学興の時

ラフマニノフ「楽興の時」より

今日今晩は。
「国際環境NGO(嘘)RealCrazyClimate」の会員某で~~~す。

ようやく、ハイエイタスのまともな解説が出てきたようだな。


地球温暖化の見通しについて、最近までは温暖化トレンドの勾配は、加速度的に急勾配になり、このままでは「地球が金星のようになる」などという扇情的な言説もあった。しかし、二酸化炭素濃度が400ppmを超えて指数関数的に増加するなかで、1970年代から1990年代まで続いた加速度的な温暖化は、21世紀に入るとほとんど横ばい状態となり、最近15年間の温暖化は停滞している。これを温暖化の停滞(ハイエイタス)と呼び、その原因究明に注目が集められるようになった。IPCC報告による近未来の将来予測と観測事実とが、明瞭な不一致を示し始めたことから、温暖化研究が最近騒がしくなっている。
・・・中略・・・
そんな中、Kosaka and Xie はラニーニャに似たくさび形の水温の負偏差領域の変動を、観測データを用いて気候モデルに強制的に取り込むという局所的な同化実験を行ったところ、1970年代からの急激な温暖化と21世紀以降のハイエイタスが再現できたという論文を発表した。(図3←「気温上昇の停滞と人為的温暖化説の破綻」の図9-8)
・・・中略・・・
この矛盾は、海面水温の一部を同化したPOGA-Hでは解消され、ハイエイタスがモデルで再現されている。さらに、放射強制を1850年に固定した図3bのPOGA-Cでは、1970年~1998年までに温暖化が0.4℃進み、その後は負の偏差傾向を示している。このPOGA-Cで示された10年スケールの気温変動は、大気海洋結合系による内部変動である。このことから、POGA-Hで再現されたハイエイタスは、内部変動が原因であると結論付けている。
この論文をさらに発展させた Watanabe ほかでは、海面水温を同化する代わりに、熱帯太平洋の貿易風の強度変化をモデルに同化することで、1970年代からの急激な温暖化と21世紀以降のハイエイタスが内部変動として再現できるという論文を発表した。この実験においても、1970年から1990年までの内部変動は温暖化を加速する正の値を示し、21世紀に負の偏差傾向に転じている。
・・・中略・・・
これらの研究は、これまでのIPCC報告の流れからすると、驚くべき論文である。なぜならば、これまでは、IPCC報告にある将来の気候予測は、極めて信頼性の高い、いわば絶対的なものであり、一部でも異論を唱える研究者はことごとく懐疑論者扱いされてきた中で、IPCC報告の執筆者グループが、自らIPCC報告の根幹を覆すような研究発表を競うように開始しているからである。巷には懐疑論者バスターと称するグループまで登場し、これまでに懐疑論者のリストが作成されたりしたが、IPCC報告の執筆者グループによる研究は正当なものとして受け止められ、新たな懐疑論者の出現であると言うものはいない。
これらの研究で重要なことは、21世紀の温暖化ハイエイタスが内部変動によるものだとすると、当然の帰結として1970年代から1990年代までの急激な温暖化の約半分が内部変動によるものである、という推測が成り立つ点である。計算では、Kosaka and Xie による20世紀後半に観測された内部変動による温暖化は、上述のように0.4℃であるのに対し、この期間に観測された温暖化が0.68℃となるため、20世紀後半の急激な温暖化の半分以上が内部変動で説明されてしまう。これまでのIPCC報告において、この部分は人為起源の二酸化炭素の増大が原因で間違いない、と言われ続けてきたものであり、内部変動では説明できないとされた根幹部分である。過去に対する温暖化再現実験で、二酸化炭素の増加を入れたモデルと入れないモデルを比較し、二酸化炭素を一定としたモデルでは温暖化が生じないが、二酸化炭素の増加を入れることで20世紀後半の温暖化がピッタリ再現できる。この事を根拠にモデルの有用性を検証し、将来予測ツールとしての信頼性の根拠として来た。このIPCC報告の根幹ともいえる部分が、今、IPCC執筆者グループにより覆されようとしているのである。
・・・中略・・・
図4のように、自然変動を考慮した結果、温暖化の速度が半分になれば、現在言われているような100年後の人為起源の温暖化予測は過大評価されているという結論になる。赤祖父氏が主張したように、もし、100年後の温暖化予測が1.0℃程度ということになれば、費用対効果を考慮すると、対処すべき政策も相当異なるものになる。不確かな将来予測に、何兆円もの血税を本当に払うのかという問題になる。
・・・中略・・・
学界内の温暖化脅威論者には、著者の知る限り健全な研究者が多いが、ポリティカルな理由で懐疑派を許さない脅威論者もいる。「サイエンスの議論は終わりだ。もはや議論から行動へ。今すぐ行動しないととんでもないことになる」「防衛原則により完全な理解を待つまでもなく人類の危機であることは明らかだ」「ノーベル賞のIPCCグループには2500人の科学者がいる。絶対に間違いはない」といった主張が大勢を占めていた。サイエンスの議論はまだ終わっていない。検証可能な温暖化ハイエイタス問題が、温暖化研究の流れを、今大きく変えようとしている。IPCC絶対主義に終止符を打ち、温暖化についての科学的な議論が自由にできるようになるとよい。


