CO2の温室効果には限界がある
図1-1 「温室効果とは」より
気象庁のホームページを見ると、「温室効果」に関して上図のような解説がある。
人為的排出で大気中のCO2(温室効果ガス)が増えると、大気からの下向き(地表に戻る)赤外放射が増す=温暖化が起こる、というのがIPCCの人為的(排出CO2)温暖化説。
とは言うものの、上図を見ただけでは、大気中のCO2が増えると下向きの赤外放射が増すという理屈は判らない。
その理屈を説明するのが多層大気模型。
図1-2 多層大気模型(「第7回大気化学勉強会ノート」より)
しかし、上図の模型は今問題となっている人為的(排出CO2)温暖化に適用できない。
上図では地表からの赤外放射が全て大気に吸収されているけれど、下図に見えるとおり、CO2が吸収(より正確に言えば、捕捉)できる赤外放射は13μm(770/cm)から17.5μm(570/cm)の帯域(15μm帯域)に限られるからである。
図1-3 「地球温暖化懐疑論批判」の「議論27」の図17
288K(=255K+(14℃+19℃))の放射の場合、15μm帯域からの放射が占める割合は全放射の21%にすぎない。[注1]
温室効果ガスとしてCO2だけを考えると、残りの79%の放射は大気に吸収されることなく宇宙に放出される。
従って、人為的温暖化(CO2温暖化)を考えるには、図1-2の模型を以下のように修正せねばならない。
まず、気層①の上端での上向きと下向き放射の平衡条件は、
(1-1)
ここで、δ=0.21。
次に、気層①と気層②の境界における上向きと下向き放射の平衡条件は、
(1-2)
気層②と気層③の境界における上向きと下向き放射の平衡条件は、
(1-3)
気層③と地面の境界における上向きと下向き放射の平衡条件は、
(1-4)
(1-2)-(1-1)より
(1-5)
(1-3)-(1-2)より
(1-6)
(1-4)-(1-3)より
(1-7)
そこで、(1-7)と(1-1)より
(1-8)
従って、(1-5)、(1-6)、(1-7)より
(1-9)
これを一般化すると、大気がn層から成る場合、地表面上の気温は
(1-10)
大気中のCO2が増すとnが大きくなるわけだが、ここで、極限の場合(n→∞)を考えてみよう。
そうすると、次式を得るが
(1-11)
これは、CO2の吸収域(15μm帯域)から宇宙への放射はゼロ、それ以外の波長は大気に吸収されることなく宇宙に放射され、その総量は入射量 に等しい、ということを意味している。
ところが、実際には、CO2がいくら増えても、15μm帯域からの放射はゼロにならない。
下図に見えるとおり、地球の大気で最も気温が低いのは対流圏上端から成層圏下部であり、その温度はおよそ215Kだから、CO2がいくら増えても、15μm帯域からの放射は215K相当以下にならない。[注2]
図1-4 「大気の構造と流れ」より
従って、(1-11)は次のように修正されねばならない。
(1-12)
ここで
(1-13)
だから、
(1-14)
従って、15μm帯域の温室効果が8℃を超えることはない。
(1-15)
既に15μm帯域の温室効果が8℃に近ければ、人為的なCO2排出で顕著な温暖化は起こり得ない。
[注1] この値を導くにはプランク関数(「第7回大気化学勉強会ノート」を参照)を積分する必要があるけれど、プランク関数は非常に滑らかな関数で、しかも、CO2の赤外吸収域はプランク関数のピーク領域の近くにあるから、ガウス・ルジャンドルの求積方(8点で十分)を使えば、電卓でも計算できる。
関数と積分範囲と分割数を入力すれば、オンラインで計算できるサイトもある。
さらに、高名な「Mathematica」の機能の一部が「Wolfram Alpha」で提供されていて、コチラとコチラに使い方が説明されている。
全波長(周波数)に亘る積分は解析的に計算でき(「第7回大気化学勉強会ノート」を参照)、それがステファン=ボルツマンの法則だから、数値積分した値との比をとれば21%になる。
国立環境研究所・地球環境研究センターの「ココが知りたい温暖化」のサイトに「15μm付近の赤外線は二酸化炭素によってよく吸収されます。このため全温室効果に対する二酸化炭素による寄与は21%程度になります」と書いているが、それはこの数値のこと。
[注2] これを「band saturation」と呼ぶ。
「Global Warming : Understanding the Forecast」の第4章を参照。
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