPCCの人為的温暖化説に依れば「CO2濃度が増えるほど気温が上がる」にもかかわらず、京都議定書以降は気温上昇が停滞し続け、IPCCの第5次報告書が公表される前年まで、停滞は15年間に及んでいた。
上記の2013年10月2日の朝日新聞記事に見えるとおり、「温暖化に否定的な人たちが論拠の一つにしてきただけに、どう説明するのかにも注目が集まった」わけだが、IPCCはどう説明したか?


数十年にわたる明確な温暖化に加えて、世界平均地上気温はかなりの大きさの十年規模や年々での変動性を含んでいる。自然の変動性のために、短期間の記録に基づく変化傾向はその期間の始めと終わりの選び方に非常に敏感であり、一般には長期的な気候の変化傾向を反映しない。一例として、強いエルニーニョ現象の年から始まる過去15年の気温の上昇率(1998~2012年で、10年当たり0.05 [-0.05~0.15] ℃)は1951年以降について求めた気温の上昇率(1951~2012年で、10年当たり0.12 [0.08~0.14] ℃)より小さい。


(「IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約」の3ページより)


長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について観測と一致する変化傾向を示している(非常に高い確信度)。しかしながら、10~15年間程度の短い期間においては、シミュレーションにより再現された変化傾向と観測された変化傾向に違いが見られる(例:1998年から2012年)。
観測によると、1951年から2012年の期間に比べ、1998年から2012年の期間における地上気温の上昇の変化傾向は弱まっている。これは放射強制力の変化傾向の弱まりと、自然起源の内部変動性がもたらす寒冷化が概ね同程度に寄与しており、後者には熱が海洋中で再配分されている可能性も含まれる(中程度の確信度)。放射強制力の変化傾向の弱まりは主に火山噴火と、11年周期の太陽活動が下降位相の時期にあることによる。しかしながら、温暖化の変化傾向の弱まりにおける放射強制力の変化の役割を定量的に評価した結果の確信度は低い。十年規模の自然起源の内部変動性が、かなりの程度で観測とシミュレーションの違いを引き起こしていることの確信度は中程度である。


(「IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約」の13ページより)

気候モデルシミュレーションの予想に反して、1998年以降は気温上昇が停滞しているにもかかわらず、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について観測と一致する変化傾向を示している(非常に高い確信度)」と言い張り、「短期間の記録に基づく変化傾向はその期間の始めと終わりの選び方に非常に敏感であり、一般には長期的な気候の変化傾向を反映しない」と居直る体たらく。[注1]
政策策定者向け要約の筆頭編集者&執筆者をも兼ねる「作業部会のトーマス・ストッカー共同議長」もこのように言い張っていた。


CO2削減:待ったなし IPCC第1作業部会、ストッカー共同議長に聞く
地球温暖化の科学について最新報告書を9月に公表した国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第1作業部会のトーマス・ストッカー共同議長(54)が今月来日し、毎日新聞の取材に応じた。「気温上昇を抑えるには数年以内に世界の二酸化炭素(CO2)排出を減少に転じさせねばならない」と警鐘を鳴らした。
・・・中略・・・
●「小休止」はゆらぎ
--温暖化人為説には今なお懐疑論が根強くあります。この15年間、地球の気温は横ばいで「温暖化は止まった」と主張する学者もいます。
◆間違いです。1998~2012年の気温上昇率は年0.005度で、この「小休止」は確かに興味深い。しかし、これは過去に繰り返された自然のゆらぎと考えられます。96~10年の上昇率は年0.014度。基準年を2年早めただけで上昇率は約3倍になります。15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません。
--報告書は、大気中に放出されたCO2の累積量と気温上昇とが正比例の関係にあると初めて指摘しました。
◆シンプルな比例関係ですよね。100年前に放出されたCO2が今日の気候に影響を及ぼしているということです。同様に、今日の放出が50年後、100年後に影響することを意味します。


(毎日新聞 2013年12月13日 東京朝刊)

やはり、「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」と居直っているが、それは彼らの狼狽を露呈しているのだ。
「シンプルな比例関係ですよね」と言い立てているのは下図の黒線である。

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図13-1 政策策定者向け要約の図10

それは気候モデルシミュレーションの結果だが、第11章で解説したとおり、「The simulations rule out (at the 95% level) zero trends for intervals of 15 yr or more」。
「基準年を2年早めただけで上昇率は約3倍になります」はその証左であり、「基準年を2年早めただけで上昇率は約3倍になります」から「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」ではなく、「基準年を2年早めただけで上昇率は約3倍になります」から、「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れます」。
(11-2)式で計算したとおり、黒線は1998年以降に0.3℃上がっているが、実際には上がっていないにもかかわらず、黒線を論拠にして「シンプルな比例関係ですよね」と言い張るのだから、「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」が破廉恥な居直りにすぎないことは明らかである。

上記の2013年9月28日の朝日新聞に見えるとおり、IPCC報告書の「非常に高い確信度」とは「95%の確率」を意味する。
「The simulations rule out (at the 95% level) zero trends for intervals of 15 yr or more」だから、IPCCは「非常に高い確信度」で、気温上昇の停滞は15年間以上続かないと考えていた。
その証拠に、政策策定者向け要約の執筆者に唯一人の日本人として名を連ねている江守正多はこのように自白している。


地球温暖化、どこまで深刻か 江守正多氏と田中博氏に聞く
・・・前略・・・
■「長期間の中断は意外」
――世界の平均気温が上がらなくなった「ハイエイタス(中断)」問題をどう見ますか。
温暖化の科学が間違っている証拠になるとはまったく思わない。太陽活動が弱まった結果、(地球を宇宙線から守る磁場が弱まり)地球に届く宇宙線が増えて雲の生成を促し、日射が遮られて気温が上がらなくなるとの説もあるが、人工衛星のデータでは地球が吸収する熱は減っていない。正味のエネルギーは増え続けている」
エネルギーは海の中に潜っていて、表面に分配されないだけと考えられる。何らかの変動が起きれば、逆に表面の方が多くなり気温も上がるかもしれない。海のエネルギー吸収は最近、研究が進んだのでこれからモデルの改善に生かされるだろう」
ハイエイタスが90年代終わりから続いているのは率直に言って意外だ。いずれ上昇に転じるだろうが、実際に上がらない限り、最新の論文をもとに科学的な説明を試みても温暖化を信じない人は聞く耳をもたないのではないか


日本経済新聞紙上より)

「温暖化の科学」に「非常に高い確信度」があれば、気温上昇の停滞は15年間以上続かないはずだから、「率直に言って意外」なのである。[注2]
にもかかわらず、尚も「温暖化の科学が間違っている証拠になるとはまったく思わない」と言い張り、「最新の論文をもとに科学的な説明を試みても温暖化を信じない人は聞く耳をもたないのではないか」と捨て台詞を吐いているが、1998年以降の気温上昇停滞は「温暖化の科学が間違っている証拠になる」。
「非常に高い確信度」で「温暖化の科学が間違っている」と言える。
なぜならば、「この15年間、地球の気温は横ばい」は15年間だけの問題ではないからである。
「科学的な説明を試みても江守正多らIPCCの面々は聞く耳をもたないのではないか」と思うけれど、以下の節で説明しよう。

13.2 1998年以降の気候変動=20世紀後半の気候変動

下図の赤線は気候モデルシミュレーションにおける「自然のゆらぎ」を示している。

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図13-2 IPCC第5次報告書第10章の図10-1(b)

「長期間にわたる気候モデルシミュレーション」では、1951年から2012年の世界平均地上気温の上昇に「自然のゆらぎ」は全く寄与していない。
「長期間にわたる気候モデルシミュレーション」では、20世紀後半以降の気温上昇は専ら人為起源である。
実際、政策策定者向け要約は次のように記している。


1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上は、温室効果ガス濃度の人為的増加とその他の人為起源強制力の組合せによって引き起こされた可能性が極めて高い。温暖化に対する人為起源の寄与の最良の見積もりは、この期間において観測された温暖化と同程度である。


(「IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約」の13ページより)

日本語の感覚では「半分以上」なら3分の2程度だが、「温暖化に対する人為起源の寄与の最良の見積もりは、この期間において観測された温暖化と同程度」ということは、100%人為起源ということである。
その証拠に、江守正多は、「半分以上」とは大部分の意味、と言っている。


地球温暖化、どこまで深刻か 江守正多氏と田中博氏に聞く
・・・前略・・・
「もっとも、過去をうまく再現できるだけではモデルが正確とは言い切れない。2つ以上の計算誤差が打ち消し合って、正確であるかのように見えるのかもしれない。気候変動の科学が何か大事なものを見落としている可能性はゼロではないが、いまのところ間違いを示す証拠はない」
――IPCCの第5次報告書は、人間の活動が20世紀半ば以降の温暖化の支配的な要因だとほぼ断言しています。
「前回報告書の頃に比べて海の観測データなどが増え、計算モデルも改善された。大気中の微粒子(エーロゾル)が熱の出入りにどう影響するかの理解も進んだ。地球がどれだけのエネルギーを受け取り、どのように気温上昇をもたらしたかがより正確に見積もれるようになった」
・・・中略・・・
第5次報告書では気温上昇の『半分以上』が人為的な原因で起きた可能性は極めて高く、確信度は95%以上とした。文脈から考えて半分以上とは前回報告書と同様、『大部分』の意味と受け取ってよい。」


日本経済新聞紙上より)

しかし、図13-1で見たとおり、IPCCに依れば、1998年以降の15年間に気温は0.3℃上がっているはずだから、それが「自然のゆらぎ=自然起源の内部変動性がもたらす寒冷化」で打ち消されたのなら、逆に、20世紀後半は「自然のゆらぎ=自然起源の内部変動性がもたらす温暖化」で0.3℃上昇していたはずである。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は15年間だけの問題では済まない。
20世紀後半以降60年間の問題になるのだ。
IPCC第5次報告書第10章の883ページに依れば、「Over the 1951-2010 period, the observed GMST increased by approximately 0.6°C」だから、「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分だけが、温室効果ガス濃度の人為的増加によって引き起こされた可能性が極めて高い」。[注3]