(「伝熱,54(2015)12」)

とは言うものの、不満は残る。
「Kosaka and Xie」は「気温上昇の停滞と人為的温暖化説の破綻」の[注3]で採り上げている論文(リンクが切れてたから、貼り直した)、「Watanabe ほか」は「東京大学大気海洋研究所の不都合な真実」で採り上げている論文だから、それらを読んだ人は既に分かっているだろうけど、繰り返すと。

IPCC第5次報告書第10章の883ページに依れば、「Over the 1951-2010 period, the observed GMST increased by approximately 0.6°C」だから、「自然変動を考慮した結果、(人為的)温暖化の速度が半分になれば」、人為的要因の気温上昇は60年間で0.3℃。
つまり、人為的要因の気温上昇は10年当り0.05℃。
IPCC第5次報告書の政策策定者向け要約の3ページに依れば「一例として強いエルニーニョ現象の年から始まる過去15年の気温の上昇率(1998~2012年で、10年当たり0.05 [-0.05~0.15] ℃)」だから、「ハイエイタス」と見える現象こそが人為的温暖化。
「21世紀以降のハイエイタスが内部変動として再現できる」、つまり、人為的温暖化が自然変動で打ち消されたとする「Kosaka and Xie」は間違い。
それは観測事実を見れば分かる。
5月10日の投稿で紹介したとおり、2000年以降のENSO指標は「エルニーニョ(正)気味」でも「ラニーニャ(負)気味」でもないから、「海面水温」が下がったから、という言い訳は通用しない。
だからこそ、「Watanabe ほかでは、海面水温を同化する代わりに、熱帯太平洋の貿易風の強度変化をモデルに同化」したのだけれど、やはり「(自然変動が)21世紀に負の偏差傾向に転じている」から、しかも、「東京大学大気海洋研究所の不都合な真実」の図12-4に見えるとおり、太平洋に熱は溜まっていないから、それも間違い。

さらに、「このIPCC報告の根幹ともいえる部分が、今、IPCC執筆者グループにより覆されようとしている」とも言い難い。
実際、2014年6月12日の投稿で採り上げた気象学会の機関誌でも、8月30日の投稿で採り上げた日本地球惑星科学連合の機関誌でも、「1970年代から1990年代までの急激な温暖化の約半分が内部変動によるものである」とは一言も言ってないし、「東京大学大気海洋研究所の不都合な真実」で紹介しているとおり、全く逆に「温室効果気体濃度の増加などの外部強制変化を考慮しない場合(自然変動実験、青色)、期間全体の温暖化傾向だけが現れなくなります」と明言してるんだね。
それは「Kosaka and Xie」も同じ。
気温上昇の停滞と人為的温暖化説の破綻」の図9-8のパネルbのPOGA-Cでは、1960年頃とグラフの右端は殆ど同じだから、やはり、「温室効果気体濃度の増加などの外部強制変化を考慮しない場合、期間全体の温暖化傾向だけが現れなくなります」ということになる。
もちろん、それはおかしい。
「1970年代からの急激な温暖化」に内部変動は寄与していないけど、「21世紀以降のハイエイタスが内部変動として再現できる」なんてことはあり得ない。
そんな馬鹿なことになってしまうのは、上で指摘したとおり、人為的温暖化は自然変動で打ち消された、という主張が事実に反するからだ。
(「Kosaka and Xie による20世紀後半に観測された内部変動による温暖化は、上述のように0.4℃であるのに対し、この期間に観測された温暖化が0.68℃となるため、20世紀後半の急激な温暖化の半分以上が内部変動で説明されてしまう」と最初に指摘したのは Judith Curry だけど、コチラを見ると、Xie は、そんなことはない、自然変動が60年周期なら、120年間を採れば自然変動の寄与はゼロだから、19世紀末からの0.8℃の気温上昇は専ら人為的、と言い張ってる。けど、「IPCC第5次報告書の市民向け要約」の図11-11に見えるとおり、IPCCの気候モデルでは、19世紀末からの気温上昇は1.1℃であるにもかかわらず、0.8℃に止まっているのは、IPCCが人為的要因を過大評価しているから、と批判しているのだから、それは全くの誤魔化し。)