「温室効果ガス濃度の人為的増加によって引き起こされた」気温上昇は60年間で0.3℃だから、10年当りで0.05℃。
政策策定者向け要約の3ページに拠れば「一例として強いエルニーニョ現象の年から始まる過去15年の気温の上昇率(1998~2012年で、10年当たり0.05 [-0.05~0.15] ℃)」。
「この15年間、地球の気温は横ばい」こそが「温室効果ガス濃度の人為的増加によって引き起こされた」温暖化である。
「15年という短い尺度で長期の(人為的)気候変動は測れます」
因みに、IPCC第5次報告書第5章の392ページに依れば「Global surface temperature has increased by approximately 0.8°C from 1870 to 2010」であるにもかかわらず、上記の2013年9月28日の朝日新聞記事に見えるとおり、IPCCは「1880~2012年の気温上昇0.85℃」と強調している。
先に見たとおり、「短期間の記録に基づく変化傾向はその期間の始めと終わりの選び方に非常に敏感であり」と言い立てていたくせに、恣意的な「期間の始め(1880年)と終わり(2012年)の選び方」で気温上昇を出来るだけ高く見せようと小細工を弄している。
たった0.05℃の上乗せとは言え、人為的排出CO2に因る気温上昇10年分だから、バカにならない。

上記の2013年9月28日の朝日新聞記事の中で「近未来の予測を担当した木本昌秀・東京大学大気海洋研究所教授」が「温暖化はいずれ戻ってくる」と言い張り、2013年10月2日の朝日新聞が「水温の上昇が深層から海面近くに変わることによって、再び地上気温が急激に上昇する可能性は否定できない」と言い立て、江守正多も「何らかの変動が起きれば、逆に表面の方が多くなり気温も上がるかもしれない」と言い張っているけれど、IPCC第5次報告書でそれに対応する記述がこれである。


The reasons for this implication are fourfold:・・・and fourth, it is more likely than not that internal climate variability in the near-term will enhance and not counteract the surface warming expected to arise from the increasing anthropogenic forcing.


IPCC第5次報告書第9章の772ページより)

しかし、「internal climate variability in the near-term will enhance」なら、20世紀後半は「internal climate variability」が気温を0.3℃「enhance」したはずである。
やはり、「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分だけが、温室効果ガス濃度の人為的増加によって引き起こされた可能性が極めて高い」
「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上(=大部分)が、温室効果ガス濃度の人為的増加とその他の人為起源強制力の組合せによって引き起こされた可能性は極めて低い」
「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について、温室効果ガス濃度の人為的増加の影響を過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」
上で指摘したとおり、気候モデルシミュレーションは「非常に高い確信度=95%」で破綻しているのだから、それは当然である。

しかも、図2-2に見えるとおり、気候モデルシミュレーションでは「温室効果ガス濃度の人為的増加に因る気温上昇」は「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇」よりもずっと大きい。
第8章で解説したとおり、それに「その他の人為起源強制力、すなわち、エアロゾルの冷却効果を組合せ」て、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について観測と一致する変化傾向を示している(非常に高い確信度)」と言い張っているのだ。
実際、第5次報告書の執筆者に名を連ねる日本人はこのように言い立てている。


PM2.5は地球を冷やしてきた
以上、PM2.5による気候変動のしくみの説明を読んでお気付きだと思いますが、PM2.5の量が増えると、結果として地球が冷えると考えられています。私も執筆陣の1人でありますが、これまでの様々な研究を統合した気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、地球の平均気温は、産業革命以降に約0.8度上昇してきましたが、もしPM2.5の濃度が上昇していなければ、この温度上昇にさらに約0.5度上乗せがあったと見積もられています。PM2.5による地球冷却化というのは、一般にはあまり知られていませんが、結構大きな効果があると思いませんか?


(「PM2.5が引き起こす気候変動」より)

しかし、「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分だけが、温室効果ガス濃度の人為的増加によって引き起こされた可能性が極めて高い」ということは、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について、温室効果ガス濃度の人為的増加の影響を著しく過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」、そして、それを誤魔化すために「エアロゾルの人為的増加の影響を著しく過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」ということである。
江守正多は「2つ以上の計算誤差が打ち消し合って、正確であるかのように見えるのかもしれない」と言い立てているけれど、エアロゾルの効果を過大評価して、正確であるかのように見せかけただけである。
実際、「大気中の微粒子(エーロゾル)が熱の出入りにどう影響するかの理解も進んだ」のなら、第5次報告書の気候モデルシミュレーションの不確定性は第4次報告書よりも小さいはずだが、図8-1の黄色のゾーンと水色のゾーンを見比べれば分かるとおり、第5次報告書の方が不確定性は大きい。

以上から明らかなとおり、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」
江守正多は「温暖化の科学が間違っている証拠になるとはまったく思わない」と言い張っているけれど、1998年以降の気温上昇停滞の結果、その事実が明らかになったのだ。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は15年間だけの問題ではない。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は、すなわち、20世紀後半以降60年間の問題である。
「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」と言い立てているけれど、1998年以降の気温上昇停滞を「15年という短い尺度」で捉えているのは、誰でもない、トーマス・ストッカーを始めとするIPCCの面々である。

13.3 1998年以降の気候変動=20世紀全体の気候変動

「温室効果ガス濃度の人為的増加」は20世紀後半に激化した。
しかし、下図に見えるとおり、20世紀前半は20世紀後半と同じ程の速さで気温が上昇していた。

fig 2.20
図13-3 IPCC第5次報告書第2章の「Box 2.2」の図1のパネル(a)

IPCC第5次報告書第2章の「Box 2.2」の表1に依れば、どちらも10年当り0.11℃である。
もちろん、IPCCの人為的温暖化説はその事実を説明できない。
実際、図8-1の赤線は20世紀前半の気温上昇を再現できない。
しかも、上で指摘したとおり、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について、温室効果ガス濃度の人為的増加の影響を著しく過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」
ということは、図8-1の赤線の傾きは大きすぎるということである。
修正すれば、赤線の20世紀前半は殆ど水平になってしまう。
「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1901年から1950年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」

第5章で解説したとおり、20世紀前半の気温上昇は自然要因であり、それは北極圏の気温変化を見れば明らかだが、IPCC第5次報告書では、南極の気温は示しながらも、北極圏の気温を示していない。

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図13-4 IPCC第5次報告書第10章の図10.7

政策策定者向け要約でも、南極の気温を示しながら、北極域は海氷面積。

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図13-5 政策策定者向け要約の図6

都合の悪いデータは隠したのだ。
北極の海氷面積も、1980年以降は減少しているが、図8-12に見えるとおり、それ以前は増加していたのであり、従って、1980年以降の減少には自然変動の寄与が大きい。
IPCCは、データの一部分だけを切り出して、人為的排出CO2が原因で海氷が減少し続けているかのごとくに見せかけようと図ったのである。
しかも、上図では南極の気温が全球平均気温と同じほど上がっているが、第10章の図10-4に見えるとおり、南極の気温は全く上がっていない、どころか、21世紀には低下している。
また、上図では1998年以降も太平洋に熱が貯まり続けているが、図11-9に見えるとおり、太平洋に熱は貯まっていない。
IPCCの報告書はデタラメなデータを掲載して世界を欺いている。

「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」から、そして、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1901年から1950年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」から、結局、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1901年から2012年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」
江守正多は「いまのところ間違いを示す証拠はない」と言い張っているけれど、実のところ、長期間にわたる気候モデルシミュレーションに「いまのところ正当性を示す証拠はない」
江守正多は「温暖化の科学が間違っている証拠になるとはまったく思わない」と言い張っているけれど、 1998年以降の気温上昇停滞の結果、その事実が明らかになったのだ。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は15年間だけの問題ではない。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は、すなわち、20世紀全体の問題である。
「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」と言い立てているけれど、1998年以降の気温上昇停滞を「15年という短い尺度」で捉えているのは、誰でもない、トーマス・ストッカーを始めとするIPCCの面々である。

13.4 ホッケー・スティック

下図(の1番目のパネルと3番目のパネルの緑色の線)に見えるとおり、IPCCは、大気中CO2濃度を1850年の水準(280ppm)にまで減らせば、気温も1850年の水準にまで低下する、と言い立てている。

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図13-6 IPCC第5次報告書第6章の図6.40

「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1901年から2012年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」にもかかわらず、尚も、20世紀の気温上昇は専ら人為的排出CO2が原因、と言い張るのだ。
それはホッケー・スティック曲線に他ならない。
実際、下図の橙色の線に見えるとおり、IPCC学派は未だにホッケー・スティックを握り締めている。

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図13-7 IPCC第5次報告書第10章の図10.19より

しかし、「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1901年から1950年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」のだから、図6-2に見えるとおり、20世紀前半の気温上昇は太陽活動の活発化が原因であり、1900年以前の気候も太陽活動の増減に応じて変動を繰り返していたことは明白である。

もちろん、IPCCは頑として科学的事実を認めない。
図6-2に関してIPCC第5次報告書は次のように言い立てている。


Recent studies have assessed the consistency of model simulations and temperature reconstructions at the hemispheric scale. Hind and Moberg (2012) found closer data-model agreement for simulations with 0.1% TSI(total solar irradiance) increase than 0.24% TSI increase, but the result is sensitive to the reconstruction uncertainty and the climate sensitivity of the model. Simulations with an EMIC(Earth-system models of intermediate complexity) using a much stronger solar forcing (0.44% TSI increase from LMM(Late Maunder Minimum) to present, Shapiro et al., 2011) appear to be incompatible with most temperature reconstructions (Feulner, 2011).


(IPCC第5次報告書第5章の412ページ)

「data」「temperature reconstructions」は下図の黒線であり、それはホッケー・スティック曲線である。
「closer data-model agreement for simulations with 0.1% TSI」は赤色の線と緑色の線であり、「a much stronger solar forcing appear to be incompatible with most temperature reconstructions」は桃色の線である。

fig 07-07
図13-8 「Feulner, 2011」より

しかし、「a much stronger solar forcing」ということは、「0.1% TSI」を前提にした「simulations」は「温室効果ガス濃度の人為的増加の影響を著しく過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」ということである。
にもかかわらず、人為的排出CO2の影響を過大評価したままの「simulations」に「a much stronger solar forcing」を用いて、「appear to be incompatible with most temperature reconstructions」との主張には科学的合理性も正当性も認められない。
実際、図6-2を見れば、マウンダー極小期後と1940年前後のTSIはほぼ同じだから、図6-2のTSIを忠実に反映させるなら、図6-4のようにマウンダー極小期後と1940年前後の気温はほぼ同じになるはずなのに、上図の桃色の線では1940年前後の気温がマウンダー極小期後の気温よりもかなり高い。
「温室効果ガス濃度の人為的増加の影響を著しく過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」から、そんな結果になるのだ。
桃色の線のマウンダー極小期後の気温を黒線の1940年前後とほぼ同じになるようにすれば、桃色の線は20世紀の気温(青線)を大幅に上回ってしまうが、そうなれば、「温室効果ガス濃度の人為的増加の影響を著しく過大評価する傾向を示している(非常に高い確信度)」が露見するから、20世紀後半の気温と一致するように桃色の線を下にずらし、「a much stronger solar forcing appear to be incompatible with most temperature reconstructions」と言い立てているのだ。
その破廉恥な詐術はIPCCの非科学性を物の見事に露呈したと言えよう。

ホッケー・スティックの虚構は明らかである。
江守正多は「温暖化の科学が間違っている証拠になるとはまったく思わない」と言い張っているけれど、1998年以降の気温上昇停滞の結果、その事実が明らかになったのだ。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は15年間だけの問題ではない。
「この15年間、地球の気温は横ばい」は、すなわち、2012年までの1000年間の問題である。
「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1001年から2012年の世界平均地上気温について観測を全く再現できない(非常に高い確信度)」
「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」と言い立てているけれど、1998年以降の気温上昇停滞を「15年という短い尺度」で捉えているのは、誰あろう、トーマス・ストッカーを始めとするIPCCの面々である。
過去の気候を再現できて、そこで初めて「近未来の予測」が可能になる。
上記の2013年9月28日の朝日新聞記事の中で「近未来の予測を担当した木本昌秀・東京大学大気海洋研究所教授」が「微動だにしていない」と言い張っているけれど、過去の気候を全く再現できない気候モデルシミュレーションに依る「近未来の予測」に科学的意味は全く無い。

13.5 海洋貯熱

江守正多は「エネルギーは海の中に潜っていて、表面に分配されないだけと考えられる」だの、「地球がどれだけのエネルギーを受け取り、どのように気温上昇をもたらしたかがより正確に見積もれるようになった」だのと言い立てていたが、それを示しているのが下図である。

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図13-9 IPCC第5次報告書第3章のBox3.1の図1

これを見ると、「Upper Ocean(水深700mまで)」の2000年以降はそれ以前よりも貯熱のペースが若干速いが、下図に見えるとおり、実のところ、「Upper Ocean」での貯熱は減速している。[注4]

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図13-10 (「Climate Change : Evidence & Cause」の「Q&A(1)」より

それは別の論文でも確認されている。

2014122004図13-11 「Journal of Climate,27(2014)1945」より

図13-9では「Deep Ocean(水深700m以上)」の2000年以降はそれ以前と同じペースである。
実際、政策策定者向け要約の9ページには「水深700~2000mの海洋への熱の取り込みは、1993年から2009年の間に衰えることなく続いている可能性が高い」と書いてある。
しかし、第11章で解説したとおり、実のところ、「Deep Ocean」の貯熱ペースも落ちている。
さらに、上記の2013年10月2日の朝日新聞記事に見えるとおり、「3千㍍より深い深層で水温が上昇している可能性が高い」と言い立てているが、第11章で引用した「地球温暖化の『停滞』、海による熱吸収ではない」という記事に見えるとおり、「水深1995メートル以下の深海では目立った水温の上昇が見られないことが判明している」

IPCC学派は、それらは第5次報告書の後から分かったこと、と言い立てるだろうが、そんな言い逃れは通用しない。
第11章で指摘したとおり、気温が上がっていないのに、それ以前と同じ、または、それ以前よりも速いペースで海に熱が貯まり続けるはずはない(非常に高い確信度)。
上記の2013年10月2日の朝日新聞が「水温の上昇が深層から海面近くに変わることによって、再び地上気温が急激に上昇する可能性は否定できない」と、そして、江守正多も「何らかの変動が起きれば、逆に表面の方が多くなり気温も上がるかもしれない」と言い立てていたけれど、大気からの下向き赤外放射は海面(下1㎜以内の海水)で吸収し尽くされるから、従って、先ずは海面近くが暖められるから、深層に熱が貯まっているのなら、海水の蒸発が増えているはずだが、1998年以降に水蒸気量の増加は認められない。

2015092408
図13-12 IPCC第5次報告書第2章の図2.31のパネル(b)

それは図13-9のデタラメを、そして、「何らかの変動が起きれば、逆に表面の方が多くなり気温も上がるかもしれない」のデタラメを露呈している。
始めに紹介したとおり、「今世紀に入って気温上昇が鈍っている現象をどう解釈するか。温暖化に否定的な人たちが論拠の一つにしてきただけに、どう説明するのかにも注目が集まった」けれど、説明に窮したIPCCは「エネルギーは海の中に潜っていて、表面に分配されないだけ」などと見え透いた嘘を吹聴していたのだ。
そのくせに、江守正多は「最新の論文をもとに科学的な説明を試みても温暖化を信じない人は聞く耳をもたないのではないか」などと喚いているのである。

政策策定者向け要約の6ページには「海洋の温暖化は気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量において卓越しており、1971年から2010年の間に蓄積されたエネルギーの90%以上を占める(高い確信度)」とあるが、後の計算のために、海洋貯熱量から「気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量」を調べておこう。
「水深700~2000mの海洋への熱の取り込みは、1993年から2009年の間に衰えることなく続いている可能性が高い」は下図の「Levitus」である。

2014032005
図13-13 IPCC第5次報告書第3章の図3.2

それに依れば、海に蓄積された熱量は0.27W/(m^2)。


The heat content of the World Ocean for the 0-2000m layer increased by 24.0±1.9×10^22J (±2S.E.) corresponding to a rate of 0.39 W/(m^2) (per unit area of the World Ocean) and a volume mean warming of 0.09°C. This warming corresponds to a rate of 0.27 W/(m^2) per unit area of earth’s surface.


(「Geophys.Res.Lett.,39(2012)L10603」の「abstract」より)

「海洋の温暖化は気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量の90%を占める」なら、1951年以降に「気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量」は0.3W/(m^2)。
上で指摘したとおり、「水深700~2000mの海洋への熱の取り込みは、1993年から2009年の間に衰えることなく続いている可能性が低い」のだが、「可能性が高い」を真に受けても、1951年以降に「気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量」は0.3W/(m^2)にすぎない。

別の論文も調べてみよう。
第11章で引用した「地球温暖化の熱、海の吸収量が急加速」という記事が採り上げている論文は「最近20年間に海洋が吸収した地球温暖化による熱の量は、それ以前の130年間の熱吸収量に匹敵する」、「1865年以降の世界の海洋による熱の総吸収量の半分は、1997年以降に蓄積した」と言い張っていた。
最近20年間の海洋貯熱率を1W/(m^2) と仮定してみよう。
1Wは1J/s(毎秒1ジュール) だから、最近20年間に60(秒)×60(分)×24(時間)×365(日)×20(年)
×5.1×10^14(地球の表面積) Jの熱が海に貯まったことになる。
それが「1865年以降の世界の海洋による熱の総吸収量の半分」だから、150年間に2×60×60×24×365×20×5.1×10^14 Jの熱が貯まったことになる。
ということは、150年間では毎秒、2×20÷150=0.27J。
つまり、0.27W/(m^2)。
「海洋の温暖化は気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量の90%を占める」なら、やはり、0.3W/(m^2)。
「最近20年間に海洋が吸収した地球温暖化による熱の量は、それ以前の130年間の熱吸収量に匹敵する」はあり得ないけれど、それを真に受けたとしても、1865年以降に「気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量」は0.3W/(m^2)にすぎない。

13.6 海面上昇

冒頭で引用した2013年9月28日の朝日新聞に見えるとおり、IPCC第5次報告書は「今世紀末の海の水位上昇は最大82㌢と予測」しているが、これまで観測された海水位上昇に関しては、このように言い立てている。


海面水位の代替データと測器によるデータは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、過去2千年にわたる比較的小さな平均上昇率から、より高い上昇率に移行したことを示している(高い確信度)。世界平均海面水位の上昇率は20世紀初頭以降増加し続けている可能性が高い。
世界平均海面水位の平均上昇率は、1901年から2010年の期間で1年当たり1.7(1.5~1.9)㎜、1971年から2010年の期間で1年当たり2.0 (1.7~2.33])㎜、1993年から2010年の期間で1年当たり3.2(2.8~3.6])㎜であった可能性が非常に高い。潮位計データと衛星高度計データは、1993年から2010年の期間に高い上昇率となっている点で整合的である。また、1920年から1950年の期間に、1993年から2010年の期間と同程度の高い上昇率となっていた可能性が高い。


政策策定者向け要約の9ページ)

2014022004
図13-14 「海面水位の変動要因」より(原典はIPCC第5次報告書第3章の表3.1)

図13-6、図13-7、そして、図13-8で見たとおり、IPCCは未だにホッケー・スティックを握り締めているのだから、「19世紀末から20世紀初頭にかけて、過去2千年にわたる比較的小さな平均上昇率から、より高い上昇率に移行した」ということは、20世紀の海面上昇はCO2の排出が原因、ということに他ならない。
しかし、「1920年から1950年の期間に、1993年から2010年の期間と同程度の高い上昇率となっていた可能性が高い」。
IPCCに依れば、海面水位上昇の最大の要因は海水温の上昇に伴う海水の熱膨張だが、下図に見えるとおり、海水温は20世紀前半の上昇度の方が高い。

fig 2.16
図13-15 IPCC第5次報告書第2章の図2-16

CO2の排出は20世紀後半に激増したのだから、CO2の排出が20世紀前半の海水温上昇とそれに伴う海水位上昇の原因なら、そんなことはあり得ない。
20世紀前半の海水位上昇の主因は自然要因である。
しかも、「The Cryosphere,8(2014)659」に依れば、「氷河の変化(グリーンランドと南極の氷河を除く)」は20世紀前半の方が速かったし、「The Cryosphere,6(2012)1339」に依れば、「グリーンランドの氷河の変化」も20世紀前半の方が速かった。
CO2の排出は20世紀後半に激増したのだから、CO2の排出が氷河減少の原因なら、そんなことはあり得ない。
20世紀前半の氷河減少とそれに伴う海水位上昇は自然要因である。
結局、20世紀前半の海水位上昇はほとんど自然要因である。