その意味において、つまり、IPCC執筆者グループが自らバカを晒したという意味においては、「このIPCC報告の根幹ともいえる部分が、今、IPCC執筆者グループにより覆されようとしている」と言えなくはない。
その象徴が、「懐疑論者バスターと称するグループ」だろ。
言うまでもなく、それは「地球温暖化懐疑論批判」のこと。(ウィキペディア参照)
連中が如何に愚劣で下劣な輩であるかは、2012年1月11日の投稿2013年11月25日の投稿2014年1月15日の投稿2月2日の投稿2月5日の投稿2月9日の投稿7月8日の投稿8月22日の投稿9月18日の投稿、そして、1月7日の投稿を読めば、明らかだな。
その江守正多がIPCC第5次報告書政策策定者向け要約の執筆者なのだから、IPCCの愚劣さ下劣さも明らかだろ。
懐疑論をバスターするどころか、実は、人為的温暖化論をバスターしてしまったんだね。
「懐疑論バスターズ」じゃなくて、実は、「温暖化バカターズ」だった、と。
キャハハ。
頑張れ、温暖化バカターズ!
頑張って、もっとバカを晒してね。
キャハハ。

不満は残るものの、我国の気候学者で「21世紀の温暖化ハイエイタスが内部変動によるものだとすると、当然の帰結として1970年代から1990年代までの急激な温暖化の約半分が内部変動によるものである、という推測が成り立つ」と明言し、「自然変動を考慮した結果、温暖化の速度が半分になれば、現在言われているような100年後の人為起源の温暖化予測は過大評価されているという結論になる」と断言し、「不確かな将来予測に、何兆円もの血税を本当に払うのかという問題になる」と疑問を呈し、「『サイエンスの議論は終わりだ。もはや議論から行動へ。今すぐ行動しないととんでもないことになる』・・・といった主張が大勢を占めていた」と学会を批判し、「巷には懐疑論者バスターと称するグループまで登場し」と温暖化バカターズを罵倒したのは、これが初めてだから、その意味では、この解説の価値は高いと言える。
(「赤祖父氏が主張したように」は、同じく、「伝熱」の54号に掲載されてるけど、その元は「黒潮圏科学,2(2009)179」)

気象学会内で「IPCC絶対主義に終止符を打ち、温暖化についての科学的な議論が自由にできるようになる」ことを期待しても無駄だろ。
その証拠に、「サイエンスの議論はまだ終わっていない。検証可能な温暖化ハイエイタス問題が、温暖化研究の流れを、今大きく変えようとしている」のなら、この解説は気象学会誌に掲載されているはずだけど、掲載したのは伝熱学会の機関誌。
(気象学会の春季大会で「地球温暖化の停滞と加速」と題したシンポジウムが開催されるようだ。上記解説の執筆者が司会者だけど、講演者の顔ぶれを見ると、「温暖化についての科学的な議論」は期待できない。)
「不確かな将来予測に、何兆円もの血税を本当に払うのかという問題」は血税を払っている市民自らの問題だから、市民自らが考えねばならないんだよ。
けど、残念ながら、自分の頭で考えない人が多い。
そういう人(人文・社会科学系の連中に多いけど、理工系にも少なからずいる)は、私めがいくら科学的な説明をしても、トウシロが言ってるから、という理由だけで顧みない。
自分の頭で考える能力のない人には、大学教授という肩書きの人が書いた解説が必要なんだよ。
その意味でも、この解説の価値は高い。
読んだ人は他の人にも教えてあげてね。

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1件のコメント (+ 自分のものを追加)

  1. MA
    5月 23, 2015 @ 10:56:00

    きわめて適切な貴解説と思います。
    IPCCの言い分の根底にかかる部分について批判的意見が登場し始めたのは喜ばしいことです。これから、そこそこ追随者も現れるだろうと思いますね。論文執筆者の勇気は賞賛したい。

    筆者をはじめて啓発してくれた本「地球温暖化論のウソとワナ」(伊藤公紀氏、渡辺正氏共著、2008年)は、2015年はじめに大新聞の懺悔からはじまるお話でした。少し、予定が遅れたが予言方向に動き始めたということですかね。

    しかしながら、「温度データの信頼性に根本的な疑問あり」との判断からCO2温暖化論に疑問を持ち始めた筆者にとっては、論文にもある20世紀後半が急激に(unprecedented)温暖化したという主張には100%同意しがたいし、コンピュータモデルをいじくってデータが再現できたという言い分にもうんざりだ。

    だいたい、「地球表面の70%を占める海洋温度の測定が、ARGOの導入で21世紀になって、やっと的確になった」というのが事実なら、20世紀後半の温度データをもとにした議論自体が適切といえないことになる。

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