ならば、20世紀後半からの海水位上昇はCO2の排出が原因か?
そうではない。


氷河減少の原因の7割、人間活動による温暖化
2014年8月15日 9時16分
1991年以降に進んだ氷河減少の原因の約7割は、二酸化炭素の排出など人間活動による地球温暖化によるものだとする解析結果を、オーストリアとカナダの研究チームがまとめ、14日付の米科学誌サイエンス「Science,345(2014)919」に発表する。
人間活動とはかかわりのない気候の自然変動でも氷河は増減するが、研究チームは人間活動の影響を明確にできた」と指摘する。
研究チームは、コンピューターで地球の気候を再現し、南極とグリーンランドの巨大な氷床を除く地球上の氷河の増減を調べた。
計算の際に、太陽活動の変化など自然変動だけを考慮した場合と、人間活動で排出された温室効果ガスなどを加えた場合を比較。その結果、「小氷期」と呼ばれる寒冷な気候が終わった時期にあたる1851年から、2010年までの氷河減少は自然変動が大きく、人間活動の影響の割合は25%にとどまった。しかし、このうち、1991年から2010年までの20年間だけに着目したところ、氷河減少の原因の69%が人間活動だった。


(YOMIURI ONLINE)

図13-14を見ると、「氷河の変化(グリーンランドと南極の氷河を除く)」は近年になるほど大きくなるけれど、2010年までの変化の4分の3は自然要因なのだ。

確かに、「1991年から2010年までの20年間だけに着目したところ、氷河減少の原因の69%が人間活動だった」けれど、その大半は大気汚染である。
第8章第9章で解説したとおり、アルプスやアラスカの氷河はススやクリオコナイトで解けているが、ヒマラヤとチベットの氷河もススで解けている。


【気候科学】ヒマラヤ山脈の氷河融解の原因を明らかにする化学的痕跡
Nature Communications,7(2016)12574
2016年8月24日
ヒマラヤ山脈とチベット高原の氷河の融解を加速させていると考えられる黒ずんだ煤(すす)粒子の大部分が、インド亜大陸北部と中国での化石燃料の燃焼を原因としているという結論を示した研究論文が、今週掲載される。すす粒子の発生源を特定することで、効果的な大気汚染削減活動の指針を改善できる可能性がある。
ヒマラヤ山脈とチベット高原の氷河の多くが薄化し始めており、季節的な融解水に依存する数十億人の人々にとって深刻な問題となっている。この氷河の薄化の主たる原因は、黒色炭素のエアロゾル(すす)の存在であり、その熱放射特性によって大気と氷表面が加熱されることがモデルシミュレーションで示唆されている。
今回、Shichang Kang たちは、二核種炭素同位体フィンガープリント法を用いて、ヒマラヤ山脈とチベット高原の大気中と雪原表面で採取された黒色炭素粒子の化学的痕跡を同定した。この方法を用いることで、発生源の種類(バイオマスか化石燃料か)と地域を峻別できるようになった。チベット高原北部で採取された試料の特徴からは、この黒色炭素の主な発生源(試料全体の約66%を占める)が中国の化石燃料であることが示された。これに対して、ヒマラヤ山脈で採取された黒色炭素粒子の場合は、インド亜大陸北部のインダス-ガンジス平原のバイオマスと化石燃料を発生源とするものがほぼ同じ割合を占めていた。


(natureasia)

もちろん、「グリーンランド氷床」もススで解けている。
「氷河の変化(グリーンランドと南極の氷河を除く)」、「グリーンランドの氷河の変化」、「グリーンランド氷床の変化」の大半は自然要因とCO2以外の人為的要因である。

但し、CO2以外の人為的要因で最大の要因は「陸域の貯水量の変化」である。
前章の図12-23の「差異」の0.7㎜/年は「陸域の貯水量の変化」が原因だった。
一方、図13-14の「陸域の貯水量の変化」は0.38㎜/年だが、「観測」と「合計」の差を足し合わせると0.8㎜/年になる。
しかも、もっと大きい可能性が高い。
その証拠に、2000年以降、地下水の汲み上げはさらに酷くなっている。


地下水くみ上げで首都・北京の地盤沈下加速!高速鉄道の安全運行に影響は?―中国
2016年7月18日(土) 11時0分
2016年6月17日、環球時報は、「中国北京の地盤沈下が加速している」と伝える米メディアの記事を紹介した。
水不足が問題となっている北京では、地下水をくみ上げて2000万人余りに供給している。しかし、これによって引き起こされる地盤沈下や土地のゆがみで鉄道や建物がリスクにさらされることも多い。北京と天津、上海を結ぶ高速鉄道は北京東部の地盤沈下地域を通っており、専門家の間からは状況が悪化すれば鉄道の安全運行に深刻な影響を来たすとの指摘が出ている。
北京の地盤沈下の加速は人工衛星の画像で示されている。北京で使用される水の3分の2は地下水をくみ上げたものだ。2003年から11年にかけて中心エリアの地盤は年平均10ミリのスピードで沈んだが、北西部の昌平区や北東の順義区、南東の通州区ではその6~8倍の速さで沈下が起きた地域もある。さらに朝陽区では年110ミリに上った場所も見られた。
この問題に関し、スペイン・アリカンテ大学の工学部教授は「最大の問題はスピードの加速ではない」と述べ、不均衡な沈下によってより大きな危険がもたらされるとの見解を示した。同教授は「建物を支える地盤の一部で沈下が起きた場合、ゆがみが生じて建物が破損する恐れもある」と述べ、北京の主要施設を対象に行っている影響度調査の結果を来年発表すると語った。(翻訳・編集/野谷)


(Record china)

その結果、北極点がずれている。


北極点がヨーロッパ方向へ急移動と研究発表
原因は氷河融解や地下水くみ上げなど大規模な水の移動
2016.4.13
北極点を見つけるには、北へ向かえばいい。ただし、少々注意が必要だ。今、地球の北極点は、着々とヨーロッパ方向に動いているのだ。
4月8日付「Science Advances」に発表された論文によると、近年この「極移動」が急激になりつつあり、その原因は気候変動にあるという。気候変動と極移動の関係が明らかになれば、氷床の融解や干ばつについての今後の研究、予測に大きな影響を与えそうだ。
「劇的な変化」
地球は、巨大なコマのように地軸を中心に自転している。この目に見えない地軸と地表の交点を、北の自転極と南の自転極と呼ぶ。地軸に対する自転のブレにより、これらの2点はおおむね10年のサイクルで移動する(この動きは、磁極の挙動メカニズムとはまったく異なる)。
地理上の北極と南極は、これらの自転極の位置の長期的な平均によって計算される。
1899年以降、探検家や科学者が、正確な自転極の位置を測定してきた。当初は星の相対位置を測定することで行われていたが、後に衛星を使って測定するようになった。その結果、約100年の間、年に数cmほど自転極が移動する傾向が確認されている。
「わずかな変動のように見えますが、そこには重要な情報が込められています」と、米カリフォルニア州にあるNASAジェット推進研究所の地球科学者、スレンドラ・アディカリ氏は言う。
北極は東西へ行ったり来たりを繰り返し、全体的な傾向としてはカナダに向かって移動していた。しかし、2000年以降の北極の移動は「劇的な変化を遂げた」と同氏。カナダ方向から経度にしておよそ75度東に向きを変え、子午線が通る英国グリニッジ方面に向かっているという。
移動は年に10㎝のオーダーであり、北極の位置の再計算が必要になるほどではなさそうだが、この変化が続けば、後の世代はそれを検討しなければならないとアディカリ氏は述べた。
水が動けば回転軸がブレる
研究者らは10年以上前から、世界中の氷河が大量に解けることで、地球上の質量の大規模な再分配が起こるのではないかと考えてきた。特にグリーンランドと西南極で巨大氷床が融解すると、その影響はきわめて大きい。
自転する地球のある部分で氷が融解し、別の場所で水として落ち着くと、自転軸は質量を失った場所に向かって移動する。
その物理的な挙動は非常に複雑で、実際の動きは解明されていなかった。アディカリ氏は今回そこに、新たな解釈を追加した。地球の質量再分配の原因が、氷河の減少だけではなく、地上から液体の水を大量に失うことによっても起きていると、今回の論文で発表したのだ。
同論文によると、自転極がヨーロッパに向けて移動しているのは、ユーラシア大陸、特にカスピ海周辺やインドの湖や帯水層からの大規模な水損失が原因と考えられる。気温上昇により、多くの地域で蒸発が進み、降水量が減っている。さらに、人口増加の影響で、貯水槽や井戸から大量の地下水が失われているという。

「つまり、氷の融解と大陸の貯水パターンの組み合わせによって、極の大移動が起こっているのです」
米ニューヨーク州にあるNASAゴダード宇宙科学研究所の気候科学者ギャビン・シュミット氏は、気候科学に新しい議論をもたらしたとして、著者らを称賛している。この研究に参加していないシュミット氏は、「氷床の融解と地下水の採取による質量移動」が人間活動に起因していると考える。
気候変動の予測も
アディカリ氏と論文の共同著者であるエリック・アイビンス氏は、この発見によって地球上の力に対する理解が深まることを願っている。
「極の動きのデータを使えば、興味深い疑問に答えることができるはずです」とアディカリ氏。過去の融解率や蒸発率を推測することで、より高精度な気候モデルの構築にも役立つだろう。「歴史を通じて、極の位置に関するデータは、氷河の融解に関するデータよりもずっと正確です」
同様に、干ばつによる乾燥の進み具合も追跡可能だ。そうして最終的に、未来の気候変動をより正確に予測でき、地球の自転に対する理解がより深まるだろう。(参考記事:「最新研究で見えてきた「生命の星」地球のレシピ」)
文=Brian Clark Howard/訳=堀込泰三


(ナショナルジオグラフィック)

温暖化プロパガンダの急先鋒・ギャビン・シュミットまでが「地下水の採取による質量移動」と認めざるを得なくなったことが象徴している。
図13-14の「陸域の貯水量の変化」は過小評価であり、その分だけ「海洋の熱膨張」が過大評価されているのだ。

さらに、前章の第7節で解説したとおり、「潮位計データと衛星高度計データは、1993年から2010年の期間に高い上昇率となっている」のには自然変動が寄与しており、やはり、その分だけ「海洋の熱膨張」が過大評価されている。
もう一度、図12-22と図13-14を比べてみよう。
1971年から2010年までの期間は上昇率が2㎜だから40年間で80㎜。
一方、図12-22では80㎜弱。
ほぼ一致している。
また、1993年から2010年までの期間は上昇率が年3.2㎜だから、18年間で58㎜。
一方、図12-22では、1年ずらして、1992年から2010年まで、または、1994年から2010年までで55㎜ほど。
ほぼ一致している。
それは自然変動の寄与をハッキリと示している。
実際、「Geophys.Res.Lett.40(2013)5171」に依れば、PDOが原因で最近20年間に海水位が年間0.5㎜のペースで上昇していた。

「海洋の熱膨張」は海洋貯熱量と関係しており、IPCCは、図13-9と「海洋の熱膨張」は整合している、と言い張っている。


However, it is very likely that the climate system, including the ocean below 700 m depth, has continued to accumulate energy over the period 1998-2010. Consistent with this energy accumulation, global mean sea level has continued to rise during 1998-2012, at a rate only slightly and insignificantly lower than during 1993-2012. The consistency between observed heat-content and sea level changes yields high confidence in the assessment of continued ocean energy accumulation, which is in turn consistent with the positive radiative imbalance of the climate system.


IPCC第5次報告書第9章の769ページより)

しかし、図13-10と図13-11に見えるとおり、海洋貯熱は減速しているのだから、そして、第11章の第1節で解説したとおり、「no significant increase in the rate of warming below 700m since 2003」、「the net amount of heat absorbed by the ocean below 700m are overestimated」だから、「The inconsistency between observed heat-content and sea level changes」である。
逆に、「陸域の貯水量の変化」を過小評価し、自然変動の寄与を無視して、「海洋の熱膨張」を過大評価していることと「consistency」がある。

さらに、第10章の第3節で解説したとおり、「南極氷床の変化」は無いことが分かった。
その事実は別の研究からも裏づけられる。


実は加速していた全球的な海水準上昇
Nature Climate Change,5(2015)565
2015年5月12日
Global sea-level rise has actually accelerated
全球的な海水準上昇は、従来の方法による推定結果に反して、過去10年間にわたって加速していたとする論文が、今週のオンライン版に掲載される。人工衛星からのデータを調べた過去の研究では、海水準の上昇が過去10年間に鈍化したという結論が示されていたが、海水準を計算する際に土地垂直変動(VLM)を考慮に入れていなかった。
今回、Christopher Watson たちは、GPS観測によるVLMと全球の海洋全体に設置された検潮器のネットワークから1時間に一度送られてくるデータを組み合わせて、人工衛星による海水準の測定結果の不正確な点を明らかにし、補正した。その結果、1993年から2014年半ばまでの全球的な平均海水準上昇の全体的速度が年間3.2㎜から2.6~2.9㎜に下がった。
この補正の影響を最も大きく受けたのが最初の6年間(1993~1999年)で、平均海水準上昇速度の推定値が年間0.0~1.5㎜低下した。今回の再計算の結果、近年の海水準上昇速度は20世紀と比べると実は加速していたことが判明した。Watson たちは、こうした加速が、同時期のグリーンランドと西南極の氷床の融解による寄与とかなり一致しており、最近のモデル予測とも整合性があるという考え方を示している。


(natureasia)

前章の第9節で解説したとおり、ニューヨークの著しい潮位上昇は「海水準を計算する際に土地垂直変動(VLM)を考慮に入れていなかった」からである。
それを補正したら、「1993年から2014年半ばまでの全球的な平均海水準上昇の全体的速度が年間3.2㎜から2.6~2.9㎜に下がった」のだが、図13-14の「1993年~2010年」の「合計」の3.2㎜から「南極氷床の変化」の0.27㎜、または、それ以上を差し引くと、ほぼ一致する。

しかし、「GPS観測によるVLM」は近年の話。
「GPS観測」以前のVLMは分からない。
この論文では1993年以前の「海水準を計算する際に土地垂直変動(VLM)を考慮に入れていなかった」。
だから、この論文でもニューヨークの潮位上昇は未だ過大評価されている。
前章の第8節で解説したとおり、サンフランシスコでの実質的な潮位の上昇は1930年から80年までの50年間であり、1910年と1980年の不連続な潮位上昇はVLMに因るから、この論文ではサンフランシスコの潮位上昇も過大評価されている。
さらに、前章の第6節で解説したとおり、1970年までのベネチアの潮位上昇は地盤沈下が原因だけれど、やはり、この論文では考慮されていない。

また、先に解説したとおり、非持続的な地下水利用は海水を増やして海水位を上昇させているけれど、沿岸部では地盤沈下を招いて、さらに潮位を押し上げることになる。
例えば、下図に見えるとおり、マニラでは既に1m近く潮位が上昇しているけれど、

2015091805
図13-16 「Permanent Service for Mean Sae Level」より

それは地下水の汲み上げによる地盤沈下が原因である。

2015091806
図13-17 「Disasters,30(2006)118」より

しかし、この論文では考慮されていない。
もちろん、IPCCも「海水準を計算する際に土地垂直変動(VLM)を考慮に入れていなかった」。
IPCC(政策策定者向け要約の9ページ)は「1901年から2010年の期間に、世界平均海面水位は0.19(0.17~0.21)m上昇した」と言い立てているけれど、VLMを考慮すれば、その値は低くなるはず。
IPCCはVLMに依る潮位上昇、自然変動に因る潮位上昇、CO2以外の人為的要因(スス・地下水の汲み上げ)に因る潮位上昇をもCO2の影響に帰し、CO2の影響を著しく過大評価して、「今世紀末の海の水位上昇は最大82㌢と予測」しているのだ。

13.7 気候感度

政策策定者向け要約の執筆者に唯一人の日本人として名を連ねている江守正多は、このように言い立てている。


地球温暖化、どこまで深刻か 江守正多氏と田中博氏に聞く
・・・前略・・・
――温暖化対策をそれほど急がなくてもよいとの意見もあります。
大気中の温暖化ガスが一定量増えた時の温度上昇を意味する『気候感度』が正確にわかっておらず、予測気温はどうしても幅を持つ。10年の気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度以内にする必要性を確認したが、達成のために減らさなければならない温暖化ガスにも幅が出てしまう」
「温暖化の科学的な研究や計算が進んでもそれだけで対策は決まらず、様々な事柄を考慮する必要がある。たとえば温度上昇を2度以内ではなく2.5度以内とした方が、経済的には達成が格段に容易だろう。しかし、それによって生じる悪影響のリスクを受け入れられるかどうかは別問題だ。目標を緩めると対策が後退するリスクもある」


日本経済新聞紙上より)

しかし、CO2を排出し続けても気温上昇は1.5℃以内に収まるのだから、全くナンセンスである。
(6-2)式で計算したとおり、気候感度は0.71℃である。
実は、IPCCの数式と数値を用いても同じ値になるのだ。
IPCCの第5次報告書が発表される直前に、その執筆者に名を連ねる面々がこのような論文を発表して話題になった。[注5]


The response of the climate system to rising greenhouse gas levels is often summarized in terms of the equilibrium climate sensitivity (ECS) or the transient climate response (TCR). Both quantities are related to the global mean temperature change  \Delta T , the radiative forcing change  \Delta F , and the change in the rate of the total increase in Earth system heat content  \Delta Q (see Supplementary Section S1), by the global energy budget:

(13-1)    \displaystyle \mbox{ECS} = \frac{F_{2\times} \, \Delta T}{\Delta F - \Delta Q}

(13-2)    \displaystyle \mbox{TCR} = \frac{F_{2\times} \, \Delta T}{\Delta F}

where  F_{2 \times} is the forcing due to doubling atmospheric CO2 concentrations. We use a value of  F_{2 \times} of  3.44\,W/m^2 (with a 5-95% confidence interval of ±10%) from ref.10.


(「Nature Geoscience,6(2013)415」より)

ここで、ΔTは気温上昇、ΔQは地球の気候システムに蓄積された熱量、ΔFは放射強制力で、それらの値は以下のとおり。

fig ab-01
図13-18 「Nature Geoscience,6(2013)415 Supplementary information」より

もちろん、上記2つの式はIPCC第5次報告書(第10章の920ページ)にも記されている。
それらは第4次報告書以前の論文「Geophys.Res.Lett.,31(2004)L03205」で発表されていたのだが、第4次報告書には記されていなかった。
いわゆる懐疑論者達が上の論文を採り上げた結果、無視できなくなったのである。

① 本来、地球に入射する日光のエネルギーと地球の大気から宇宙に放射される赤外線のエネルギーは均衡を保っている。
② ところが、大気中のCO2が増えると、地球の大気から放射される赤外線が減少して、不均衡が生じる。
③ 均衡を回復するために気温が上がる。
というのが人為的温暖化の基本原理であり、放射不均衡の目安が放射強制力ΔFである。
放射(F)と温度(T)の関係はステファン=ボルツマンの法則である。

(13-3)    F = \sigma \, T^4

放射不均衡とそれを解消するために必要な気温上昇の関係は、これを温度Tで微分した式で表される。

(13-4)    \displaystyle \Delta T = \frac{\Delta F}{4 \, \sigma \, T_e^3}

ここで、Teは、放射均衡のエネルギーをステファン=ボルツマンの法則で温度に換算した値、255Kである。
実際に観測される気温上昇はフィードバックでa倍になるとすると、

(13-5)    \Delta T = \lambda \, \Delta F

(13-6)    \displaystyle \lambda = \frac{a}{4 \, \sigma \, T_e^3}

CO2が倍増した場合の気温上昇TCR(過渡的気候応答)も同様に表される。

(13-7)    \mbox{TCR} = \lambda \, F_{2 \times}

従って、(13-5)と(13-7)から λ を消去すれば(13-2)式になる。

数値を代入して計算してみよう。
上記の論文に従って、 F_{2 \times} = 3.44\,W/m^2 、上図の「2000s」から、 \Delta F = 1.95\,W/m^2
但し、先に指摘したとおり、IPCC第5次報告書に依れば、20世紀の気温上昇は0.75℃ではなく0.8℃。
しかも、その半分は自然要因である。
CO2倍増に因る気温上昇(TCR)を計算しているのだから、自然要因の気温上昇分は除かねばならない。
従って、ΔT=0.4℃であり、TCRは

(13-8)    \displaystyle \mbox{TCR} = \frac{3.44 \times \, 0.4}{1.95} = 0.71

(6-2)式から得られた値と見事に一致する。

IPCC報告書の放射強制力を用いると、さらに小さくなる。
CO2倍増時の放射強制力は、IPCC第3次報告書第6章の表6.2の一番上の式を用いて、

(13-9)    F_{2\times} = 5.35 \times \ln 2 = 3.71 \, W / m^2

一方、下図に見えるとおり、 \Delta F = 2.29\,W/m^2

2014032004
図13-19 政策策定者向け要約の図5

従って、過渡的気候応答(TCR)は0.65℃になる。

(13-10)    \displaystyle \mbox{TCR} = \frac{3.71 \times \, 0.4}{2.29} = 0.65

政策策定者向け要約の14ページは「過渡的気候応答は1.0~2.5℃の範囲である可能性が高く(高い確信度)」と言い張っているが、真実は真逆で、「過渡的気候応答は1.0~2.5℃の範囲である可能性が低い(高い確信度)」。[注6]

IPCCの気候感度には、もう一つ、平衡気候感度(ECS)がある。
先に解説したとおり、図13-9自体はデタラメだが、地球の気候システムに一定の熱が蓄積されているのは事実で、気候システムに蓄積された熱は気温上昇に依る放射不均衡の解消に寄与しないから、(13-5)式のΔFからその分を差し引かねばならない。
つまり、 \Delta F  \Delta F_{eff} に置き換わる。

(13-11)    \Delta F_{eff} = \Delta F - \Delta Q

従って、気候感度は(13-1)になる。

数値計算には、放射強制力はIPCC報告書の値を用いるとして、ΔQの値を決めねばならない。
ここで注意すべきは、図13-19に見えるとおり、ΔFは1750年を基準とした値、つまり、1750年から2010年までの260年間の値だから、ΔQも260年間の値(260年間を均した場合に1平米当たり毎秒何ジュールか)でなければならない、ということである。
図13-18の「’70-’09」の0.35W/(m^2)は1970年以降の40年間の値にすぎないから、ΔQ=0.35W/(m^2)にするのは誤りである。
また、先に解説したとおり、図13-13の「Levitus」から得られた値0.3W/(m^2)も1951年以降の60年間の値にすぎない。
第11章で引用した「地球温暖化の熱、海の吸収量が急加速」という記事の論文から得られた値は、1865年以降の145年間で0.3W/(m^2)だが、やはり、それ以前は0.3W/(m^2)よりも低いはずだから、ΔQ=0.3W/(m^2)は過大評価になる。
しかし、0.3W/(m^2)を用いても、その値は小さすぎると言う謂れは無いから、そして、データには誤差もあるから、ΔQ=0.3W/(m^2)にしよう。
そうすると、ECS(平衡気候感度)は0.75℃になる。

(13-12)    \displaystyle \mbox{ECS} = \frac{3.71 \times \, 0.4}{2.29 - 0.3} = 0.75

政策策定者向け要約の14ページは「平衡気候感度は1.5~4.5℃の範囲である可能性が高く(高い確信度)、1℃以下である可能性は極めて低く(高い確信度)」と言い立てているが、事実は全く逆であり、「平衡気候感度は1℃以下である可能性が高く(高い確信度)、1.5~4.5℃の範囲である可能性は極めて低い(高い確信度)」。[注7]

IPCCに依れば、大気中CO2濃度が倍増すれば、それだけで気温は1℃上がる。
実際、(13-6)式で、 a=1 とし、(13-9)を用いれば、(13-7)式から1℃になる。
(平衡気候感度の場合もCO2倍増時の式は同じ。つまり、 \mbox{ECS} = \lambda \, F_{2 \times} 。本来、これはおかしいのだが、ここでは不問に付す。)
ところが、気候感度は0.75℃。
第11章で解説したとおり、IPCCに依れば、1998年以降の15年間にCO2の効果だけで0.1℃上がるけれど、同様に考えれば、実際の気温上昇は0.075℃。
15年間で0.075℃だから、10年当り0.05℃。
IPCCの数式と数値を用いても、先の結果が裏づけられたのである。
「15年という短い尺度で長期の気候変動は測れません」と言い立てていたけれど、「この15年間、地球の気温は横ばい」こそが「温室効果ガス濃度の人為的増加によって引き起こされた」温暖化であるという見解は「微動だにしていない」。

13.8 debate is over

第1章で解説したとおり、CO2の吸収帯域(15μm帯域)の温室効果の上限は8℃。
第2章で解説したとおり、産業革命時におけるCO2の温室効果は6℃。
従って、CO2を排出し続けるなら、CO2の効果だけで気温は最大限2℃上がる。
しかし、気候感度が0.75℃であれば、CO2を排出し続けても、気温上昇は0.75×2=1.5℃以内に収まる。
第5章と同じ結論になる。
CO2の温室効果の上限は8℃であり、20世紀の気温上昇0.8℃の半分は自然要因という二つの科学的真実に基づく限り、違う手法を用いても結論は変わらない。
「地球温暖化が1.5℃に達するまではこれからも少しずつ進むという見解は、微動だにしていない」
ところが、IPCCの気候モデルでは、図13-1に見えるとおり、既に1.1℃上がっており、先に紹介したとおり、「もしPM2.5の濃度が上昇していなければ、この温度上昇にさらに約0.5度上乗せがあったと見積もられています」から、既に1.6℃上がっている。
自然の法則では起こりえないことも、IPCCの気候モデルでは起こる(起こっている)のだ。
IPCCの人為的温暖化説(=気候モデル)は全くのイカサマ、という見解は微動だにしていない。

上記の2013年10月2日の朝日新聞記事にも見えるとおり、ストックホルムで開催されたIPCC作業部会の会場の外で環境NPOの連中が喚き立てていた。

2013103007

そのとおり、論争は終わった。
もはや、IPCCには立錐の余地も無い。
半歩でも動けば奈落の底。
だから、「近未来の予測を担当した木本昌秀・東京大学大気海洋研究所教授」は「微動だにしていない」のだ。

[注1] 気象庁の日本語訳は「政策決定者向け要約」であり、そして、それが一般的だが、政策を「決定」するのは政府である。
議院内閣制において、内閣の大臣等は一部の例外を除いて国会議員であり、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ(憲法66条)」から、そして、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である(憲法41条)」から、「決定者」は国会議員である。
さらに、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する(憲法43条)」から、最終的な「決定者」は国民である。
もちろん、現実には、経済学者や環境学者、そして、市民の代表を装う環境NPOの連中が政策立案に参画することになるだろうが、その連中のための「要約」ならば、本来は「政策立案者向け要約」と訳すべきであろう。
実際、英和辞典で「policy-maker」は「政策立案者」と訳されている。
ここでは中間をとって「政策策定者向け要約」と訳したが、「決定者」と訳すのは、経済学者や環境学者や環境NPOの連中こそが「決定者」だ、と言うことに他ならず、市民を排除しようとの意図が見て取れる。
その証拠に、政策策定者向け要約の執筆者に唯一人の日本人として名を連ねている江守正多はこのように高言している。


2つめに、大転換を起こすために社会のほとんどの人たちが問題に関心を持ち、科学的知見と倫理的規範を共有する必要は、必ずしも無い。
科学と倫理は「点火」の段階でのみ必要なのであり、制度ができて経済にまで火が付けば、あとは勝手に燃え広がる。問題に無関心な人が多くいたとしても、彼らは新しい常識にいつのまにか従うようになるだけだろう。


(「温暖化対策計画 2050年80%削減は可能? 『分煙革命』を参考に考える『脱炭素革命』の意味」より)

[注2] 2009年に江守正多はこのように言い張っていた。


これはどういうことでしょう。IPCCの予測は外れたのでしょうか。
実はそうではありません。IPCCの予測と実際に観測された気温変化の関係をより適切に表すグラフは、次のようになります。

2012010202

黒線:観測された気温の推移
赤線:IPCCで予測された気温の推移(多数のシミュレーションの平均)
緑線:各シミュレーションで予測された気温の推移

図Aと図B(上図)の違いは何かというと、図Aでは、IPCCの予測はたくさんのシミュレーション結果を平均した比較的直線的な線で表わされています。一方、図Bでは、たくさんのシミュレーション結果を平均しないで、1本1本を全部重ねて描いてみました。さらに、1960年までさかのぼってみると、観測された変動がシミュレーションの幅の中に入っていること、いわば「想定の範囲内」であることは、一目瞭然ですね。そして、今後長期的に気温が上昇していくという予測は、何ら修正を迫られていません。


(「『地球は当面寒冷化』ってホント?」より)

この時点で気温上昇停滞は15年に達していなかったから、「観測された変動がシミュレーションの幅の中に入っていること、いわば『想定の範囲内』であることは、一目瞭然ですね」と言い張れたのだが、気温上昇が15年間続いた後では、「ハイエイタスが90年代終わりから続いているのは率直に言って意外だ」と認めざるを得なくなったのである。

[注3] これに対して、IPCC学派は、人為的要因だけならこの15年間に0.3℃上がっているはずだから、それを足し加えるべきであり、そうすれば、やはり「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上(=大部分)は、温室効果ガス濃度の人為的増加とその他の人為起源強制力の組合せによって引き起こされた可能性が極めて高い」と抗弁するだろうが、それは詭弁にすぎない。
図8-1(の黒線)を見れば分かるとおり、1940年前後と1980年頃の気温はほぼ同じであり、その間の50年代から70年代にかけて気温は停滞、または、低下していた。
しかし、「長期間にわたる気候モデルシミュレーション」はそれを再現できない。
50年代と60年代は黒線と赤線が一致しない。
一致するのは70年代から90年代だけである。
「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1951年から2012年の世界平均地上気温について観測と一致する変化傾向を示している」のではなく、実際は「長期間にわたる気候モデルシミュレーションは、1971年から2000年の世界平均地上気温について観測と一致する変化傾向を示している」だけである。
もちろん、気候モデルシミュレーションでは70年代から90年代の気温上昇は偏に人為的排出CO2が原因である。
しかし、人為的要因の気温上昇分0.3℃が「自然のゆらぎ」=「自然起源の内部変動性がもたらす寒冷化」で打ち消されたということは、70年代から90年代の急激な気温上昇の半分は「自然起源の内部変動性がもたらす温暖化」に因るということである。
実際、「地球温暖化、どこまで深刻か 江守正多氏と田中博氏に聞く」という記事に登場する「田中博」は次のように指摘している。


これらの研究は、これまでのIPCC報告の流れからすると、驚くべき論文である。なぜならば、これまでは、IPCC報告にある将来の気候予測は、極めて信頼性の高い、いわば絶対的なものであり、一部でも異論を唱える研究者はことごとく懐疑論者扱いされてきた中で、IPCC報告の執筆者グループが、自らIPCC報告の根幹を覆すような研究発表を競うように開始しているからである。巷には懐疑論者バスターと称するグループまで登場し、これまでに懐疑論者のリストが作成されたりしたが、IPCC報告の執筆者グループによる研究は正当なものとして受け止められ、新たな懐疑論者の出現であると言うものはいない。
これらの研究で重要なことは、21世紀の温暖化ハイエイタスが内部変動によるものだとすると、当然の帰結として1970年代から1990年代までの急激な温暖化の約半分が内部変動によるものである、という推測が成り立つ点である。計算では、Kosaka and Xie による20世紀後半に観測された内部変動による温暖化は、上述のように0.4℃であるのに対し、この期間に観測された温暖化が0.68℃となるため、20世紀後半の急激な温暖化の半分以上が内部変動で説明されてしまう。これまでのIPCC報告において、この部分は人為起源の二酸化炭素の増大が原因で間違いない、と言われ続けてきたものであり、内部変動では説明できないとされた根幹部分である。過去に対する温暖化再現実験で、二酸化炭素の増加を入れたモデルと入れないモデルを比較し、二酸化炭素を一定としたモデルでは温暖化が生じないが、二酸化炭素の増加を入れることで20世紀後半の温暖化がピッタリ再現できる。この事を根拠にモデルの有用性を検証し、将来予測ツールとしての信頼性の根拠として来た。このIPCC報告の根幹ともいえる部分が、今、IPCC執筆者グループにより覆されようとしているのである。


(「伝熱,54(2015)12」)

ここで「Kosaka and Xie」とは図11-5のことである。
気候モデルシミュレーションは人為的排出CO2の影響を過大評価しているのだ。
「巷には懐疑論者バスターと称するグループまで登場し、これまでに懐疑論者のリストが作成されたりした」と批判しているが、「懐疑論者バスター」とは、誰あろう、江守正多その人である。

[注4] 第11章で採り上げた「地球温暖化の熱、海の吸収量が急加速」という記事に「最近の観測データは、数十年分の航海記録や、海洋全体に分布する観測用漂流ブイ『アルゴ(Argo)フロート』によって得られたものだ。アルゴフロートは、水深2000メートルまでのデータ測定に対応している」と書いていたが、海水温を測定できるアルゴフロートの本格稼動は2003年以降である。
このグラフの2004年以降はアルゴフロートの計測に基づいているが、それ以前のデータの科学的信頼性は低い。
当然、① 2003年以前の海洋貯熱は減少していた、② 2003年以前も2004年以降と同じペースだった、③ このグラフは大よそ正しい、の3つの可能性がある。
①であれば、もちろん、IPCCの人為的温暖化説(=気候モデル)は破綻している。
「エネルギーは海の中に潜っていて、表面に分配されないだけと考えられる」と言い張っているのだから、③であっても破綻している。
②であれば、IPCCの気候モデルは人為的排出CO2の影響を過大評価しているということになるから、やはり、破綻している。
いずれにせよIPCCの人為的温暖化説は破綻している。
このグラフだけでもIPCCの誤りは明らかである。

[注5] 論文の著者のうち、John Church、 Piers Forster、Nathan Gillett、Jonathan Gregory、Reto Knutti、Drew Shindellは政策策定者向け要約の執筆者に名を連ねているし、Myles Allen、Olivier Boucher、Gabriele Hegerl、Gregory Johnson、Gunnar Myhreは執筆協力者に名を連ねている。
さらに、Alexander Otto、 Friederike Otto、Ulrike Lohmannは本文第10章の執筆協力者に名を連ねている。

[注6] IPCCが主張するように、20世紀の気温上昇0.8℃が専ら人為的なら、過渡的気候応答は1.3℃になる。

(13-13)    \displaystyle \mbox{TCR} = \frac{3.71 \times \, 0.8}{2.29} = 1.3

しかし、それを真に受けたとしても、「1.0~2.5℃の範囲」の下限値に近い。
と言うよりも、IPCC報告書が1.0℃という低い値を明記せざるを得なくなった直接の理由はこれである。
始めに紹介した2013年9月28日の朝日新聞記事に見えるとおり、江守正多が「世界がよほど思い切った対策を打たない限り、実現は困難だ」だの、2013年10月2日の朝日新聞記事に見えるとおり、IPCC第5次報告書第1作業部会副議長のデービッド・ラットが「残念なことに、すでに半分以上は出してしまっている」だのと喚き立てていたけれど、CO2が倍増しても気温が2℃上がることはない。
Nature Geoscience,6(2013)415」の結果、「2℃目標」の科学的信頼性は、それを煽り立てる江守正多ら過激派の信頼性はガタ落ちになってしまったのである。

自分達の点けた火が燃え広がったことに驚いたのであろう、そして、おそらく、江守正多らの過激派から攻撃されて尻に火がついたのであろう、件の論文の著者の1人で、江守正多と共に政策策定者向け要約の執筆者に名を連ねる Drew Shindell は、慌てふためいて、過渡的気候応答は1.7℃、と言い出した。


気候感度の調節
Nature Climate Change
2014年3月10日
気候感度(大気組成の変化に対する対する気温の応答)の下限値はこれまで1.3℃未満とされてきた。しかし、この値が不正確である可能性が高いことを示した論文[Nature Climate Change,4(2014)274]が、今週オンライン版に掲載される。この推定値が低いのは、気候感度の計算で二酸化炭素の温暖化効果に対し、大気中の微粒子物質とオゾンのより大きな正味の寒冷化効果を計上していないからである。
大気組成の変化が気候感度に及ぼす影響を解明することは、人為起原の排出による気温の変化を正確に予測する上で重要な意味を持っている。しかし、温室効果ガスの増加にもかかわらず、過去10~15年の地表温度の上昇が比較的ゆっくりしていることから、これらの観測結果と単純な気候モデルに基づく気候感度の評価が行われた。こうした気候感度は、複雑な気候モデルによる予測の下限に位置している。
Drew Shindell は最新の気候モデル相互比較研究(CMIP5)の結果を分析し、気候感度が大気組成によってどのように変化するのかを解明した。単純なモデルを用いたこれまでの研究では、二酸化炭素に適用したのと同じ感度の重みづけを大気中の微粒子物質とオゾンにも適用しており、最近のある研究では、過渡気候応答(決められた期間内での気温の変化)は1.3℃であると報告されている。しかし、Shindell は微粒子物質やオゾン、二酸化炭素のさまざまな影響を考慮に入れることで、過渡気候応答は1.7℃になると報告した。これは、より複雑なモデルの結果と一致する。
David Stainforth はこのテーマと関連した News and Views で、「過渡気候応答に関する今回の新たな推定値は、単純な気候モデルを適用する際の一般的な暗黙の了解に疑問を投げかけることで生じた」とし、単純なモデルは政策に関する研究で広く用いられているため、気温の変化を正確に予測することが重要だと指摘している。


(natureasia.com)

同じく、もう一人の著者で、政策策定者向け要約の執筆者に名を連ねる Reto Knutti も、過渡的気候応答は1.8℃、と言い出した。


We find that ENSO variability analogous to that between 1997 or 1998 and 2012 leads to a cooling trend of about -0.06°C. In addition, updated solar and stratospheric aerosol forcings from observations explain a cooling trend of similar magnitude (-0.07°C). Accounting for these adjusted trends we show that a climate model of reduced complexity with a transient climate response of about 1.8°C is consistent with the temperature record of the past 15 years, as is the ensemble mean of the models in the Coupled Model Intercomparison Project Phase 5 (CMIP5). We conclude that there is little evidence for a systematic overestimation of the temperature response to increasing atmospheric CO2 concentrations in the CMIP5 ensemble.


(「Nature Geoscience,7(2014)651」のabstractより)

その後、温暖化プロパガンダの急先鋒である Gavin Schmidt もこのように言い立てている。


Because earlier studies do not account for what amounts to a net cooling effect for parts of the northern hemisphere, predictions for TCR and ECS have been lower than they should be. This means that Earth’s climate sensitivity to carbon dioxide — or atmospheric carbon dioxide’s capacity to affect temperature change — has been underestimated, according to the study. The result dovetails with a GISS study published last year that puts the TCR value at 3.0°F (1.7°C); the Intergovernmental Panel on Climate Change, which draws its TCR estimate from earlier research, places the estimate at 1.8°F (1.0°C).
“If you’ve got a systematic underestimate of what the greenhouse gas-driven change would be, then you’re systematically underestimating what’s going to happen in the future when greenhouse gases are by far the dominant climate driver,” Schmidt said.


(「NASA Study: Examination of Earth’s Recent History Key to Predicting Global Temperatures」より、元論文は「Nature Climate Change,6(2016)386」)

しかし、「より複雑なモデル」がハイエイタスを再現できなかったので、つまり、「気温の変化を正確に予測」できなかったので、「複雑な気候モデルを適用する際の一般的な暗黙の了解に疑問を投げかけることで生じた」のが(13-2)のアプローチである。
「より複雑なモデル」が「気温の変化を正確に予測」できなかったから、現実に観測された気温(ΔT)から「気温の変化を正確に予測することが重要だ」というのが(13-2)のアプローチである。
「より複雑なモデル」が「気温の変化を正確に予測」できなかったのだから、「より複雑なモデルの結果と一致する」のなら、それは明らかに間違いである。

「複雑な気候モデル」が正しいということは、気温は図13-1の黒線のように上がっていた、ということである。
その場合、ΔT=1.1℃だから、TCRは

(13-14)    \displaystyle \mbox{TCR} = \frac{3.71 \times \, 1.1}{2.29} = 1.78

これが「Shindell は微粒子物質やオゾン、二酸化炭素のさまざまな影響を考慮に入れることで、過渡気候応答は1.7℃になると報告した」の、「we show that a climate model of reduced complexity with a transient climate response of about 1.8°C is consistent with the temperature record of the past 15 years」の、そして、「The result dovetails with a GISS study published last year that puts the TCR value at 3.0°F (1.7°C)」の実態である。
もちろん、それは観測事実と全く相容れない。

にもかかわらず、その後、過渡気候応答は2℃と言い立てる論文まで現れる始末。


エアロゾルが温室効果による温暖化を隠している
2016年3月15日
Aerosol veil lifted from greenhouse warming
大気中に放出されたエアロゾルによる冷却の効果で、1964年から2010年の間の陸上における温室効果ガスの放出に関連した温暖化のおよそ3分の1が隠れているとの報告「Nature Geoscience,9(2016)286」が、今週のオンライン版に掲載される。また、もう1つの論文「Nature Geoscience,9(2016)277」は、より地域的なスケールで、ヨーロッパの汚染レベルの減少(特に硫黄の放出)が過去30年間にわたる北極域温暖化の増幅に寄与していることを示している。
硫酸塩エアロゾルの放出は、歴史的に温室効果ガス放出と同時に起きてきた。大気中の硫酸塩エアロゾルレベルが高くなると、気候寒冷化をもたらし、入射する太陽放射を暗くして温室効果ガスの温暖化効果の一部を隠すことができる。
Trude Storelvmo たちは、全球の1300地点における温室効果ガス濃度、温度および地表の放射の観測値を解析したが、これは気候モデルのシミュレーションに基づく見積もりとは完全に切り離された手法である。彼らは、1964年から2010年の間における温度変化の原因について、温室効果ガスレベルの増加によるものとエアロゾル負荷の変化によるものとを区別した。この結果、彼らは、エアロゾルによる冷却は陸上の全球温暖化の3分の1と相殺し、全球の温度は、CO2濃度が産業革命前の倍に到達したときに、産業革命前よりも2℃高くなると見積もっている。
特にヨーロッパの大気汚染が北極域温暖化に及ぼす効果を見ることで、Annica Ekman たちは、1980年以降の北極域が0.5℃温暖化したことを示唆する地球システムモデル・シミュレーションがヨーロッパの硫酸塩放出が減少したことで説明できることを示している。彼らは、入射する太陽放射が増加し、海洋と大気での極域への熱輸送が強化されて海洋の被覆を減少させ、それによって秋と冬に大気への熱の放出を起こす夏季に温暖化が始まることを発見した。
Ekman たちの論文に関連する News & Views 記事「Nature Geoscience,9(2016)271」で、Thorsten Mauritsen は、「究極的には、過去に北極域を温暖化させたのは、不確かで一時的なエアロゾルの冷却ではなく、二酸化炭素などの長寿命の温室効果ガスによる温暖化であり、それは今後も続く」と述べている。


(natureasia.com)

この論文(「Nature Geoscience,9(2016)286」の方)で「エアロゾルによる冷却は陸上の全球温暖化の3分の1と相殺し」に該当するのはこの一節である。


Using this framework, the observed continental temperature evolution from 1964 to 2010 can be reasonably reproduced, and yields a spatially averaged temperature increase of approximately 0.8 K (Fig. 2).
Using the method to calculate temperature evolution under the hypothetical case that CO2,eq remained constant at 1964 values, results in a cooling that reflects the total aerosol effect. Surface cooling is approximately 0.4 K, averaged over the surface stations considered. Conversely, if DSRS is kept constant at 1964 levels, corresponding to constant atmospheric aerosol concentrations, a warming of 1.2 K is calculated. In other words, about one-third of potential continental warming attributable to increased greenhouse gas concentrations has been masked by aerosol cooling during this time period.


(「Nature Geoscience,9(2016)286」より)

ΔTが1.2℃なら、TCRは

(13-15)    \displaystyle \mbox{TCR} = \frac{3.71 \times \, 1.2}{2.29} = 1.94

もはや説明するまでもなかろう。
しかも、基準年を1964年に採っている。
それならば、20世紀前半の気温上昇は自然要因と認めたことになる。
図13-6はデタラメ、と認めたことになる。
それならば、図13-1の黒線もデタラメである。
にもかかわらず、それ(ΔT=1.1℃)よりも高い値(ΔT=1.2℃)だと言う。
噴飯物と言えよう。
それは「エアロゾルが温室効果による温暖化を隠している」のイカサマを、つまり、IPCCが人為的排出CO2の効果を過大評価し、それを誤魔化すために、エアロゾルの効果も過大評価していることを物の見事に露呈してしまったのである。
従って、「もう1つの論文『Nature Geoscience,9(2016)277』」もデタラメである。
実際、第8章で解説したとおり、むしろ、エアロゾルは北極圏を温暖化してきた。
その効果はCO2よりもずっと大きい。
しかも、1980年以降はエアロゾルが減少して温暖化が加速したのなら、図2-2の赤線と黒線の開きは狭まっているはずである。
つまり、1980年以降は黒線が赤線に近づいているはずである。
しかし、逆に開きぎみである。
如何に嘘を並べ立てようとも、観測事実を調べれば真実は明らかなのだ。

[注7] これに対して、江守正多はこのように言い立てている。
(この論説を書いたのは明日香壽川、こと、張壽川だが、張にこのような知識はない。「謝辞」に江守正多の名が見えるから、江守正多の入れ知恵であり、江守正多の主張そのものであると看做してよい。)


しかし、IPCC AR5において下限が広がった理由は、IPCC AR4以降、気候感度の様々な計算方法の一つであるエネルギー・バジェット・アプローチを用いた研究(たとえば Otto et al. 2013)での試算結果が低い数値を示したからである(Mann 2014)。
・・・中略・・・
山口(2014)秋元(2014)は、2015年の先進国首脳会議(G7サミット)で決定した「2050年までに2010年比で40%から70%の幅の上方の削減」のようなレベルのGHG排出削減に疑義を唱える文脈で、エネルギー・バジェット・アプローチを用いた研究である Lewis and Curry(2014)を引用する。確かに、この IPCC AR5後に発表された研究論文は低い気候感度を示している。しかし、この研究論文の方法論や結論に対しては、1)エアロゾール・海洋蓄熱量などに関する最新データを用いていない、2)5-95%信頼区間の数値は他の研究で示されている5-95%信頼区間の数値と大きく変わらない、3)最近のハイエタスが影響している(ハイエタスに関しては後述)、などが指摘されている(Miller 2014Rogelj et al. 2014)。また、IPCC AR5後でも、IPCC AR4での推定の上限に近いような高い数値を示す研究論文(例えば Sherwood et al. 2014Fasullo et al. 2015)がIPCC AR5前と同じように発表されている。
さらに、最近になってエネルギー・バジェット・アプローチが、その簡略化した前提(気候フィードバックは時間的に変化しない)のために気候感度を低く見積もるという方法論的問題を指摘する研究論文が複数発表されている(例えば Armour et al. 2013;Long and Collins 2013)。そのような論文の中には、エネルギー・バジェット・アプローチ自体の考案者である Jonathan Gregory によるものさえある(Gregory et al. 2015)。
・・・中略・・・
しかし、少なくとも現時点において、気候感度の最良推定値を下方修正することに科学者間で合意があるわけではない。


(「気候感度および気温上昇停滞(ハイエタス)に関する最新の科学的知見」より)

ここで引用している「Mann 2014」には下図が掲載されている。

2016031101図13-20 「Earth Will Cross the Climate Danger Threshold by 2036」より

IPCC報告書も「平衡気候感度は1.5~4.5℃の範囲である可能性が高く」だから、中央値を採れば3℃。
「気候感度の最良推定値を下方修正することに科学者間で合意があるわけではない」と喚き立てているけれど、要するに、気候感度は3℃、と言いたいのである。
なぜ3℃なのか?
それは「エネルギー・バジェット・アプローチ((13-1)式のこと)」で説明できるのだ。
「3)最近のハイエタスが影響している」と言い立てているのは、図13-1の「Historical」と記された黒線に他ならない。
それに依れば、気温は1.1℃上がっている。
一方、「1)エアロゾール・海洋蓄熱量などに関する最新データを用いていない」と言い張っているのは、第2節で言及した「もしPM2.5の濃度が上昇していなければ、この温度上昇にさらに約0.5度上乗せがあったと見積もられています」に他ならない。
従って、気温はさらに0.5℃上がる。
〆て1.6℃。
(13-12)式の分母の0.4を1.6に置き換えて、ECS=3.0℃、というわけである。
「その簡略化した前提(気候フィードバックは時間的に変化しない)のために気候感度を低く見積もる」とは、1)ホッケー・スティック曲線が正しい、2)気温上昇は停滞していない、3)気温上昇はエアロゾルで隠されている、ということに他ならない。
しかし、これまで解説してきたとおり、それは全くナンセンスである。
「エネルギー・バジェット・アプローチが、その簡略化した前提(気候フィードバックは時間的に変化しない)のために気候感度を低く見積もる」と喚き立てているけれど、「エネルギー・バジェット・アプローチ」に基づけば、江守正多らの非科学性が明らかになるのだ。

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